『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第十六話 上弦の参・猗窩座との死闘

「舐めるなよ……人間どもがぁぁぁッ!!」

 

咆哮が轟いた瞬間、那田蜘蛛山でさえ感じさせるほどの凄まじい鬼気が、夜の荒野を震わせた。

 

膝をついていた猗窩座の全身から、爆発的な血闘気が噴き上がる。

 

ドォォォンッ!!

 

大地が陥没し、周囲の砂礫が一斉に宙へ舞い上がった。

 

しのぶが仕込んだ藤の花の毒によって鈍っていた細胞が、猛烈な勢いで活性化していく。

 

炭化していた右半身。

 

斬り裂かれた左肩。

 

そして、全身に刻まれた無数の傷。

 

その全てが、まるで時間を巻き戻すかのように塞がっていく。

 

「……再生速度が、さらに上がった!?」

 

炭治郎が驚愕の声を漏らす。

 

「これが……上弦の鬼……!」

 

猗窩座はゆっくりと立ち上がった。

 

先ほどまで毒に蝕まれていた姿など、もはやどこにもない。

 

その顔には、ただ狂喜だけが浮かんでいた。

 

「素晴らしい……!」

 

拳を握り締める。

 

「死の淵に追い込まれてこそ、生は最高に輝く!」

 

バキバキッ!!

 

全身の筋肉が膨れ上がる。

 

「さあ――宴の時間だ!!」

 

ドンッ!!

 

猗窩座の姿が消えた。

 

「来るぞ!」

 

獪岳が叫んだ直後。

 

「破壊殺・乱式!!」

 

ドドドドドドドンッ!!

 

無数の拳打が一斉に放たれた。

 

拳そのものが飛んでいるわけではない。

 

凄まじい速度で叩き込まれた拳圧が空気を爆裂させ、目に見えない衝撃波となって荒野を薙ぎ払っていく。

 

地面が次々と爆ぜる。

 

岩が粉砕される。

 

木々が根元から吹き飛ぶ。

 

「ちぃっ……!」

 

獪岳は日輪刀を横薙ぎに振り抜いた。

 

「雷の呼吸――陸ノ型・電轟雷轟!!」

 

バリバリバリィッ!!

 

青白い雷撃が幾重にも走り、迫り来る拳圧を次々と叩き落としていく。

 

しかし――。

 

「重てぇ……!」

 

防ぎ切ったはずなのに、獪岳の身体が地面を削りながら後退した。

 

「これが……上弦の参の拳圧かよ……!」

 

足元には深い二本の溝が刻まれていた。

 

一方、しのぶは軽やかに跳躍する。

 

「まあ……ずいぶんと派手になりましたね」

 

空中で身体を捻り、襲い来る衝撃波を紙一重で回避する。

 

だが、一つ、二つ、三つ――。

 

逃げ場を塞ぐように次々と拳圧が迫る。

 

「……これは少々、厄介ですね」

 

しのぶの額に、ほんの僅かに汗が浮かんだ。

 

しかし、その瞬間。

 

「ならば、俺が正面から受け止める!!」

 

轟ッ!!

 

煉獄杏寿郎が大地を蹴った。

 

燃え盛る炎を纏った日輪刀を両手で握り締め、真正面から猗窩座へ突撃する。

 

「炎の呼吸――伍ノ型!」

 

ゴォォォォォッ!!

 

「炎虎!!」

 

巨大な炎の虎が咆哮した。

 

炎の刃と拳圧が激突する。

 

ドォォォン!!

 

爆炎が夜空を赤く染めた。

 

「ぐぬっ……!」

 

煉獄の足が地面へ沈む。

 

それでも退かない。

 

「ハハハハハッ!!」

 

猗窩座が嬉しそうに笑う。

 

「良いぞ、杏寿郎!! その力、その技、その精神!! やはりお前は素晴らしい!」

 

拳と刀が幾度となく激突する。

 

一撃。

 

二撃。

 

十撃。

 

百撃。

 

常人ならば一瞬で命を奪われる攻防を、二人はほとんど同時に繰り出していた。

 

「鬼になれ、杏寿郎!」

 

猗窩座が拳を振り抜く。

 

「そうすれば、お前は永遠に強くなれる!」

 

煉獄が刀で拳を受け流す。

 

「断る!!」

 

炎刃が猗窩座の胸を斬り裂く。

 

「俺は人間として生きる!」

 

猗窩座の傷が瞬時に塞がる。

 

「なぜだ!?」

 

拳が迫る。

 

「老いるからこそ!」

 

煉獄が身体を捻る。

 

「死ぬからこそ!」

 

拳を紙一重でかわす。

 

「人は美しく燃えるのだ!!」

 

炎の斬撃が猗窩座の肩を深々と斬り裂いた。

 

「素晴らしい……!」

 

猗窩座の笑みがさらに深くなる。

 

「その精神こそ、鬼となって永遠に磨くべきものだ!!」

 

「何度言われようと答えは同じだ!!」

 

その横を、一筋の青白い雷が駆け抜けた。

 

「杏寿郎の邪魔をしてんじゃねえぞ、雑種がぁぁッ!!」

 

獪岳だ。

 

「雷の呼吸――肆ノ型・遠雷!!」

 

バリィィィンッ!!

 

超高速の雷撃が猗窩座の背後へ回り込む。

 

猗窩座が振り返る。

 

「そこか!」

 

拳を振り抜く。

 

だが――。

 

「読んでんだよ!!」

 

獪岳は空中で身体を捻り、拳を紙一重でかわした。

 

そのまま刀を振り下ろす。

 

「雷の呼吸――伍ノ型・熱界雷!!」

 

ドガァァァン!!

 

黒い高熱雷が猗窩座の脇腹を吹き飛ばした。

 

「ぐっ……!」

 

そこへ、蝶が舞う。

 

「逃がしませんよ」

 

しのぶが猗窩座の背後へ滑り込んだ。

 

「蜂牙ノ舞――真靡き」

 

シュババババッ!!

 

無数の突刺が、再生したばかりの傷口へ次々と叩き込まれる。

 

「毒が……!」

 

猗窩座の表情が歪んだ。

 

「またか……!」

 

「ええ。何度でも入れますよ」

 

しのぶは微笑んだ。

 

「あなたが再生するたびに、何度でも」

 

「面白い……!」

 

猗窩座が腕を振り回す。

 

しのぶは跳躍して回避。

 

その隙に獪岳が斬り込み、煉獄が正面から炎を叩き込む。

 

「炎の呼吸!」

 

「雷の呼吸!」

 

「蟲の呼吸!」

 

三つの異なる攻撃が、ほぼ同時に猗窩座へ殺到する。

 

轟音。

 

雷鳴。

 

爆炎。

 

毒の紫煙。

 

夜の荒野が、三人の柱と上弦の鬼による死闘の舞台へと変貌していた。

 

少し離れた場所では、炭治郎が息を詰めて戦いを見つめている。

 

「すごい……」

 

その目に映るのは、人間の限界を超えた剣士たちの戦いだった。

 

だが――。

 

「……違う」

 

炭治郎は気づいた。

 

「三人とも……まだ本気を出し切ってない」

 

その直後。

 

「ハハハハハッ!!」

 

爆炎の向こうから、猗窩座の笑い声が響いた。

 

「もっとだ!! もっと俺を楽しませろ!!」

 

炎を突き破る。

 

雷を弾き飛ばす。

 

毒を強引に再生で押し流す。

 

そして――三人の柱を同時に見据える。

 

「この程度では終われんぞ!!」

 

猗窩座の『羅針』が、かつてないほど強烈な輝きを放った。

 

獪岳が刀を構える。

 

「……上等だ」

 

煉獄が炎を燃え上がらせる。

 

「望むところだ!!」

 

しのぶが静かに笑う。

 

「それでは……もう一段階、上げましょうか」

 

夜明けまで、まだ時間はある。

 

そしてこの夜、無限列車を襲った悪夢は終わっていなかった。

 

むしろ――ここからが、本当の死闘の始まりだった。

 

 

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