『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第十七話 霹靂・帝釈天

「ハハハハハッ!! 素晴らしい! 実に素晴らしいぞ!!」

 

夜の荒野に、猗窩座の狂喜に満ちた笑い声が響き渡る。

 

炎。

 

雷。

 

毒。

 

三人の柱が繰り出す攻撃は、いずれも一撃必殺の威力を秘めていた。

 

煉獄の炎が肉体を焼き。

 

獪岳の雷が鬼の身体を穿ち。

 

しのぶの藤毒が再生そのものを蝕む。

 

それでも――。

 

「だが、足りない!!」

 

ドンッ!!

 

猗窩座が地面を蹴った。

 

「どれだけ斬ろうが! どれだけ焼こうが! どれだけ毒を流し込もうが!」

 

拳が振り抜かれる。

 

煉獄が刀で受け止める。

 

ガキィィン!!

 

「ぐっ……!」

 

その衝撃だけで、煉獄の身体が大きく後退した。

 

「人間の肉体には限界がある!!」

 

猗窩座が笑う。

 

「その限界を捨てればいい! 鬼になれ! 杏寿郎! 獪岳!」

 

その言葉に、煉獄は即座に答えた。

 

「断る!!」

 

そして獪岳も――。

 

「寝言は寝て言え、クソ鬼が……!」

 

荒い息を吐きながら、刀を握り直した。

 

肩で息をしている。

 

全身には無数の傷。

 

額から流れた血が目元を伝い、視界を赤く染めている。

 

それでも、獪岳は倒れなかった。

 

「クソ……が……」

 

日輪刀を握る手が震える。

 

だが、その震えは恐怖によるものではない。

 

怒り。

 

悔しさ。

 

そして――執念。

 

獪岳の脳裏に、これまでの人生が走馬灯のように蘇った。

 

自分より強い者。

 

自分より才能を持つ者。

 

自分を見下し、踏みつけ、置き去りにしていった者たち。

 

それでも獪岳は、生き残ってきた。

 

泥をすすり。

 

歯を食いしばり。

 

何度倒されても立ち上がった。

 

「俺は……」

 

獪岳の身体から、僅かな雷気が漏れ始める。

 

「誰かの引き立て役になるために、ここまで来たんじゃねえ……」

 

バチ……バチバチッ……!

 

雷気が次第に強くなる。

 

「俺は誰の足元にも伏さねえ……!」

 

バリバリバリバリッ!!

 

荒野の砂利が浮き上がった。

 

周囲の空気が震える。

 

煉獄が振り返った。

 

「獪岳……?」

 

しのぶも目を見開く。

 

「その雷気……いけません!」

 

獪岳の全身から噴き出す雷が、青白い色から徐々に変化していく。

 

青。

 

紫。

 

そして――。

 

黒紫。

 

「獪岳さん! それ以上は身体が持ちません!」

 

しのぶが叫ぶ。

 

しかし、獪岳は止まらない。

 

「うるせえッ!!」

 

バチィィン!!

 

雷撃が大地を穿つ。

 

「俺の生き様に口出しすんじゃねえ!!」

 

皮膚が裂ける。

 

筋肉が悲鳴を上げる。

 

血が噴き出す。

 

それでも獪岳は、雷気をさらに圧縮していく。

 

「限界だと……?」

 

獪岳が猗窩座を睨みつける。

 

「だったら――」

 

刀を低く構える。

 

「限界の方をぶっ壊せばいいんだよ!!」

 

その瞬間。

 

ドォォォォォン!!

 

凄まじい雷鳴が夜空を揺らした。

 

雲が割れる。

 

大気が震える。

 

猗窩座の『羅針』が、獪岳へと反応して猛烈な光を放つ。

 

「……何だ?」

 

初めて、猗窩座の笑みが止まった。

 

獪岳の闘気が異常な速度で膨れ上がっている。

 

だが、それだけではない。

 

「お前……まさか――」

 

「見やがれ」

 

獪岳が笑った。

 

それは決して爽やかな笑顔ではなかった。

 

泥の中から這い上がった者だけが浮かべる、凄絶な笑み。

 

「これが俺の生き様だ」

 

黒紫の雷が、獪岳の身体を包み込む。

 

「これが……俺だけが辿り着いた雷だ!!」

 

――ドクンッ。

 

心臓が大きく脈打つ。

 

次の瞬間。

 

「雷の呼吸――」

 

獪岳の姿が、視界から消えた。

 

「異形――」

 

ドゴォォォォォンッ!!

 

空間そのものが爆発した。

 

「帝釈天!!」

 

黒紫の雷光が、夜の荒野を一瞬で駆け抜ける。

 

猗窩座の『羅針』が獪岳の動きを捉えようとする。

 

しかし――。

 

「な……!?」

 

捉えられない。

 

闘気を読む。

 

その予兆を読む。

 

攻撃の軌道を読む。

 

それこそが猗窩座の戦闘能力の根幹だった。

 

だが、獪岳はその全てを速度で置き去りにした。

 

「どこだ……!?」

 

猗窩座が周囲を見回す。

 

「後ろか!」

 

振り返る。

 

いない。

 

「上か!」

 

見上げる。

 

いない。

 

その瞬間――。

 

「遅えよ」

 

耳元で声がした。

 

「――獪岳!?」

 

バリキィィィィンッ!!

 

黒紫の雷爪が炸裂した。

 

一閃。

 

二閃。

 

三閃。

 

いや――。

 

斬撃が多すぎて、もはや何本の刃が走ったのかすら判別できない。

 

猗窩座の両腕が斬り飛ばされる。

 

胸部が大きく抉られる。

 

肩が弾け飛ぶ。

 

そして最後の一撃が――首筋へ叩き込まれた。

 

「が……ッ!?」

 

猗窩座の身体が大きく吹き飛ぶ。

 

ドォォォン!!

 

地面を何度も跳ねながら、荒野を数十メートルにわたって転がっていく。

 

「獪岳!!」

 

煉獄が叫ぶ。

 

しかし――。

 

「……まだだ」

 

獪岳は倒れていなかった。

 

刀を地面に突き立て、それを杖代わりにして立っている。

 

全身から血が流れていた。

 

呼吸するたびに胸が軋む。

 

「ぐっ……!」

 

血反吐が口から溢れた。

 

それでも。

 

獪岳は笑っていた。

 

「ハッ……ハハ……」

 

震える腕で刀を握り締める。

 

「見たか……バケモノ……」

 

その瞳には、消えることのない執念が宿っている。

 

「これが……俺の……真の力だ……!」

 

遠くで、ゆっくりと猗窩座が立ち上がった。

 

両腕はすでに再生し始めている。

 

胸の傷も塞がっていく。

 

だが――。

 

その顔からは、先ほどまでの余裕が消えていた。

 

「……人間が」

 

猗窩座は、初めて獪岳を真正面から見据える。

 

「俺の速度を……超えただと……?」

 

炎柱・煉獄杏寿郎。

 

蟲柱・胡蝶しのぶ。

 

そして鳴柱・獪岳。

 

三人の柱と上弦の参による死闘は、ついに新たな領域へと突入した。

 

そしてその中心には――。

 

己の限界すら叩き壊し、雷神の如き一撃を放った鳴柱・獪岳の姿があった。

 

 

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