『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第十八話 三柱共闘

「ハッ……見たか……バケモノが……」

 

荒野に膝をついた獪岳の全身から、止めどなく血が滴り落ちていた。

 

『帝釈天』。

 

己の命すら燃料にして放った雷撃は、猗窩座の肉体を半ば以上も炭化させ、両腕と胸部を大きく削り取っていた。

 

それでも――上弦の参は立っている。

 

「グ……ググ……!」

 

焼け焦げた肉が蠢く。

 

本来ならば瞬く間に再生するはずの傷が、黒紫色の雷に焼かれた箇所だけは思うように塞がらない。

 

「おのれ……!」

 

猗窩座の表情から、先ほどまでの歓喜が消えていた。

 

「おのれぇぇぇぇッ!!」

 

怒号と共に、大地が爆ぜる。

 

「術式展開――破壊殺・乱式!!」

 

ドドドドドドドドドッ!!

 

残された左腕が猛烈な速度で振り抜かれる。

 

一発。

 

二発。

 

十発。

 

百発。

 

目に見えない拳圧が連続して放たれ、荒野そのものを粉砕しながら、動くことすらままならない獪岳へ殺到した。

 

「獪岳さん!」

 

しのぶが叫ぶ。

 

しかし、間に合わない。

 

獪岳は刀を杖代わりに立ち上がろうとするものの、帝釈天によって限界を超えた肉体は言うことを聞かなかった。

 

「ちっ……!」

 

迫り来る拳圧。

 

その瞬間――。

 

「させるかぁぁぁぁッ!!」

 

ゴォォォォォォォッ!!

 

獪岳の前方で、巨大な炎柱が噴き上がった。

 

炎の中から飛び出した煉獄杏寿郎が、日輪刀を大きく振り抜く。

 

「炎の呼吸――伍ノ型!」

 

燃え盛る刃が大地を抉り、巨大な炎の虎が咆哮する。

 

「炎虎!!」

 

ドォォォォン!!

 

炎の猛虎と無数の拳圧が正面衝突した。

 

爆炎が荒野を染め、衝撃波が地面を何度も跳ね上げる。

 

「ぬおおおおおおッ!!」

 

煉獄は両足を大地へ叩き込み、真正面から拳圧を受け止めた。

 

「獪岳! ここは俺に任せろ!」

 

「……余計なことしやがって……!」

 

獪岳は苦々しく笑う。

 

「だが……助かったぜ、杏寿郎」

 

「うむ!」

 

煉獄は一切振り返らない。

 

「仲間を守るのは柱の務めだ!」

 

その言葉に、獪岳は小さく鼻を鳴らした。

 

「仲間、ねえ……」

 

その瞬間だった。

 

「――今です!」

 

夜空から、蝶が舞い降りた。

 

無数の蝶の羽音。

 

そして、その中心から紫色の羽織を翻して胡蝶しのぶが突進する。

 

猗窩座が気づいた時には、すでに懐へ入り込まれていた。

 

「なっ……!?」

 

「獪岳さんが命懸けで作ってくださった隙――」

 

しのぶの瞳が鋭く光る。

 

「絶対に無駄にはしません」

 

シュッ!!

 

細身の日輪刀が、猗窩座の焼け焦げた脇腹へ深々と突き刺さった。

 

「蟲の呼吸――」

 

しのぶは刀を引き抜くと同時に、地面を蹴った。

 

「百足ノ舞・百足蛇腹!!」

 

シュバババババッ!!

 

蝶のように舞い、蜂のように刺す。

 

猗窩座の周囲を縦横無尽に駆け回りながら、しのぶの刀が何度も肉体を穿つ。

 

頸。

 

肩。

 

脇腹。

 

脚。

 

そして、先ほど獪岳によって焼き払われた傷口。

 

「ぐ……ッ!?」

 

猗窩座の肉体が大きく揺らいだ。

 

「毒……だと……!?」

 

「ええ」

 

しのぶは静かに微笑む。

 

「先ほどより濃度を上げています」

 

「なに……!?」

 

「あなたは再生能力が高い。ですから、再生そのものを阻害すればいい」

 

藤の花の毒が、猗窩座の血管を駆け巡る。

 

黒紫色に焼けた傷口から、さらに紫煙が噴き上がった。

 

「ぐ……あ……ッ!」

 

猗窩座の左脚が崩れる。

 

「馬鹿な……!」

 

再生しようとした細胞が、毒と雷撃によって次々と破壊されていく。

 

「俺の肉体が……再生しない……!?」

 

「効いていますね」

 

しのぶは一歩下がり、刀を構える。

 

「獪岳さんの雷撃で傷口を広げ、煉獄さんがあなたの攻撃を止める。そして私が再生を阻害する」

 

「……三人で……俺を……!」

 

猗窩座の顔が怒りに歪む。

 

「ふざけるなぁぁぁッ!!」

 

「そうはさせん!!」

 

轟ッ!!

 

煉獄が炎を纏って突進する。

 

「炎の呼吸――参ノ型!」

 

灼熱の刃が大地を薙ぎ払い、炎の渦が猗窩座を包み込む。

 

「気炎万象!!」

 

「ぐおおおおおッ!!」

 

猗窩座が腕で防御する。

 

だが――。

 

「バリィィィッ!!」

 

炎の向こうから、黒紫色の雷光が走った。

 

「まだ終わってねえぞ……!」

 

血まみれの獪岳が立っていた。

 

刀を握る手は震えている。

 

呼吸も荒い。

 

それでも、その目だけは死んでいなかった。

 

「俺が一人で倒せねえなら――」

 

獪岳は口元を吊り上げる。

 

「三人で叩き潰せばいいだけだろうがぁッ!!」

 

バリバリバリバリッ!!

 

雷気が爆発する。

 

煉獄の炎。

 

しのぶの毒。

 

獪岳の雷。

 

三つの異なる力が、初めて完全に噛み合った。

 

炎が逃げ道を塞ぎ。

 

毒が再生を奪い。

 

雷が動きを断つ。

 

三柱による完璧な包囲。

 

その光景を、少し離れた場所から炭治郎たちが呆然と見つめていた。

 

「す、すごい……!」

 

炭治郎の目が大きく見開かれる。

 

「三人の柱が……一つの技みたいに戦ってる……!」

 

伊之助も拳を握り締めた。

 

「すげぇ! なんだあれ! 炎と雷と毒が全部襲ってきやがる!」

 

善逸は青ざめながら震える。

 

「いやいやいや! あれに巻き込まれたら俺たちも死ぬからね!?」

 

しかし――三人の柱は、後ろにいる若き剣士たちを一度も忘れてはいなかった。

 

煉獄が叫ぶ。

 

「竈門少年! 我妻少年! 嘴平少年!」

 

その声に三人が顔を上げる。

 

「これが柱の戦いだ!」

 

炎が燃え上がる。

 

「己の命を燃やし!」

 

雷が轟く。

 

「仲間のために限界を超え!」

 

紫色の毒煙が舞う。

 

「そして――決して諦めない!」

 

三人の柱が、同時に猗窩座を睨みつけた。

 

「「「行くぞ!!」」」

 

炎、蟲、雷。

 

異なる道を歩んできた三人の柱が、今この瞬間だけは一つの意志で繋がった。

 

対する上弦の参・猗窩座は、初めて理解する。

 

目の前にいる三人は、それぞれが強いだけではない。

 

互いの弱点を補い、互いの命を預け合うことで――。

 

単独では届かない領域へ到達している。

 

「……面白い……!」

 

猗窩座の口元が再び吊り上がった。

 

「ならば、まとめて殺してやる!!」

 

「上等だぁぁッ!!」

 

獪岳が吠える。

 

「来やがれ、クソ鬼!!」

 

夜明け前の荒野に、炎と雷と毒が渦巻く。

 

上弦の参を討つための、三柱による総力戦。

 

その死闘は、いよいよ最終局面へと突入しようとしていた。

 

 

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