『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第八話 霹靂・帝釈天、上弦を穿つ

「お前ら人間ごときが……調子に乗るんじゃねぇぇぇッ!!」

 

妓夫太郎の絶叫が、夜の吉原を震わせた。

 

次の瞬間、両手の血鎌から大量の血が噴き出す。

 

「血鬼術――飛血鎌ァッ!!」

 

シュバババババババッ!!

 

無数の血の刃が、弧を描きながら四方八方へ飛散した。

 

同時に――。

 

「私の帯から逃げられると思ってるの!?」

 

堕姫の帯が幾重にも重なり、巨大な刃の壁となって襲いかかる。

 

血鎌と帯。

 

二つの攻撃が複雑に絡み合い、まるで逃げ場のない殺戮の檻を作り上げていく。

 

ドガガガガガッ!!

 

屋根瓦が吹き飛ぶ。

 

柱が斬り裂かれる。

 

建物の壁面が無惨に崩れ落ちる。

 

吉原の街並みそのものが、上弦の鬼二人の猛攻によって破壊されていった。

 

「くっ……!」

 

宇髄天元が二本の日輪刀を交差させ、飛来する血鎌を弾き飛ばす。

 

だが――。

 

「ぐっ……!」

 

僅かに顔を歪めた。

 

首筋から頬へ。

 

紫色の毒が、はっきりと浮かび上がっている。

 

「天元さん!」

 

炭治郎が叫ぶ。

 

「気にすんな!」

 

天元は笑ってみせる。

 

「この程度の毒で音柱が止まるかよ!」

 

そう言いながらも、呼吸は確実に乱れていた。

 

動きもほんの僅かに鈍っている。

 

妓夫太郎はそれを見逃さなかった。

 

「へへへ……効いてるじゃねぇか」

 

醜悪な笑み。

 

「俺の毒はなぁ、ちょっとずつ身体を壊していくんだよぉ……。いくら強くても、人間は鬼みたいに再生できねぇ」

 

その言葉に続くように、獪岳の首筋にも激痛が走った。

 

「……っ!」

 

獪岳が左手で傷口を押さえる。

 

血管の中を焼けた針が這い回っているような感覚。

 

筋肉が痙攣し、視界が一瞬だけ歪む。

 

(また……毒か)

 

獪岳の脳裏に、無限列車での戦いが蘇る。

 

上弦の参。

 

猗窩座との死闘。

 

そして――限界を超えて放った『帝釈天』。

 

あの時も、己の身体は壊れかけた。

 

それでも戦った。

 

そして、自分の雷が炎柱・煉獄杏寿郎の命を繋いだ。

 

さらに脳裏に浮かぶのは、戦いの後。

 

傷だらけの身体で自分の前に立ち、深々と頭を下げた煉獄の姿。

 

『感謝する、獪岳』

 

『君の雷が、俺の命を繋いでくれた』

 

「……」

 

獪岳の瞳が鋭く細くなる。

 

「……ハッ」

 

小さく笑った。

 

「こんなところで……」

 

刀を握り直す。

 

「止まってたまるかよ」

 

バチッ。

 

刀身から電光が走る。

 

「俺は――」

 

バチバチバチバチッ!!

 

さらに激しい雷が全身を包み込む。

 

「誰の足元にも伏さねえんだよぉぉぉッ!!」

 

ドォォォン!!

 

爆発的な雷気が周囲へと広がった。

 

屋根瓦が宙へ浮き上がる。

 

砂埃が巻き上がる。

 

黒紫だった雷光が、さらに濃く、深く変色していく。

 

青白い雷。

 

黒紫の雷。

 

そして――。

 

漆黒。

 

まるで夜そのものを雷に変えたかのような、禍々しくも凄まじい電光だった。

 

「な……なんだぁ!?」

 

妓夫太郎が目を見開く。

 

「おい、獪岳……!」

 

天元も驚愕する。

 

「まだ上があるってのかよ!」

 

「あるに決まってんだろ」

 

獪岳が低く答える。

 

「俺はな……」

 

一歩。

 

足を踏み出す。

 

「上弦の鬼なんぞに負けるために、柱になったんじゃねえ」

 

二歩。

 

大地が震える。

 

「俺が一番上に立つためだ」

 

三歩。

 

雷鳴が轟く。

 

「そのためなら――」

 

獪岳の瞳が、獲物を射抜く猛禽のように輝いた。

 

「俺の命だってくれてやる!!」

 

「獪岳さん! その技は……!」

 

炭治郎が叫ぶ。

 

だが獪岳は振り返らない。

 

「炭治郎、目ぇ逸らすな」

 

「え……?」

 

「よく見とけ」

 

獪岳が刀を構える。

 

「これが――俺の雷だ」

 

その瞬間だった。

 

「おい、ド派手野郎!」

 

獪岳が天元へ怒鳴る。

 

「妹の首は任せたぞ!!」

 

天元はニヤリと笑った。

 

「おうよ!」

 

二本の日輪刀を大きく構える。

 

「派手に合わせてやるぜぇぇッ!!」

 

「なっ……!?」

 

堕姫が後退する。

 

「お兄ちゃん!」

 

「分かってる!」

 

妓夫太郎が血鎌を構える。

 

「来るぞぉッ!!」

 

だが――遅い。

 

天元が一気に踏み込んだ。

 

「音の呼吸――!」

 

ドガァン!!

 

堕姫の帯を二本の巨刀がまとめて弾き飛ばす。

 

「うそ……!?」

 

一瞬。

 

ほんの一瞬だけ。

 

堕姫の防御が崩れた。

 

「今だ、獪岳!!」

 

天元の咆哮。

 

獪岳の足元が爆発した。

 

ドォォォォォンッ!!

 

「雷の呼吸――」

 

漆黒の雷が、獪岳の全身を包み込む。

 

「異形――」

 

世界から音が消えた。

 

「帝釈天!!」

 

刹那。

 

獪岳の姿が消失する。

 

「な――」

 

妓夫太郎の目が見開かれる。

 

『羅針』もない。

 

猗窩座ほどの闘気察知を持たない妓夫太郎では、なおさら追えない。

 

ただ――。

 

一筋の漆黒だけが見えた。

 

「速――」

 

ガキィィィン!!

 

次の瞬間、妓夫太郎の両手の血鎌が弾き飛ばされた。

 

「な……!?」

 

獪岳の刀が、血鎌の間を紙一重で抜ける。

 

そして――。

 

「喉がガラ空きだぜ」

 

ズバァァァッ!!

 

黒雷を纏った刃が、妓夫太郎の頸へ深々と食い込んだ。

 

「が……あ……ッ!?」

 

同時に。

 

「これで――終いだぁぁぁッ!!」

 

天元の二本の日輪刀が堕姫の頸へ叩き込まれる。

 

ズガァァァン!!

 

「い、いやぁぁぁぁぁッ!!」

 

二つの刃。

 

二つの首。

 

ほぼ同時に斬撃が走った。

 

ドサッ。

 

妓夫太郎の首が宙を舞う。

 

そして――。

 

堕姫の首も、夜空へ高く跳ね上がった。

 

「な……」

 

炭治郎が息を呑む。

 

「同時に……斬った……!」

 

しかし、獪岳は笑わなかった。

 

刀を構えたまま、妓夫太郎を睨み続けている。

 

「……まだ終わってねえ」

 

「え?」

 

炭治郎が振り向く。

 

斬り飛ばされた妓夫太郎の首が、憎悪に歪んだ顔で笑っていた。

 

「へ……へへへ……」

 

「なぁ……兄ちゃん……」

 

堕姫の首もまた、泣き叫ぶ。

 

「まだ終わってないよね……?」

 

二人の首から、猛烈な鬼気が噴き出した。

 

「……そう簡単に」

 

妓夫太郎が嗤う。

 

「俺たち兄妹が死ぬと思うなよぉぉぉッ!!」

 

夜の吉原に、二人の鬼の絶叫が響き渡る。

 

上弦の陸――堕姫と妓夫太郎。

 

その頸は確かに斬られた。

 

だが。

 

兄妹を同時に斬首しなければ倒せない、上弦の陸の本当の恐ろしさは――ここからだった。

 

 

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