『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第三話 恋柱・甘露寺蜜璃、参戦

「わぁ……! 見て見て、炭治郎ちゃん! 松茸がこんなにいっぱい!」

 

夕暮れの刀鍛冶の里。

 

昼間まで続いていた鍛錬の疲れを癒やすように、宿の広間には穏やかな時間が流れていた。

 

卓上には、湯気を立てる松茸ご飯、焼き魚、山菜の天ぷら、味噌汁、漬物。

 

そして、その料理を物凄い勢いで消費しているのが恋柱・甘露寺蜜璃だった。

 

「おいおい……それで何杯目だ?」

 

隣で箸を動かしながら、獪岳が呆れたように尋ねる。

 

「えーっと……八杯目!」

 

「……よく腹に入るな」

 

「だって刀鍛冶の里のお料理、とっても美味しいんだもの!」

 

蜜璃は幸せそうに頬を緩める。

 

「それに、たくさん食べて元気をつけないと! 柱はいつ鬼が来ても戦えるようにしておかなくちゃ!」

 

「その理屈なら俺も食わなきゃならねえな」

 

「獪岳さん、さっきから三杯しか食べていませんよ?」

 

しのぶが穏やかに笑う。

 

「もっと召し上がったらどうです?」

 

「俺は甘露寺みたいな食い方はしねえ」

 

「まあ、失礼ね!」

 

蜜璃が頬を膨らませる。

 

「私だって女の子らしく食べてるわよ!」

 

「どこがだ」

 

「獪岳さん、女の子にそういうこと言っちゃ駄目ですよ」

 

「しのぶ、お前はこいつの味方なのか?」

 

「もちろんです」

 

「即答かよ……」

 

その隣では、炭治郎も楽しそうに食事をしていた。

 

「でも、本当に美味しいですね! こんなにたくさん食べられるなんて、ありがたいです!」

 

「炭治郎ちゃんもいっぱい食べてね!」

 

「はい!」

 

「……平和だな」

 

獪岳がぽつりと呟く。

 

無限列車。

 

遊郭。

 

これまで幾度も死線を潜り抜けてきた。

 

だからこそ、こうして仲間と食卓を囲める時間が、獪岳にとっても決して嫌いなものではなかった。

 

しのぶがそんな獪岳の横顔を見て、微かに笑う。

 

「獪岳さんも、少しはこういう時間を楽しんでくださいね」

 

「……別に楽しんでねえ」

 

「そうですか?」

 

「そうだ」

 

「ふふっ」

 

その瞬間だった。

 

――ドゴォォォォンッ!!

 

「……ッ!?」

 

轟音。

 

建物全体が激しく揺れた。

 

卓上の食器が跳ね上がり、味噌汁が床へこぼれる。

 

「な、何!?」

 

炭治郎が立ち上がった瞬間――。

 

ドガァァァンッ!!

 

広間の天井が吹き飛んだ。

 

巨大な瓦礫が雨のように降り注ぐ。

 

「危ねえッ!」

 

獪岳が即座に抜刀。

 

バリィッ!!

 

刀身から雷が走り、飛来した瓦礫をまとめて粉砕する。

 

「きゃあっ!」

 

蜜璃も咄嗟に炭治郎の前へ躍り出た。

 

しかし、次に襲ってきたものは瓦礫などではなかった。

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

里のあちこちから悲鳴が上がる。

 

遠くの家屋が次々と吹き飛び、猛烈な風が街路を駆け抜けていく。

 

木々が根元から折れ、屋根が宙へ舞い上がった。

 

「なんだ、この風は……!?」

 

炭治郎が目を細める。

 

その時、遥か上空から巨大な団扇を持った異形の鬼が姿を現した。

 

「ひひひひ……!」

 

半天狗の分身――可楽。

 

その巨大な団扇が、再び大きく振り抜かれる。

 

「吹っ飛べぇ!」

 

ゴォォォォォォンッ!!

 

暴風が大地を薙ぎ払う。

 

家屋が倒壊し、木々がなぎ倒される。

 

「みんな伏せて!」

 

しのぶが叫ぶ。

 

獪岳は刀を地面へ突き立て、雷気を爆発させながら踏みとどまった。

 

「クソッ……!」

 

「獪岳さん!」

 

「俺は大丈夫だ! それより里の奴らを守れ!」

 

その直後。

 

ズズズズズ……。

 

地面の下から、不気味な音が響いた。

 

「……?」

 

炭治郎が振り返る。

 

里の池。

 

その水面が大きく膨れ上がった。

 

「何か来ます!」

 

バシャァァァン!!

 

水柱と共に、巨大な魚のような異形が飛び出した。

 

一匹。

 

二匹。

 

十匹。

 

さらにその後ろから、無数の魚型の鬼が雪崩のように押し寄せてくる。

 

「きゃああああっ!」

 

刀鍛冶たちが逃げ惑う。

 

「鬼だぁ!」

 

「里が襲われてるぞ!」

 

「逃げろ!」

 

「落ち着いてください!」

 

しのぶが声を張り上げる。

 

だが、鬼たちは容赦なく刀鍛冶たちへ襲いかかる。

 

その瞬間。

 

「――そこまでよ」

 

声が響いた。

 

先ほどまで食事を楽しんでいた蜜璃だった。

 

その顔から、笑顔が消えている。

 

桃色の髪が風に揺れる。

 

その瞳には、燃えるような怒りが宿っていた。

 

「みんなを傷つける悪い鬼は……」

 

蜜璃が日輪刀の柄を握る。

 

「私が絶対に許さないんだから!」

 

シュルッ!

 

鞭のようにしなる刀身が抜かれた。

 

極薄の刀が月明かりを反射し、桃色の閃光となって舞う。

 

「恋の呼吸――壱ノ型!」

 

一歩。

 

二歩。

 

三歩。

 

蜜璃の身体が、まるで舞うように敵陣へ飛び込む。

 

「初恋のわななき!!」

 

シュバババババッ!!

 

無数の斬撃。

 

魚型の鬼たちが次々と切り裂かれ、空中で細かな肉片となって弾け飛ぶ。

 

「す、すごい……!」

 

炭治郎が目を見開く。

 

蜜璃は着地すると、刀を大きく振り払った。

 

「大丈夫!?」

 

「は、はい!」

 

「よかったぁ!」

 

一瞬だけ、いつもの明るい笑顔が戻る。

 

だが――。

 

「……まだ来るわね」

 

蜜璃が空を見上げる。

 

暴風の向こう。

 

さらに巨大な気配がある。

 

獪岳もそれを感じ取っていた。

 

「上弦……」

 

低い声。

 

刀を握る手に力が入る。

 

「どうやら、こいつらは最初から俺たちを狙ってやがったらしいな」

 

しのぶが静かに頷く。

 

「ええ。里そのものを襲撃するなんて、随分と大胆な作戦です」

 

「つまり、鬼舞辻無惨も本気ってことか」

 

炭治郎が刀を抜く。

 

「だったら、俺たちも本気で守らないと!」

 

蜜璃が大きく頷いた。

 

「うん!」

 

そして獪岳もまた、刀身へ雷を纏わせる。

 

バチッ……。

 

青白い火花。

 

さらにその奥から、禍々しい黒紫の雷が滲み出した。

 

「上等だ」

 

獪岳が笑う。

 

「上弦が二匹だろうが三匹だろうが、まとめて叩き潰してやる」

 

「獪岳さん!」

 

蜜璃が振り返る。

 

「私も一緒に戦うわ!」

 

「勝手にしろ」

 

「うふふ、じゃあ勝手にするね!」

 

しのぶも刀を構える。

 

「では、私も参加しましょうか」

 

炭治郎が息を呑む。

 

恋柱。

 

蟲柱。

 

鳴柱。

 

三人の柱が並び立つ。

 

その背後には、守るべき刀鍛冶たち。

 

その前方には、里を破壊する鬼の群れ。

 

そして――。

 

山の向こうから、さらに二つ。

 

明らかに次元の違う鬼気が迫っていた。

 

「……来るぞ」

 

獪岳が呟く。

 

夜の闇の中で、無数の鬼の気配が蠢く。

 

刀鍛冶の里。

 

鬼殺隊にとって命綱ともいえるこの場所を巡り、かつてない総力戦が始まろうとしていた。

 

そしてその戦場に、恋柱・甘露寺蜜璃も立った。

 

「みんなを守るためなら――私は、絶対に負けない!」

 

桃色の刀身が月夜に閃く。

 

その直後。

 

里全体を揺るがす第二の轟音が、山々へと響き渡った。

 

 

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