『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第七話 風柱・不死川実弥との死闘稽古

柱稽古も中盤へ差し掛かっていた。

 

水柱・冨岡義勇の実戦稽古。

 

鳴柱・獪岳の迅雷訓練。

 

蟲柱・胡蝶しのぶの高速連突き。

 

恋柱・甘露寺蜜璃の柔軟訓練。

 

そして霞柱・時透無一郎の高速移動訓練。

 

連日、限界まで身体を追い込まれた隊士たちは、もはや「柱稽古」という言葉を聞くだけで震え上がるようになっていた。

 

だが――。

 

その中でも、特に恐れられている稽古があった。

 

風柱・不死川実弥。

 

彼の稽古場へ足を踏み入れた瞬間、隊士たちは肌を刺すような殺気を感じていた。

 

「立てェッ!!」

 

「ひっ……!」

 

「まだ終わってねえぞォッ!」

 

実弥が木刀を振り下ろす。

 

ドガァンッ!!

 

受け止めた隊士が、そのまま後方へ吹き飛ばされた。

 

「ぐあっ!」

 

「立て!」

 

「は、はい……!」

 

「声が小せえッ!」

 

「はいッ!!」

 

「なら来やがれェッ!」

 

再び実弥が突進する。

 

風を巻き込んだような猛烈な踏み込み。

 

一撃。

 

二撃。

 

三撃。

 

木刀とは思えないほどの激しい打ち込みが隊士たちを襲い、稽古場には絶え間なく木刀の衝突音が響き渡っていた。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

「足が……動かない……」

 

「動かせェッ!」

 

実弥が怒鳴る。

 

「戦場で足が竦んだら死ぬぞ! 鬼が待ってくれると思ってんのかァ!?」

 

これが風柱・不死川実弥の担当する稽古。

 

『無限打ち込み・殺気耐性訓練』。

 

技術だけではない。

 

敵を前にした恐怖をねじ伏せ、殺気の中でも刀を振るう精神力を鍛える。

 

実弥はそのために、あえて本物の殺意に近い気迫を隊士たちへ叩きつけていた。

 

「鬼はお前らが怖がってる間も笑って殺しに来るぞォ!」

 

「はいッ!」

 

「ならもっと来い!」

 

隊士たちが必死に食らいつく。

 

その時だった。

 

「……相変わらず、乱暴な稽古してやがるな」

 

聞き覚えのある声。

 

実弥が振り返る。

 

そこに立っていたのは――。

 

鳴柱・獪岳。

 

黒銀の日輪刀を腰に差し、腕を組んで不機嫌そうにこちらを眺めていた。

 

「なんだ、雷野郎」

 

「見学だ」

 

「へえ?」

 

実弥が口角を吊り上げる。

 

「上弦を二匹倒したからって、随分と偉くなったじゃねえか」

 

「テメェこそ相変わらず口が悪ぃな、ハゲ」

 

「……あ?」

 

空気が変わった。

 

隊士たちが一斉に後ずさる。

 

「お、おい……」

 

「また始まるぞ……」

 

「柱同士の喧嘩だ……」

 

実弥が木刀を肩に担ぐ。

 

「今、なんつった?」

 

「聞こえなかったのか? ハゲ殺気野郎って言ったんだよ」

 

「上等だァ……!」

 

ザッ!

 

実弥が構える。

 

それに合わせるように、獪岳の全身から黒紫の雷気が噴き上がった。

 

バチバチバチッ!!

 

「俺の雷をノロいって言ったのはテメェかァッ!」

 

「言ったぜェ! そんな鈍い一閃じゃ、鬼の首なんざ獲れねえってなァッ!」

 

「……ほざけッ!!」

 

ドンッ!!

 

二人が同時に地面を蹴った。

 

ガァンッ!!

 

凄まじい衝撃音。

 

黒紫の雷と荒れ狂う風が正面から激突した。

 

「ぐっ……!」

 

「ハッ!」

 

実弥が強引に木刀を振り抜く。

 

獪岳は身を捻ってかわし、そのまま雷を纏った一撃を叩き込む。

 

「雷の呼吸――!」

 

バリィッ!!

 

「遅ぇッ!」

 

実弥が紙一重で避ける。

 

そのまま獪岳の懐へ入り込んだ。

 

「風の呼吸!」

 

ブォンッ!!

 

「チッ!」

 

獪岳が後方へ跳ぶ。

 

その頬を、風圧だけで浅い傷が走った。

 

「……やるじゃねえか」

 

「テメェもなァ!」

 

再び二人が激突する。

 

ガガガガガガッ!!

 

木刀が何度も交差する。

 

一撃ごとに衝撃が地面を震わせ、周囲の木々が揺れる。

 

「す、すごい……!」

 

炭治郎は傷だらけの身体を引きずりながら、二人の戦いを見つめていた。

 

「不死川さんは、相手を真正面から押し潰すような剣……!」

 

そして獪岳を見る。

 

「獪岳さんは、雷のような踏み込みから一気に間合いを奪っている……!」

 

二人の剣は正反対だった。

 

実弥は荒々しく、獰猛。

 

獪岳は鋭く、苛烈。

 

しかし、共通しているものが一つある。

 

一瞬でも隙を見せれば、相手に喰われる。

 

だからこそ――。

 

二人とも、一切の妥協をしない。

 

「どうしたァッ! それが鳴柱の実力かァッ!」

 

「ぬかせェッ! テメェの首、今から雷で吹っ飛ばしてやるよォッ!」

 

「やってみろォ!」

 

「上等だァッ!」

 

ドガァァァンッ!!

 

二人の木刀が真正面から激突した。

 

限界を超えた衝撃に、木刀が同時に砕け散る。

 

「……!」

 

「……チッ」

 

砕けた木片が宙を舞う。

 

だが二人は止まらなかった。

 

獪岳が拳を握る。

 

実弥も拳を構える。

 

「まだやるかァ?」

 

「当たり前だろうが」

 

「ハッ!」

 

二人が同時に踏み込もうとした、その瞬間。

 

「そこまでにしてください!」

 

凛とした声が響いた。

 

「……あ?」

 

「……チッ」

 

しのぶだった。

 

その隣には蜜璃もいる。

 

「二人とも、稽古場を壊しすぎです!」

 

「知るか」

 

「俺は悪くねえ」

 

「同じことを言っていますよ?」

 

しのぶが笑顔を浮かべる。

 

だが、その笑顔には明らかに怒りが滲んでいた。

 

「それ以上続けるのでしたら、二人まとめて薬で眠っていただきます」

 

「…………」

 

「…………」

 

柱二人が黙った。

 

それを見ていた隊士たちは唖然とする。

 

「……鳴柱様と風柱様が……」

 

「胡蝶様には逆らえないんだ……」

 

獪岳が舌打ちする。

 

「チッ……仕方ねえ」

 

実弥も木刀の残骸を捨てた。

 

「今日のところは終わりだァ」

 

そして、実弥は隊士たちを振り返った。

 

「お前らァッ!」

 

「は、はいッ!」

 

「今の戦いを見て何を思った!」

 

隊士たちは顔を見合わせる。

 

「……速すぎて、何をしているのか分かりませんでした」

 

「馬鹿野郎ォッ!」

 

実弥が怒鳴る。

 

「分からねえなら、分かるまで鍛えろ! あいつらだって最初からあんな動きができたわけじゃねえ!」

 

獪岳も腕を組みながら口を挟む。

 

「そういうことだ。柱の技を見て『すげえ』で終わらせるな」

 

隊士たちの視線が獪岳へ集まる。

 

「自分がどうすればそこへ近づけるのか考えろ。身体が動かねえなら、動くまで鍛えろ。怖くて刀が振れねえなら、怖くても振れるようにしろ」

 

その言葉に、隊士たちの表情が変わっていく。

 

「……はい!」

 

「もう一度お願いします!」

 

「俺も!」

 

「俺もやります!」

 

実弥がニヤリと笑う。

 

「ハッ……やっと目ぇ覚めたじゃねえか」

 

獪岳も鼻で笑った。

 

「最初からそれくらい言え」

 

二人の柱は互いに視線を交わす。

 

「……次は実戦形式でやるか?」

 

「望むところだァ」

 

「今度こそ負けねえぞ」

 

「それはこっちの台詞だァッ!」

 

再び殺気がぶつかり合う。

 

「やっぱり、この二人は仲が悪いんでしょうか……?」

 

炭治郎が呟く。

 

しのぶは二人を眺めながら、くすりと笑った。

 

「いいえ。あれはきっと……とても分かりやすい形の信頼ですよ」

 

風と雷。

 

互いに一歩も譲らない二人の柱は、激しくぶつかり合うことで、それぞれの限界を押し広げていた。

 

そして、その死闘を目の当たりにした隊士たちもまた、心の奥に刻み込んでいた。

 

――生き残るためには、強くなるしかない。

 

――次の戦場では、誰も助けに来てくれるとは限らない。

 

柱稽古は、ただ技を教えるためのものではない。

 

迫り来る鬼舞辻無惨との最終決戦。

 

その地獄から一人でも多く生きて帰るための、最後の準備だった。

 

 

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