『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

209 / 237
第二話 鳴柱・獪岳、落下

――ビィィィン。

 

不気味な琵琶の音が響いた瞬間、獪岳の足元から床が消えた。

 

「な――ッ!?」

 

身体が落ちる。

 

いや、落ちているのかすら分からない。

 

無限城は上下という概念そのものを嘲笑うかのように、廊下と廊下が垂直に繋がり、巨大な和室が宙に浮かび、無数の階段がどこにも繋がらないまま空間を埋め尽くしていた。

 

「くそっ……!」

 

獪岳は咄嗟に刀を抜く。

 

「雷の呼吸――!」

 

バリバリバリィッ!!

 

刀身から黒紫の雷が爆ぜる。

 

獪岳は雷撃を斜め下の壁へ叩き込み、その反動で落下速度を殺した。

 

「……ッ!」

 

一瞬だけ身体が浮く。

 

その隙に、目の前へ迫ってきた廊下の梁へ足を掛ける。

 

ドンッ!

 

「ここで――!」

 

しかし。

 

――ビィィン。

 

「チッ!」

 

琵琶の音。

 

梁が消えた。

 

「ふざけんなァァァッ!!」

 

再び獪岳の身体が奈落へ放り出される。

 

「どこまで落とす気だ、この野郎ッ!!」

 

上下左右が滅茶苦茶になる。

 

獪岳は空中で身体を捻り、迫り来る壁を睨みつけた。

 

だが――。

 

ズズズズズ……!

 

壁そのものが動き始めた。

 

一枚の襖が横から滑り込み、その向こうから別の部屋が現れる。

 

さらにその部屋の天井が床となり、床が壁へと変化する。

 

「空間そのものを弄ってやがる……!」

 

鳴女。

 

上弦の肆から成り上がった鬼が操る、無限城。

 

この城そのものが、あの女の血鬼術によって支配されている。

 

「なら――!」

 

獪岳の目が鋭くなる。

 

「空間ごとブチ抜けばいいんだろうがァッ!!」

 

刀を振り抜く。

 

「雷の呼吸――肆ノ型!」

 

黒紫の雷撃が一直線に走る。

 

「遠雷ッ!!」

 

バリィィィィンッ!!

 

轟音。

 

迫っていた壁、襖、柱がまとめて粉砕される。

 

木片が雨のように降り注ぎ、獪岳はその隙間を縫うようにさらに下へと落下していった。

 

「ハッ!」

 

砕けた壁の向こうへ飛び込む。

 

だが、そこに待ち構えていたものを見て、獪岳の口元が歪んだ。

 

「……鬼か」

 

暗闇。

 

無数の赤い瞳が浮かんでいる。

 

「ギャアアアッ!」

 

「人間だァ!」

 

「柱だ!」

 

低級の鬼たちが一斉に飛び掛かってきた。

 

「邪魔だァッ!!」

 

獪岳の身体から黒雷が爆発する。

 

「雷の呼吸――壱ノ型!」

 

一歩。

 

それだけで景色が変わった。

 

「轟雷閃ッ!!」

 

ズバババババッ!!

 

神速の斬撃が闇を切り裂く。

 

鬼たちの頸が次々と宙へ舞い、断面から黒い血が噴き上がった。

 

「ギャアアアアッ!!」

 

「速すぎる――!」

 

「ば、化け物……!」

 

「テメェらに化け物呼ばわりされる筋合いはねえッ!」

 

獪岳が着地する。

 

しかし、消滅する鬼たちを確認する暇すらなかった。

 

――ビィィィン。

 

「……またかよ」

 

琵琶。

 

その音と同時に、獪岳の立っていた床が消滅した。

 

「チィッ!!」

 

また落ちる。

 

今度はさらに深く。

 

視界の先に、無数の階層が見えた。

 

一つ。

 

二つ。

 

十。

 

いや、そんなものではない。

 

どこまでも続く異形の城。

 

「この野郎……!」

 

獪岳は刀を握り直す。

 

「隠れてチマチマ弄りやがって……!」

 

さらに落下。

 

「鳴女ェェェッ!!」

 

獪岳の怒号が無限城に響き渡る。

 

「俺をオモチャにしたつもりなら、大間違いだッ!!」

 

バチバチバチッ!!

 

黒紫の雷が全身を覆う。

 

「テメェがどれだけこの城を弄ろうが――!」

 

獪岳は落下しながら、眼下の暗闇を睨みつけた。

 

「俺は必ず生き残って、無惨のところまで辿り着いてやる!!」

 

その直後。

 

――ビィィィン。

 

また琵琶が鳴った。

 

「なにッ!?」

 

今度は獪岳の正面に、巨大な扉が出現する。

 

扉が開く。

 

その向こうから、凄まじい殺気が吹き付けてきた。

 

獪岳の目が細くなる。

 

「……この気配は」

 

鬼。

 

しかも、今まで斬ってきた雑魚とは比較にならない。

 

上弦。

 

あるいは、それに匹敵するほどの異質な存在。

 

「ハッ……!」

 

獪岳は笑った。

 

「やっと歯応えのありそうな奴が出てきやがったか」

 

黒銀の日輪刀を構える。

 

落下する身体。

 

迫り来る扉。

 

その向こうに潜む未知の敵。

 

「上等だ……!」

 

黒紫の雷が無限城を照らした。

 

「誰だろうが、俺の前に立つ奴は――全部叩き潰すッ!!」

 

獪岳の姿が、漆黒の雷光へと変わる。

 

そして鳴柱は、自ら望むように無限城のさらに深い闇へと飛び込んでいった。

 

その先に待つものが、鬼殺隊の命運を左右する戦いになるとも知らずに――。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。