『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第五話 雷兄弟弟子、再会

無限城――。

 

上下左右すら定まらない異形の空間。その一角で、黒紫の雷光が幾度となく炸裂していた。

 

バリィィィッ!!

 

獪岳の黒銀の日輪刀が閃く。

 

「雷の呼吸・肆ノ型――遠雷ッ!」

 

放たれた斬撃が、眼前の鬼を真横から薙ぎ払う。

 

しかし――。

 

ガキィィンッ!!

 

「遅ぇんだよ、アニキ!」

 

鬼の腕に生えた異形の刃が黒雷を弾き飛ばした。

 

かつて同じ雷の呼吸を学んだ兄弟弟子。

 

だが今、獪岳の目の前にいるのは、人間だった頃の面影を僅かに残しながらも、完全に鬼へと堕ちた存在だった。

 

「チッ……!」

 

獪岳は舌打ちしながら距離を取る。

 

その瞬間だった。

 

「アニキィィィッ!」

 

「……ッ!?」

 

聞き覚えのある声。

 

獪岳が振り返る。

 

崩れた襖の向こうから、黄金の雷光を纏った少年が駆け込んできた。

 

「善逸……!?」

 

我妻善逸。

 

息を切らし、額から血を流しながらも、その手にはしっかりと日輪刀が握られている。

 

「何でお前がここにいやがるッ!」

 

獪岳の顔が一気に険しくなる。

 

「帰れ! ここはてめぇが来る場所じゃねえ!」

 

「嫌だ!」

 

「……あぁ!?」

 

「俺、もう逃げないって決めたんだ!」

 

善逸は震える足を踏ん張った。

 

かつてなら、恐怖に耐え切れず泣き叫び、気絶していたかもしれない。

 

だが今は違う。

 

柱稽古で何度も叩きのめされ、それでも立ち上がってきた。

 

そして何より――。

 

あの夕暮れの日。

 

獪岳から受け取った言葉を、胸の奥に刻み込んでいた。

 

『お前は壱ノ型しか使えねえ。だが、その一つを極限まで磨き上げてきただろうが』

 

善逸は刀を握る手に力を込める。

 

「俺は壱ノ型しか使えない……!」

 

「だったら何だ!」

 

「それでも……俺は雷の呼吸の使い手だ!」

 

バチィッ!!

 

黄金の雷が爆ぜる。

 

獪岳の黒紫の雷とは異なる、純粋で鋭い雷光だった。

 

その光景を見た鬼が、口元を歪める。

 

「へぇ……」

 

幾本もの刀を纏った異形の鬼が、楽しそうに笑う。

 

「随分と仲良しじゃねえか。兄弟弟子が二人揃って来てくれるとは、俺もついてるなぁ」

 

「……誰が兄弟だ」

 

獪岳が吐き捨てる。

 

「俺とこいつを一緒にするんじゃねえ」

 

「ひでぇなぁ、アニキ」

 

「黙れ!」

 

「俺は昔からアニキに認めてもらいたかったんだぜ?」

 

「……ッ!」

 

一瞬、獪岳の表情が歪む。

 

だが、その隙を見逃す鬼ではない。

 

「死ねぇッ!!」

 

ズガァァァンッ!!

 

凄まじい黒紫の雷撃が放たれた。

 

「善逸ッ!!」

 

獪岳が瞬時に割り込む。

 

黒銀の日輪刀を横薙ぎに振り抜き、雷撃を正面から受け止めた。

 

バリバリバリバリッ!!

 

「ぐっ……!」

 

足元の床板が砕ける。

 

獪岳の身体が後方へ押し込まれる。

 

「アニキ!」

 

「来るなッ!」

 

獪岳が怒鳴る。

 

「てめぇは後ろにいろ! こいつは俺が――」

 

「嫌だ!」

 

善逸が叫んだ。

 

「俺も戦う!」

 

「……!」

 

「アニキ一人に全部背負わせない!」

 

その言葉に、獪岳は目を見開いた。

 

善逸は怖がっている。

 

手も震えている。

 

呼吸も乱れている。

 

それでも――逃げていない。

 

「俺にできるのは、壱ノ型だけだ」

 

善逸が腰を落とす。

 

「でも……壱ノ型だけなら、誰にも負けない!」

 

黄金の雷が一点へと収束する。

 

獪岳もまた、黒紫の雷気を全身へ巡らせる。

 

「……ハッ」

 

獪岳の口元に、不敵な笑みが浮かんだ。

 

「言うようになったじゃねえか、善逸」

 

「アニキ……」

 

「だったら証明してみろ」

 

獪岳が刀を構える。

 

「俺の背中を追ってきたってんなら――その雷を俺に見せてみろ!」

 

「うん!」

 

善逸の目に強い光が宿る。

 

「行くよ、アニキ!」

 

「来いッ!」

 

次の瞬間。

 

ドォンッ!!

 

黒紫の雷と黄金の雷が、同時に大地を蹴った。

 

「雷の呼吸――!」

 

「雷の呼吸――!」

 

兄弟弟子。

 

かつては互いを認められず、背中を向け合っていた二人。

 

しかし今、二人は初めて同じ敵へと刀を向けていた。

 

「壱ノ型――霹靂一閃!!」

 

「雷の呼吸・伍ノ型――熱界雷ッ!!」

 

黄金と黒紫。

 

二色の雷光が交差し、無限城の闇を一瞬だけ昼間のように照らし出す。

 

「なにぃッ!?」

 

鬼の顔から初めて余裕が消えた。

 

二人の斬撃が左右から同時に迫る。

 

ガギィィィンッ!!

 

激突。

 

鬼の巨体が大きく吹き飛ばされ、壁を何枚も突き破っていく。

 

「やった……!」

 

善逸が息を呑む。

 

獪岳は刀を下ろさない。

 

「まだだ」

 

「え……?」

 

「上弦を舐めるな、善逸」

 

瓦礫の向こうから、ゆっくりと鬼が立ち上がる。

 

その肉体は瞬く間に再生していく。

 

「だが……面白ぇ」

 

鬼は笑った。

 

「兄弟弟子二人で俺に挑むか。だったら――まとめて叩き潰してやるよ!」

 

再び、禍々しい雷気が無限城を震わせる。

 

獪岳と善逸は並んで刀を構えた。

 

「善逸」

 

「うん!」

 

「俺から離れるな」

 

「分かった!」

 

「足を引っ張ったら――」

 

「分かってるよ!」

 

二人の雷が、再び轟く。

 

「俺たちの雷を――」

 

「舐めるなぁぁぁッ!!」

 

黄金と黒紫の雷光が弾ける。

 

宿命に翻弄され続けた兄弟弟子たちの戦いは、ここから本当の決着へと向かっていくのだった。

 

 

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