『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第九話 霹靂と火雷神

上弦の陸との死闘を終えた一室には、焼け焦げた木材と砕けた瓦礫だけが残されていた。

 

先ほどまで荒れ狂っていた黒紫と黄金の雷光も消え、無限城には束の間の静寂が戻っている。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

善逸は膝をつき、肩を大きく上下させていた。

 

火雷神。

 

己の限界を遥かに超えた一撃を放った代償は大きい。全身の筋肉が悲鳴を上げ、両脚は痺れてまともに力が入らない。

 

その身体を、獪岳が片腕で支えていた。

 

「……やりすぎたな、クソガキ」

 

「は、はは……。アニキも人のこと言えないじゃん……」

 

「うるせえ」

 

獪岳自身も満身創痍だった。

 

肩から血を流し、脇腹の傷からも赤い雫が落ちている。それでも善逸を支える腕には、まだ力が残っていた。

 

「立てるか?」

 

「……ちょっと休めば」

 

「なら休むな」

 

「ええっ!?」

 

「無惨のところまで行くんだろうが」

 

獪岳が善逸を引き起こす。

 

善逸は苦笑しながら立ち上がった。

 

「……うん。行こう、アニキ」

 

二人が背中を預け合った、その瞬間――。

 

ミシ……。

 

無限城が震えた。

 

「……?」

 

ミシミシミシミシ……!!

 

次々と壁が歪み始める。

 

天井が上下反転し、廊下がまるで蛇のように捻じ曲がっていく。

 

「チッ……」

 

獪岳が舌打ちする。

 

「鳴女の野郎か」

 

遠くから、琵琶の音が響いた。

 

ビィィィン――。

 

その音と同時に、二人の立っている床が傾く。

 

「うわっ!」

 

善逸の身体が滑る。

 

「善逸!」

 

獪岳が手を伸ばす。

 

だが、無限城の空間そのものが二人を引き離そうとしていた。

 

床が裂ける。

 

壁が回転する。

 

階層そのものが入れ替わっていく。

 

「アニキ!」

 

善逸が獪岳の袖を掴む。

 

「離れたらダメだ!」

 

「分かってる!」

 

獪岳は善逸の手首を強く握り返した。

 

「こんなところで兄弟弟子が別れるなんざ、冗談じゃねえ!」

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

頭上から巨大な梁が落下する。

 

「アニキ、上!」

 

「チッ!」

 

獪岳が刀を抜く。

 

だが――。

 

身体が動かない。

 

上弦との戦いで消耗しすぎていた。

 

「くそっ……!」

 

巨大な瓦礫が目前まで迫る。

 

「アニキ!」

 

善逸が前へ出る。

 

「おい、待て!」

 

善逸は腰を落とした。

 

火雷神を放った直後。

 

本来なら、もう戦える状態ではない。

 

それでも――。

 

善逸の瞳に黄金の光が灯った。

 

「……まだ動ける」

 

「馬鹿野郎! 火雷神の反動で身体が限界だろうが!」

 

「分かってるよ」

 

善逸が笑う。

 

「でも、アニキが一緒なら……もう一回だけならやれる」

 

「……!」

 

獪岳は一瞬だけ黙った。

 

そして――。

 

口元を吊り上げる。

 

「ハッ……」

 

黒紫の雷が獪岳の身体を包む。

 

「言うようになったじゃねえか、善逸」

 

「へへ……」

 

「なら、見せてみろ」

 

獪岳が黒銀の日輪刀を構える。

 

「お前が極めた壱ノ型をよ」

 

善逸が頷く。

 

「うん!」

 

二人が同時に腰を落とした。

 

「雷の呼吸――」

 

バリバリバリッ!!

 

黒紫の雷が獪岳の足元を走る。

 

「霹靂!」

 

ドンッ!!

 

獪岳の姿が消える。

 

同時に――。

 

「火雷神!」

 

轟ォォォォォン!!

 

善逸の身体も黄金の閃光となって駆け出した。

 

黒紫と黄金。

 

二つの雷光が交差する。

 

落下してくる瓦礫を次々と切り裂き、崩れ落ちる壁を突き破る。

 

ガガガガガッ!!

 

そして二人は、互いの雷を一切邪魔することなく、同じ方向へ駆け抜けていく。

 

「もっと速く!」

 

獪岳が叫ぶ。

 

「分かってる!」

 

善逸が応える。

 

霹靂が道を切り開く。

 

火雷神がその先を穿つ。

 

一人なら突破できなかった無限城の変幻自在な空間を、二人の雷が強引にこじ開けていく。

 

「無惨はどこだァァッ!!」

 

獪岳の怒号が響き渡る。

 

「俺たちが行くぞォォッ!!」

 

善逸も叫ぶ。

 

「待ってろ、無惨ッ!!」

 

ズガァァァンッ!!

 

最後の一閃。

 

二人の雷撃が巨大な壁を同時に斬り裂いた。

 

その先に広がっていたのは――。

 

これまでとは明らかに異なる、異様な気配に満ちた巨大な空間。

 

肌を刺すような鬼気。

 

善逸の耳が、その奥から響く鼓動を捉える。

 

ドクン。

 

ドクン。

 

まるで城そのものが生きているかのような、巨大な脈動。

 

「……アニキ」

 

「ああ」

 

獪岳が刀を握り直す。

 

「近いな」

 

「うん」

 

善逸も日輪刀を構える。

 

二人の周囲に、再び雷が集まり始める。

 

「行くぞ、善逸」

 

「うん!」

 

黒紫の雷と黄金の雷。

 

二つの光が、無限城の最深部へ向かって駆け抜けていく。

 

その先に待つのは、千年以上にわたり鬼殺隊を苦しめ続けた鬼の始祖――鬼舞辻無惨。

 

兄弟弟子は今、最後の戦場へと辿り着こうとしていた。

 

 

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