『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第十七話 上弦集結、崩壊する無限城

 ――ビィィィン……。

 

 最後の琵琶の音が、無限城の奥深くへと響き渡った。

 

 そして。

 

 ピシ……。

 

 ピシピシ……。

 

 無限城そのものに、巨大な亀裂が走った。

 

「……何だ?」

 

 炭治郎が顔を上げる。

 

 次の瞬間――。

 

 ドゴォォォォォンッ!!

 

 天地がひっくり返った。

 

 床だった場所が壁となり、壁だった場所が天井になる。

 

 無数の廊下が折り重なり、襖や柱、階段がまるで巨大な積み木のように崩れ落ちていく。

 

「うわああああっ!!」

 

「掴まれ!! 足場が消えるぞ!!」

 

 隊士たちが必死に柱へしがみつく。

 

 炭治郎も日輪刀を床へ突き立て、身体を固定した。

 

「義勇さん!」

 

「炭治郎、動くな!」

 

 すぐ隣では義勇が瓦礫を斬り飛ばし、実弥は落下してきた巨大な梁を蹴り砕いている。

 

「チッ……鳴女が死んだせいで、城そのものが保たなくなってやがる!」

 

 実弥が舌打ちする。

 

 その直後だった。

 

「――全員、落ち着け」

 

 低く響いた声。

 

 巨大な鉄球を振り回しながら、悲鳴嶼行冥が瓦礫を次々と破壊していく。

 

「この崩壊には規則性がある。慌てて動けば、かえって命を失うぞ」

 

「さすが悲鳴嶼さん……!」

 

 炭治郎が頷く。

 

 だが――。

 

 その瞬間。

 

 ゾクッ。

 

 全員の背筋を、得体の知れない悪寒が走った。

 

 空気が変わった。

 

 先ほどまで無限城を満たしていた鬼たちの気配とは、明らかに次元が違う。

 

 圧倒的。

 

 巨大。

 

 そして――禍々しい。

 

「……なんだ、この気配……」

 

 善逸が震える声を漏らした。

 

 その顔から血の気が引いていく。

 

「聞こえる……」

 

「善逸?」

 

「心臓の音が……一つ……」

 

 善逸は耳を押さえながら、必死に呼吸を整える。

 

「なのに……この城全部が、その心臓みたいに感じる……!」

 

 獪岳の表情からも、余裕が消えていた。

 

 黒銀の日輪刀を握り直す。

 

「……クソが」

 

 バチ……バチバチッ!!

 

 黒紫の雷が刀身を走った。

 

「この気配……間違いねえ」

 

 獪岳が暗闇を睨みつける。

 

「鬼舞辻無惨だ」

 

 その名が響いた瞬間。

 

 ズズズズズ……。

 

 崩壊していた無限城の中央部が、巨大な奈落へと変貌した。

 

 そして――。

 

 コツ。

 

 コツ。

 

 コツ。

 

 瓦礫を踏みしめる足音が響く。

 

 暗闇の向こうから、一人の男が歩いてくる。

 

 黒い髪。

 

 青白い肌。

 

 異様なまでに赤い瞳。

 

 人間の姿をしている。

 

 しかし、その存在から放たれる殺気は、人間のものではなかった。

 

「……ようやく、姿を現したか」

 

 実弥が刀を構える。

 

 男――鬼舞辻無惨は、鬼殺隊を一瞥した。

 

 その表情には怒りすらない。

 

 ただ、冷たい不快感だけが浮かんでいた。

 

「私の城を、よくもここまで壊してくれたものだ」

 

 無惨が静かに口を開く。

 

「鳴女まで殺したか」

 

 その声には、僅かな苛立ちが滲んでいた。

 

 だが、その背後には――。

 

 さらに異様な気配があった。

 

「……あれは……」

 

 炭治郎の鼻が反応する。

 

 無惨の後方。

 

 崩れ落ちた無限城の奥から、複数の強大な鬼の気配が姿を現していく。

 

「まだ……鬼がいる……!」

 

 善逸が息を呑む。

 

「しかも……全部、とんでもなく強い……!」

 

 無惨の周囲に控える、選び抜かれた鬼たち。

 

 その一体一体が、並の鬼とは比較にならないほどの殺気を放っている。

 

 鬼殺隊士たちの間に、動揺が広がった。

 

「嘘だろ……」

 

「まだ、こんな化け物が……」

 

「俺たちに勝てるのか……?」

 

 恐怖に膝を震わせる隊士。

 

 その前に、獪岳が一歩進み出た。

 

「ビビってんじゃねえ」

 

 黒雷が轟く。

 

「ここまで来たんだろうが」

 

 獪岳は振り返らない。

 

「今さら逃げ道なんざ、どこにもねえ」

 

 善逸もまた、その隣へ並んだ。

 

「……うん」

 

 黄金の雷が足元を走る。

 

「アニキ。俺も戦う」

 

「足手まといになるんじゃねえぞ」

 

「ならない」

 

 善逸は真っ直ぐ前を見据えた。

 

「俺はもう、逃げないから」

 

 獪岳が一瞬だけ善逸を見る。

 

 そして鼻で笑った。

 

「……上等だ」

 

 その二人の姿を見て、炭治郎も刀を握り締めた。

 

「俺たちも行きましょう、義勇さん!」

 

「ああ」

 

 義勇が静かに頷く。

 

 実弥は刀を肩に担ぎ、不敵に笑った。

 

「上等じゃねえか……。ようやく親玉のお出ましってわけだ」

 

 悲鳴嶼は数珠を握り締める。

 

「南無阿弥陀仏……」

 

 それぞれの柱が構える。

 

 そして――。

 

 無惨が赤い瞳を細めた。

 

「愚かな人間どもよ」

 

 ズン……。

 

 無惨の殺気が膨れ上がった。

 

 空気が震える。

 

 大地が軋む。

 

「今宵、この場にいる者を一人残らず殺す」

 

 その言葉に、隊士たちは息を呑んだ。

 

「逃げることも許さない」

 

 無惨が一歩踏み出す。

 

「夜明けまで、あと僅か」

 

 炭治郎の瞳が鋭くなる。

 

 獪岳の黒雷が弾ける。

 

 善逸の黄金の雷が唸る。

 

 義勇、実弥、悲鳴嶼――。

 

 全ての柱が、刀を構えた。

 

「だったら――」

 

 炭治郎が叫ぶ。

 

「夜明けまで戦い抜けばいい!!」

 

「そういうこったァ!!」

 

 実弥が吠える。

 

「来やがれ、鬼舞辻無惨ッ!!」

 

 轟ッ!!

 

 無限城が最後の崩壊を始める。

 

 柱と鬼殺隊。

 

 そして鬼の始祖と、その配下。

 

 千年にわたる因縁が、ついに一つの場所へ集結した。

 

 もはや退路はない。

 

 守る者の命と、奪う者の命。

 

 そして――夜明け。

 

 すべてを懸けた最終決戦が、ここに始まった。

 

 

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