『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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最終決戦編 第一話 夜明けを拒む鬼舞辻無惨

――ドォォォォォンッ!!

 

 崩壊した無限城の瓦礫が、次々と地上へと叩き落とされていく。

 

 巨大な建造物が崩れ去った衝撃で土煙が舞い上がり、その中から鬼殺隊の生存者たちが次々と地上へ投げ出された。

 

「ぐっ……!」

 

 炭治郎が地面を転がり、すぐさま片膝をついて立ち上がる。

 

 身体中が傷だらけだった。

 

 腕は痺れ、足には力が入らない。

 

 それでも、彼は刀を手放さなかった。

 

「……地上に……出られた……!」

 

 炭治郎が顔を上げる。

 

 そこに広がっていたのは、久しく見ることのなかった広大な夜空だった。

 

 漆黒の闇。

 

 その向こう。

 

 東の地平線が、ほんの僅かに白み始めている。

 

「夜明けが……近い」

 

 誰かが呟いた。

 

 その言葉に、周囲の隊士たちの表情が僅かに緩む。

 

 ここまで来た。

 

 無限城を生きて抜けた。

 

 あと少し。

 

 あと少しだけ耐えれば――太陽が昇る。

 

「……違う」

 

 しかし。

 

 水柱・冨岡義勇が低く呟いた。

 

「まだ終わっていない」

 

 その瞬間だった。

 

 ――ズズズズズ……。

 

 地面が震えた。

 

「……!」

 

 瓦礫の山が、不自然に盛り上がる。

 

 土煙の向こう。

 

 何か巨大なものが蠢いている。

 

 次の瞬間――。

 

 ドォォォォォンッ!!

 

 瓦礫が爆発するように吹き飛んだ。

 

「全員、構えろォッ!!」

 

 実弥の怒号が響く。

 

 隊士たちが一斉に刀を抜いた。

 

 そして。

 

 崩れ落ちた無限城の残骸から、巨大な異形がゆっくりと姿を現した。

 

 それはもはや、人間の姿ではなかった。

 

 異常なまでに膨れ上がった肉体。

 

 全身から生える無数の牙。

 

 幾本もの肉の鞭が蛇のように蠢き、周囲の地面を抉っている。

 

 赤い瞳が、夜空を睨みつけていた。

 

「……逃がすか」

 

 低い声が響く。

 

「どいつも……こいつも……」

 

 鬼舞辻無惨。

 

 千年以上もの間、鬼を生み出し続けてきた鬼の始祖。

 

 その姿を見た瞬間、隊士たちの間に緊張が走った。

 

「私から……太陽を奪う気かァァァッ!!」

 

 無惨の絶叫が夜空を震わせる。

 

 ――ズドォォォォンッ!!

 

 大地が爆発した。

 

 無数の肉の鞭が一斉に放たれる。

 

「来るぞッ!!」

 

 義勇が刀を構える。

 

 実弥が風を纏わせる。

 

 悲鳴嶼が巨大な鉄球を握り締める。

 

 そして――。

 

 バリィィィィッ!!

 

 黒紫の雷が大地を走った。

 

「上等だぜ……!」

 

 獪岳だった。

 

 全身傷だらけ。

 

 額から血を流し、呼吸も荒い。

 

 それでも、その瞳には一切の怯えがない。

 

 黒銀の日輪刀を握り締め、無惨を真っ直ぐ睨みつける。

 

「ここまで来たんだ。テメェを朝まで逃がす気なんざ、最初からねえんだよ!」

 

 その隣。

 

「アニキ!」

 

 善逸もまた刀を構えた。

 

 黄金の雷光が足元で弾ける。

 

「俺たちで、時間を稼ごう!」

 

「時間を稼ぐんじゃねえ」

 

 獪岳が口元を吊り上げる。

 

「時間を奪うんだ」

 

「……!」

 

「無惨から、夜を奪う」

 

 善逸の表情が変わった。

 

「……うん!」

 

 バリッ!

 

 黄金と黒紫。

 

 二色の雷が夜の大地を照らす。

 

 その姿を見た炭治郎も刀を握り直した。

 

「そうだ……!」

 

 炭治郎の瞳に強い光が宿る。

 

「俺たちは、もう逃げない!」

 

「当然だァ!」

 

 実弥が叫ぶ。

 

「ここまで仲間を殺されて、今さら引けるかよォッ!!」

 

 悲鳴嶼が数珠を鳴らした。

 

「南無阿弥陀仏……」

 

 その声には、静かな怒りと決意が込められている。

 

「今宵こそ、全てを終わらせる」

 

 義勇もまた、静かに刀を構えた。

 

「夜明けまで耐える」

 

 誰もが理解していた。

 

 無惨は圧倒的に強い。

 

 身体能力も、攻撃速度も、再生能力も、人間の常識を遥かに超えている。

 

 しかも、こちらはすでに満身創痍。

 

 まともに戦えば勝ち目などない。

 

 だからこそ――。

 

「あと少しだ……!」

 

 炭治郎が東の空を見る。

 

 白みは、先ほどよりも僅かに濃くなっている。

 

「太陽が昇れば……!」

 

「そうだ」

 

 義勇が答える。

 

「それまで、全員で繋ぐ」

 

 その言葉を聞いた瞬間。

 

 無惨が笑った。

 

「愚かな……」

 

 赤い瞳が細められる。

 

「太陽が昇るまで、私を止めるつもりか?」

 

 無惨の肉体がさらに膨張する。

 

 無数の口が開いた。

 

「ならば――」

 

 ドォォォォォンッ!!

 

 大地が大きく陥没する。

 

「貴様ら全員を殺してから、太陽から逃げればいいだけのことだァッ!!」

 

 瞬間。

 

 無惨の全身から、無数の触手が爆発的な速度で放たれた。

 

「散れッ!!」

 

 実弥の怒号。

 

 鬼殺隊が一斉に散開する。

 

 獪岳が黒雷を爆発させた。

 

「雷の呼吸――」

 

 善逸も同時に踏み込む。

 

「行くよ、アニキ!」

 

「合わせろ、善逸!」

 

「うん!」

 

 ――バリィィィィンッ!!

 

 黒紫と黄金の雷が同時に弾けた。

 

 炭治郎が駆ける。

 

 義勇が水のように滑る。

 

 実弥が風を巻き起こす。

 

 悲鳴嶼の鉄球が唸りを上げる。

 

 満身創痍の柱たちと鬼殺隊士たちが、最後の敵へと立ち向かう。

 

 夜明けまで――あと僅か。

 

 だが、その僅かな時間こそが、人類と鬼の運命を分ける。

 

「来い……鬼舞辻無惨!!」

 

 炭治郎が叫ぶ。

 

「俺たちが、ここでお前を止める!!」

 

 無惨の咆哮が夜空を揺らす。

 

 そして――。

 

 最終決戦の火蓋が、地上で本格的に切って落とされた。

 

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