『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第四話 炎柱・煉 獄杏寿郎、参戦

東の空が、燃えていた。

 

漆黒だった夜空の端から、ゆっくりと朝の光が広がっていく。

 

長い夜が終わろうとしていた。

 

だが、その夜明けを誰よりも憎む存在が、最後の悪あがきを始めていた。

 

「ぐ……おおおおおおおおおッ!!」

 

地面を這う黒い肉塊が、激しく蠢く。

 

先ほどまで鬼舞辻無惨を覆っていた巨大な肉体は、竈門炭治郎が繋ぎ合わせた日ノ呼吸・拾参ノ型によって大きく切り裂かれ、さらに夜明けの太陽によって焼かれていた。

 

普通の鬼なら、とっくに灰となって消えている。

 

それでも無惨は死ななかった。

 

いや。

 

死ぬことを拒絶していた。

 

「私は……まだ死なん……!」

 

焼け落ちた肉が蠢き、無数の触手へと変わっていく。

 

「私は千年以上、この世界に君臨してきた……。人間ごときに……太陽ごときに……この私が滅ぼされてたまるものかァッ!!」

 

その咆哮と同時に、無惨の肉塊から無数の腕が伸びた。

 

炭治郎は刀を構え直そうとした。

 

しかし――。

 

「ぐっ……!」

 

膝が崩れた。

 

もう、身体が言うことを聞かなかった。

 

痣が浮かび上がった身体は限界を遥かに超え、呼吸をするだけでも胸が焼けるように痛む。

 

「炭治郎!」

 

義勇が駆け寄る。

 

だが、義勇自身もまた満身創痍だった。

 

実弥も行冥も、獪岳も善逸も同じだ。

 

誰もが血を流し、誰もが立っていることさえ奇跡に近い。

 

それでも彼らは刀を下ろさなかった。

 

「まだ……終わってない……!」

 

炭治郎が震える手で刀を握り直す。

 

「みんなが繋いでくれたんだ……。ここで、諦めるわけには……!」

 

その時だった。

 

「――よもや、よもやだ!」

 

戦場に、朗々とした声が響き渡った。

 

「これほどまでに素晴らしい戦いを繰り広げておきながら、最後の最後で膝をつくとは!」

 

炭治郎の瞳が大きく見開かれる。

 

「……え?」

 

聞き間違えるはずがない。

 

あの声を。

 

あの力強く、真っ直ぐな声を。

 

「竈門少年!」

 

次の瞬間。

 

ドォォォォンッ!!

 

爆炎が大地を駆け抜けた。

 

無惨と炭治郎たちの間に、巨大な炎の壁が立ち上がる。

 

迫っていた無惨の触手が、その炎に触れた瞬間――。

 

ジュウウウウッ!!

 

肉が焼け、黒煙を噴き上げながら弾き飛ばされた。

 

そして炎の向こうから、一人の男が歩いてくる。

 

赤と黄色が入り混じった髪。

 

燃えるような瞳。

 

堂々たる体躯。

 

そして、翻る炎のような羽織。

 

「……煉 獄……さん……?」

 

炭治郎の声が震えた。

 

目の前に立っていたのは――。

 

かつて無限列車で命を燃やし、仲間たちを守り抜いた男。

 

炎柱。

 

煉 獄杏寿郎。

 

「久しいな、竈門少年!」

 

杏寿郎は振り返り、いつもの豪快な笑顔を浮かべた。

 

「よくぞここまで戦い抜いた!」

 

「煉 獄……さん……!」

 

炭治郎の瞳から、堪えていた涙が一気に溢れ出した。

 

「どうして……どうして、ここに……!」

 

「理由など後でいい!」

 

杏寿郎は胸を張った。

 

「今は、目の前の鬼を倒すことだけを考えよう!」

 

「……っ!」

 

炭治郎は涙を拭った。

 

幻ではない。

 

夢でもない。

 

確かにそこにいる。

 

死を越えて、再び戦場へ戻ってきた炎柱。

 

その姿を見た実弥が、驚愕に目を見開く。

 

「おいおい……冗談じゃねぇぞ」

 

行冥も数珠を握り締める。

 

「南無阿弥陀仏……。まさか、このようなことが……」

 

義勇はただ静かに杏寿郎を見つめていた。

 

そして、獪岳は鼻で笑った。

 

「ハッ……最後の最後で、とんでもねぇ助っ人が来やがったな」

 

その隣で善逸は涙を浮かべながら叫ぶ。

 

「煉 獄さん……!」

 

杏寿郎は全員を見渡した。

 

「皆、よく戦った!」

 

その一言に、不思議なほど力が戻ってくる。

 

「ここまで繋いできたものを、決して無駄にはしない!」

 

杏寿郎が日輪刀を抜いた。

 

刀身が朝日に照らされ、まるで本物の炎そのもののように輝く。

 

対する無惨は、怒りに顔を歪めた。

 

「貴様……!」

 

杏寿郎の姿を見た無惨の瞳に、明確な恐怖が宿った。

 

「あり得ぬ……! 貴様は死んだはずだ!」

 

「そうだ!」

 

杏寿郎は即答した。

 

「俺は一度、命を終えた!」

 

そして一歩、踏み出す。

 

「だが、竈門少年たちがここまで繋いだ想いがある!」

 

さらに一歩。

 

「仲間たちが命を懸けて守った未来がある!」

 

さらに一歩。

 

炎が杏寿郎の周囲を渦巻き始める。

 

「ならば俺がここに立つ理由は、一つしかない!」

 

杏寿郎は刀を大きく構えた。

 

「鬼舞辻無惨!」

 

無惨が無数の触手を広げる。

 

「貴様の夜は――ここで終わりだ!!」

 

「黙れェェェェェッ!!」

 

無惨が咆哮する。

 

数十本、数百本もの肉の刃が一斉に杏寿郎へ襲いかかった。

 

しかし。

 

杏寿郎は退かなかった。

 

「炎の呼吸――!」

 

地面を踏み砕く。

 

ドンッ!!

 

「弐ノ型――昇り炎天!!」

 

炎を纏った斬撃が、迫り来る触手を次々と斬り落とす。

 

続けて身体を捻る。

 

「肆ノ型――盛炎のうねり!!」

 

巨大な炎の渦が巻き起こり、無惨の肉塊を大きく吹き飛ばした。

 

「ぐおおおおおおッ!!」

 

無惨の身体が焼ける。

 

それでも再生しようとする。

 

だが、その再生速度は明らかに落ちていた。

 

太陽が昇っている。

 

そして、炭治郎の斬撃によって無惨の身体には致命的な傷が刻まれている。

 

そこへ杏寿郎の炎が重なった。

 

「まだだ!」

 

杏寿郎が叫ぶ。

 

「竈門少年!」

 

「はい!」

 

炭治郎が立ち上がる。

 

「俺と呼吸を合わせろ!」

 

「分かりました!」

 

その瞬間、杏寿郎の炎と炭治郎の日の呼吸が重なった。

 

炎と太陽。

 

二つの熱が無惨を包囲する。

 

「馬鹿な……!」

 

無惨が後退する。

 

初めてだった。

 

千年以上生きてきた鬼舞辻無惨が、明確に後ずさった。

 

「私が……人間ごときに……!」

 

杏寿郎の瞳が燃える。

 

「人間だからこそだ!」

 

刀を振り上げる。

 

「炎の呼吸――奥義!!」

 

全身の力を一点へ。

 

大地を踏み抜き、炎が一直線に駆け抜ける。

 

「煉 獄!!」

 

轟ッ!!

 

巨大な炎の奔流が、夜明けの太陽と共に無惨へ突進した。

 

無惨の触手が迎え撃つ。

 

しかし、炎は止まらない。

 

触手を焼き、肉壁を切り裂き、再生する端から炭へと変えていく。

 

「ぐああああああああッ!!」

 

無惨の絶叫が、朝焼けの空に響き渡った。

 

炭治郎はその光景を見つめながら、刀を握り締める。

 

杏寿郎は振り返らない。

 

ただ、燃え盛る炎の向こうで叫んだ。

 

「竈門少年!」

 

「はい!」

 

「最後まで戦え!」

 

その言葉に、炭治郎は力強く頷いた。

 

「はい!」

 

東の空から、さらに強い光が差し込む。

 

夜が終わる。

 

鬼舞辻無惨が最も恐れた朝が、完全に始まろうとしていた。

 

炎柱・煉 獄杏寿郎の帰還。

 

それは鬼殺隊にとって、新たな希望の炎となった。

 

そして――。

 

鬼舞辻無惨を完全に滅ぼすための最後の攻撃が、今まさに始まろうとしていた。

 

 

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