『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第71話 新たなる派生型

山中に、乾いた斬撃音が響いていた。

 

ズバッ!!

 

「……違う」

 

獪岳は刀を振り抜いたまま、眉を寄せた。

 

目の前には、真っ二つになった巨木。

 

斬撃そのものは完璧だった。

 

だが――。

 

「まだ、足りない」

 

獪岳は刀を収める。

 

「雷の呼吸・改」

 

壱ノ型・極を完成させてから数日。

 

獪岳の鍛錬は、新たな段階へ入っていた。

 

既存の型を極める。

 

それだけではない。

 

型と型を繋ぎ、状況に応じて変化させる。

 

そして――。

 

「派生型を作る」

 

それが今の獪岳の課題だった。

 

「雷の呼吸は、速さが武器だ」

 

獪岳は自分の足を見る。

 

「なら、その速さを最大限に活かす技が必要になる」

 

壱ノ型・霹靂一閃。

 

それは直線的な高速抜刀。

 

ならば――。

 

「直線でなければならない理由はない」

 

獪岳は地面に木の枝で線を描いた。

 

一本の直線。

 

そして、その横に曲線を描く。

 

「鬼が真正面にいるとは限らない」

 

もう一本。

 

「敵が複数いるなら、一体を斬った後に次へ移動する必要がある」

 

さらに一本。

 

「だったら――」

 

獪岳は目を細めた。

 

「雷そのもののように、軌道を変える」

 

「ほう」

 

背後から声がした。

 

「随分と面白いことを考えておるな」

 

「爺さん」

 

慈悟郎が歩いてくる。

 

「今の話、聞いてたのか」

 

「最初からな」

 

「なら話は早い」

 

獪岳は地面に描いた線を指差した。

 

「俺は、雷の呼吸に新しい派生型を作る」

 

「派生型?」

 

「ああ」

 

「具体的には?」

 

獪岳は少し考えた。

 

「まだ形になってない」

 

「そうか」

 

「でも、方向性は見えてる」

 

獪岳は刀を抜いた。

 

「速さを殺さない」

 

一歩。

 

「止まらない」

 

二歩。

 

「相手の動きに合わせて軌道を変える」

 

三歩。

 

「そして――斬り続ける」

 

獪岳の姿が消えた。

 

「雷の呼吸――!」

 

轟ッ!!

 

「弐ノ型!」

 

斬撃が走る。

 

「稲魂!」

 

一閃。

 

二閃。

 

三閃。

 

獪岳は斬撃の勢いを殺さず、そのまま身体を回転させた。

 

「――っ!」

 

次の瞬間。

 

「参ノ型・聚蚊成雷!」

 

連続斬撃。

 

だが。

 

「くっ……!」

 

ガキィン!!

 

刀が地面に突き刺さった。

 

「……駄目だ」

 

獪岳は息を整える。

 

「今の動きじゃ、次の攻撃に繋がらない」

 

慈悟郎が頷いた。

 

「力を使い切っておる」

 

「ああ」

 

「ならば、力を使い切らぬことじゃ」

 

「……」

 

「雷は、一度落ちれば消える。じゃが、お前が求めておる雷は違うのじゃろう?」

 

獪岳の目が鋭くなる。

 

「……何度でも落ちる雷」

 

「うむ」

 

「一撃で終わらせるんじゃない」

 

刀を握り直す。

 

「一撃目を、二撃目のために使う」

 

「そうじゃ」

 

「二撃目を、三撃目のために使う」

 

「うむ」

 

「なら――」

 

獪岳の脳裏に、新しい動きが浮かんだ。

 

「初撃から次の斬撃へ、身体そのものを滑らせる」

 

「……!」

 

慈悟郎の目が見開かれる。

 

獪岳は構えた。

 

低く身体を沈める。

 

「雷の呼吸――」

 

呼吸を整える。

 

「派生型――」

 

足に力を集める。

 

「――迅雷・連牙!!」

 

ドンッ!!

 

獪岳が飛び出した。

 

最初の一閃。

 

ズバッ!!

 

その勢いを殺さず、身体を横へ滑らせる。

 

二閃。

 

ズバァッ!!

 

さらに反転。

 

三閃。

 

ズバッ!!

 

そして――。

 

四閃。

 

五閃。

 

斬撃が連続して走る。

 

まるで、一筋の雷が地面を跳ね回っているようだった。

 

「……!」

 

最後の一撃。

 

ズドンッ!!

 

巨大な岩が、五つに分断された。

 

静寂。

 

獪岳は刀を下ろした。

 

「……」

 

自分でも驚いていた。

 

「今の……」

 

慈悟郎が呟く。

 

「見事じゃ」

 

「まだ荒い」

 

「だが、確かに新しい技じゃ」

 

獪岳は自分の足を見る。

 

「一撃目の勢いを、そのまま二撃目へ繋げた」

 

「ああ」

 

「だから、速度が落ちない」

 

「うむ」

 

「そして相手の位置に合わせて軌道を変えられる」

 

慈悟郎は頷く。

 

「お前の言う、雷の呼吸・改。その一つの形になったようじゃな」

 

獪岳は刀を見つめた。

 

「……迅雷・連牙」

 

その名を呟く。

 

「悪くない」

 

「気に入ったか?」

 

「ああ」

 

獪岳は小さく笑った。

 

「俺の雷らしい」

 

その瞬間。

 

慈悟郎が表情を引き締める。

 

「じゃが、獪岳」

 

「何だ?」

 

「この技には、大きな弱点がある」

 

「……分かってる」

 

「ほう?」

 

「連撃に入ったら、止まりにくい」

 

慈悟郎が頷く。

 

「その通りじゃ」

 

「だから、相手が途中で反撃してきたら危険だ」

 

「うむ」

 

「もっと制御する必要がある」

 

獪岳は刀を収める。

 

「でも――」

 

拳を握る。

 

「可能性はある」

 

慈悟郎は笑った。

 

「その通りじゃ」

 

新たなる派生型。

 

それは、完成された技ではない。

 

まだ荒削りで、欠点も多い。

 

だが――。

 

獪岳にとって重要なのは、完成度だけではなかった。

 

自分の頭で考え。

 

自分の身体で試し。

 

自分の経験から、新しい技を生み出した。

 

それこそが――。

 

「雷の呼吸・改」

 

獪岳自身の剣だった。

 

「……もっと作る」

 

「まだあるのか?」

 

「ああ」

 

獪岳は空を見上げた。

 

「雷には、いろんな形がある」

 

「ほう」

 

「真っ直ぐ落ちる雷だけじゃない」

 

「うむ」

 

「遠くで鳴る雷。

 

地面を走る雷。

 

何度も連続して落ちる雷」

 

獪岳の目に、闘志が宿る。

 

「なら、全部俺の剣にする」

 

慈悟郎は嬉しそうに笑った。

 

「それでこそ、お前じゃ」

 

獪岳は刀を抜く。

 

「もう一度やる」

 

「休まんのか?」

 

「休んでる暇があるか」

 

構える。

 

「鳴柱になるんだ」

 

そして――。

 

「もっと強くならないとな」

 

再び、山中に雷鳴が響いた。

 

轟ッ!!

 

それは空から落ちた雷ではない。

 

新たなる技を生み出そうとする、一人の剣士の踏み込みだった。

 

壱ノ型・極。

 

そして、新たなる派生型――迅雷・連牙。

 

獪岳の雷は、一つずつ形を増やしていく。

 

やがてそれは――。

 

誰にも真似できない、唯一無二の雷へと変わっていくのだった。

 

 

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