『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第72話 迅雷・閃々

「――迅雷・連牙!」

 

轟ッ!!

 

獪岳の姿が山中から消えた。

 

一閃。

 

二閃。

 

三閃。

 

まるで雷が地面を跳ねるように、斬撃が連続して走っていく。

 

ズバッ!

 

ズバァッ!

 

ズドンッ!!

 

最後の一撃で、巨大な岩が砕け散った。

 

「……」

 

獪岳は刀を下ろした。

 

荒い呼吸。

 

額から流れる汗。

 

だが、その表情は険しい。

 

「まだだ」

 

「まだ何か足りぬか」

 

後方から慈悟郎が声をかける。

 

「ああ」

 

獪岳は即答した。

 

「迅雷・連牙は、確かに使える」

 

「うむ」

 

「複数の敵を相手にするなら、かなり有効だ」

 

「じゃが?」

 

「弱点がある」

 

獪岳は刀を見つめる。

 

「攻撃が続くほど、動きが大きくなる」

 

「そうじゃな」

 

「相手が強ければ強いほど、読まれる可能性が高くなる」

 

「うむ」

 

「それに――」

 

獪岳は拳を握った。

 

「一撃一撃の軌道を変えるために、どうしても身体を大きく動かす」

 

慈悟郎は頷いた。

 

「だから、次の技を考えた」

 

「もうか?」

 

「ああ」

 

獪岳の目が鋭くなる。

 

「迅雷・連牙は、雷が地面を走るような技だ」

 

「では次は?」

 

「閃きだ」

 

「……閃き?」

 

「ああ」

 

獪岳は空を指差した。

 

「雷が落ちる瞬間って、一瞬だけ光るだろ」

 

「うむ」

 

「なら、その一瞬を連続させる」

 

慈悟郎の目が細くなる。

 

「……面白い」

 

「連牙とは違う」

 

獪岳は刀を抜いた。

 

「連牙は、一つの動きを繋げる」

 

「そして?」

 

「こいつは、一つ一つを完全に独立させる」

 

一歩。

 

「踏み込む」

 

二歩。

 

「斬る」

 

三歩。

 

「離れる」

 

獪岳はそこで止まった。

 

「そして――また踏み込む」

 

慈悟郎は理解した。

 

「瞬間的な加速を、連続して行う」

 

「ああ」

 

「一度の突進ではなく――」

 

「何度も消える」

 

獪岳は構えた。

 

「やってみる」

 

「うむ」

 

周囲の空気が変わった。

 

獪岳は深く息を吸う。

 

「雷の呼吸――」

 

全身の力を抜く。

 

「派生型――」

 

足先へ力を集中。

 

「迅雷・閃々!」

 

ドンッ!!

 

消えた。

 

「……!」

 

慈悟郎の目が追う。

 

右。

 

左。

 

正面。

 

背後。

 

獪岳が一瞬ごとに現れては消える。

 

ズバッ!!

 

斬撃。

 

消える。

 

ズバッ!!

 

斬撃。

 

消える。

 

ズバッ!!

 

また斬撃。

 

一撃一撃は短い。

 

だが、その全てが凄まじい速度で繰り出されている。

 

「……速い」

 

慈悟郎が思わず呟く。

 

獪岳は止まらない。

 

「――ッ!」

 

四撃。

 

五撃。

 

六撃。

 

そのたびに、身体が雷光のように跳ねる。

 

「まだ!」

 

七撃。

 

八撃。

 

九撃。

 

「もっと!」

 

十撃。

 

そして――。

 

「これで――!」

 

最後の一閃。

 

ズドォン!!

 

獪岳が着地した。

 

その瞬間。

 

周囲の竹林が一斉に倒れた。

 

十本。

 

二十本。

 

三十本。

 

全ての竹が、同じ高さで切断されている。

 

「……」

 

獪岳は息を吐く。

 

「どうだ」

 

慈悟郎はしばらく黙っていた。

 

やがて。

 

「見事じゃ」

 

「……!」

 

「迅雷・連牙とはまるで違う」

 

「そうだ」

 

「連牙が『走る雷』なら――」

 

慈悟郎は周囲を見渡す。

 

「これは『瞬く雷』じゃな」

 

獪岳は笑った。

 

「だから――迅雷・閃々」

 

「うむ」

 

「何度も閃く」

 

「じゃが」

 

慈悟郎の表情が少し厳しくなる。

 

「この技にも弱点がある」

 

「……分かってる」

 

「目に頼りすぎれば、相手に動きを読まれる」

 

「ああ」

 

「そして、連続して使えば脚への負担が大きい」

 

「それも分かってる」

 

「ならば、どうする?」

 

獪岳は少し考えた。

 

「……感覚で斬る」

 

「ほう」

 

「相手を目で追うんじゃない」

 

獪岳は目を閉じる。

 

「音を聞く」

 

風。

 

木々。

 

鳥。

 

自分の呼吸。

 

「気配を読む」

 

そして。

 

「次に敵がどこへ動くかを感じる」

 

慈悟郎は微笑んだ。

 

「雷の呼吸を、さらに深く理解しておるな」

 

獪岳は目を開く。

 

「雷は目で追えない」

 

「……」

 

「だから、俺も目で追われる剣士になる必要はない」

 

「なるほど」

 

「見えた時には、もう斬られてる」

 

獪岳の口元が僅かに上がった。

 

「それが理想だ」

 

慈悟郎は苦笑する。

 

「随分と恐ろしいことを言うようになったのう」

 

「鬼に遠慮する必要はないだろ」

 

「ああ。その通りじゃ」

 

獪岳は再び構えた。

 

「もう一度」

 

「まだやるのか?」

 

「当然」

 

「脚が限界じゃぞ」

 

「なら、限界を越える」

 

「……無茶をするのう」

 

「鳴柱になるんだ」

 

獪岳は笑う。

 

「これくらいで止まってられるか」

 

そして――。

 

「迅雷・閃々!」

 

轟ッ!!

 

またしても、獪岳の姿が消える。

 

一瞬。

 

二瞬。

 

三瞬。

 

山中に雷光のような斬撃が走り続けた。

 

それを見つめながら、慈悟郎は静かに思う。

 

壱ノ型・極。

 

迅雷・連牙。

 

迅雷・閃々。

 

一つ。

 

また一つ。

 

獪岳の雷は、確実に形を増やしている。

 

だが、それ以上に――。

 

「……剣士としての獪岳が、変わってきた」

 

かつての焦りはない。

 

ただ強さを求めるだけでもない。

 

自分の剣を、自分自身で作り上げようとしている。

 

そして。

 

その先にあるものは――。

 

「鳴柱、か」

 

慈悟郎は小さく笑った。

 

「本当に、なってしまうかもしれんな」

 

山中に轟く雷鳴。

 

その中心で。

 

獪岳は新たな技を磨き続けていた。

 

迅雷・閃々。

 

それは、一瞬の閃きを何度も繰り返す剣。

 

そしてその剣は――。

 

やがて、獪岳という男そのものを象徴する技へと成長していくのだった。

 

 

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