『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第73話 雷龍

夜。

 

山奥にある開けた岩場で、獪岳は一人、刀を握っていた。

 

月明かりが、刃を淡く照らしている。

 

「……」

 

静寂。

 

風が木々を揺らす。

 

しかし獪岳は動かない。

 

目を閉じ、ただ呼吸だけを整えていた。

 

「雷の呼吸・改……」

 

壱ノ型・極――霹靂一閃。

 

迅雷・連牙。

 

迅雷・閃々。

 

ここまで、いくつもの技を生み出してきた。

 

だが。

 

「まだ足りない」

 

獪岳は目を開いた。

 

「単体を斬る技」

 

「連続して斬る技」

 

「敵の動きを翻弄する技」

 

それぞれの技には役割がある。

 

だが――。

 

「強い鬼を、一気に叩き潰す技がない」

 

柱を目指すなら。

 

十二鬼月のような強大な鬼と戦うなら。

 

一撃の速度だけでも。

 

連撃だけでも。

 

足りない。

 

必要なのは――。

 

「圧倒的な火力」

 

その時だった。

 

「何を考えておる?」

 

背後から慈悟郎の声。

 

「……爺さん」

 

獪岳は振り返らない。

 

「新しい技を考えておるのか?」

 

「ああ」

 

「どんな技じゃ?」

 

「まだ分からない」

 

獪岳は刀を握る。

 

「ただ……」

 

空を見上げる。

 

「雷を、一つの生き物みたいに動かしたい」

 

「生き物?」

 

「ああ」

 

獪岳は言葉を選ぶ。

 

「雷は落ちるだけじゃない」

 

「……」

 

「空を走る」

 

「うむ」

 

「枝分かれする」

 

「うむ」

 

「そして――巨大な雷雲そのものが、何か巨大な生き物に見えることがある」

 

慈悟郎は空を見る。

 

確かに。

 

黒い雲の中で雷が走る様子は、巨大な龍が天を駆けているようにも見える。

 

「龍……か」

 

「ああ」

 

獪岳の目が鋭くなる。

 

「だったら、俺も龍を斬撃で作る」

 

「……面白い」

 

獪岳は構えた。

 

「雷の呼吸――」

 

深く息を吸う。

 

「全ての型を、一つにする」

 

「……!」

 

慈悟郎が目を見開いた。

 

壱ノ型。

 

弐ノ型。

 

参ノ型。

 

肆ノ型。

 

伍ノ型。

 

陸ノ型。

 

そして――。

 

獪岳自身が生み出した派生型。

 

それらを組み合わせる。

 

「霹靂一閃!」

 

轟ッ!!

 

一瞬で踏み込む。

 

「稲魂!」

 

連続斬撃。

 

「聚蚊成雷!」

 

さらに斬撃を重ねる。

 

「遠雷!」

 

間合いを変える。

 

「熱界雷!」

 

刀を振り抜く。

 

「電轟雷轟!」

 

雷鳴のような斬撃が連続する。

 

だが――。

 

「まだ!」

 

獪岳は止まらない。

 

これまでなら、そこで一度呼吸を整える。

 

しかし。

 

「迅雷・連牙!」

 

斬撃が地面を走る。

 

そして。

 

「迅雷・閃々!」

 

獪岳の姿が消える。

 

右。

 

左。

 

上。

 

背後。

 

無数の雷光が岩場を駆け巡る。

 

慈悟郎は息を呑んだ。

 

「なんという……」

 

そして。

 

獪岳は最後に刀を大きく振り上げた。

 

「――終わりだ!」

 

轟ォォォォン!!

 

巨大な斬撃が地面を走った。

 

岩盤が砕ける。

 

土煙が舞う。

 

そして、その中から――。

 

獪岳が現れる。

 

「……!」

 

慈悟郎の目に映ったのは。

 

地面に刻まれた無数の斬撃痕。

 

それらが一本の巨大な龍の形を作っていた。

 

頭。

 

胴体。

 

四肢。

 

そして――長い尾。

 

「……龍」

 

慈悟郎が呟く。

 

獪岳は荒い息を吐きながら笑った。

 

「まだ形だけだ」

 

「いや」

 

慈悟郎は首を横に振る。

 

「十分に見えた」

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

慈悟郎は地面を見る。

 

「まるで雷龍じゃ」

 

「雷龍……」

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

獪岳の目が輝いた。

 

「……それだ」

 

刀を握り直す。

 

「技の名前は――雷龍」

 

「うむ」

 

「雷の呼吸・改――」

 

獪岳は構える。

 

「雷龍」

 

そして――。

 

「もう一度!」

 

轟ッ!!

 

獪岳が駆けた。

 

今度は違う。

 

先ほどよりも無駄がない。

 

一つ一つの技が、完全に繋がっている。

 

霹靂一閃。

 

稲魂。

 

聚蚊成雷。

 

遠雷。

 

熱界雷。

 

電轟雷轟。

 

そして――。

 

迅雷・連牙。

 

迅雷・閃々。

 

全てが一つの流れになる。

 

「――雷龍!!」

 

轟ォォォォン!!

 

雷鳴。

 

斬撃。

 

閃光。

 

全てが入り混じる。

 

獪岳の身体を中心に、無数の斬撃が渦を巻いた。

 

まるで巨大な雷龍が、岩場を駆け抜けている。

 

ズドォォォン!!

 

最後の一撃。

 

岩壁が大きく崩れ落ちた。

 

静寂。

 

獪岳は刀を収める。

 

「……」

 

肩で息をする。

 

慈悟郎は言葉を失っていた。

 

「……獪岳」

 

「何だ?」

 

「お前……」

 

慈悟郎は苦笑した。

 

「本当に、とんでもない技を作ったのう」

 

「まだ完成してない」

 

「何?」

 

「今のままじゃ、身体への負担が大きすぎる」

 

獪岳は自分の脚を見る。

 

「長時間は使えない」

 

「ならば、鍛えるしかない」

 

「ああ」

 

獪岳は頷いた。

 

「雷龍を、俺の切り札にする」

 

「……切り札」

 

「ああ」

 

獪岳の目が鋭くなる。

 

「強い鬼と戦う時、最後に叩き込む」

 

慈悟郎は頷いた。

 

「それならば、名前に相応しい」

 

「だろ?」

 

獪岳は笑う。

 

そして――。

 

「雷龍」

 

その名をもう一度呟く。

 

ただの技ではない。

 

獪岳がこれまで積み上げてきたもの。

 

雷の呼吸。

 

壱ノ型・極。

 

迅雷・連牙。

 

迅雷・閃々。

 

それら全てを、一つに束ねた技。

 

「俺の雷は――」

 

獪岳は空を見上げる。

 

「ここまで来た」

 

その瞬間。

 

空で雷が光った。

 

轟ォォォン……。

 

獪岳はその雷鳴を聞きながら、静かに笑った。

 

「いつか、本物の鬼に叩き込んでやる」

 

そして。

 

雷の呼吸・改。

 

その最奥に位置する新たなる大技――。

 

「雷龍」

 

それはまだ未完成。

 

だが。

 

この日、獪岳の剣に――。

 

龍の姿をした雷が、生まれた。

 

 

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