『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第96話 上弦の弐・童磨

深夜の山中。

 

月明かりの下で、三人の剣士が向かい合っていた。

 

一人は鳴柱・獪岳。

 

一人は花柱・胡蝶カナエ。

 

そして、その二人を前にして微笑む鬼――。

 

「上弦の弐、童磨」

 

童磨は扇を広げ、楽しそうに笑った。

 

「いやぁ……本当に嬉しいなぁ」

 

「……何がだ」

 

獪岳が刀を構える。

 

「だって、柱が二人も来てくれたんだもの」

 

「なら、喜んで死ね」

 

「怖いねぇ」

 

童磨は笑う。

 

「でも、君みたいな怖い顔をした人ほど、面白いんだよね」

 

「……」

 

獪岳の足元で雷光が弾けた。

 

カナエが静かに口を開く。

 

「獪岳さん」

 

「ああ」

 

「先ほどの攻撃を見ていました」

 

「どうだった?」

 

「冷気を吸い込むのは危険です」

 

カナエは童磨を見据える。

 

「肺を凍らせる血鬼術……でしょうか」

 

「おや」

 

童磨が目を丸くする。

 

「よく分かったね」

 

「鬼の血鬼術を甘く見てはいませんから」

 

カナエは刀を握り直す。

 

「それに――」

 

視線が鋭くなる。

 

「あなたは戦いながら、相手の動きを観察しています」

 

「……」

 

「楽しんでいるように見えて、決して油断していない」

 

童磨の笑顔が少しだけ深くなった。

 

「へぇ」

 

「だからこそ」

 

カナエは構える。

 

「こちらも全力でいきます」

 

「素敵だね」

 

童磨が扇を振る。

 

「じゃあ、まずは――」

 

冷気が爆発した。

 

「血鬼術・凍て曇!」

 

白い霧が一瞬で山を覆う。

 

「……!」

 

獪岳が飛び退く。

 

カナエも同時に距離を取った。

 

「近づくな!」

 

獪岳が叫ぶ。

 

「分かっています!」

 

冷気が木々を凍らせていく。

 

「ふふふ」

 

童磨は霧の中から姿を消す。

 

「どこにいるか分かるかな?」

 

「……」

 

獪岳は目を閉じた。

 

耳を澄ます。

 

――風。

 

――木々。

 

――冷気。

 

そして。

 

「そこだ!」

 

雷光。

 

獪岳が地面を蹴る。

 

「雷の呼吸――」

 

一閃。

 

「迅雷・閃々!」

 

雷鳴と共に刀が走る。

 

「おっと!」

 

童磨が扇で受ける。

 

――ガキィン!

 

凄まじい衝撃。

 

童磨の身体が後方へ吹き飛ぶ。

 

「おお!」

 

童磨が嬉しそうに笑う。

 

「速い!」

 

「まだだ!」

 

獪岳が追撃する。

 

「雷龍!」

 

雷を纏った斬撃が連続して走る。

 

「これは凄い!」

 

童磨は扇を振りながら後退する。

 

氷の花が次々と生まれる。

 

「血鬼術――蔓蓮華!」

 

巨大な氷の蓮が咲き誇る。

 

獪岳が斬り裂く。

 

「邪魔だ!」

 

氷が砕け散る。

 

その横を――。

 

「花の呼吸!」

 

カナエが駆け抜ける。

 

「弐ノ型――御影梅!」

 

幾重もの斬撃が童磨へ迫る。

 

「へえ!」

 

童磨が扇を交差させる。

 

――ギィン!

 

火花が散る。

 

カナエは一歩退く。

 

「……硬い」

 

「僕の首を斬るつもりなら、もっと頑張らないと」

 

童磨は笑う。

 

「花柱さん」

 

「……」

 

「君も、とても綺麗だね」

 

「ありがとうございます」

 

カナエは微笑む。

 

「ですが――」

 

刀を構え直す。

 

「鬼に褒められても嬉しくありません」

 

「残念だなぁ」

 

童磨は肩をすくめる。

 

「僕は本当に綺麗だと思っているんだけど」

 

「……」

 

獪岳が割り込む。

 

「くだらない話をするな」

 

「獪岳さん?」

 

「こいつは戦いを遊びだと思っている」

 

童磨は笑う。

 

「その通り」

 

「なら――」

 

獪岳の瞳が鋭くなる。

 

「遊びでは終わらせない」

 

雷鳴。

 

カナエも刀を構える。

 

「ええ」

 

二人の呼吸が重なる。

 

「雷と花……」

 

童磨は楽しそうに二人を見る。

 

「いいねぇ」

 

そして。

 

扇を大きく開いた。

 

「だったら――」

 

山全体を覆うほどの冷気が噴き出す。

 

「二人まとめて、僕のところへおいでよ!」

 

巨大な氷の仏像が出現する。

 

「血鬼術――霧氷・睡蓮菩薩!」

 

「……!」

 

獪岳が目を見開く。

 

カナエも息を呑む。

 

巨大な氷の仏像が、二人を見下ろしていた。

 

「これは……!」

 

「避けろ、胡蝶!」

 

「はい!」

 

氷の腕が振り下ろされる。

 

――ドォォォン!

 

地面が大きく砕ける。

 

二人は左右へ飛び退いた。

 

「凄いねぇ!」

 

童磨が笑う。

 

「これでもまだ、本気じゃないんだよ?」

 

獪岳は刀を握り直す。

 

「……上弦の弐」

 

初めて。

 

獪岳の顔に僅かな焦りが浮かんだ。

 

カナエも静かに息を整える。

 

「強い……」

 

それでも。

 

二人は退かない。

 

「獪岳さん」

 

「ああ」

 

「一人ではありません」

 

「……分かっている」

 

カナエは微笑む。

 

「なら、勝てます」

 

「……ああ」

 

獪岳も頷く。

 

その時。

 

童磨が二人を見て笑った。

 

「ねぇ、柱のお二人」

 

「何だ」

 

「君たちは――」

 

虹色の瞳が細くなる。

 

「とても仲がいいんだね」

 

「……」

 

「羨ましいなぁ」

 

その言葉に。

 

獪岳の殺気が跳ね上がった。

 

「黙れ」

 

「おや?」

 

「お前に、しのぶのことを語る資格はない」

 

童磨の笑顔が一瞬だけ止まった。

 

「……しのぶ?」

 

「獪岳さん!」

 

カナエが驚く。

 

童磨は首を傾げる。

 

「もしかして……」

 

そして。

 

「蟲柱・胡蝶しのぶ?」

 

獪岳の瞳が鋭くなる。

 

「……」

 

童磨は嬉しそうに笑った。

 

「なるほど」

 

「……何がだ」

 

「そういうことかぁ」

 

童磨の笑顔が、今まで以上に不気味なものへ変わる。

 

「君が守りたい人は――」

 

「……」

 

「胡蝶しのぶなんだね?」

 

獪岳の周囲に雷が走る。

 

「その名を――」

 

刀を握り締める。

 

「二度と口にするな」

 

カナエは獪岳の横顔を見る。

 

そして悟った。

 

――この男は。

 

しのぶを本気で大切にしている。

 

童磨はそんな獪岳を見て、楽しそうに笑った。

 

「面白いなぁ」

 

扇を構える。

 

「じゃあ――」

 

冷気が再び渦巻く。

 

「その大切な人を守れるか、試してみようか」

 

「……!」

 

獪岳の目が変わる。

 

「上等だ」

 

雷鳴が轟く。

 

「絶対に――」

 

カナエも刀を構える。

 

「ここで討ちます」

 

雷と花。

 

二つの柱が並び立つ。

 

その前に立つのは――。

 

上弦の弐。

 

童磨。

 

三者の殺気がぶつかり合い。

 

山全体が震えた。

 

――そして。

 

本当の死闘が、始まった。

 

 

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