『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第97話 カナエ、絶体絶命

深夜の山中。

 

「血鬼術――散り蓮華!」

 

童磨の扇が振り抜かれた。

 

無数の氷の花弁が、吹雪のように舞い散る。

 

「……!」

 

カナエは身を翻した。

 

花の呼吸で氷の花弁を斬り落とす。

 

しかし――。

 

「まだですよ」

 

童磨の声が、背後から聞こえた。

 

「……!」

 

振り返った瞬間。

 

巨大な氷の槍が迫る。

 

「花の呼吸――肆ノ型!」

 

カナエは刀を振り抜き、氷槍を弾き飛ばした。

 

だが。

 

「甘いなぁ」

 

童磨が笑う。

 

次の瞬間、足元から氷が伸びる。

 

「――ッ!」

 

カナエの右足が凍りついた。

 

「カナエ!」

 

獪岳が叫ぶ。

 

「大丈夫です!」

 

カナエは刀を振り、氷を砕く。

 

だが、その一瞬の隙を童磨は見逃さなかった。

 

「血鬼術――枯園垂り!」

 

冷気が一気に押し寄せる。

 

「くっ……!」

 

カナエは後退する。

 

息が白くなる。

 

肺の奥が冷たい。

 

「……!」

 

呼吸が乱れる。

 

花の呼吸は、繊細な呼吸法。

 

肺を冷気に侵されれば、技の精度が落ちる。

 

童磨はそれを理解していた。

 

「どうしたの?」

 

「……」

 

「さっきまでの綺麗な動きが、だんだん鈍くなってるよ?」

 

「まだ……終わっていません」

 

カナエは刀を構える。

 

しかし。

 

指先が僅かに震えていた。

 

「カナエ!」

 

獪岳が駆け寄ろうとする。

 

「来ないでください!」

 

「何?」

 

「私に構わず、童磨を――」

 

「馬鹿を言うな!」

 

獪岳が怒鳴る。

 

「お前を置いていけるか!」

 

カナエは一瞬、目を見開いた。

 

その瞬間。

 

「隙あり」

 

童磨が距離を詰める。

 

「――!」

 

カナエが振り向く。

 

間に合わない。

 

童磨の扇が、カナエの胸元へ迫った。

 

「カナエ!」

 

――ガキィン!

 

雷光が走った。

 

獪岳の刀が扇を弾き飛ばす。

 

「……!」

 

童磨が後退する。

 

獪岳はカナエの前に立った。

 

「大丈夫か」

 

「獪岳さん……」

 

「怪我は?」

 

「ありません」

 

「嘘をつくな」

 

獪岳の視線がカナエの足元へ向く。

 

「呼吸が乱れている」

 

「……」

 

「お前は冷気を吸いすぎた」

 

「まだ戦えます」

 

「分かっている」

 

獪岳は刀を構え直す。

 

「だから俺が前に出る」

 

「ですが――」

 

「お前は隙を狙え」

 

「……!」

 

獪岳の身体から雷光が迸る。

 

「俺が、全部引き受ける」

 

「……獪岳さん」

 

カナエは静かに頷いた。

 

「分かりました」

 

童磨は二人を眺めながら笑っていた。

 

「仲間思いだねぇ」

 

「黙れ」

 

「でも――」

 

童磨の扇が開く。

 

「二人とも、もう限界に近いんじゃないかな?」

 

冷気が再び広がる。

 

「……!」

 

獪岳が踏み込む。

 

「雷の呼吸――」

 

雷鳴。

 

「迅雷・閃々!」

 

一瞬で童磨との距離を詰める。

 

「おっと!」

 

童磨が扇を構える。

 

――ガキィン!

 

激しい剣戟。

 

獪岳の斬撃が、童磨の身体を次々と切り裂いていく。

 

しかし。

 

「惜しいなぁ」

 

童磨の傷が瞬く間に再生する。

 

「……!」

 

「君の攻撃、凄く速いね」

 

童磨が笑う。

 

「でも――」

 

冷気が爆発する。

 

「僕のほうが、まだ速いよ」

 

「ぐっ……!」

 

獪岳の身体が吹き飛ばされる。

 

「獪岳さん!」

 

カナエが駆け出す。

 

だが。

 

「逃がさないよ」

 

童磨が目の前に現れた。

 

「――!」

 

カナエは刀を構える。

 

しかし、肺に入り込んだ冷気のせいで身体が僅かに遅れる。

 

「遅い」

 

童磨の扇が振り抜かれる。

 

「――ッ!」

 

カナエの身体が吹き飛ぶ。

 

地面を何度も転がり。

 

大木に激突する。

 

「……っ!」

 

刀が手から離れた。

 

「カナエ!」

 

獪岳が立ち上がる。

 

だが。

 

童磨はすでにカナエの前に立っていた。

 

「……!」

 

カナエは立ち上がろうとする。

 

しかし。

 

足に力が入らない。

 

「……動いて」

 

身体が動かない。

 

童磨が微笑む。

 

「もう十分頑張ったよ」

 

「……」

 

「花柱さん」

 

童磨は扇をゆっくり振り上げる。

 

「君は、とても綺麗な花だ」

 

カナエは童磨を睨む。

 

「……鬼に……」

 

息を整える。

 

「褒められても……嬉しくありません……!」

 

「ふふ」

 

童磨が笑う。

 

「じゃあ、散らせてあげる」

 

扇が振り下ろされる。

 

「カナエ――ッ!!」

 

獪岳が叫ぶ。

 

しかし。

 

距離が遠い。

 

間に合わない。

 

カナエは目を閉じ――。

 

その瞬間。

 

「――お姉ちゃん!!」

 

山中に、声が響いた。

 

「……!」

 

カナエが目を開く。

 

聞き覚えのある声。

 

「しのぶ……?」

 

遠くから、一羽の鎹鴉が飛んでくる。

 

「カァーッ! 緊急伝令! 胡蝶しのぶ、援護に向かう――!」

 

「……!」

 

獪岳の表情が変わる。

 

「しのぶ……来るのか?」

 

童磨も一瞬、動きを止めた。

 

そして。

 

「へぇ……」

 

虹色の瞳が細くなる。

 

「蟲柱まで来るんだ」

 

獪岳の殺気が爆発する。

 

「……童磨」

 

「ん?」

 

「それ以上――」

 

雷光が山を照らす。

 

「しのぶの名前を口にするな」

 

獪岳が刀を握り締める。

 

「今度こそ、斬る」

 

一方。

 

倒れていたカナエは、必死に刀へ手を伸ばす。

 

「……まだ」

 

指先が刀の柄に触れる。

 

「私は……まだ戦えます」

 

立ち上がろうとする。

 

膝が震える。

 

それでも。

 

「しのぶを……」

 

カナエは顔を上げる。

 

「悲しませるわけには……いきません」

 

絶体絶命。

 

それでも花柱は、まだ折れていなかった。

 

そして――。

 

童磨の前に。

 

雷を纏った獪岳が立ちはだかる。

 

「ここからが本番だ」

 

上弦の弐と鳴柱。

 

そして傷ついた花柱。

 

三人の死闘は、さらに激しさを増していく――。

 

 

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