『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第99話 雷鳴、雪原を裂く

深夜の山中。

 

童磨の血鬼術によって、辺り一面は白銀の世界へと変わっていた。

 

木々は凍りつき。

 

地面には薄氷が張り。

 

吐く息さえ白く染まる。

 

「……寒いですね」

 

花柱・胡蝶カナエが呟く。

 

「無理するな」

 

隣に立つ鳴柱・獪岳が答えた。

 

「これくらいなら大丈夫です」

 

「その呼吸で分かる。冷気を吸い込みすぎている」

 

「……」

 

カナエは僅かに苦笑する。

 

「さすが鳴柱ですね」

 

「誤魔化すな」

 

獪岳は童磨を睨む。

 

「こいつの血鬼術は、呼吸を使う剣士にとって相性が悪すぎる」

 

「よく分かってるねぇ」

 

童磨が扇を広げる。

 

「そうだよ。僕の冷気を吸い込めば、肺が凍って呼吸ができなくなる」

 

「……」

 

「だから――」

 

童磨が笑う。

 

「柱でも、長くは持たないよ」

 

冷気が一気に膨れ上がる。

 

「血鬼術――凍て曇!」

 

吹雪が二人を襲う。

 

「来る!」

 

獪岳が前へ出る。

 

「雷の呼吸――」

 

刀身に雷光が走る。

 

「迅雷・閃々!」

 

――ドンッ!

 

雷鳴。

 

獪岳の身体が一瞬で消えた。

 

「おお!」

 

童磨が目を見開く。

 

「速い!」

 

次の瞬間。

 

――ザンッ!

 

童磨の扇が弾き飛ばされた。

 

「……!」

 

「まだだ!」

 

獪岳は止まらない。

 

「雷龍!」

 

雷を纏った斬撃が連続して走る。

 

童磨は氷の壁を次々に生み出して防ぐ。

 

「凄いねぇ!」

 

氷が砕ける。

 

「でも――」

 

童磨の背後から、巨大な氷柱が出現した。

 

「これならどうかな?」

 

「……!」

 

獪岳が振り向く。

 

「獪岳さん!」

 

カナエが叫ぶ。

 

氷柱が獪岳へ迫る。

 

「遅い!」

 

獪岳は刀を逆手に構える。

 

「帝釈天!」

 

――ズドォォォン!!

 

凄まじい雷撃が落ちる。

 

氷柱が一瞬で粉砕された。

 

砕けた氷が雪のように舞う。

 

童磨は目を細めた。

 

「へぇ……」

 

「雷を纏うだけじゃない」

 

獪岳が刀を構える。

 

「雷そのものを操るのか」

 

「……俺の呼吸は、普通の雷の呼吸とは違う」

 

獪岳の足元から雷光が広がる。

 

「俺自身が雷になる」

 

「面白い!」

 

童磨は嬉しそうに笑う。

 

「だったら、もっと見せてよ!」

 

無数の氷の蓮が咲く。

 

「血鬼術――蔓蓮華!」

 

「花の呼吸!」

 

カナエが前へ出る。

 

「弐ノ型――御影梅!」

 

花びらのような斬撃が氷を斬り裂く。

 

「……っ!」

 

しかし。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

氷の蓮が次々と迫る。

 

「数が多い……!」

 

カナエが後退する。

 

「カナエ!」

 

獪岳が横から飛び込む。

 

「下がれ!」

 

「はい!」

 

獪岳が刀を振る。

 

「九頭龍の雷!」

 

九つの雷撃が一斉に走る。

 

――轟轟轟轟轟ッ!!

 

雪原を走った雷が、巨大な龍のようにうねる。

 

無数の氷の蓮が、一瞬で砕け散った。

 

「……!」

 

童磨の笑顔が消える。

 

「これは……」

 

獪岳は刀を振り抜いたまま立っていた。

 

雪原には九本の雷撃が走り。

 

白銀の大地が黒く焼け焦げている。

 

「凄い……」

 

カナエも思わず呟く。

 

「これが……鳴柱」

 

獪岳は静かに息を吐く。

 

「まだ終わっていない」

 

「……ええ」

 

カナエが頷く。

 

童磨はしばらく黙っていた。

 

そして。

 

「……あはは」

 

笑い始めた。

 

「素晴らしい!」

 

両手を広げる。

 

「本当に素晴らしいよ!」

 

「……」

 

「君の雷!」

 

童磨の瞳が輝く。

 

「まるで本物の雷みたいだ!」

 

「だから何だ」

 

「欲しくなっちゃった」

 

「……」

 

「その力」

 

童磨は扇を構える。

 

「僕にも見せてよ。もっともっと!」

 

「断る」

 

獪岳は即答した。

 

「俺の雷は――」

 

刀を握り直す。

 

「お前を殺すためにある」

 

「ふふ」

 

童磨が笑う。

 

「いいねぇ」

 

再び冷気が吹き荒れる。

 

「じゃあ、殺し合おう!」

 

童磨が突進する。

 

獪岳も迎え撃つ。

 

「雷の呼吸――」

 

雪原を蹴る。

 

「壱ノ型・極!」

 

――ドォォォン!!

 

雷鳴。

 

獪岳の姿が一直線に消える。

 

童磨の扇と刀が激突する。

 

――ガキィィィン!!

 

凄まじい衝撃が雪原を震わせる。

 

その瞬間。

 

カナエが横から斬り込む。

 

「花の呼吸――!」

 

童磨が振り返る。

 

「おっと!」

 

「伍ノ型!」

 

カナエの刀が閃く。

 

童磨が避ける。

 

しかし。

 

獪岳の刀が、その退路を塞ぐ。

 

「逃がすか!」

 

「――!」

 

二人の連携。

 

雷と花が、初めて完全に噛み合った。

 

童磨の頬に、一筋の傷が走る。

 

「……」

 

童磨が頬を触る。

 

赤い血。

 

「……斬られた」

 

そして。

 

ゆっくり笑う。

 

「なるほど」

 

獪岳とカナエを見つめる。

 

「二人で戦うと、こんなに強いんだ」

 

獪岳は刀を構える。

 

「当然だ」

 

「私たちは柱ですから」

 

カナエも微笑む。

 

童磨の笑顔がさらに深くなる。

 

「じゃあ――」

 

吹雪が一段と激しくなる。

 

「もっと強くならないとね」

 

巨大な氷の仏像が、再び姿を現す。

 

「……!」

 

獪岳とカナエが見上げる。

 

「血鬼術――霧氷・睡蓮菩薩」

 

巨大な氷の掌が迫る。

 

獪岳が叫ぶ。

 

「カナエ!」

 

「はい!」

 

二人が左右へ跳ぶ。

 

その中央を。

 

凄まじい氷の腕が叩き潰した。

 

――ドゴォォォン!!

 

雪が舞い上がる。

 

視界が真っ白になる。

 

「……!」

 

獪岳は刀を握り直した。

 

「上弦の弐……」

 

カナエも息を整える。

 

「まだ本気ではないようですね」

 

「ああ」

 

獪岳の瞳に闘志が宿る。

 

「なら――」

 

雷光が雪原を照らす。

 

「こっちも、本気で行くぞ」

 

白銀の雪原を。

 

一筋の雷鳴が裂いた。

 

その光は、夜空まで届くほどだった。

 

 

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