RyzaChat:AI ~異世界の少女と秘密の夢~   作:#NkY

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クーケン島の料理大会で優勝しよう!
主催、料理大会に強制出場の巻


 翌日からは本当に怒涛だった。

 

 グルメフェス出店者向けの説明会に始まり、タオさんを中心に屋台設営の計画を立て、クラウディアさん、そして新しく知り合った商人のロミィさんと広報活動の打ち合わせ。

 屋台被りを防ぐための話し合いの中間に入ったり、モリッツさんがねじ込んできた料理大会の企画にも顔を出して、貴族の娘であるパトリツィアさんの伝手も使って審査員を招待したりした。

 

 装飾はライザさんと一緒に錬金術を駆使して考え、タイムテーブルに関しては経験豊富な古老さんをはじめとする大人たちに協力してもらった。

 さすがに警備に関してはあまりわからなかったので、ボオスさんや、アガーテさん、ランバーさんなどといった護り手たちに一任した。

 

 そして、わたしの仕事は……これらの進行状況を効率よく把握するため、とにかく島を縦横無尽に歩き回り、現場に行って、紙に書いて、記録を取ることに終始した。

 凄まじく都合がよすぎることに、クーケン島の言語は日本語だったので特に問題がなかった。

 ……いくら何でも都合がよすぎないだろうか。

 

 さらに、モリッツさんは……。

 

「ぜひ、このモリッツが主催する料理大会に出場してくれないだろうか!」

「わたし、料理とか全然なので……」

「なら、ライザと出ればよかろう。彼女の錬金術の技術を生かした料理は評判だと聞くぞ」

「え、ええ……? それだと、わたしじゃなくて、ライザさんの功績になるんじゃ……?」

「そうとも言うまい。ユイカはどんな料理を作りたいかそのアイデアを出す係になればよい。外の世界から持ち込んだユイカの発想と、ライザの技術力が融合した料理……期待しておるぞ!」

「……は、はい……」

 

 ……なぜか主催で忙しいわたしを料理大会に(ほぼ無理やり)出場させてきた。

 周りの大人たちは憐みの目を向けながらも、わたしに助け舟を出そうともしなかった。

 こうなったモリッツさんを止める手段がないからだ……。

 

 強引に押し切られた時には、まあ、グルメフェスが盛り上がるならいいか――くらいの気持ちではあったけど。

 あまりの多忙さに料理大会の準備時間はなかなか取れず……グルメフェス当日まで、あと2日に迫っていた。

 ちなみに、グルメフェス自体の準備は、やはりライザさんの周りの方々が非常に頼りになったため極めて順調だ。広報を担当してくれたクラウディアさん曰く、王都の人々の間でもちょこちょことグルメフェスの話題で会話している通行人を見かけるらしい。

 

 とにかく、今日に関しては、グルメフェスの主催としての仕事を少なくしても大丈夫そうだった。しかし、明日はグルメフェス前日ということもあり、個人的な時間をあまり取れそうもない。

 

 つまり、今日一日でモリッツさんの料理大会で優勝を狙える料理を考えなければならない。

 

「……で、ユイカ。いい案はあるの?」

「それに関しては、仕事の合間にいろいろ考えて、こういうのを作りたいなー……というものが浮かんではいるので。実現可能性はさておき……」

 

 そんな会話をアトリエでライザさんとしていると、ノックする音が聞こえた。

 

「ライザ! クラウディアだよ!」

 

 ライザさんのアトリエにクラウディアさんが訪問してきた。曰く、クラウディアさんも今日は時間を作る余裕があったので、息抜きがてらアトリエに遊びに来た……だけではないらしい。

 

「えっとね。私、ライザとユイカさんと一緒に、料理大会に出たいんだ。せっかくのイベントだし、3人で出場したらいい思い出になるんじゃないかな、って」

 

 強力な助っ人を得た。この前にバレンツ商会の建物で打ち合わせしたとき、クラウディアさんのクッキーを食べる機会があったのだけれども、とても美味しかったのを覚えている。

 

「いいの!? ぜひ一緒に出ようよ、クラウディア! ユイカもいいでしょ?」

「はい! クラウディアさんが仲間になったら、どれだけ心強いことか……!」

「ふたりともありがとう! 頑張って優勝目指そうね!」

 

 話題は料理大会に向けて何を作るのか、というところに移る。

 

「せっかくだから、ユイカのアイデアに乗ろうかなってあたしは考えてるんだ。ユイカが考えていること、言ってみて?」

「はい、えっと……」

 

 クーケン島グルメフェスの主催として準備に奔走している間、わたしは島中を駆けずり回ったため、クーケン島のことやこの世界の常識についてだいぶ知ることができた。

 そして、候補としてはクーケンフルーツを使ったスイーツか、新鮮な魚を使った料理かの二択だったのだけれども……ライザさんの実家がクーケンフルーツを主力とする農家だということが大きな決定打となり、クーケンフルーツを使ったスイーツにしようと決めた。

 

 そして、クーケンフルーツ以外にもクーケン島には果物がたくさんあることを知った。例えば、七色葡萄や、フレスベリー。また、ヤギミルクという、クリームの材料に面白そうなものもある。どれもわたしがいた世界では存在しないか、なじみの薄いものだ。

 だから、これらを使った、クーケン島の良さが詰まったスイーツ――。

 

「――フルーツタルトを作りたいです。クーケンフルーツをはじめとした、クーケン島で採れる果物をふんだんに使ったフルーツタルトです!」

「なるほど、フルーツタルトかぁ……! いいアイデアじゃん!」

 

 ライザさんは何度も小さくうなずいた。

 

「私も、ユイカさんのアイデアはいいと思う。ちょっと贅沢な雰囲気だし、見栄えもするから大会向きだね!

 せっかくだから、特別な感じを出すためにちょっと上品な仕上げにしてみたらいいんじゃないかな?」

 

 クラウディアさんも全面的に賛成してくれた。

 

「確かにそうですね。フルーツタルトなら、こういった特別感は少し工夫すれば出せそうですし……!」

「うん! じゃあ、さっそくフルーツタルトの材料を探しに行こう!」

 

 

 

 わたしたち3人はクーケン島に戻り、フルーツタルトの材料集めを始めた。

 グルメフェスの準備でクーケン港の辺りはいつもとは違うにぎやかさがあるけれど、ライザさんの家付近の畑地帯はいつもと変わらない穏やかさだった。

 クーケンフルーツとヤギミルクは、ライザさんのご両親に料理大会用の材料を譲っていただけないかお願いしたところ、草むしりを交換条件に快諾を得ることができた。

 

「昔はこっそり逃げてたんだけど……今は料理大会のためだもんね。ぱぱっとやっちゃおう!」

 

 どうやらライザさんは農作業があまり好きではないらしい。といっても、ライザさん曰く農作業そのものはそこまで嫌いではなく、繰り返す閉塞的で平凡な毎日の象徴が農作業だから好きではない、みたいな感じのことを言っていた。

 この世界に転移する前のわたしとまるっきり一緒だ。ただ一つ違うのは、ライザさんは平凡な毎日を打破するために色んな行動をやっていたけれど、わたしにはそれができなかった、というところだ。

 

 それはさておき。二人の草むしりの効率は異常だった。

 わたしとて、学校で草むしりをしたことはある。けれども、ライザさんはともかくとして、そういうのに無縁そうなクラウディアさんにすら草むしりの腕前は遥かに及ばなかった。

 およそダブルスコアである。

 

「み、みなさん草むしり速すぎませんか……?」

「ふっふっふ。農家の娘が負けるわけにはいかないのだよ、ユイカ君」

「ふふ、何それライザ。……私も、ライザの冒険に付き合って採取のお手伝いをたくさんしてたからね。だいぶ鍛えられているのかも」

「な、なるほど……」

 

 しかも、草むしりの途中にクラウディアさんが大きな虫をまったく気にせずに掴んでどこかによけていたのも目撃した。

 クラウディアさんほど、見た目で判断してはいけない人はいないな……。

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