英雄を問う。   作:ただねこ

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第一回戦④

「……切島」

「……どうした耳郎」

「負けないからね」

「おう!」

 

 ガチン、と小気味良い音が鳴って、切島が戦闘態勢に入る。ウチも腰を落として、とうとう試合開始の合図が聞こえた。

 

「うおおおお!」

「っ!」

 

 開始早々、硬化してブン殴ってきた……!いやギリギリ避けたけど!

 

ビートパンチ(アレ)を使うには、事前準備と()()がいるんだってば!)

 

 ビートパンチを開発した時、ウチが作った決まり事。

 

・必ず腕に巻きつけること

・ジャックの先は、握った中指と薬指の間から出すこと

・鼓動は事前に5回以上溜めておくこと

・上の条件を、全て相手の視界内に入れること

 

 別に、決まり事に特段意味はない。ただ、これは必殺技みたいなものだから。これを見て、相手が萎縮してくれたりしたら嬉しいなってものだから。子供が安心したり、敵の注意を惹きつけたり。……曽我(あいつ)には殆ど意味なかったけど。

 

(……やってやる)

 

『耳郎、避ける避ける避けるーー!!切島の猛攻を避けまくる!!』

「ジャックを常に切島へ向けて、僅かに次の動作を先読みしてるのか」

 

 そう、今ウチは先読みしてる。ビートパンチを撃つためには、最低でも一本のジャックを腕に巻きつけなければいけない。

 

「当たらねえ……!」

「っ、らあ!」

「うお!」

 

 蹴りを入れても、あんまり飛ばない。……曽我とかオールマイトがおかしいんだけど。

 

(やっぱこういうのは、男女差出ちゃうよね)

 

 仕方ない。いくら超常が平然と蔓延ってたって、大元の人間は変わってないから。

 どうしても、性差を乗り越えることは簡単ではない。

 

「だからって……諦める理由にはならない」

 

 ジャックを腕に巻きつける。

 

「切島」

「!」

「今……ウチが撃てる、最高を出す。それ受けて立ってたら、アンタの勝ち。倒れたら……ウチの勝ち。どう?」

「……ああ!やってやる!」

「ありがと」

 

 ジャックを6m(限界)まだ伸ばして、ぐるぐる巻きつけて……ああ、心臓がばくばく言ってる。こればっかりは、この緊張が有難い。

 

「ビート……」

 

多分、今ウチの表情は酷いことになってると思う。芦戸みたいに元気じゃないし、麗日みたいなほんわかするような顔でもない。どちらかといえば、緑谷みたいな必死な顔だ。

 

 でも、それでいいんだ。

 

「パンチ!!」

 

 それが、ウチだ。

 

「ゔ……!?」

 

 切島の足がフラつく。よろけて、バランスがうまく取れなくなって。必然、倒れる。

 

「……ぁ……?」

「まともに腹に受けたもんね。そりゃあ倒れるよ、内臓揺らしたんだから」

「……それは、むりだ」

「はは!……ウチの勝ちだね」

「次は勝つ!」

「いつでも受け付けるよ、切島!」

 

 第二回戦、進出だ。

 

 


 

 

「……あの技は、自分で身につけたのかい?」

「はい」

「そうかい……この技は負担がかかる。ここぞって時に使うんだよ、いいね」

「はい」

「よし、これで大丈夫さね。そら、行って来な!」

 

 リカバリーガールに治療を受けて、退室する。ビートパンチは直接殴ると、振動の一部がウチに返ってくる。騎馬戦での音波よりも、反動が重くなる。

 

(……要改善、かな)

 

 次、爆豪と麗日か。麗日大丈夫かな。

 

「おい」

「ん?……爆豪!?なんでここに」

「テメェのだろ、これ」

「……あ」

 

 控え室に持ってきたタオルと飲み物……そうだ、そのままにしてた。

 

「ありがと、試合終わってすぐに保健室行ってたからさ」

「……テメェ、曽我の奴に稽古つけられたんか」

「……そう、だけど」

「普通科も、テメェも、デクも……進んで、一番前にいるアイツに追いつこうとしてる。……俺はまだ、止まってる」

 

 ……爆豪って、こんなこと言うようなヤツだったっけ?

 

「丸顔には悪いけどな……俺は勝つぞ」

「なんでウチに言うのさ」

「言えるわけねェだろが」

 

 ……そっか、麗日も……おんなじように。

 

「俺だってスポーツマンシップくれえあるわ」

「……爆豪」

「あ?」

「次、ウチとだからね」

「……フン」

 

 気合、入れ直そう。




耳郎の奥の手は爆豪戦で明かすと思います。ビートパンチの名前は、某グルメ漫画から。……グルメ漫画なのにこの技名が付くの、今考えるとなかなかにおかしいな。
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