「……切島」
「……どうした耳郎」
「負けないからね」
「おう!」
ガチン、と小気味良い音が鳴って、切島が戦闘態勢に入る。ウチも腰を落として、とうとう試合開始の合図が聞こえた。
「うおおおお!」
「っ!」
開始早々、硬化してブン殴ってきた……!いやギリギリ避けたけど!
(
ビートパンチを開発した時、ウチが作った決まり事。
・必ず腕に巻きつけること
・ジャックの先は、握った中指と薬指の間から出すこと
・鼓動は事前に5回以上溜めておくこと
・上の条件を、全て相手の視界内に入れること
別に、決まり事に特段意味はない。ただ、これは必殺技みたいなものだから。これを見て、相手が萎縮してくれたりしたら嬉しいなってものだから。子供が安心したり、敵の注意を惹きつけたり。……
(……やってやる)
『耳郎、避ける避ける避けるーー!!切島の猛攻を避けまくる!!』
「ジャックを常に切島へ向けて、僅かに次の動作を先読みしてるのか」
そう、今ウチは先読みしてる。ビートパンチを撃つためには、最低でも一本のジャックを腕に巻きつけなければいけない。
「当たらねえ……!」
「っ、らあ!」
「うお!」
蹴りを入れても、あんまり飛ばない。……曽我とかオールマイトがおかしいんだけど。
(やっぱこういうのは、男女差出ちゃうよね)
仕方ない。いくら超常が平然と蔓延ってたって、大元の人間は変わってないから。
どうしても、性差を乗り越えることは簡単ではない。
「だからって……諦める理由にはならない」
ジャックを腕に巻きつける。
「切島」
「!」
「今……ウチが撃てる、最高を出す。それ受けて立ってたら、アンタの勝ち。倒れたら……ウチの勝ち。どう?」
「……ああ!やってやる!」
「ありがと」
ジャックを
「ビート……」
多分、今ウチの表情は酷いことになってると思う。芦戸みたいに元気じゃないし、麗日みたいなほんわかするような顔でもない。どちらかといえば、緑谷みたいな必死な顔だ。
でも、それでいいんだ。
「パンチ!!」
それが、ウチだ。
「ゔ……!?」
切島の足がフラつく。よろけて、バランスがうまく取れなくなって。必然、倒れる。
「……ぁ……?」
「まともに腹に受けたもんね。そりゃあ倒れるよ、内臓揺らしたんだから」
「……それは、むりだ」
「はは!……ウチの勝ちだね」
「次は勝つ!」
「いつでも受け付けるよ、切島!」
第二回戦、進出だ。
「……あの技は、自分で身につけたのかい?」
「はい」
「そうかい……この技は負担がかかる。ここぞって時に使うんだよ、いいね」
「はい」
「よし、これで大丈夫さね。そら、行って来な!」
リカバリーガールに治療を受けて、退室する。ビートパンチは直接殴ると、振動の一部がウチに返ってくる。騎馬戦での音波よりも、反動が重くなる。
(……要改善、かな)
次、爆豪と麗日か。麗日大丈夫かな。
「おい」
「ん?……爆豪!?なんでここに」
「テメェのだろ、これ」
「……あ」
控え室に持ってきたタオルと飲み物……そうだ、そのままにしてた。
「ありがと、試合終わってすぐに保健室行ってたからさ」
「……テメェ、曽我の奴に稽古つけられたんか」
「……そう、だけど」
「普通科も、テメェも、デクも……進んで、一番前にいるアイツに追いつこうとしてる。……俺はまだ、止まってる」
……爆豪って、こんなこと言うようなヤツだったっけ?
「丸顔には悪いけどな……俺は勝つぞ」
「なんでウチに言うのさ」
「言えるわけねェだろが」
……そっか、麗日も……おんなじように。
「俺だってスポーツマンシップくれえあるわ」
「……爆豪」
「あ?」
「次、ウチとだからね」
「……フン」
気合、入れ直そう。
耳郎の奥の手は爆豪戦で明かすと思います。ビートパンチの名前は、某グルメ漫画から。……グルメ漫画なのにこの技名が付くの、今考えるとなかなかにおかしいな。