「君の!力じゃないか!!」
緑谷のけたたましい声が、轟の耳に入る。戦闘の音で観客には殆ど聞こえていないが、俺はわかった。というのも読唇術を叩き込まれたからだが。
フルカウルを用いて尚指を破壊した緑谷は、まだ覚悟を決めた顔をしている。……流石、指を残弾と捉える男は違うな。イカれてる。
「……轟、炎を……」
冷えた会場に、僅かな熱が生まれる。観客は熱いままだが。
「……どうなるの?これ」
「見ものだな」
緑谷と轟がぶつかり合う。瞬間的に熱された冷気が膨張し、弾き出されるように轟音が鳴った。少し時間が経って、煙が晴れる。……どうやら、双方が弾き飛ばされたらしい。
(……僅かに、緑谷のスマッシュが早かったか)
他の奴……ミッドナイトには見えたか?アレ。
「……っ、ミッドナイト」
「轟くん!あまり喋らないで……」
「俺の負けです」
「!」
轟が言うには、緑谷を熱波で吹き飛ばした時、緑谷のパンチによって吹き飛ばされた。その時僅かに緑谷が見えたが、その時はまだ吹っ飛ばされていなかった。つまり轟が先に場外になった、ということだ。
「本人の判定より、轟くん場外!勝者緑谷くん!……セメントス、緑谷くんを医務室に……」
「OK」
「……すまん、少しトイレ」
「?」
……目ぇかけてるって言ったし、施しくらいはしてやるか。
「……曽我くん?」
「どうも、セメントス先生」
医務室に向かう途中、彼は妖刀を携えて通路に立っていた。
「その怪我、俺なら治せますよ」
「……本当かい?」
「ええ。実は──」
曽我くん曰く、生命力の簒奪及び還元は、妖刀「真打」の持ち主しか恩恵を貰えない。精々、触れているものだけが簒奪を逃れられる程度。
「……他の妖刀と真打が違うのは、その異質さ。命滅契約だけでは縛りきれないんです」
そのため、他の者でも真打の力の一端を扱える。その力には、生命力の簒奪も含まれていた。それを聞いて、俺は曽我くんの個性使用を許可。リカバリーガールの元まで行って、説明をしてから治療に入った。
「というか、それが基本能力ですから。一旦体に触れさせておいて……」
妖刀から花が現れる。痛々しく、毒々しく。腫れ上がった緑谷くんの腕が、健康的なものになっていく。
「……治療というか、改造……ですかね」
「どういうことだい?」
「真打を一番十全に扱えるのは俺。真打の力をより強く引き出せるよう、体を作り変えるんです」
「……まさか」
「そのまさかです。果ては……自我の乗っ取りと、身体そのものが俺になる」
「とんでもないな……」
ただ、曽我くん本人はその気はないらしく。緑谷くんの怪我が治ったところで止め、真打を影にしまった。
「ていうか、それ真打だったんだね。妖刀としか言ってなかったから、わからなかったよ」
「俺も最近わかったんです。……これを最高傑作としなければいけない程に、闇が国を支配していた時代でしたから」
「……そっか」
俺は曽我くんに戻っていいと告げて、次の試合のために試合に戻った。
・・・・・
「……で、何の用です?エンデヴァー」
「すまない、話の一部始終を聞いてしまってな」
エンデヴァーが謝り、その次には俺の力とその使い方、そしてあの宣誓を褒めた。
「ありがとうございます」
「ああ……焦凍が勝ち上がってくれれば、君との試合を観察できたんだが」
「?」
「アレはオールマイトを越えさせるための仔だ。攻撃のたびに腕を壊すような子供に負けていてはな……」
……ほう?
「つまり、貴方にとって轟焦凍はモルモットか」
「な……!」
「その言い方だと、そのように捉えられてしまいますよエンデヴァー。というかそれ以外にないじゃないですか。……貴方人間をなんだと思ってるんですか?」
自覚がない。オールマイトを越えられない、それで終わりでいいだろう。万年No.2?TOP10なんて上澄みも上澄みだ。確かに1位は嬉しいが、そこまで強い上昇志向はやがて身を焼くぞ。
「そんなんだから、いつまで経っても1位になれないんだよ
「貴様……!!」
「なんだ、やるか?俺は雄英生、子供だ。下手に傷をつければ責任を負うのはそっちだぞ」
「治せるだろう!!現にあの小僧の傷を……!」
「アレは俺が目かけてんのと、ちょっとした親近感。あとは情け。後の試合出場できなくて、代わりに轟が出場……なんてこと、勝つよりも恥ずかしいだろ?」
「こ、のォ……!!」
……流石に言いすぎたか?
「事情の一旦しか知らない子供相手にここまで言わせるような事をしている、という事実は飲み込んでおけエンデヴァー。……俺は轟のように甘くはないぞ」
もしもお前が他に何か……
「……赫灼──」
「『
「!」
「じゃあなエンデヴァー。ちゃんと警備しとけよ」
……エンデヴァーの姿が見えなくなって、観客席に戻った頃に『
「おかえり、曽我。今飯田とB組の子の対戦だよー。……どったの?」
「やっちまった……」
「えホントに何やったの!?」
エンデヴァーにはこれくらい言わないとダメな気がする。あと
主人公がなぜ氷叢の名と没落のことを知っているのかは後々。まぁヒントもろに出してるので、気づく人はすぐに気づくかと。