「はぁー……なーんにも出来なかったなぁ、黒霧」
とある廃ビル、その端。ぽつんと佇む、テナントなど無いバー。
そこは、敵のアジト。手だらけ……死柄木弔と、黒霧。そして、改人脳無の。
「仕方ありません、死柄木弔。妖刀……『真打』とはいえ、脳無一つで抑え込めたのですから、むしろ結果は上々と言ったところでしょう」
「そうだけどさ……でも、オールマイトは殺せなかった」
「……仕方ありません」
結果が振るわなかったのか、はたまた上々だったのか。どっちつかずとも言えるなんともいえない結果に、死柄木は一喜一憂していた。
そこに、突如流れるテレビの音声。
『仕方ないよ弔!アレは殺戮兵器だからね』
草臥れた、しかし芯の通った初老の男性の声。だがそれは、好奇心か呆れか。様々な感情が篭っている。
「……殺戮兵器?」
『かつて、妖刀は僕を追い詰めた……オールマイト程ではないけどね。その最高傑作、強く無いはずがない』
「……わかったよ、先生。また牙を砥ぐ」
『そうだ、牙を研げ死柄木弔!君の恐ろしさを今度こそ!世界に知らしめてやれ!』
テンション高く、両手を広げるように笑う男性──オールフォーワンは、うすら笑みを浮かべて機を待っていた。
「おはよう」
「「「おはようございます!!」」」
元気な挨拶と共に、1-Aは安堵の息を吐いた。担任である相澤先生の無事をこの目で見るまで、少しばかり不安だったりからだ。
「……先の襲撃、よく乗り越えた。だが……曽我。お前勝手に向かったのはまだ許してないからな」
「わかってます」
「お前はまだプロじゃない。俺たちは生徒であるお前らを守る義務がある」
といっても、脳無とやらには先生1人では太刀打ち出来なかった可能性が高かった。成り行きとはいえ、アレの対処をしてくれて助かったと、勾人にお礼を言った。
「さて。……まだ戦いは終わってない。雄英体育祭があるからな」
「!」
「雄英体育祭!!個性社会でスポーツが衰退していった今、嘗てのオリンピックに代わると言われている雄英高校最大の目玉!プロヒーローまでも観にくる、日本最大級のエンタメと言っても過言じゃ──」
「そこまでだ緑谷。……そう、プロも観にくる。ただし、スカウト目的で」
(スカウト?)
「体育祭の後に職場体験っつーのがある。そこで指名を貰うんだよ。……もちろん、より自分が有用と思われた方が……即ち目立つ奴が指名数は多くなる。例年はバラけるが……今年は殻を突き破りそうな奴らが多い。どうなるかな」
そう言って、相澤はニヒルに笑う。無論、生徒も皆笑っていた。ニヒルとかではなく、純粋に自分の未来を切り拓くチャンスだから。
「と言うわけで、体育祭まで残り2週間だ。ま、自分にできることをやってこい」
「「「はい!!」」」
朝ながら、今後1週間で一番元気な返事が響いた。
・・・・・
「お昼食べよ、曽我」
「食堂か」
「うん」
珍しく、耳郎に誘われて食堂に行く。いつも1人で食べているところを、相席されたりする側だ。最初に誘われるのは初めてだった。
「しゃけ美味し……!ウチ今度食堂メニュー全制覇することにした」
「本題はそこじゃないだろ」
「……バレてた?」
「目が踊ってたぞ」
「マジかー……」
恥ずかしそうに笑う耳郎を横目に、うどんを啜りながら話を促す。
「で、要件は?」
そう言うと耳郎は、目を見開いてから、手を前に出す。多分「ちょっと待ってて」サイン。ゆっくり食べろよ。
「っん。……付き合ってほしいんだ」
……?