ここまでがオープニング。
時系列的には映画本編の2年前くらい。
かつて、1級呪術師として渋谷で特級呪霊を相手に勇猛に戦った少女がいた。しかし虚しくも彼女は敗北し、その身を焼かれて命を落とした。少女の人生はこれで終わるはずだった―。
相模来夏からライとして風の谷に生まれ変わってから約3年で彼女は前世の記憶と術式に目覚めた。
彼女が最初に感じたのは、"絶望"だった。全身を焼き尽くす炎に飲まれ、気がつけば自分の知らない世界に生まれた。
「……なに、この世界……。私の知らない世界だ……。あぁ、私ほんとに死んだんだ……。もうあいつらに、会えないんだ……。二度と帰れないんだ……。ハハ……、ハハハハ……。ァ……アァ……アァァ……!」
もう、二度とあの世界に帰れない…。二度と皆に会うことはできない…。この現実が彼女の心を大いに苦しめた。
唯一の救いは、この谷に住む人々は皆暖かかった事。
3歳で来夏としての記憶と自我に目覚めて以降、集めたこの世界の情報では腐海の他にも戦争や飢餓による奪い合いが起こっている中、ここだけは平和に助け合って生きていた。
しかし暖かく優しいからこそ、来夏─ライは自分なんかと関わってはいけないと考えていた。
その原因の一端が、"呪霊"の存在だった。
『呪霊』。人間の負の感情から漏れ出た呪力が形を成した存在。それが、この世界にも存在していたのだ。
右も左もわからないこの世界に放り込まれたライにとって、呪術だけが彼女が唯一縋れる物だった。
ライは呪力量を取り戻す鍛錬を毎日行なった。5歳になる頃には呪霊狩りを始めた。
なぜ、自分がこの終末世界に転生したのか──。
なぜ記憶と術式を引き継いだのか──。
それを知る術は無い……。
ただ1つ解るのはこの世界でも呪いは生まれるという事だけ。ならどうするか……。自分は呪術師だ、呪いが存在するなら祓うだけだ。
だが、この世界でも呪術師として生きるという事は、大切な人達を呪いとの戦いに巻き込んでしまうかも知れない事。
呪術師と……、呪いと関わってしまえばその人は確実に碌な人生を送れなくなる……。最悪、"悲惨な末路"を迎える事にもなる。
この谷の暖かい人々を、ナウシカを巻き込んでしまう……。
だからこそ、ライは皆との距離を置くのだ。
彼女の一日に子どもらしい事は何も無い。他の子ども達と遊ぶ事もせず毎日大人たちの畑仕事の手伝い、空いた時間に鍛錬。そして夜には谷の近くにある『酸の海』と呼ばれる湖の付近にある砂漠で、人知れず呪霊を狩る日々。
そんな毎日を繰り返し、気がつけば彼女はこの世界で11歳になっていた。
「あ! 姫姉様だ!」
「姫姉様ぁ〜!」
子ども達がこの谷の族長の娘、ナウシカに群がり甘える。
「フフッ、おいで皆!」
彼女も14歳とは思えない聖母の如く優しい笑みで子ども達を抱きしめる。
「……」
その様子をライはただ影から見るだけ。そしてすぐに立ち去ってしまう。あんな優しい人を呪いに関わらせたくない。
だがそれ以上に、彼女は
前世より幼少の頃から彼女は血と呪いに塗れて生きてきた。
かつて彼女の家であった相模家は呪術界において特殊な立ち位置にあった。それは"呪詛師相手を専門とした暗殺一族"であること。
御三家程ではないがそれなりに名の通った家系であり、"呪霊より呪詛師を殺した数が多い"と言われている相模家に身を置いていた
彼女の手は、常に呪霊の残穢と殺した呪詛師の血で汚れていた。厳しい訓練に呪霊討伐と呪詛師暗殺。
そんな環境で、"誰かに甘える"という行為など出来るはずもなかった……。
だから今のライは周りの優しい大人達、そしてナウシカにどう甘えて良いのか分からない。
前世との年齢を合わせたら、もう誰かに甘える様な歳じゃないとただひたすら自分に言い聞かせて──。
「……あ」
そんな彼女の背中を、ナウシカは何度も見てきた。
『ライ、貴方もおいで!』
『すみません姫様。これから収穫の手伝いがあるので……、失礼します』
『あ……待って……!』
どれだけ手を伸ばそうとしても、彼女の手はいつもスルリと抜けていってしまう。それでもナウシカは何度でも手を伸ばす。
「ライ……」
ナウシカからは、彼女の背中にはいつも重い何かを背負っている様に見えた。彼女の琥珀色の目はいつもここじゃない
そんなライを、ナウシカはどうしても放っておけなかった。
これで良い。こうして周りと壁を作ればいつしか自分の相手など誰もしなくなる。そうすれば呪いに巻き込む事も無くなる。
この谷自体は不思議と呪霊があまり湧くことはなく、近くの砂漠に湧く呪霊の群も大抵は4級以下の呪霊ばかり。
ならばいつか自分がここから居なくなっても大丈夫。
どちらにせよ、ある程度の歳になればこの谷から出るつもりだった。その為に、谷に呪霊が入って来れないよう手作りの呪符を密かにあちこちに貼って結界を作ってきた。
ただ一つ誤算があるとすれば、それは彼女の思っている以上に、この谷の人々は情に厚かった事。
そしてそれ以上に、ナウシカはライの孤独に寄り添って理解しようとしていた事だった。
今は分からなくても──、いずれライに取ってこの谷は掛け替えのない"大切な居場所"である事に気づくだろう。
大丈夫、独りじゃない。だから恐れないで──。
皆をそして自分を信じて。君ならきっとこの大切な場所を守れるだろう。
だって
結構時間空けた割には、内容薄いかな…。
一応、両作品の設定にはなるべく忠実にするつもりですが、多分ガバがでるのでそこは御愛嬌ということで…。