今回は何とか長く書けた。
次回も同じくらい書けるかな…。
呪術廻戦0のGreatest Strengthって曲、本当に良いですよね。
前回と同じく、映画本編の2年前からのスタートになっています。
ライは11歳。ナウシカは14歳です。
風の谷の呪術師 ―谷に吹くは『風の伝説』―
火の7日間により、巨大産業文明が崩壊してから1000年が経った世界──。
錆とセラミック片で汚れた大地には、有毒の瘴気が漂う菌類の森『腐海』で覆われ、人類の生存域は刻一刻と無くなりつつあった。
そして争いや飢餓、腐海と蟲への恐怖は『呪い』としてこの世界の大地に染みついていた。
たとえ世界や時代が変われど、人が人として生きる限り『呪い』は生まれ続ける──。
この世界に生まれた呪術師の少女ライが住む辺境の小国『風の谷』は海から吹く風により腐海の胞子から守られていた。
故に、この谷に住む人々は平和に過ごす事が出来ていた。
どこまでも澄み渡る青い空。畑仕事の手伝いをしていたライが、ふと上を見上げれば白い鳥の様な物が空を舞っていた。
この谷の族長の娘、ナウシカの愛機である小型グライダー『メーヴェ』の影である。腐海から谷に戻ってきたところのようだ。
「……また姫様は腐海遊びか」
どこか諦観した表情で空に舞うメーヴェを目で追いながら呟くライ。
14歳でありながら本当にアクティブな人だと思いながら仕事の続きをする。
畑仕事を終え、暇になったライは日課の鍛錬をしようと歩いていた所で、ナウシカや城オジのミトを囲むように人集りが出来ているのを見かける。
「それでね、また立派な王蟲を見かけたのよ! もしかしたら近くにその抜け殻もあるかもしれないわ!」
「しかしですなぁ、姫様。そう頻繁に腐海へ行かれては心配でこっちの身が持ちませんぞぉ!」
腐海の出来事を楽しそうに話すナウシカと、腐海遊びに対して小言を言うミト。
その光景を人々は笑いながら見ている。この谷では最早見慣れた光景だ。
「姫姉様! 今日もお話聞かせて!」
「ええ、もちろん!」
「聞いとるんですか!? 姫様!」
子ども達もその中に混ざり楽しそうに話し、話を聞いていないナウシカにミトが憤慨する。
「ハハハ! 諦めろ! 姫様が腐海遊びに行くなんて昨日今日で始まった事じゃねぇだろ」
「そーそー、それこそ姫様らしいや!」
── ハハハハハッ! ──
そしてそれを谷の人達が笑いながら囃し立てる事で周りがより賑やかになっていく。平和で、とても微笑ましい光景がそこに広がっていた。
「(相変わらずウチの姫様は人気者だな……)」
そんなやりとりをライは1人離れた所から見ていた。彼女はその輪に混ざろうとはしない。常に一歩引いた所から眺める。それが今の彼女のスタンスだった。
「あ、ライ!」
「おぉ、ライ!」
ナウシカとミトがライの存在に気づき、他の皆もライの方を見る。
存在に気づかれた事で流石に無視する訳にもいかず、軽い挨拶をすることにしたライ。
「こんにちは、ミトじぃ。姫様。今日も彼女は腐海遊びに行っていたんですか?」
「あぁ、全く姫様には困ったものだ……」
「だって、腐海はとても綺麗な所なのよ?」
「はぁ、そうですか」
ナウシカは本当に楽しそうに腐海の話をするなと思いながらライはそろそろ日課の鍛錬に行こうと離れる。
「では、私は失礼します」
「あ、待ってライ!」
「ちょ、ちょっと姫様ぁ〜!?」
足早にその場から立ち去るライとそんな彼女を追い掛けるナウシカ。後ろから彼女を呼び止めようとするミトの声が聞こえてくるが、そんな事など気にせずナウシカはライの後を追った。
「今日もライちゃんは物静かだったね」
「あぁ、何と言うか……。どこか大人びてるというか……」
「あの子のお母さん、数年前に病気で亡くなっているんでしょ? 今は1人で暮らしているみたいだけど、大丈夫かしら……?」
ライとナウシカが立ち去った後、その場に残っていた大人達が次々とライの事を心配し始める。
「あの子、他の子ども達とも殆ど遊ばないらしいね」
「そうなんだよ。畑仕事をよく手伝ってくれてる身としてはいつも助かっているけど、大人としてはやっぱり心配だな……」
「まぁ、大丈夫だろう。姫様もライの奴に寄り添おうとしてくれとるし、そのうちあの子も心を開くだろう」
最後にミトがそう締め括ると他の人達も"そうだな"と納得し、その場から解散する。
そう、ライが思っている以上にこの風の谷に住む人達は皆彼女の事を想ってくれているのだ。
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あの人集りから離れ、私は日課であるいつもの鍛錬に行こうとしていたのだが……。
「ねぇ待ってライ!」
姫様が着いてきた。全く、この人は私の何が気に入っているのか……。いつもこうして寄ってくる。私がどれだけ距離を置こうがお構いなしにグイグイと距離を縮めてくる。
「ねぇライ。ライは他の皆と遊んだりしないの?」
姫様がそんな事を聞いてくる。確かに私はこの村の子ども達とあまり関わっていない。今の私は前世と今世の年齢を足したら余裕で大人なんだ。そりゃ他の子ども達と混ざって遊ぶ歳じゃないな。最も、中身の精神年齢は前世で最期の年齢だった15歳で止まってるみたいだが……。
「単に遊ぶよりも仕事してる方が落ち着くんですよ姫様」
「でも、
「……!」
この人は……。全く核心的な事を突いてくるな……。
寂しくないかって?
もう、
「大丈夫ですよ姫様。私は1人で居る方が好きなので……」
「ライ、でも……!」
なおも食い下がる姫様……。気持ちはとても嬉しいよ。でも……。
だからこそ、
貴方を、呪いに巻き込みたく無い……。
「そろそろミトじぃの所に戻った方がいいんじゃないんですか? じゃないとあの眼帯ヒゲおやじがまた怒りながら姫様の事探しまくりますよ?」
「もう、そういう事言っちゃ駄目よ? ライ」
「冗談ですよ。では姫様、また明日」
「……うん。またね、ライ」
軽い冗談を言ってその場を誤魔化し、とりあえず姫様を帰らせる。
はぁ……。ホント、この世界に生まれ変わってからというもの、すっかりセンチメンタルになったな私。高専であいつらに出会うまでは、独りが普通だと思っていた。呪術界の中でも最も血に塗れた一族、"相模家"。厳しい訓練の果てに待っていたのは呪霊の討伐と呪詛師の暗殺。それを私は幼少の頃からずっと行なってきた。
そんなクソみたいな環境で過ごしてきた私にとって、"誰かに甘える"というのがどうしてもわからなかった……。誰かに甘えた記憶が私には無い。……いや、ずっと昔にとても大切な人が側に居てくれたような……。駄目だ、思い出せない……。
でも、姫様を見ていると不思議な気持ちになる。とても懐かしい様な気分で、思わず自分の中から熱いものが込み上げてきそうな、そんな気分だ。なんでだろう……。
そんな事を考えていると、一匹のミツバチが私の肩に止まった。否、ミツバチは既にこの世界では絶滅している。普通の虫自体はいるみたいだが、そのどれも私が知っている物じゃない。
そう、このミツバチこそが私の術式により生み出した式神。
『
自身の呪力を使って虚空から虫を生み出し操る術式。生み出した虫は呪力を更に込める事でより大きく強くなる。五条先生曰く、夏油傑の呪霊操術と伏黒の十種影法術を足して2で割った様な術式。
呪力がある限り幾らでも生み出せるが、あまり大量だと虫自体が弱くなる。一体の虫に呪力を注いで強化するか、呪力で大量の虫を生み出すか。要は"質"か"量"かを選べる聞くだけならかなり強力な術式だ。
しかし、元々この術式はそこまで強い術式じゃない。本来の万蟲術式は普通の虫の式神を生み出すだけの術式だ。大きさも本物の虫と同じで大きくする事も出来ない。
呼び出せる数も5匹から多くて10匹程度で巨大化もできず、せいぜい呪力で少し強化する程度の術式だったこと。とても呪霊を祓うには向いてなかった。正に暗殺に特化した術式だった。
だからこそ、呪霊討伐をより優位にする為に私はこの術式にある2つの"縛り"を課す事で徹底的に強化した。
それは『
本来、式神というものは呪霊と同じで非術師には見えない存在だ。
それを私は非術師にも見える様にし、尚且つ呪力の籠っていない様な銃火器でも殺せるという呪術師として致命的なリスクと引き換えに、私の万蟲術式はより多くの呪霊を祓える様になった。
そして、この世界に転生した後もその縛りは変わらなかった。
閑話休題──。
肩に止まったミツバチを指先に乗せる。こうする事でこの式神が見た情報を読み取る事ができる。
「なるほど、また呪霊が湧いたのか。場所は……。ん? いつもの砂漠じゃない? ……海に湧いたのか」
どうやら、今回は海に大型の呪霊が湧いたらしい。ならいつも通り夜に行くか。式神が他人に見える以上、目立つ昼間に行く訳には行かない。
この世界には腐海や戦争、飢餓の恐怖に溢れかえっている。故にその恐怖から滲み出た呪いはこの世界の大地に染み付いている。そのせいで砂漠などの人が居ない場所にも雑草の様に呪霊が湧き上がる。
「(世界や時代が変われど、人が人として生きる限り『呪い』は生まれ続ける……か)」
それでも私のやる事は変わらない。私は呪術師だ。目の前に呪いがあるなら、私はそれをひたすら祓うだけだ。
例え、その道が孤独で終わりのない"マラソンゲーム"だとしてもだ……。
そして夜、私は術式で生み出した巨大な『オニヤンマ』の式神に乗って今日も呪霊を祓いに行く。
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嵐の様な風が吹き抜ける夜。私は城にある自室の窓から外を眺めていた。考えているのはライのこと。
「……ライ」
昔からあの子はいつも皆と距離を取っていた。それなのに、いつもどこか寂しそうにしている。
私には、あの子がなにか重いものを背負っているように見えた。あの綺麗な琥珀色の瞳には、何処か遠い所を見つめていた。
ライ、どうして貴方は孤独であろうとするの……?
「いつか、あの子の笑顔が見たいな……」
そんな事を考えていると、私の視界にあるものが映った。それは一体の"蟲"だった。……え、蟲!?
まるで『大王ヤンマ』の様な大きな蟲が、海に向かおうとしていた。
「(な、なんで谷に大王ヤンマが!? しかも海に向かおうとしてるなんて……。そっちは
それだけでも由々しき事態なのに、私はさらに信じられないものを見てしまった……。
「え……、ライ?」
ライが、蟲の上に乗っていたのだ。
「(まさか! 攫われたの!? ……いえ、違うわ)」
攫われたんじゃない。自ら蟲に乗っているんだ。
その証拠にライは海の方を指差して蟲に指示を出している様に見えた。
……どういう事なの? どうしてライが蟲の上に乗っていて、しかも手なづけているの?
ライ、貴方は一体何者なの……?
「私……あの子の事、本当に何も知らないんだ……」
ライの事、もっと知らないとダメだ。もしかしたら、あの子の孤独にも何か関係があるのかもしれない……。だから知らなきゃ……、そうじゃないと……。
いつか、あの子が
ライの容姿。
茶髪のセミロングに琥珀色の瞳。前世の相模来夏も同じ容姿。