目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!?   作:W297

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12話 忘れてはいけない人

 フロント前にたむろしていたエール団を吹っ飛ばしユウリ達はマリィと出会った。

 

 そして3人はチェックインしてホテルの部屋に入り、ユウリは俺たちをボールから出す。

 

「…それじゃ、出てきて3人とも!」

 

「…ソル」

 

「ラビッ!」

 

「リン!」

 

 俺は改めて穂乃花の体を見る。

 

『進化したんだな、ホントに』

 

『うん、ちょっとは白斗に近づいたかな』

 

 そう穂乃花は嬉しそうに話してくる。

 

『…進化、か。いつになるんだろうな、俺は…』

 

 蒼真は進化した穂乃花の姿を見て、そう呟く。

 

『まあ進化あるだけいいじゃねえか、俺なんて無進化だぞ?』

 

 俺が蒼真に返すと、彼は『とはいってもよ…』と返してきた。

 

『コリンクって、レベルどれくらいで進化だったっけ?』

 

『確か私と同じくらいじゃなかった?

 

 20代ではなかったはずだよ』

 

『なら、もう少しか…。

 

 頑張らないとな、俺も…』

 

 蒼真は改めてそう気合を入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???SIDE

 

 その日の夜。深い眠りについたユウリ。

 

「あれ、ここどこだろ…?」

 

 ユウリはある建物の中に立っていた。

 

 白い壁と、長い廊下。そして大きな窓から差し込む光と、黒板。

 

 いくつもの部屋があり、その中には多数の机が並んでいる。

 

「学校…?でも、私が通っていたトコじゃないよね…?」

 

 ユウリはその学校に見覚えがなかった。

 

 ここに来たことは一度もないはず。

 

 そんな中、ある声が聞こえてきた。

 

「…あ、白斗ー!」

 

 言葉のした方を見ると、教室の中にいたのは3人の学生。

 

「…ねえ、白斗。

 

 そろそろいこーよ」

 

「ああ、分かってるよ穂乃花。

 

 蒼真、お前も行けるか?」

 

「ああ、大丈夫だぜ。

 

 にしてもよ、なんで次の授業別校舎なんだ…」

 

 そう言って3人は教室を出て他の場所へと向かっていく。

 

「…なんだろ、あの人たち」

 

 ユウリには今の3人と会った記憶はない。

 

 …ただ、傍にいてくれれば安心できる。そんな感覚だった。

 

「あの白斗って言ってた人、ずっと近くにいてくれてたような…」

 

 特に白斗と呼ばれていた黒髪のあの静かな青年、あの人にはずっと守られている…。

 

「なんだろ、この懐かしいような気持ちは」

 

 離れていく後ろ姿、3人が話をしながら笑い合う姿…、その姿からなぜかユウリは目を離すことは出来なかった。

 

「…どこかで見たことあるような」

 

 ユウリがそう悩むが、思い出すことは出来ない。

 

「ま、待って…!」

 

 ユウリはそう言って3人の後を追いかける。

 

 …だが、走って追いかけていくほどに、3人の姿は遠く小さくなっていく。

 

「ま、待っててば…!」

 

 そんな中、白斗と呼ばれた少年がこっちを振り返る。

 

 その顔は小さかったが、ユウリにははっきりと見え、心の奥からある記憶が出てきた。

 

 昔からずっとそばにいて、自分のことを一番知ってくれている大事な存在。

 

「ま、待ってよ…!」

 

 

 

 

 

「…ねえってば、(はく)にぃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねえってば、(はく)にぃ!

 

 

 

 

 

 俺はユウリのそんな声で目を覚ます。

 

「はぁ…、はぁ…」

 

 …何か焦っていたのか、ユウリの呼吸が荒れている。

 

「…夢?」

 

 ユウリはキョロキョロと周囲を確認している。

 

「…誰なんだろ、白にぃって…」

 

 ユウリは起きるときに叫んだ名前をそう繰り返す。

 

「…ソル?」

 

 俺がユウリの前でそう鳴くと、ユウリは「ごめん、アブソル。起こしちゃったかな」と俺に話してくる。

 

『…何があったんだ?』

 

 俺がそう聞くが、「大丈夫、変な夢を見ただけだから」とユウリは話す。

 

「おやすみ、アブソル」

 

 そう言ってユウリは再び目を閉じて、布団に潜り込む。

 

 ユウリからはしばらくして、静かな寝息が聞こえ始めたが、俺は眠ることが出来なかった。

 

(聞き間違いじゃなければ、ユウリの奴、「(はく)にぃ」って言ってたよな…)

 

 俺が知っている中で、そんな呼び方をする人間はほとんどいない。

 

 …強いて言えば。

 

 

 

 

 

(…ユウリ、お前は本当に愛奈なのか…?)

 

 

 

 

 

 一番大事な存在から、俺に向けて毎日のように聞いていた呼び名。

 

 初めてユウリのことを見たときから、捨てることが出来なかったユウリ=愛奈という可能性。

 

(…ただ、確認したくてもなんだよな…)

 

 俺からユウリに確認することはできない。俺の言葉はユウリに伝わらないからだ。

 

『なあユウリ。愛奈なんだよなお前は…』

 

 俺はそう呟くが、返答はない。

 

『…お前の大好きなお兄ちゃん、…白にぃだ』

 

 改めてそう呟く、もちろん返答はない。

 

(…ちっ、なんで…)

 

 俺は軽く右前足をとんっとベッドにたたきつける。

 

(なんで、俺の言葉はコイツに伝わらないんだ…)

 

 …もし愛奈なら。俺のことを覚えているのなら。

 

 こうやって俺が傍にいると彼女に伝えたい。

 

 …こんなに近くにいるのに、伝えることが出来ない。

 

(…ポケモンになってから、こんな気持ちになるなんてな…)

 

 なんで『白にぃ』と夢の中で言ったのか、それを聞ければいいのだが…。

 

(…ただ、確定したわけじゃねえんだ)

 

 俺はそう思う。夢の中で不意に出た言葉かもしれない。

 

 ただ、それでも可能性は高くなった。

 

 …それなら、俺のやるべきことは一つだ。

 

 俺はユウリが寝ている横に丸くなる。

 

(お前が愛奈でも、そうでなくても。

 

 俺が守るべき存在ってことに変わりはないんだ)

 

 …そして、寝返りをしたユウリの手が俺の頭にかかる。

 

 いつもだったら振りほどく俺だったが、今回は何もしなかった。

 

『…俺はいつでも傍にいるからな、ユウリ』

 

 …俺はそう呟き、再び眠りに入る。

 

 眠気により視界が薄くなっていた中で、その言葉を聞いたユウリの顔は若干満足そうな笑顔をしていた。

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