目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
フロント前にたむろしていたエール団を吹っ飛ばしユウリ達はマリィと出会った。
そして3人はチェックインしてホテルの部屋に入り、ユウリは俺たちをボールから出す。
「…それじゃ、出てきて3人とも!」
「…ソル」
「ラビッ!」
「リン!」
俺は改めて穂乃花の体を見る。
『進化したんだな、ホントに』
『うん、ちょっとは白斗に近づいたかな』
そう穂乃花は嬉しそうに話してくる。
『…進化、か。いつになるんだろうな、俺は…』
蒼真は進化した穂乃花の姿を見て、そう呟く。
『まあ進化あるだけいいじゃねえか、俺なんて無進化だぞ?』
俺が蒼真に返すと、彼は『とはいってもよ…』と返してきた。
『コリンクって、レベルどれくらいで進化だったっけ?』
『確か私と同じくらいじゃなかった?
20代ではなかったはずだよ』
『なら、もう少しか…。
頑張らないとな、俺も…』
蒼真は改めてそう気合を入れていた。
◇ ◇ ◇
???SIDE
その日の夜。深い眠りについたユウリ。
「あれ、ここどこだろ…?」
ユウリはある建物の中に立っていた。
白い壁と、長い廊下。そして大きな窓から差し込む光と、黒板。
いくつもの部屋があり、その中には多数の机が並んでいる。
「学校…?でも、私が通っていたトコじゃないよね…?」
ユウリはその学校に見覚えがなかった。
ここに来たことは一度もないはず。
そんな中、ある声が聞こえてきた。
「…あ、白斗ー!」
言葉のした方を見ると、教室の中にいたのは3人の学生。
「…ねえ、白斗。
そろそろいこーよ」
「ああ、分かってるよ穂乃花。
蒼真、お前も行けるか?」
「ああ、大丈夫だぜ。
にしてもよ、なんで次の授業別校舎なんだ…」
そう言って3人は教室を出て他の場所へと向かっていく。
「…なんだろ、あの人たち」
ユウリには今の3人と会った記憶はない。
…ただ、傍にいてくれれば安心できる。そんな感覚だった。
「あの白斗って言ってた人、ずっと近くにいてくれてたような…」
特に白斗と呼ばれていた黒髪のあの静かな青年、あの人にはずっと守られている…。
「なんだろ、この懐かしいような気持ちは」
離れていく後ろ姿、3人が話をしながら笑い合う姿…、その姿からなぜかユウリは目を離すことは出来なかった。
「…どこかで見たことあるような」
ユウリがそう悩むが、思い出すことは出来ない。
「ま、待って…!」
ユウリはそう言って3人の後を追いかける。
…だが、走って追いかけていくほどに、3人の姿は遠く小さくなっていく。
「ま、待っててば…!」
そんな中、白斗と呼ばれた少年がこっちを振り返る。
その顔は小さかったが、ユウリにははっきりと見え、心の奥からある記憶が出てきた。
昔からずっとそばにいて、自分のことを一番知ってくれている大事な存在。
「ま、待ってよ…!」
「…ねえってば、
◇ ◇ ◇
「…ねえってば、
俺はユウリのそんな声で目を覚ます。
「はぁ…、はぁ…」
…何か焦っていたのか、ユウリの呼吸が荒れている。
「…夢?」
ユウリはキョロキョロと周囲を確認している。
「…誰なんだろ、白にぃって…」
ユウリは起きるときに叫んだ名前をそう繰り返す。
「…ソル?」
俺がユウリの前でそう鳴くと、ユウリは「ごめん、アブソル。起こしちゃったかな」と俺に話してくる。
『…何があったんだ?』
俺がそう聞くが、「大丈夫、変な夢を見ただけだから」とユウリは話す。
「おやすみ、アブソル」
そう言ってユウリは再び目を閉じて、布団に潜り込む。
ユウリからはしばらくして、静かな寝息が聞こえ始めたが、俺は眠ることが出来なかった。
(聞き間違いじゃなければ、ユウリの奴、「
俺が知っている中で、そんな呼び方をする人間はほとんどいない。
…強いて言えば。
(…ユウリ、お前は本当に愛奈なのか…?)
一番大事な存在から、俺に向けて毎日のように聞いていた呼び名。
初めてユウリのことを見たときから、捨てることが出来なかったユウリ=愛奈という可能性。
(…ただ、確認したくてもなんだよな…)
俺からユウリに確認することはできない。俺の言葉はユウリに伝わらないからだ。
『なあユウリ。愛奈なんだよなお前は…』
俺はそう呟くが、返答はない。
『…お前の大好きなお兄ちゃん、…白にぃだ』
改めてそう呟く、もちろん返答はない。
(…ちっ、なんで…)
俺は軽く右前足をとんっとベッドにたたきつける。
(なんで、俺の言葉はコイツに伝わらないんだ…)
…もし愛奈なら。俺のことを覚えているのなら。
こうやって俺が傍にいると彼女に伝えたい。
…こんなに近くにいるのに、伝えることが出来ない。
(…ポケモンになってから、こんな気持ちになるなんてな…)
なんで『白にぃ』と夢の中で言ったのか、それを聞ければいいのだが…。
(…ただ、確定したわけじゃねえんだ)
俺はそう思う。夢の中で不意に出た言葉かもしれない。
ただ、それでも可能性は高くなった。
…それなら、俺のやるべきことは一つだ。
俺はユウリが寝ている横に丸くなる。
(お前が愛奈でも、そうでなくても。
俺が守るべき存在ってことに変わりはないんだ)
…そして、寝返りをしたユウリの手が俺の頭にかかる。
いつもだったら振りほどく俺だったが、今回は何もしなかった。
『…俺はいつでも傍にいるからな、ユウリ』
…俺はそう呟き、再び眠りに入る。
眠気により視界が薄くなっていた中で、その言葉を聞いたユウリの顔は若干満足そうな笑顔をしていた。