目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
次の日、俺たちはターフスタジアムへとやってきていた。
「…それじゃ、行こっか!」
ユウリは何かを決した雰囲気でスタジアムへと入っていく。
…ボールの中にいるが、ユウリの緊張はつたわってくる。
(…いつも通りやってくれれば大丈夫だぞ、ユウリ)
俺はボールの中でそう思っていた。
◇ ◇ ◇
…と、思っていたのだが。
「ちょっと、待ってよー!
あ、君そっちいっちゃだめー!」
「ぐめめ~♪」
…ユウリはごろごろと好き勝手に動くウール―達に振り回されていた。
多分、実際に生きている生き物相手だから、ゲーム以上に好き勝手に動いているのだろう。
…ちなみに、ユウリは俺を追い込みに使おうと思っていたらしく、スタジアムの入り口で会ったホップには「大丈夫、秘策があるから!」と話していたのだが。
ジムミッションが始まった瞬間に俺をボールから出したところ、「ジムミッションにおいて、バトル中以外のポケモンの使用は禁止です」という放送があった。
…その時のユウリの絶望した表情は鮮明に覚えている。
ユウリはそこまでフィジカルに自信があるわけじゃない。
ひたすら走ってかなりしんどそうなユウリの声が伝わってくる。
…まあ。
「…あー!だからそっちいかないでってばー!」
…終わるのだろうか、このジムミッション。
あとで聞いてみれば、他の4人もそう思っていたそうである。
◇ ◇ ◇
「はあ…、はあ…。
今からまたバトルするの…!?」
息が絶え絶えになっているユウリ。
ユウリはなんとかジムミッションをクリア。
これからジムリーダーとのバトルになるわけだが、それ以前にバトルできる状況なのか、これ。
「…僕のジムは初めのジムなので、次々にジムチャレンジャーが来るのです。
ですから、ジムミッションも割と厳しめにしとるのですが…。」
って、大丈夫ですか?息が…」
ジムリーダーのヤローが話してくる中、息が絶え絶えなユウリにそう声をかける。
「い、いや…、久々に走りすぎて…。
…大丈夫です、続けてください…」
「ええ…」
ヤローがドン引いてるぞ、どんな状況だユウリ。
「まあ、ちゃんとジムミッションはクリアしたみたいだし、バトルに入るとしますかね。
行けますか、チャレンジャーさん?」
そうヤローから聞かれると、ユウリはパンパンとほほを叩き、ふうっと息を吐く。
「…だ、大丈夫です!」
「うん、そう言ってもらえるなら大丈夫そうだわ。
それじゃ、勝負を始めましょうか」
そうヤローが言った後、ユウリは歩いていく。
そしてユウリは足を止める。
「これより、チャレンジャーユウ対草ジムジムリーダー、ヤローのジム戦を始めます!
使用ポケモンは2体。
どちらかのポケモンがすべて戦闘不能になった時点で試合終了とします。
なお、バトル中のポケモンの交代は、チャレンジャーのみ認められます。
両者、ポケモンを!」
審判の人の説明が終わると、俺のボールが手に取られた感覚があった。
…やっぱり最初は俺からか。
選んでくれて嬉しいよ、ユウリ。
「行くぞ、ヒメンカ!」
「出番だよ、アブソル!」
「ヒメッ!」
「アブソッ!」
俺は改めて周囲を確認する。広いスタジアム、満員ではなくちらほらと入った観客。
そして、ちらほらと聞こえてくる歓声。
…改めて、今までのバトルとは違うんだな…、と感じる。
「アブソル!環境は違うけど、いつも通りにやろう!」
「アブソッ(おうよっ)!」
俺はそうユウリに向かって吠える。
「ほお、アブソルですか…。
珍しいポケモンだけど、相手に不足なしだわ。
ヒメンカ!対戦したことはないが、こっちも今まで通りやるぞ!」
「ヒメッ!」
相手もそう返してくる。いいバトルになりそうだ。
「ヒメンカ、りんしょう!」
「ヒメッ!」
ヤローからそう指示があった後、ヒメンカは歌声で音の波を出してくる。
「アブソル、かげぶんしん!」
「ソルッ!」
俺はユウリの指示通り素早く動いて分身を作っていく。
…その内の一体に音波があたるが、霧のように消えた。
「アブソル、そのままでんこうせっか!」
ユウリの言葉に対応するように、俺はフィールドに立つヒメンカに対して狙いをさだめ直線的に動いていく。
「迎え撃て、マジカルリーフ!」
俺の前からは無数の葉が飛んでくる。
『…ちっ、よけきれねえ!』
ダメージを負った俺は、少しその場から立ちずさる。
『追撃だ、こうそくスピン!』
ヒメンカはそう勢いよく回転しながら近づいてくる。
…うわー、まともに喰らったら痛そうだな、アレ。
「かわして、つばめがえし!」
俺はユウリの言葉通り、ヒメンカの回転を交わし、そのまま体を反転させて下から突き上げるように攻撃する。
…うん、いい感じにダメージ与えれた。
ヒメンカは大きく吹っ飛ぶが、そのまま体制を立て直していく。
…さすがにこれぐらいじゃ、倒れてくれないよな。
「ヒメンカ、もう一度りんしょう!」
「アブソル、躱して!」
ヒメンカはもう一度歌声を上げる。
…さっきよりも近づいてくるスピードは速い…、が。
それぐらいのスピードなら俺は躱せる!
俺は音波を躱して、攻撃態勢をとる。
「…仕留めに行くよ、アブソル!
はたきおとす!」
…そう言ってくれると思っていたよ、ユウリ。
俺はそのままヒメンカの上へと飛び上がる。
「ヒメンカ、マジカルリーフ!」
ヒメンカからは再び無数の葉が飛んでくる。
…俺は今空中にいる、回避はできない。
それなら。
(ダメージ覚悟で、最大火力!)
無数の葉の雨が俺の体にまともに当たる。
身体中に痛みが走る、正直このまま攻撃を止めてもいいんじゃねえかって思う。
…だけど。
(ここまで来たら、もう吹っ切れるしかねえよな!)
俺はそのまま右前足をヒメンカにたたきつける。
俺の攻撃をまともに喰らったヒメンカはその場に倒れる。
「ヒメンカ、戦闘不能!
アブソルの勝ち!」
…ふう、なんとかなった。
正直、ギリギリの勝負だった。あと1個まともに技を喰らったら倒れていたのかもしれねえ。
「よしっ!」
ユウリがそう笑顔を見せる。
…まあ、初戦を勝利で飾れたってのはユウリとしても大きいかな。
ユウリの嬉しそうな顔を見て、俺はそう思っていた。