目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
「…流石ですね、そのアブソル。
よく鍛えられてるし、あなたとの連携もピッタリです」
「ええ、ジム戦の最初はこの子で行くって決めてたんです。
アブソルが私を信用しているように、私もアブソルを信じてるんで!」
ユウリの言葉に、ヤローは「良い関係性です」と答えてくる。
「…だけど僕たちは粘る!
農業は粘り腰なんじゃ!
…行くぞ、ワタシラガ!」
「ワタッ!」
大きな綿の頭があるワタシラガ。
相手にとって後がない2体目、相手はおそらくここでダイマックスを使用してくるはず。
「チャレンジャー、ポケモンの交代はどうしますか?」
審判の人がそうユウリに話してくる。
『アブ、アブソッ(ユウリ、任せる)』
俺がそう答えた中、ユウリは少し考えながらこっちを見てくる。
…そして、ユウリはボールを構えた。
「…戻って、アブソル!」
やっぱりか、まあ仕方ない。
ユウリがそう告げた言葉に俺は頷き、ボールに戻される。
「…お疲れ様。ありがとアブソル。
もしかしたらまだ出るかもだけど、しばらく休んでいてね」
…お役御免か。まあ1体倒して交代できたのなら最低限だろう。
正直、今からダイマックスポケモンと真っ向からぶつかったら間違いなく負ける。
ユウリも最後にマジカルリーフを至近距離でまともに喰らっているのを見ている。おそらくは念のため…、ぐらいだろう。
「…出番だよ、ラビフット!」
「ラビッ!」
…まあ、そうだろうな…という交代だ。
「ラビフット、準備は出来てるよね?」
「ラビラビ(まかせて)!」
ボールの外から、ユウリにそう返す穂乃花の声が聞こえてくる。
「それでは、試合再開です!」
「さあ、ダイマックスだ!
根こそぎ刈り取ってやる!」
「こっちもダイマックス!
流れは渡さない!」
…見たかったし、経験してみたいな、ダイマックス。
ただ、トップバッターという俺の役割上、ダイマックスをする可能性は低い。
おそらくこれからはダイマックスは穂乃花がやることが多いんだろうけど…。
「ラビフット、ダイバーン!」
「ワタシラガ、ダイソウゲン!」
ダイマックスの技が、ボールの外から聞こえてくる。
さっきの俺の戦いの時より大きく派手な音がスタジアムに響く。
(…これが、ダイマックス…!)
…実際に、その目で見たいし、この体で体験したい。
(だけど、俺の役割的に無理だよな…)
俺は最初に出て場を荒らし、流れを作ることが役目だ。
…それに対して、穂乃花は相手との真っ向勝負。正直やるべき内容が違う。
あんまりユウリはワイルドエリアでのダイマックスポケモンとは戦わない。
…となれば、ストーリーにおいてダイマックスする機会は限られてくる。
(…1回だけでも、ダイマックスしたいな。
折角ガラルに来たんだし)
俺はそう思いながら、審判の「試合終了!勝者はチャレンジャー、ユウリ!」という声をボールの中から聞いていた。
◇ ◇ ◇
「…まずは、1つ目…!」
ホテルの部屋に帰ってきた俺たち。
ユウリはくさバッジをずっと眺めていた。
「8つ揃ったら、綺麗な円になるんだよね…。
楽しみだな…」
『…ずっと見てんな、バッジ』
『うん、それだけ嬉しかったんじゃない?』
俺の言葉に穂乃花はそう返してくる。
『…それで、実際ダイマックスを体験してどうだったんだ?
『あ、それ私も気になる気になる!』
蒼真がそう穂乃花に聞くと、それに追随するように祐希も聞いていく。
『…うーん、特に痛いとかそんな感覚は全くなかったし。
ボールの中に一回戻されて、次にボールの中から出たら目線が高くなってた…、ぐらいかな』
穂乃花はそう答えてくれる。
『…でも、歓声は凄かったよね。
白斗の時もそれなりに上がってたけど、穂乃花の時はそれ以上だったから』
『ああ、やっぱガラル地方でバトルやるならダイマックスが盛り上がるんだろ。
観客の視覚的にも分かりやすいしな』
玲と俺がそう話していると、穂乃花は『うん、凄かったよ』と話してくる。
『…でも、あの戦い方に慣れちゃいけない気がするんだ、私』
穂乃花は若干神妙な面持ちだった。
『え、どういうこと?
スタジアム盛り上がってたじゃん?』
祐希が穂乃花にそう聞くが穂乃花は『だからだよ』と返してくる。
『…私たちの本来のバトルは、あんな派手な技の打ち合いじゃない。
白斗みたいにもっと泥臭くて、お互いに死力を尽くして勝ちに行くってのがポケモンバトルでしょ?
ダイマックスありきの考え方になると、普段のバトルで戦えなくなるって私は思う。
ダイマックスなんて、ガラル地方とはいえ無いところの方が多いんだから』
穂乃花はそう話して、『観客が盛り上がってるのはいいことだけどね』と付け加える。
『…なんか、凄い真面目だな。
お前らしくねえ』
『実際やってみると分かるよ、自分の中の感覚がおかしくなるから。
これからみんなも経験するうえで、理解はしておいた方が良いと思う』
穂乃花はそう俺たちに説明してくれた。