目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
連れられて行くこと数分、ユウリの足が止まった。
「行っておいで!アブソル!」
「…ソルッ!」
ボールから出され、前にいたのはホシガリス。
そして、その後ろにはユウリよりもさらに若そうな少年が立っていた。
…ってことはトレーナーとのバトルか。
やったことないけど、こうやってポケモンとして生まれたからには、やるしかないよな…!。
俺は前傾姿勢になり、威嚇のポーズをとる。
「行くよ、アブソル!
でんこうせっか!」
「ソルッ!」
「ホシガリス、たいあたりだ!」
「ホッシ!」
ホシガリスも俺に対応しようと、たいあたりしてくるが…。
『…遅い!』
でんこうせっか中の俺は他のポケモンたちより一段階早く動く。
…ホシガリスの動きはコマ送りに見えた。
俺はスピードを乗せてホシガリスの体にぶつかって、大きく吹っ飛ばす。
「…ホシガリス、態勢を立て直してもう一度たいあたり!」
「アブソル、かげぶんしん!」
態勢を立てなおしたホシガリスだが、俺の素早い動きによって生まれた分身体によって、戸惑いを見せる。
「…お、落ち着けホシガリス!」
「落ち着かせないよ、でんこうせっか!」
そのまま、俺は再びでんこうせっかの態勢に入る。
おそらく、相手からしたら分身たちが一斉にでんこうせっかの態勢に入ったように見えるのだろう。
…なら、とまどっている間に…!
俺はそのままホシガリスへと体をぶつからせ、ホシガリスは地面へと仰向けで倒れ込む。
体を動かそうとする気配はない、戦闘不能といったところか。
「ソルッ(よしっ)!」
俺はそう勝利の声を上げた。
◇ ◇ ◇
その後もカムカメやサッチムシなどトレーナーとのポケモンバトルをこなしていった。
途中で穂乃花との交代もあったが、おそらくユウリはまんべんなく俺たちを強くさせていきたいのだろう。
別に下げられたからと言って拗ねるほどではない。
そして、ユウリはどこかの建物に到着したみたいである。
…多分、2番道路の奥のマグノリア博士の家か。
となれば、ホップとの試合があるはず。
確か、使うポケモンはウール―、サルノリ、ココガラ。
ここまで野生ポケモンとは戦ってきているけど、捕まえてはいないはず。
ポケモンの数で言えば、少し不利になるな…。
俺がそう思っている中、またボールが持たれたような感覚がした。
…多分相手はウール―。しっかり蹴散らさせてもらうとしよう。
「…出ておいで、アブソル!」
「ソルッ!」
予想通り、場所は2番道路の先のマグノリア博士の家の前のバトルフィールド。
…まではよかったのだが。
(…え、マサル!?)
前にいたのはマサル。そしてマサルのポケモンであるアゴジムシがそこにいた。
(まさか、3人いるから若干バトル形式が変わってるのか…!?)
…まあやることは変わらないか。今まで通り、速攻で押していこう。
「一気に行くよ!
アブソル、でんこうせっか!」
「スピードに乗らせる前に終わらせる!
アゴジムシ、いとをはく!」
マサルからそう指示が入り、アゴジムシから吐かれた糸が俺の右前足へと絡まっていく。
『やばっ!』
俺はなんとか両前足が糸で絡まれることは回避する。
(ちっ、下手に動くと糸がうぜえ…。
あんまり自分からは近づけねえ…!)
「あ、アブソル!いったん回避に専念!」
『了解!』
そうユウリの言葉に返答するが、回避を続ける中、アゴジムシが放った糸がところどころに散らばっていく。
多分粘着力ありそうだし、足を取られそうである。
っていうか、こいつむしくいとかまだ持ってねえよな、虫は苦手だし…。
ゲームならレベルが分かるけど、実際にバトルやってみたらそんな数値出てくるわけがないし。
そう思いながら、回避を続けていると、マサルがアゴジムシに指示を出す。
「こんだけ糸まいとけば動きにくいだろ!
アゴジムシ、はさむ!」
「…ゴゴッ」
…それが狙いか。確かにちょっと動きにくいけど。
「あ、アブソル!糸がないところを経由しながらでんこうせっか!」
…いやユウリ、指示内容が難しすぎるわ。
俺がきょとんとしていると、ユウリが「あっ」という声を上げる。
「…あ、やっぱり無理?
アブソルなら行けるかな…、って思ったんだけど…」
フィールドを見る。80%以上がアゴジムシが吐いた糸で覆われている。
アゴジムシはというと、ゆっくりと俺へと狙いを定めて突進してきている。
…このまま何もしなければ、あの顎にはさまれるって訳か。
『…やってみるか』
俺はそう呟き、ぐぐっと前傾姿勢を取る。
(…アブソルは山に住むポケモンなんだ。これぐらいの悪い足元対応できんだろ!)
そう言ってでんこうせっかの態勢に入り、モゴモゴと動いているアゴジムシに狙いを定める。
(…見えた、攻撃するルート!)
そして、俺は跳ねるようにまだ糸がない場所を経由していき、アゴジムシに突撃した。
俺に体をぶつけられたアゴジムシは家の塀まで飛ばされ、その場でダウンする。
(…できるもんだな)
俺がそう思っていると、ユウリが「アブソル―!」と近づいてくる。
「できるじゃん!指示した私が言うのもなんだけど、よく攻撃できたよ」
そう言ってユウリは俺の頭を撫でてくれる。
それを受けて俺はまんざらでもない表情を見せて、「ソルッ!」と鳴いた。
「よくアブソルのことを信じれたな、ユウリ」
そんな中、ダンデはユウリにそう話しかける。
「はい、あれぐらいならアブソルはできそうかな…って。
極端な話、多分足の踏み場がないような状態でも躱しきれると思ってます」
…うん、俺を信じすぎだよユウリ。できるとは思ってるけど。
ユウリの言葉を受けてそう思いながら俺はボールに戻されていった。