「キレてるキレてる! 肩にボウリング玉乗ってんのかーい!」
「最高にキレてるっすよ! 熱いっす!!」
「静かにトレーニングできねぇのかボケ共!」
雄英が誇るトレーニングルーム。最新式の器具が揃う中、俺は1年B組で推薦2の夜嵐と気合を入れてトレーニングに励み、かっちゃんに叱られてた。
「いやー! お二人とも凄いっすね! 俺も負けられないな!」
「イサナも相当鍛えてるだろ。轟に推薦入試で負けたらしいけど、どんな感じだった?」
「障害物競争みたいな感じだったっす! 炎と氷の合わせ技で完全敗北だった!」
「確かに持久走でも2つ使って加速してたな。俺と原付乗ってた八百万さんには負けて、かっちゃんと同時だったけれど」
「流石は入試一位と二位っすね!」
「だから五月蝿え」
イサナは風を操る個性らしく、まさか自分がその競技で完敗するとは思ってなかったらしい。
なので是非友達になりたいそうだ。
「まあ、父親のエンデヴァーは嫌いだけれど! 昔よりはマシになったっすけれど、未だ無理っす!」
「人気商売でファンサしないからアンチ多いし、ファンはファンで面倒なタイプの人だからな、あの人」
俺自体はエンデヴァーとの接点は爺ちゃんの葬式で会った時以外は無いが、爺ちゃんとブゥさんはそれなりだ。
何でも体に合わない個性なのに無茶な訓練する息子さんについて相談されたブゥさんが治療を何度もする中で体内を冷やす力を発見したとか。
それで親子共々落ち着いたってのが爺ちゃんの見解だ。もし息子さんが大怪我でもしたら絶対に止まれなくなる危うさがあったそうだからな、あの人。
「事件解決数とかファンサに割く時間を事件に使ってるとか、ちゃんとファンが居る理由にも目を向けるべきだし、家族には言うなよ?」
「当然っす! 其処は認めてるし尊敬も出来るけれど、執念で周り見てない目は多少落ち着いても相変わらずっすから!」
「テメェらくっちゃべってるなら外でやれや!」
おっと、そうだタイムイズマネーってね。下校時刻決まってるし、競い合う相手がいた方がやる気が出るからな。
「明日は先生の監督下で模擬戦しない? 総当たりの後で三つ巴。想定としては争ってるヴィラン達の捕縛って事で」
これには二人もやる気を見せる。どうせなら切島とか話が分かりそうな奴も誘いたいよな。
ヒーローって急造チームで戦う事あるし。
およ? メールだ。えっと、何々……ほぉ。
「明日の放課後、爺ちゃんの道場出身のヒーローがオフだし、ちょっとだけなら稽古付けてくれるってさ。二名までなら追加で来て良いそうだけれど……」
「「行く!!」」
「だよねえ。学校から事務所はそんなに離れてないし、俺のマンション泊まって翌日は早朝から学園施設でトレーニングコースな」
これも即座に了承。楽しみだなー。
「え? ヒーローは誰かって? ヨロイムシャさん」
「「トップヒーローの一人じゃあねえか(ないっすか)!?」」
「もう遅くなる。此処までだ」
「「「有難うございましたー!!」」」
翌日、時間としては二時間くらいだったけれど凄く充実した時間だった。爺ちゃんもそうだったけれど、ヤバい時期を乗り越えたヒーローは凄えよ。
イサナは座り込んで、かっちゃんは膝に手を当てて息が上がっている。俺も平然と立ってはいるが、この辺はちゃんとした指導者がいたかどうかの違いだろうな。
むしろ居なかったのに今の状態のかっちゃん、相変わらずの才能。
とにかく、今回の事は本格的になってない今の授業よりも経験になった、
それに別口の収穫もあった。休憩中に出したオールフォーワンの名前に反応があったからな。
……あれか。マジで出久の奴個性貰った可能性あるのか。
「ヨロイムシャ凄いっすね! 爆豪の右から使う癖即座に見抜いたっすし」
「そりゃトップランカーだしな、あの爺さん。それ位はやれんだろ」
ヨロイムシャさんの事務所出た後はマンション近くで飯の材料買って自炊。飯食いながら最後に行った模擬戦の様子を眺める。俺が回復できるからって、それ前提の激しい戦いだ。
総当たり戦で 俺二勝 かっちゃん 一勝 イサナも2回負けたが、ちょっと違ったらかっちゃんに勝利していたかもな。
「うおっ!? 凄っ!?」
俺達が校門を潜ったのは開く時間になって直ぐ。その後で予約取ってた訓練施設での自主練をしていたが、入学したてって理由で授業ギリギリまでは使えなかった。
そうしたら校門の前にはマスコミで溢れ返って通れない生徒が大勢。
イサナが驚くのも分かるが、俺はちょっと経験済みだからな。
「将来的にトップランカー目指すならあれの対応だって必要になるぞ。昨今のヒーローがショービジネス化してるって理由の一つだ」
「んなもん無視すれば良いだろうが。実績で黙らせるだけだ」
「じゃあ、俺インタビュー受けて練習して来るっす!」
「行くな、馬鹿」
イサナに首根っこ掴んでさっさと校舎へと連れて行く。
あの連中に餌くれてやる事はないんだよ。
「本日のHRだが学級委員を決めてもらう」
余裕を持って耳の内部の肉で鼓膜を守れば一気に騒がしくなる。
正体的に他のヒーローを指揮する練習になる事もあってか挙手する生徒が殆どだ。
俺とかっちゃん以外は全員……うん?
「こういう時は真っ先に挙手するタイプだろ、お前」
「やるからには徹底的だ。だが、んな事してたら朝練夜練の時間が減るだろうが。テメェも同じだろ」
将来の練習? 他の連中が俺の後に勝手に続きやがれ、と吐き捨てる。
「あっ、出久が委員長だ」
「はぁ!? ざけんな、ボケ!!」
それはそうと出久に支持率で負けたのは嫌なかっちゃんでした。
俺は八百万さんに投票したけれどな。
「最近のヒーローの半アイドル化はどうかとは思うけれど、市民に威圧感を与えるのはヒーローの職務としてはどうかと思うんだ」
「エンデヴァーみたいな事にはなるなって事っすね!」
お昼、かっちゃんとイサナと共に中庭でランチしながら放課後のトレーニングの打ち合わせ。
三年生は追い込みの時期だから予約も殺到して一年生は後回しだ。
予習として実技前にもう少し個性使用の訓練をしておきたいけれど……それはそうとして二人には言っておくか。
俺はちょっと抱えていた事を話す事にして、二人に二枚の画像を見せた。
「オールマイトっすか? デビュー時と最近のっすね」
「ああ、こうやって比べれば分かるけれど、平和の象徴だって老けている。俺達がデビューして脂が乗り始める頃には更にね」
二人は直ぐに理解してくれる。それとも何となくは分かっていたんだろう。
オールマイトも人間で、老い衰える。そうしたら今の犯罪率は維持されないって。
「市民に安心される振る舞いもそうだけれど、もっと強くなる必要が……」
言葉の最中、警報が鳴り響いた。