第三回戦。
ポセイドン対、佐々木小次郎。
結果――引き分け。
これで三戦、三引き分け。
神――零勝。
人類――零勝。
そして、誰一人として消滅していない。
三度目にして、神々もブリュンヒルデも認めざるを得なくなった。
これは偶然ではない。
何者かがラグナロクへ干渉している。
だが、その正体は分からない。
目的も分からない。
調べても、何一つ痕跡が見つからない。
そして。
分からないからといって、ラグナロクを止めるわけにもいかなかった。
◇ ◇ ◇
第四回戦。
神側代表――ヘラクレス。
人類側代表――ジャック・ザ・リッパー。
舞台は、霧の都ロンドン。
正義を愛する神と、人類史に名を残す殺人鬼。
その戦いもまた、熾烈を極めた。
建物。
街灯。
ワイヤー。
ありとあらゆるものを利用し、ジャックはロンドンという街そのものを武器に変えてヘラクレスを追い詰めていく。
対するヘラクレスも止まらない。
傷つこうとも。
血を流そうとも。
その拳を振るい続ける。
そして、ついに決着の時が訪れた。
「これで――」
ジャックが懐へ潜り込む。
神器と化した手袋。
その手がヘラクレスへ届く。
あと、ほんのわずか。
それで勝敗が決する。
そのはずだった。
「…………?」
ジャックの腕が止まった。
届かない。
あと数センチ。
たったそれだけなのに、指一本動かない。
「……これは?」
同時に。
ヘラクレスの拳もまた、ジャックの頭上で止まっていた。
「…………」
二人の視線が交わる。
直後。
まるで示し合わせたかのように、双方の身体から同時に力が抜けた。
ジャックが膝をつく。
ヘラクレスも片膝をつく。
「…………」
ヘイムダルは何も言えなかった。
観客たちも同じだった。
ただ一人。
ブリュンヒルデが額へ手を当てる。
「……また」
すぐに救護班が駆け寄り、二人の状態を確認する。
双方生存。
双方、戦闘続行不能。
第四回戦。
引き分け。
◇ ◇ ◇
第五回戦。
神側代表――シヴァ。
人類側代表――雷電為右衛門。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
人類史上最強の力士が、自らの肉体を限界まで解放する。
対するシヴァも、全身を炎に包みながら舞う。
「来いやァァァァァ!!」
「上等だァァァァァァ!!」
互いに一歩も退かない。
拳と掌。
蹴りと張り手。
神と人の肉体が、真正面から激突する。
そして最後。
雷電の渾身の掌底。
シヴァの全力の蹴り。
二つの大技が同時に放たれた。
「――ッ!!」
激突。
凄まじい衝撃が闘技場を揺らし、土煙が舞い上がる。
やがて煙が晴れると。
「…………」
二人とも立っていた。
「おお……!」
神々が声を上げる。
「雷電!」
人類も叫ぶ。
どちらも倒れていない。
ならば、まだ続く。
誰もがそう思った。
次の瞬間。
「……お?」
シヴァの身体が揺れた。
「……なんだ?」
雷電も同じだった。
突然、足から力が抜ける。
「おいおい……」
シヴァが苦笑する。
その表情を見て、雷電も察した。
「いやぁ……」
大きく息を吐き。
そして、笑う。
「またみてぇだな」
「……らしいな」
直後。
二人はほぼ同時に倒れた。
双方生存。
双方、戦闘続行不能。
第五回戦。
引き分け。
◇ ◇ ◇
第六回戦。
神側代表――零福。
人類側代表――釈迦。
しかし、その戦いは途中から、誰も予想していなかったものへと変貌した。
波旬。
突如として現れた異形の存在が、圧倒的な力で釈迦を追い詰める。
それでも。
釈迦は退かなかった。
「……悪ぃな」
全身から血を流しながら、それでも笑う。
「俺ァ、誰にも命令されねぇんだわ」
波旬の攻撃。
釈迦がかわす。
反撃。
そして。
ついに決着となるはずの一撃が、波旬へ深く入った。
「――!」
神々が息を呑む。
人類が立ち上がる。
だが。
「…………?」
釈迦が眉をひそめた。
浅い。
本来なら、もっと深く入っている。
明らかに致命傷となるはずだった。
なのに。
波旬は生きている。
「…………」
波旬自身も、自らの身体を見て困惑していた。
そして、怒りのまま反撃する。
「死ねぇぇぇぇ!!」
直撃。
「釈迦ァァァ!!」
悲鳴が上がる。
だが。
今度は釈迦が死なない。
明らかに致命傷となるはずの一撃だった。
それなのに。
また。
届かなかった。
その後も同じだった。
どれだけ決定的な一撃を放っても。
なぜか最後の一線だけを越えられない。
まるで。
何かが。
死ぬことだけを許していないかのように。
最後には双方が力を使い果たし、地面へ倒れた。
戦う力はもう残っていない。
それでも。
二人とも生きている。
第六回戦。
引き分け。
◇ ◇ ◇
戦績。
神――零勝。
人類――零勝。
引き分け――六。
「…………」
ヴァルハラ闘技場は静まり返っていた。
もはや、誰も笑わない。
第一回戦。
珍しい。
第二回戦。
おかしい。
第三回戦。
偶然ではない。
そして。
第六回戦を終えた今。
神も人も理解していた。
次。
第七回戦。
もし。
次まで引き分けたら――。
◇ ◇ ◇
「残り六試合です」
神側の会議室。
ヘルメスが静かに告げた。
室内にはゼウス、オーディン、アレス。
そして、先ほどの激戦を終えたばかりのシヴァもいる。
「第七回戦まで引き分けた場合、残される試合は六つ」
「……つまり?」
アレスが尋ねる。
「以降、神側が全勝したとしても――六勝です」
「…………」
室内が静まり返った。
シヴァが険しい顔で腕を組む。
「つまり、次は……」
「はい」
ヘルメスが頷いた。
「絶対に引き分けてはいけません」
ラグナロクは十三番勝負。
勝利条件は、七勝先取。
第七回戦まで引き分ければ、残りは六試合しかない。
その時点で。
七勝という数字へ。
誰も届かなくなる。
「次で」
ゼウスが低い声で告げる。
「必ず勝者を出す」
◇ ◇ ◇
同じ頃。
人類側でも、まったく同じ話が行われていた。
「次が最後の機会です」
ブリュンヒルデは戦績表へ手を置いた。
「最後……?」
ゲルが青ざめる。
「第七回戦が引き分ければ、残る試合は六つ。そこから人類がすべて勝利したとしても――」
「六勝……」
ゲルが目を見開いた。
「七勝……できない」
「そうです」
「じゃあ……」
「ラグナロクの勝利条件を、どちらも満たせなくなる」
「…………」
ゲルは戦績を見つめたまま、何も言えなくなった。
ブリュンヒルデも同じ数字を見つめる。
六戦。
六引き分け。
これまで一度も止められなかった。
それでも。
「だから次は」
ブリュンヒルデは顔を上げる。
「何が起きても、勝たなければなりません」
◇ ◇ ◇
第七回戦。
神側代表――ハデス。
人類側代表――始皇帝。
冥界を統べる王。
そして。
人類史にその名を刻んだ、始まりの王。
王と王。
その戦いだけは。
始まる前から、これまでの六戦とは意味が違っていた。
◇ ◇ ◇
「ハデス」
神側の控室。
ゼウスは兄を見つめた。
「…………」
「勝て」
ただ一言。
「何があろうとも、必ず決着をつけよ」
「…………」
ハデスは静かに弟を見る。
やがて。
少しだけ笑った。
「珍しいな」
「何がじゃ?」
「お前が、そんな顔をするとは」
「…………」
ゼウスは笑わなかった。
「六度じゃ」
静かに告げる。
「六度、決着が消えた」
「…………」
「次まで消されれば、ラグナロクそのものが成り立たなくなる」
ハデスはしばらく弟を見つめ。
やがて目を閉じた。
「分かった」
武器を手に取り、立ち上がる。
「ならば王として――必ず勝とう」
◇ ◇ ◇
「始皇帝」
人類側。
ブリュンヒルデもまた、人類代表へ同じことを告げていた。
「一つ、頼みがあります」
「ほう?」
始皇帝が笑う。
「申してみよ」
「この戦い」
ブリュンヒルデは真っ直ぐ彼を見る。
「必ず勝ってください」
「…………」
「引き分けは許されません」
始皇帝の目が、わずかに細くなる。
「理由は?」
「次が引き分ければ、人類は七勝できなくなります」
「…………」
「そして、神々も同じです。ラグナロクの勝利条件そのものが達成できなくなります」
「なるほど」
始皇帝は立ち上がった。
「ならば問題ない」
堂々と胸を張る。
「朕は王である」
そして。
笑った。
「王が民に勝利を求められて、応えぬ道理があるか?」
「…………」
ブリュンヒルデは僅かに目を伏せた。
「お願いします」
◇ ◇ ◇
「さあああああああああッ!!」
ヘイムダルの声が響く。
しかし。
会場の空気はいつもと違った。
神々も。
人類も。
分かっている。
この試合だけは。
引き分けてはいけない。
「ラグナロク第七回戦!!」
「神側代表――!!」
「冥界を統べる絶対の王!!」
「ハデェェェェェェス!!」
神々から大歓声が上がる。
そして。
「対する人類代表!!」
「中華を初めて統一せし始まりの王!!」
「王の中の王!!」
「始皇帝ォォォォォォォ!!」
人類側も負けじと叫ぶ。
二人の王が、闘技場中央で向かい合った。
「…………」
「…………」
先に口を開いたのはハデスだった。
「聞いているか?」
「何をだ?」
始皇帝が笑う。
「この試合、引き分けは許されぬそうだ」
「奇遇だな」
始皇帝も構える。
「朕も同じことを言われた」
「ならば――」
「うむ」
二人が同時に笑う。
「勝つ」
◇ ◇ ◇
戦いが始まった。
先に踏み込んだのはハデス。
強烈な槍撃が始皇帝へ襲いかかる。
受け流す。
それだけで足元の地面が砕けた。
「っ!」
始皇帝が大きく後退する。
「重いな」
「当然だ」
ハデスは追撃の手を緩めない。
一撃。
二撃。
三撃。
始皇帝は見極める。
受ける。
流す。
そして。
返す。
「――!」
ハデスの腕が弾かれる。
その隙を逃さず、始皇帝の掌が胸を捉えた。
「ふっ!」
衝撃。
ハデスの身体が後方へ滑る。
「おおおおおおお!!」
人類側から歓声が上がる。
だが。
ハデスは倒れない。
「見事」
「そなたもな」
二人の王は笑った。
◇ ◇ ◇
攻防は続いた。
ハデスの圧倒的な力。
始皇帝の技。
受ける。
流す。
返す。
王と王。
互いに一歩も退かない。
やがて。
二人の身体に傷が増えていく。
ハデスも血を流している。
始皇帝も同じ。
「……まだ倒れぬか」
ハデスが槍を構える。
「誰に言っている」
始皇帝の息も荒い。
それでも。
堂々と立つ。
「朕は王だ」
「ハデス様!!」
神々が叫ぶ。
「始皇帝!!」
人類が叫ぶ。
そして。
二人には分かっていた。
次で。
決める。
◇ ◇ ◇
「…………」
ゼウスが拳を握る。
「頼むぞ……」
思わず、そんな言葉が漏れた。
一方。
人類側では。
「お願い……」
ブリュンヒルデが祈っていた。
「…………!」
隣にいたゲルが驚いて姉を見る。
ブリュンヒルデが。
祈っている。
もちろん。
人類に勝ってほしい。
始皇帝に勝ってほしい。
その気持ちは変わらない。
だが。
今だけは。
それ以上に。
勝者が必要だった。
どちらでもいい。
とにかく。
誰か。
この戦いを終わらせて。
そんな。
ラグナロクが始まった時には考えられなかった願いを。
神々も。
人類も。
同時に抱いていた。
◇ ◇ ◇
ハデスが全力で槍を構える。
始皇帝もまた、最後の構えを取った。
「――行くぞ」
「来い」
二人が同時に踏み込む。
激突。
轟音が響き、足元の地面が割れる。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
神々が叫ぶ。
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
人類も叫ぶ。
ハデスが押す。
始皇帝が受ける。
流す。
そして。
返す。
「――!」
ハデスの体勢が崩れた。
始皇帝が前へ出る。
「朕の――!」
決まる。
今度こそ。
人類の勝利。
誰もがそう思った。
その時だった。
――ミシッ。
「…………?」
小さな音。
始皇帝の視線が、僅かに下へ向く。
地面。
亀裂。
「……?」
ハデスも気づく。
――ミシミシミシミシ。
亀裂が急速に広がっていく。
「な……」
ヘイムダルが目を見開いた。
「何だ!?」
次の瞬間。
轟音と共に。
闘技場中央が崩落した。
「――!」
「っ!」
ハデスと始皇帝。
二人の足場が、同時に消える。
だが。
同じ場所へは落ちない。
崩落した足場は、まるで二人を引き離すように左右へ割れ。
ハデスと始皇帝は、それぞれ反対方向へ落下していった。
「ハデス様ァァァァ!!」
「始皇帝ォォォォ!!」
観客席から悲鳴が上がる。
闘技場の中央には。
二人を隔てるように。
巨大な裂け目が残されていた。
◇ ◇ ◇
救助はすぐに始まった。
「急げ!」
「ハデス様を!」
「始皇帝を助けろ!」
崩落は深く。
二人を救出するまでには時間がかかった。
そして。
「ハデス様、意識あり!」
「ですが重傷!」
「戦闘続行不能です!」
続いて。
「始皇帝も意識あり!」
「こちらも重傷!」
「戦闘続行は不可能です!」
「…………」
静寂。
誰も叫ばなかった。
ヘイムダルは角笛を握ったまま立ち尽くしている。
ゼウスは目を閉じた。
ブリュンヒルデも俯く。
「…………」
ゲルだけが。
恐る恐る戦績表を見る。
「お姉様……」
声が震える。
「これって……」
ヘイムダルが、ようやく口を開いた。
「ラグナロク……第七回戦……」
言葉が止まる。
今までなら。
どれほど異常な結果でも、大声で宣言してきた。
だが。
今回は。
その意味が違う。
「双方……戦闘続行不能……」
そして。
小さく。
「引き分け……」
歓声はない。
叫び声もない。
「第七回戦……引き分け……」
◇ ◇ ◇
戦績。
神――零勝。
人類――零勝。
引き分け――七。
残り試合。
六。
「…………」
誰も動かなかった。
勝利には七勝が必要。
だが。
残っているのは六戦。
仮に。
ここから神々が全勝しても。
六勝。
人類が全勝しても。
六勝。
もう。
どちらも勝てない。
「…………」
アレスが呆然と戦績を見つめる。
「どう……するんだ?」
誰も答えられなかった。
◇ ◇ ◇
その日の夜。
本来ならば、決して同じ席につくはずのない者たちが一つの部屋へ集まっていた。
ゼウス。
オーディン。
シヴァ。
ヘルメス。
アレス。
そして。
ブリュンヒルデ。
ゲル。
「…………」
長い沈黙。
神も。
ワルキューレも。
何を言えばいいのか分からない。
やがて。
ヘルメスが口を開いた。
「……確認いたします」
戦績が表示される。
「現在、神側――零勝。人類側――零勝。引き分け――七」
誰も口を挟まない。
「そして、残りは六試合」
アレスが俯いた。
「つまり……」
「はい」
ヘルメスは淡々と続ける。
「残り六試合を、どちらか一方がすべて勝利したとしても最大六勝」
「ラグナロクの勝利条件である七勝には、到達できません」
「…………」
再び。
沈黙。
シヴァが腕を組んだまま口を開く。
「じゃあ、どうすんだ?」
誰も答えない。
「このまま試合を続けるのか?」
アレスが言う。
「続けてどうする」
シヴァが返す。
「もう勝てねぇんだぞ」
「だが!」
アレスも食い下がる。
「途中で終わらせれば、ラグナロクはどうなる!?」
「…………」
「人類の存亡は!?」
誰も答えない。
「神側の勝利ではない」
「人類側の勝利でもない」
「なら、人類は滅ぼすのか?」
「それとも存続を認めるのか?」
「…………」
分からない。
誰にも。
そんな事態は。
想定されていなかった。
◇ ◇ ◇
「そもそも」
それまで黙っていたブリュンヒルデが口を開いた。
全員の視線が集まる。
「ラグナロクの規定に存在するのは、『先に七勝した側の勝利』という条件だけです」
「七勝した側が存在しなかった場合」
一度。
言葉を切る。
「どうなるのか」
「…………」
「その規定がありません」
「またか!」
アレスが頭を抱えた。
「なぜそんな大事なことを決めていないんだ!」
「七戦も引き分けるなんて」
ゲルが小さな声で呟く。
「普通、誰も思わないっスよ……」
「…………」
アレスが黙った。
「……それはそうだが」
反論できなかった。
◇ ◇ ◇
再び沈黙が訪れる。
その中で。
ゼウスだけは、ずっと黙ったまま机を指で叩いていた。
やがて。
「……続ける」
その一言に。
全員が顔を上げた。
「ゼウス様?」
「残り六戦」
ゼウスは静かに告げる。
「予定通り行う」
「しかし」
ヘルメスが口を開く。
「勝利条件は、すでに――」
「分かっておる」
ゼウスが遮る。
「それでも、確かめねばならん」
「何をです?」
「これが」
ゼウスは戦績を見る。
「どこまで続くのか、じゃ」
「…………」
「七戦」
「すべて」
「何者かが勝敗を消した」
ブリュンヒルデが顔を上げる。
「つまり……残りも?」
「分からん」
ゼウスは首を振った。
「じゃが、もし八戦目で普通に勝敗がつけば」
「七戦までと八戦目」
「そこに何か違いがあることになる」
「…………」
「何者かが何を目的としているのか」
「そこへ辿り着く手掛かりになるやもしれん」
「…………」
ブリュンヒルデは考える。
確かに。
ここで中止しても。
何も分からない。
誰がやっているのか。
なぜやっているのか。
どうやっているのか。
すべてが不明のまま。
それに。
七度もラグナロクへ介入できる存在を。
このまま放置していいはずもない。
「……分かりました」
ブリュンヒルデが答える。
「残り六戦」
「続行します」
◇ ◇ ◇
「では」
ヘルメスが静かに口を開いた。
「最後に、一つだけ」
全員が彼を見る。
「仮に」
「残り六戦をすべて行ったとして」
戦績へ視線を向ける。
「十三戦が終了した時点で」
「七勝した陣営が存在しなかった場合」
「…………」
誰も答えない。
「その時」
ヘルメスは静かに問いかけた。
「ラグナロクは」
「どうやって終わるのでしょうか?」
「…………」
沈黙。
ゼウスも。
オーディンも。
シヴァも。
ブリュンヒルデも。
誰一人として。
その問いに答えることはできなかった。
七戦。
七引き分け。
残り。
六戦。
この日。
神々と人類は初めて。
勝利する方法ではなく。
ラグナロクそのものを、どう終わらせるのか。
それを。
本気で考え始めた。