春。
柔らかな陽射しが、新しい制服を優しく照らしていた。
今日から、雄英高校での生活が始まる。
待ち合わせ場所。
「おはよう!」
出久が笑顔で駆け寄る。
勝己は小さく手を上げた。
「おう。」
二人とも真新しい雄英高校の制服に身を包んでいる。
出久は少し照れくさそうに笑った。
「いよいよだね。」
「ああ。」
勝己は短く答える。
「ここからだ。」
その一言に、出久は力強くうなずいた。
「うん!」
二人は並んで歩き始める。
やがて、一つの巨大な校舎が姿を現した。
雄英高校。
日本最高峰のヒーロー育成機関。
数多くのプロヒーローを育ててきた憧れの場所。
今日から、この学校で新しい日々が始まる。
出久は思わず見上げた。
「やっぱり……大きいなぁ。」
勝己は静かに校門を見つめる。
「入るぞ。」
「うん。」
二人は校門をくぐった。
校舎へ向かう途中。
「あっ!」
一人の男子生徒が二人へ駆け寄ってきた。
その後ろには、もう一人の女子生徒もいる。
「入試の時の!」
出久は少し考え、すぐに思い出した。
「あっ!」
「あの時の……!」
男子生徒は深々と頭を下げる。
「あの時は、本当にありがとうございました。」
女子生徒も続ける。
「助けてもらえたおかげで、最後まで試験を受けられました。」
出久は慌てて手を振った。
「そんな!」
「私は、できることをしただけだから。」
勝己も短く口を開く。
「受かったなら、それでいい。」
二人は嬉しそうに笑った。
「はい!」
「雄英でもよろしくお願いします!」
軽く会釈を交わし、それぞれの教室へ向かっていく。
出久は少し照れくさそうに笑った。
「みんな、頑張ったんだね。」
「ああ。」
勝己もうなずく。
「だから受かった。」
二人は再び歩き始めた。
1年A組。
教室の扉には、その文字が掲げられていた。
出久は思わず息をのむ。
「ここが……。」
「A組。」
勝己は迷うことなく扉を開けた。
教室には、すでに何人もの新入生が集まっている。
どこか緊張した空気。
それぞれが新しい環境に少し戸惑っているようだった。
そんな中。
勝己は何の迷いもなく歩き出す。
出久も自然とその後をついていく。
二人は並んで席へ向かった。
出久は席へ荷物を置き、勝己へ笑い掛ける。
「また一緒だね。」
勝己は短くうなずく。
「ああ。」
それは、二人にとってあまりにも当たり前のことだった。
その短いやり取りだけで、二人には十分だった。
けれど——
その様子を見ていた数人の女子生徒が、小さく顔を見合わせる。
「ねぇ。」
「今の見た?」
小さな声で芦戸がつぶやく。
耳郎も思わず笑う。
「見た見た。」
麗日は優しく微笑む。
「すごく自然やったね。」
芦戸は首を横へ振る。
「いやぁ。」
「何か違う気がする。」
「すごく信頼してる感じ。」
耳郎もうなずいた。
「うん。」
「なんか……いいな。」
その言葉に、麗日も静かに笑った。
「うん。」
「素敵やね。」
そんな視線を向けられていることなど、二人はまったく気付いていなかった。
ガラガラ。
教室の扉が開く。
一人の男が寝袋に包まれたまま入ってきた。
「静かに。」
教室が一瞬で静まり返る。
男はゆっくりと顔を上げる。
「担任の相澤消太だ。」
ざわめく教室。
相澤は気にする様子もなく続けた。
「入学、おめでとう。」
「と言いたいところだが。」
寝袋の中から体操服を取り出し、教卓へ置く。
「八百万。」
「は、はい!」
「これ配って。」
「はい!」
八百万が体操服を配り始める。
その間に相澤は淡々と言った。
「入学式?」
「そんなものは後回しだ。」
教室中がざわつく。
「ヒーローに必要なのは、時間を無駄にしないことだ。」
「着替えてグラウンドへ来い。」
「これから個性把握テストを始める。」
一瞬の静寂。
そして——
「えぇぇぇっ!?」
教室中に驚きの声が響き渡った。
出久は思わず勝己と顔を見合わせる。
勝己は口元を少しだけ上げる。
「面白ぇ。」
出久も小さく笑った。
「うん。」
「頑張ろう。」
新しい仲間。
新しい先生。
そして、新しい日々。
夢だった雄英高校での生活が、いよいよ幕を開けようとしていた。