無個性の私と、幼馴染のかっちゃん   作:千遇万歩

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第三章 夢の舞台

 

春。

 

柔らかな陽射しが、新しい制服を優しく照らしていた。

 

今日から、雄英高校での生活が始まる。

 

待ち合わせ場所。

 

「おはよう!」

 

出久が笑顔で駆け寄る。

 

勝己は小さく手を上げた。

 

「おう。」

 

二人とも真新しい雄英高校の制服に身を包んでいる。

 

出久は少し照れくさそうに笑った。

 

「いよいよだね。」

 

「ああ。」

 

勝己は短く答える。

 

「ここからだ。」

 

その一言に、出久は力強くうなずいた。

 

「うん!」

 

二人は並んで歩き始める。

 

やがて、一つの巨大な校舎が姿を現した。

 

雄英高校。

 

日本最高峰のヒーロー育成機関。

 

数多くのプロヒーローを育ててきた憧れの場所。

 

今日から、この学校で新しい日々が始まる。

 

出久は思わず見上げた。

 

「やっぱり……大きいなぁ。」

 

勝己は静かに校門を見つめる。

 

「入るぞ。」

 

「うん。」

 

二人は校門をくぐった。

 

校舎へ向かう途中。

 

「あっ!」

 

一人の男子生徒が二人へ駆け寄ってきた。

 

その後ろには、もう一人の女子生徒もいる。

 

「入試の時の!」

 

出久は少し考え、すぐに思い出した。

 

「あっ!」

 

「あの時の……!」

 

男子生徒は深々と頭を下げる。

 

「あの時は、本当にありがとうございました。」

 

女子生徒も続ける。

 

「助けてもらえたおかげで、最後まで試験を受けられました。」

 

出久は慌てて手を振った。

 

「そんな!」

 

「私は、できることをしただけだから。」

 

勝己も短く口を開く。

 

「受かったなら、それでいい。」

 

二人は嬉しそうに笑った。

 

「はい!」

 

「雄英でもよろしくお願いします!」

 

軽く会釈を交わし、それぞれの教室へ向かっていく。

 

出久は少し照れくさそうに笑った。

 

「みんな、頑張ったんだね。」

 

「ああ。」

 

勝己もうなずく。

 

「だから受かった。」

 

二人は再び歩き始めた。

 

1年A組。

 

教室の扉には、その文字が掲げられていた。

 

出久は思わず息をのむ。

 

「ここが……。」

 

「A組。」

 

勝己は迷うことなく扉を開けた。

 

教室には、すでに何人もの新入生が集まっている。

 

どこか緊張した空気。

 

それぞれが新しい環境に少し戸惑っているようだった。

 

そんな中。

 

勝己は何の迷いもなく歩き出す。

 

出久も自然とその後をついていく。

 

二人は並んで席へ向かった。

 

出久は席へ荷物を置き、勝己へ笑い掛ける。

 

「また一緒だね。」

 

勝己は短くうなずく。

 

「ああ。」

 

それは、二人にとってあまりにも当たり前のことだった。

 

その短いやり取りだけで、二人には十分だった。

 

けれど——

 

その様子を見ていた数人の女子生徒が、小さく顔を見合わせる。

 

「ねぇ。」

 

「今の見た?」

 

小さな声で芦戸がつぶやく。

 

耳郎も思わず笑う。

 

「見た見た。」

 

麗日は優しく微笑む。

 

「すごく自然やったね。」

 

芦戸は首を横へ振る。

 

「いやぁ。」

 

「何か違う気がする。」

 

「すごく信頼してる感じ。」

 

耳郎もうなずいた。

 

「うん。」

 

「なんか……いいな。」

 

その言葉に、麗日も静かに笑った。

 

「うん。」

 

「素敵やね。」

 

そんな視線を向けられていることなど、二人はまったく気付いていなかった。

 

ガラガラ。

 

教室の扉が開く。

 

一人の男が寝袋に包まれたまま入ってきた。

 

「静かに。」

 

教室が一瞬で静まり返る。

 

男はゆっくりと顔を上げる。

 

「担任の相澤消太だ。」

 

ざわめく教室。

 

相澤は気にする様子もなく続けた。

 

「入学、おめでとう。」

 

「と言いたいところだが。」

 

寝袋の中から体操服を取り出し、教卓へ置く。

 

「八百万。」

 

「は、はい!」

 

「これ配って。」

 

「はい!」

 

八百万が体操服を配り始める。

 

その間に相澤は淡々と言った。

 

「入学式?」

 

「そんなものは後回しだ。」

 

教室中がざわつく。

 

「ヒーローに必要なのは、時間を無駄にしないことだ。」

 

「着替えてグラウンドへ来い。」

 

「これから個性把握テストを始める。」

 

一瞬の静寂。

 

そして——

 

「えぇぇぇっ!?」

 

教室中に驚きの声が響き渡った。

 

出久は思わず勝己と顔を見合わせる。

 

勝己は口元を少しだけ上げる。

 

「面白ぇ。」

 

出久も小さく笑った。

 

「うん。」

 

「頑張ろう。」

 

新しい仲間。

 

新しい先生。

 

そして、新しい日々。

 

夢だった雄英高校での生活が、いよいよ幕を開けようとしていた。

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