無個性の私と、幼馴染のかっちゃん   作:千遇万歩

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第二章 障害物競走

 

「第一種目――!」

 

スタジアムに、解説のプレゼント・マイクの声が響き渡る。

 

「障害物競走!!」

 

歓声が、再び爆発した。

 

選手たちが、一斉にスタートラインへ並ぶ。

 

出久も、その中にいた。

 

少し離れた場所には、勝己。

 

さらに前方には、轟。

 

「位置について――!」

 

スタジアムが静まる。

 

「よーい――!」

 

そして。

 

「スタートォォォ!!」

 

一斉に。

 

選手たちが飛び出した。

 

爆発音。

 

勝己が、一気に前へ出る。

 

「うおおおおっ!」

 

その直後。

 

轟の足元から、巨大な氷が走った。

 

「なっ!?」

 

「うわぁ!」

 

前方にいた生徒たちが、次々と足を取られる。

 

轟は、そのまま氷の上を滑るように進んでいく。

 

だが。

 

勝己は地面へ爆発を叩きつけた。

 

身体が跳ね上がる。

 

氷の波を飛び越え、そのまま前へ。

 

先頭は。

 

勝己と轟。

 

そのずっと後ろ。

 

出久が走っていた。

 

「緑谷もいるぞ!」

 

「速っ!」

 

A組の生徒から声が上がる。

 

轟の氷が迫る。

 

出久は、横へ跳んだ。

 

氷が、すぐ脇を通り抜ける。

 

着地。

 

そのまま走る。

 

「今の避けた!?」

 

「轟の攻撃だぞ!?」

 

「しかも、ギリギリじゃない!」

 

出久は止まらない。

 

前方。

 

巨大な影が現れた。

 

「来たぞ!」

 

「第一関門――ロボ・インフェルノだァァァ!!」

 

プレゼント・マイクの声が響く。

 

巨大なロボットが、次々と動き出す。

 

腕が振り下ろされる。

 

出久が横へ跳ぶ。

 

地面が砕ける。

 

着地。

 

走る。

 

別のロボットが進路を塞ぐ。

 

出久は、速度を落とさない。

 

ロボットの腕が横薙ぎに振られる。

 

身体を沈める。

 

頭上を、巨大な腕が通り過ぎた。

 

その腕が、別のロボットへぶつかる。

 

ガンッ!

 

ロボット同士がぶつかった。

 

一瞬。

 

道が開く。

 

出久が、その隙間を抜ける。

 

「まただ!」

 

「ロボットの動きを利用してるのか!?」

 

「無個性の子だよな!?」

 

さらに前。

 

巨大なロボットが、出久へ向かって倒れ込んでくる。

 

出久は、止まらない。

 

倒れてくるロボットを横へ避ける。

 

地面を蹴る。

 

そのまま走る。

 

「危ねぇ!」

 

「避けた!」

 

「いや……あれ、ちゃんと見てるぞ!」

 

出久の進路には、まだロボットがいる。

 

けれど。

 

真正面から相手をしない。

 

倒そうともしない。

 

ロボットが動く。

 

出久が動く。

 

空いた場所へ。

 

ただ、抜けていく。

 

そして。

 

「ゼロポイント・ロボットォォォ!!」

 

巨大なロボットが姿を現した。

 

「うわあああ!」

 

生徒たちが散っていく。

 

轟は氷を伸ばす。

 

勝己は爆発で飛ぶ。

 

その中で。

 

出久が走る。

 

巨大な足が振り下ろされる。

 

出久が横へ飛ぶ。

 

地面が、大きく揺れた。

 

転がる。

 

すぐに立ち上がる。

 

走る。

 

「また避けた!」

 

「真正面から行かない!」

 

「倒さないのか!?」

 

「競走だからな!」

 

出久は、そのまま第一関門を抜けた。

 

「緑谷選手、突破ァァァ!!」

 

プレゼント・マイクの声が響く。

 

その先。

 

巨大な谷が現れる。

 

「第二関門――ザ・フォール!!」

 

谷の向こうまで。

 

一本のロープが張られている。

 

生徒たちが、次々とロープへ飛び移る。

 

二本の足で立とうとする。

 

身体が揺れる。

 

「うわっ!」

 

「落ちるなよ!」

 

その中へ。

 

出久が飛び込んだ。

 

ロープへ飛び移る。

 

身体を低くする。

 

両腕でロープを抱え込む。

 

脚を使う。

 

身体全体をロープへ預ける。

 

そして。

 

進んだ。

 

一歩。

 

また一歩。

 

その速度が、明らかに違う。

 

「な、なんだあれはー!?」

 

プレゼント・マイクの声が響く。

 

「普通の綱渡りじゃねぇぞ!? あんな体勢で、なんであんなに速ぇんだ!?」

 

観客席から、どよめきが起こる。

 

「速い!」

 

「何あれ!?」

 

「あの子、無個性だろ!?」

 

実況席。

 

相澤は、出久の動きを静かに追っていた。

 

「……あれは、ロープブリッジ渡過だな」

 

「ロープブリッジ渡過ぁ!?」

 

「消防隊なんかが使う渡過技術だ」

 

相澤は、淡々と続ける。

 

「雄英で練習したもんじゃないが……」

 

出久は止まらない。

 

腕だけに頼らず。

 

身体全体を使って、ロープを進んでいく。

 

「……よくできてる」

 

「マジかよ!?」

 

プレゼント・マイクが声を上げる。

 

「緑谷選手、まさかの専門的な渡過技術でザ・フォールを攻略していくー!」

 

出久は、ロープを渡り切った。

 

着地。

 

そのまま走る。

 

先頭では。

 

勝己と轟が、まだ競り合っていた。

 

だが。

 

出久は、二人の背中を追いかけていた。

 

その距離が。

 

少しずつ。

 

縮まっていく。

 

「緑谷、上がってきてる!」

 

「三位集団に入るぞ!」

 

「嘘だろ……!」

 

出久が走る。

 

「最終関門――地雷原だァァァ!!」

 

地面一面。

 

無数の地雷が埋め込まれている。

 

先行する生徒が踏んだ。

 

爆発。

 

「うわあああ!」

 

出久は、止まらない。

 

爆発した場所。

 

地面の状態。

 

前を走る生徒の動き。

 

そのすべてを見ながら。

 

走る。

 

一つ。

 

また一つ。

 

足を置く場所を変える。

 

爆発。

 

出久が跳ぶ。

 

着地。

 

さらに前へ。

 

「また避けた!」

 

「地雷の位置、分かってるのか!?」

 

「どうやって見てるんだよ!?」

 

出久は走る。

 

爆発した場所を抜ける。

 

前方で、また爆発。

 

その直後。

 

出久が進路を変える。

 

空いた場所へ飛び込む。

 

「速い!」

 

観客席が沸く。

 

「まだ三位以内だ!」

 

「無個性の子だ!」

 

「追いつくぞ!」

 

スタジアムだけではない。

 

テレビの画面にも、出久の姿が映っている。

 

「……あの子、まだ走ってる」

 

「無個性なんだよね?」

 

「さっきから、個性を使ってないぞ」

 

「三位にいるのか……」

 

先頭。

 

勝己。

 

轟。

 

二人は、最後の直線へ入っていた。

 

轟は、勝己を追う。

 

勝己は、前だけを見る。

 

二人の距離は近い。

 

互いに譲らない。

 

その後ろ。

 

出久が走ってくる。

 

轟は振り返らない。

 

今は。

 

爆豪に勝つ。

 

それだけに集中している。

 

勝己が。

 

一瞬だけ。

 

後ろを見る。

 

そこに。

 

出久がいた。

 

「……フッ」

 

勝己の口元が。

 

ほんの少しだけ上がる。

 

次の瞬間。

 

爆発。

 

さらに加速した。

 

「爆豪、速い!」

 

「轟も負けてない!」

 

二人が、ゴールへ迫る。

 

そして。

 

勝己が先に飛び込んだ。

 

「一位ィィィィ!!」

 

プレゼント・マイクの声が響く。

 

「爆豪勝己!!」

 

続いて。

 

轟がゴールする。

 

「二位、轟焦凍!!」

 

そして。

 

その少し後。

 

出久が。

 

ゴールラインを越えた。

 

「三位!」

 

「緑谷出久!!」

 

歓声が上がる。

 

一位。

 

爆豪勝己。

 

二位。

 

轟焦凍。

 

三位。

 

緑谷出久。

 

体育祭としては。

 

一位になった勝己への歓声が、大きく響いていた。

 

けれど。

 

その中には。

 

別の声も混じっていた。

 

「……あの子」

 

「無個性なんだよな?」

 

「三位……?」

 

「しかも、個性を使ってない?」

 

「凄いな……」

 

テレビの前でも。

 

「爆豪って子、凄いな」

 

「轟も凄い」

 

「でも……」

 

画面に映る。

 

息を整える出久。

 

「……あの子から、目が離せないな」

 

スタジアムでは。

 

一位になった爆豪勝己が、大きくフィーチャーされている。

 

それでも。

 

緑谷出久を見つめる視線も。

 

確かに増えていた。

 

その少し離れた場所。

 

勝己は、ゴールした出久を見る。

 

「……出久」

 

出久も。

 

勝己を見る。

 

言葉はない。

 

ただ。

 

二人の視線が交わった。

 

勝己は、前を向く。

 

出久も、前を向く。

 

体育祭は。

 

まだ始まったばかりだった。

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