「二階堂ヒロ、それはあまりにも考えが突飛すぎるわ。」
「この牢屋敷は外周が壁で覆われている......そんな場所で第三者が入り込むのは.........無理よ。」
(落ち着け.....落ち着いて新たな可能性を考え出せ......いずれ犯人がわかるはずだ..........)
「それならこう考えるのはどうだろうか。」
「【前回のマゾ裁判の生き残りが居て、黒幕と糸を引いている】と。」
「待って!」
ミリアが反論してきた。
「ヒロちゃん、そもそもこの牢屋敷に黒幕.......なんているのかな?」
「私たち......いや、【私】がここにいること自体、黒幕が存在する1つの証明だろう。」
「なぜ牢屋敷から脱出したのにまたここに居るのか.......皆目見当もつかない。」
「君たちだってそうだ。13人の少女を誘拐できるほどの力が裏で動いている。黒幕が存在すると考えても何もおかしなことではない。」
「おかしいんじゃないかな?」
ノアが反論してきた。
「でも【14人目の魔法少女】が居る証拠ってあるのかな?のあ、よくわかんないけどそれがないとわからないんじゃないかな?」
「確かにそうだね、ノア。」
私はみんなに【マゾ図鑑】を見せる。
「沢渡ココ、囚人番号669番。」
「は、はい....!........?」
「いや、君を呼んだわけじゃない。」
「本来なら次の氷上メルルは囚人番号670番になる所だが、メルルの囚人番号は【671番】だ。」
「これは、14人目の魔法少女が居るという証拠になるんじゃないかな?」
裁判所内が静まり返る。
少女たちは第三者を否定する証拠を持っていないからだ。
それに少女たちはレイアを処刑すること......顔見知りの者を処刑することを良しと思っていない。
(これで.....レイアが処刑されるのを回避できる.......)
安堵したのも束の間、
「みなさん、待ってください。」
ゴクチョーが反論してきた。
「結論だけ言いましょう。【14人目の魔法少女】、なんて人は存在しませんよ。」
「何....?」
「いや......ですから........【14人目の魔法少女】なんて居ないんですよ.........裁判所にも来ていないでしょう?」
「なので......処刑はできないので......はい。」
「ああでも.....14人目の魔法少女が行ったという【決定的な証拠】さえありましたら、処刑を許可しましょう。」
「おいヒロっち!他に何か、【14人目】がエマっちをやった証拠ないのかよ!」
「.......すまない。」
(やはりそうか.......)
(新たな可能性を広げるために【14人目の存在】を少女たちに伝えたが........)
(決定的な証拠は......ない。)
「だが目撃証言がないのを考えると、やはりレイアではなく14人目の事を考えたほうがいいだろう。」
「それはおかしいよ!」
エマが、反論してきた。
「レイアちゃん......ごめん。」
「ボク、実は.......レイアちゃんの事を見た。」
「悪そうな顔をしながら........ボクの足を切り落とす.....レイアちゃんを。」
「!??」
場は騒然とした。
「なぜそれを先に言わなかった!!!」
「だって.....レイアちゃんがそんなことする人に思えなかったから。」
「レイアちゃんはあんな顔、しない。」
(ああそうか......)
(エマはレイアを信じていたのか。)
(レイアを信じていたからこそ、彼女に足を切られてもなお......)
(ずっと庇い続けていたのか。)
(14人目の魔法少女への証拠がなくなる、その時まで........)
正しくない........酷く、とても、正しくない...........
「エマ。見間違いではないのか?」
「それは本当にレイアだったのか?」
「レイアの服を着た他の人の可能性は?」
「待ちたまえ!」
レイアが反論してきた。
「ふふふふふ......あはははははははは!!!」
「ヒロくん!もういいとも!もういいのさ!!!」
「もう私を庇わなくて良い!!!!」
「私が......エマくんを傷つけた!これで良いだろう!!」
「それに......もう決定的な証言を言われてしまったからね。」
「ヒロくん、エマくん。ありがとう。」
「私を【見て】くれて。」
────
「私は、エマくんの足を切った。それは変えようのない【事実】さ。」
「ああ、そう......【事実】。」
「昨日だったかな。シェリーくんとアリサくんの監房を歩いたときに睡眠薬を見つけたんだ。」
「アリサくんは寝る時に過剰と言えるほど睡眠薬を飲んでいたからね。私はそれを回収して、自分のポケットに入れたのさ。」
「それを使って、私はあるトリックを思いついた。いや、思いついてしまった。」
「別にエマくんじゃなくてもよかった。だけど思いついた人がエマくんだったんだ。」
「私は今日の朝、監房の扉が開いた瞬間にエマくんとヒロくんの監房に行ったんだ。」
「そこて私はエマくんに睡眠薬を飲ませた。その時は気が動転していたんだろうね。ヒロくんに目撃されてはマズイと思って、半分余った睡眠薬をヒロくんに飲ませた。」
「ああそうそう、ヒロくんは点呼を取っていたからね。点呼を取られたら私がいないことがバレてしまうと思ったからね。」
「その後私はすぐに自分の監房に入って、ベッドについた。」
「そしてみんなが食堂に行った後、作業に取り掛かった。」
「偽装用のナイフ、エマくんの足を切るための斧......」
「それらを私のベッドに隠し、朝食へと向かった。」
「そうそう、焼却炉にロウソクがあったのを見た人はいるだろうか」
「本当はエマくんを炙ろうとしたんだが、使用をやめたんだ。」
「アリサくんは今日懲罰房から出ていたから、すれ違いにはならなかったよ。」
「朝食後、私は娯楽室でロープを手に入れた。エマくんをイスに縛るためだ。」
「そして、みんなが昼食を取っている間、寝ているエマくんをイスにくくりつけて.......足を切り落とした。」
「私のレイピアで少し試したが、ヒロくんの言う通りこれは刺すための刃物......エマくんが起きてしまいそうだからやめたよ。」
「凶器の斧は速やかに懲罰房に戻したよ。みんなが昼食を食べ終わって見つかるのも時間の問題だったからね。」
「血を拭く時間もなかったからせめてもの抵抗で丁寧に戻しておいたのさ。」
「エマくんにくくりつけたロープは少し緩かったんだろうね。しばらくしてエマくんが落ちてしまった。」
「以上が、蓮見レイアによるエマくん傷害事件の全容だ。」
「......さあ、この辺でカーテンコールだ。以上でこの演目は閉幕だよ。」
「──最後のステージ、見てくれてありがとう。」
────
エマを傷つけた犯人が、レイアだった。
当然、少女たちによるマゾを決める投票は全会一致でレイアになった。
「ふざけるな!!!」
私はレイアに向かって叫んだ。
なにもレイアが犯人だと認めたくないわけではない。ただそこには説明されていない【矛盾】が存在したからだ。
「君はさっき、ロウソクを使っていないと言ったな?」
「......エマの服が焦げているのにか?」
場はまたも騒然とした。
「なんで!?あてぃし達、犯人間違ったん!?」
「どうしよう....どうしよう.......!」
「いや......違う。」
「これは明らかに【蓮見レイアを犯人に仕立て上げる為の裁判】だ......」
「きっと.......いるんだ......14人目の魔法少女が......っ。」
しかし、私たちはその証拠を見つけることができなかった。
それどころかレイアが自ら犯人だと名乗り上げてしまった。
きっと犯行方法は【嘘】をついたのだろう。
......レイアは何も言わず、ただ処刑を待っている。
「あっ、お話終わりました?時間も押してますし、そろそろ進行したいんですが......」
「各自のスマホにボタンが表示されていると思うので、全員がそれを押したら処刑執行スタートします。」
「ぐーっと長く押していただけますとありがたいです。」
(はぁ......やはり処刑方法は........)
私たちは青ざめながら次々に手元のボタンを押していく。
「はい!ではこれより、マゾの処刑を実行します〜。」
どこからか歯車の回転音が聞こえ、中央の台座がわずかに揺れた。
そして、迫り上がってきた台座は......?
「......えっ。」
「あら、レイアちゃんはこれに吊るされるのね♡」
三脚のような支柱の上にロープが垂れ下がっていた。
しかしそのロープは複雑な形をしているようだった。
「【亀甲縛り】......ね♡」
マーゴが嬉しそうに言う。マーゴを吊るしたほうがいいのかもしれない。
(なるほど、これで羞恥心を抱かせてなれはてにさせるということか......いや手間がかかりすぎるだろ)
私は呆れていた。
少女たちは各々反応を見せる......大抵はよくわかっていないようだったが。
事実、私もユキに教えてもらうまで知らなかった。
「ほう!私は今からこれに吊るされるということか!」
「はい....そういうことになりますね......あ、服は脱がなくて結構です。いかがわしいのは皆さん嫌ですよね......?」
レイアは躊躇うことなく看守に吊るされていった。
「さぁ!私のこの姿を見てくれっ!!素晴らしいだろう!!!」
「あぁ!!新たな劇のインスピレーションが湧きそうだぁぁぁ!!!!」
く....狂っている......彼女の承認欲求はとどまることを知らないのか.....?
「ゴクチョーくん、この拘束期間はどのくらい続くんだい?」
「えっと.....今日が1日目として、3日目で解放ですね......」
「3日か!つまり3日間私は皆にこの姿を晒すということだね!こんな姿になって申し訳ない!」
レイアは申し訳なさそうに見えない言い方をした。
「安心したまえ!私はマゾになったりはしないぞ!!」
「おめぇはマゾとして処刑されてんだろ!!」
「そうだったね!マゾのなれはてにならないってことだ!!訂正しよう!!!!」
た....正しくない.......
「ゴクチョー。処刑方法は本当にそれでいいのか?君たちならもっと......」
「他の方法があるんですか?」
「く.....それは......」
言えない。言ってしまったらレイアがマゾ、魔女になってしまう。
「......【アイアンメイデン】ですね。あなたの知っている、蓮見レイアさんの処刑方法は。」
「ッ!」
「しかし.....処刑方法が豪華になることはそれだけ装置も複雑になるってこと.......ですよね。」
「それはめんどくさいじゃないですか......なので、そのままでいいです。」
「それは【14人目】がそう指示したから?」
ゴクチョーは何も答えない。
「無事に終わってよかったですね。また傷害事件が起きたらマゾ裁判を開きます。」
「それまでは、今までどおり囚人として慎ましく生活をしてください。」
「これにて、閉廷と致します。やれやれ、お疲れ様でした......。」
裁判が終わった。少女たちは各々帰っていく。
エマは看守に連れて行かれた。自分で歩くのはまだ難しいようだ。
私はレイアに近づいていった。
「レイア。」
「なんだいヒロくん。」
「認めたくないが、これから先、君のような者が増えると思う。」
「私は......皆をマゾ化させなくない。」
「......そうか。」
「しかし私はエマくんを傷つけたんだ。君に顔向けできないよ。」
「君はエマを傷つけていない。」
「......やっぱりヒロくんは硬いね。」
そう言って、私は裁判所から去っていった。
────
皆をマゾ化させたくない。
【14人目の魔法少女】を見つける。
私は2つの願いを心に秘め、拳を固く握りしめた。
【処刑方法に対する少女たちの反応】
エマ→少し下を向いて頬を赤らめていたような気がするな。
ノア→分かっていなさそうだがノアのことだ。きっと知っているだろう。
アンアン→分かっていなかったな。今回の裁判であまり発言を行っていなかったが、展開が早かったからなのか?
レイア→興味津々だったな。喜んで吊るされに行っていた。
ミリア→困惑していたな。今までと処刑方法が違うから仕方がないか。
マーゴ→彼女を吊るしたほうがいい気がする。
ナノカ→【幻視】で視ていたのかわからないが表情は変わっていなかったな。
アリサ→分かっていなかったな。怒りすら覚えていた。
シェリー→興味津々だったな。虫眼鏡を使って見ようとするんじゃない。それは昆虫じゃないぞ。
ハンナ→分かっていなかったな。唖然としていた。
ココ→リアクションが一番良かったな。
メルル→はわわとしていたが誤魔化すんじゃない。魔女め。
【蓮見レイアによる桜羽エマ傷害事件の全容】
・3日目夜
アリサの睡眠薬を回収。
・4日目朝
扉が開いた瞬間にエマとヒロの監房へ。
エマとヒロに睡眠薬を半分ずつ飲ませる。
→ヒロに飲ませたのは点呼を取らせないためらしい。
・4日目朝(みんなが食堂に行った後)
偽装用ナイフ、斧を懲罰房から回収。
→ベッドに隠しレイア食堂へ。
なおろうそくの使用はやめた。
・4日目朝(朝食後)
娯楽室からロープを回収。
・4日目昼(みんなが食堂に行った後)
エマをミリアとレイアの監房に持っていきイスにくくりつける。
ベッドに隠していた斧を使って足を切り落とす。
エマの足を切り落とした後、すぐに斧を懲罰房に戻した。