魔法少女ノマゾ裁判   作:カミオカンデ

6 / 6
三日目昼

昼食後、私は牢屋敷内を歩いていた。

どうしても頭に浮かぶのは、桜羽エマ。マゾ化が進行しているのか、いくら逸らそうとしてもエマが浮かんでしまう。

ダメだ、感情に支配されてはいけない。魔女化の時に学んだだろう。

しかしどうしてもエマが頭を支配してしまう。

 

もはや狂気と言えるその思考を、私は──

 

   掃除で鎮めることにした  <

☠️ 筋トレで鎮めることにした

 

掃除で鎮めることにした。

 

────

 

私はサンルームへ来ていた。

ミリアとあったとき、この部屋のホコリが尋常じゃないほど舞っていた。それにここなら誰かに掃除の邪魔をされることはないだろう。

 

あの時はよく見ていなかったが、サンルームという名前の通り、陽の光がよく当たって暖かい。

2つの丸テーブルにそれぞれ3つのイスがあり、右側の隅の方に余ったイスが放置されている。

左の方を見るとどうやら本棚があるらしい......内容はどれもフィクスマージ語で読みにくい。

ミリアが入れ替えた花瓶の花は赤いバラとピンクのドライフラワーのようだ。

 

(私とエマみたいだ......いやいや.......)

 

そんな事を考えるんじゃない。私は掃除をしに来たんだろう。

私は黙々と掃除をした。

 

────

 

1時間以上は経っただろうか。

目に見えるホコリは大体除去できた。

私は少し疲れたので近くにあったイスに座り、体を休める。

 

すると。

 

「あら、ヒロちゃん。こんな所でなにをしてるのかしら?」

 

マーゴは怪しげに微笑みながら私の向かいのイスに座った。

 

「.......マーゴか。少し掃除をしていた。この部屋はホコリが酷かったからな。」

「そう。それにしてもこの部屋、すごく居心地がいいわね。私の場所にしていいかしら。」

「いや、そもそもこの牢屋敷はみんなの場所だ。勝手に私物化するのは正しくない。」

「あら、硬いのね♡」

 

「そういえばヒロちゃん、さっきココちゃんがヒロちゃんの事を探していたわ。」

「ココが?一体なぜ?」

「みんな配信を一度は見てるのにヒロちゃんは見てないから騒いでいるのよ。」

 

確かにココの配信はこの牢屋敷に来てから見ていない。

内容を知っている上にココは牢屋敷の秘密を知らなそうだったのでスルーしていたが、【千里眼】の魔法を持っている以上、見るべきだった。

 

「そういえばそうだったな......通知を切っていたから気づかなかった。」

 

もちろん嘘だ。

 

「.......【嘘】ね。」

「当然、嘘だ。それもとてもつまらない嘘。」

「あなたは他の牢屋敷の記憶を持っていて、配信の内容はすべて知っている......そんなところかしら?」

「ああ、その通りだ。」

 

「ココには次の配信からはしっかり見ると伝えておいてくれ。」

「あなたから伝えたほうがいいんじゃないかしら?」

「私は夜に少し予定が入っている...だから伝えられそうにない。」

「そう、わかったわ。」

 

マーゴは席を立ち、去り際に一言。

 

「儀式の本の返却は早めにね?」

「わかっている、明日返す。」

 

そう言ってマーゴは離れていった。

 

────

 

夕食とシャワーを終え、私はサンルームへと向かう。

月明かりに照らされたサンルームはまるでスポットライトが照らされているかのように明るかった。

私は電気をつけ、監房でやるのと同じように翻訳作業をしていた。

 

「私....する......牢獄.....女......」

 

(理屈自体は簡単なのだが、実際にやるとなかなか難しいものだな)

 

私は食堂から持ってきた紅茶を飲み、本の翻訳に勤しむ。

 

「ヒロちゃん、こんな所にいたんだ。」

「ヒロっちやっほ〜」

 

ミリアとココがやってきた。

 

「ヒロっち何やってんの?解読?」

「ああ、本の翻訳だ。」

 

ココが翻訳した文を覗き込む。

 

「うぇ......よくこんな意味わかんない文を翻訳できんね.......あてぃしパスで。」

 

ココはサンルームから去ろうとする。

 

「こ、ココちゃん!これを翻訳できたら牢屋敷から出られるかもしれないよ!」

「えっ!?マジ?あてぃしもやるやる!」

 

ココはダッシュで戻ってくる。

 

それから私たち3人はサバトの儀式の翻訳を行った。

 

「う....やっぱムズイ、無理かも......」

 

ココが早々に音を上げていた。

 

「ココ、諦めるのが早すぎるぞ。30分しか経っていない。」

「牢屋敷から出たいけどこれもやりたくない〜!」

「あはは......」

「はぁ.......ココ、もう一回説明が必要か?」

「け、結構ですッ!!」

 

よほど説明を聞きたくないようだ。ココはスマホに耳を当て、【推し】と話している。

 

「【推し】は元気か?」

「......聞こえてないみたいだね。」

「仕方ないか......」

 

そうして翻訳をしていると、自由時間終わりの連絡が来たので私たちは監獄へと戻った。

 

────

 

監獄へ戻ったあと、私はいつものように日記を書く準備を始めた。

しかし、突然エマが話しかけてきた。

 

「ごめんねヒロちゃん、少し相談したいことがあって......」

「ボク、ずっと考えてたんだ。この牢屋敷に来て、脱出の提案をして、でも上手くいかない。」

「ボク......足手まといになってないよね........?」

 

私はため息をつき、一呼吸おいて話し出す。

 

「何を言っているんだ、エマ。君は人の為に、みんなの為に牢屋敷から脱出する方法を探っている。」

「中には正しくない行動を取るときもあるが。」

「うっ......それはごめん。」

「......それは今どうでもよくて。」

「それでも、君がみんなを【救いたい】と思って行動しているから、足手まといなわけがないだろう。」

 

私はふと思いついた質問をエマに投げかけた。

もっとも、エマの答えることは予想がつくが。

 

「エマ、君に1つ質問をしよう。」

「君は数人の少女たちと、誰かを犠牲にしないと脱出できない場所に閉じ込められたとしよう。」

「もしそんなことが起きたら、どうする?」

 

エマは考えることなく答えた。

 

「......もちろん、まずは誰かを犠牲にしない方法を探すよ。」

「それでも見つけられなかったら.......ボクが犠牲になる。」

 

「.......自己犠牲は正しくないな。でも.......」

 

エマらしい、いい答えだ。

と私は思った。

 

「..........ボクは誰も傷つけたくない。傷ついてほしくない。」

「みんな無事に、一緒にこの牢屋敷から出たいんだ!」

 

エマが力強く言い放った。

その言葉は私の心にすっと入ったような気がした。

 

「ありがとう、ヒロちゃん。おかげで少し楽になったよ。」

「絶対、みんな無事にここから出ようね。そしてヒロちゃんと【3人】で.....」

「......あれ?【3人】って.......誰のこと?」

「エマ、君は疲れてる。休んだほうがいい。」

「う、うん、そうだよね。」

 

私はエマを寝かしつけた。

危なかった......ミリアが少し違う魔法だからといって、エマの魔法が違うとも限らない。エマが魔女......いや、マゾになってしまったら終わりだ。

 

私は日記を書き、ベッドに横になる。

 

『みんな無事に、一緒にこの牢屋敷から出たいんだ!』

 

エマのその言葉がずっと頭に流れるまま、私は眠りに落ちた。

 

────

 

私は目を覚ました。今日も正しく生きようか。

しかし、何かがおかしい......私は嫌な予感を感じつつベッドから降りる。

そして、二段ベッドの下を見る。

 

エマがいなかった。

 

それ自体は何らおかしいことではない。

問題なのは、そのベッドの上に【血痕のついた蓮見レイアの服】が置いてあるところだった。

 

私は青ざめ、その写真を撮りエマを探す。

 

(エマ、エマ......エマッ.....!)

(どこだ!どこにいる!!)

 

そうして探して、レイアとミリアの監房を覗いたとき【それ】は見えた。

 

虚ろな目をした、左足のない少女......桜羽エマだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

夏目アンアンの『姉』が居た話(作者:水無月ズン)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

▼ 原罪『嘘言《ソラゴト》の眠り姫』。▼ 夏目アンアン、幸せを願ったが為に、その囁きによって幸せを破壊してしまった少女。▼ そんな彼女にもし、壊れることなくアンアンの傍に居続けた、両親とは違う肉親が居たら。そんな仮定話が書き連ねられるだけの場所。▼


総合評価:248/評価:8.83/連載:2話/更新日時:2026年08月10日(月) 12:00 小説情報

メルループ 傍から見なかったら孤独な戦い(作者:haguruma03)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

▼気がつくと最初の日に戻っていた氷上メルル。▼時間が巻き戻ってしまったのか、それとも未来視したのか、メルルにはわからなかったが、明確な事があった。▼あの結末をもう一度。あれ以上の結末を手に。▼自分以外に未来を知っている少女はいない。ならば自分が、未来を知る自分だけがハッピーエンドを手繰り寄せれる。▼そんな決意を胸に、氷上メルルの孤独な戦いが今始まる。▼なお、…


総合評価:933/評価:9/連載:4話/更新日時:2026年09月24日(木) 13:27 小説情報

夏目アンアンや他の魔女達を幸せにしたいTS幼女さん(作者:雨神 白那)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

ココロノクライで泣いたら思いついた小説です。書きたい時に書く物です。魔法は【鎮静化】原罪は『孤独な幼子』▼夏目アンアンの隣の家に一人で住むTS幼女さんです。原作をやってない状態ですが夏目アンアンを救いたくて書いてしまいました。間違っていたりするかもですが、見たければブラウザバックなど出来るようにしてから閲覧してください。


総合評価:395/評価:8.7/連載:6話/更新日時:2026年09月15日(火) 13:25 小説情報

宝生マーゴ「私は魔法少女Y談お姉さん」(作者:じゅぺっと)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

魔法少女ノ魔女裁判をクリアした記念に書いてみました。クリアした記念がこんなんでいいのかはわかりません。


総合評価:281/評価:8.9/完結:5話/更新日時:2026年09月05日(土) 06:57 小説情報

私「よりによってそのエンド後かよ」(作者:水無月ズン)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

▼ 『魔法少女ノ魔女裁判』▼ それはかわいらしい少女たちの織り成すアドベンチャーゲーム。▼ 各々心に闇を抱える彼女たちが、その【原罪】に、その【禁忌】に向き合う物語。▼ その世界に転生してきた『私』は、待ちわびた暗い監房の中で絶望を味わうことになる。▼ 自分が、与えられていたはずのチャンスをつかみ損ねたことに。▼ その果ての末路が―――▼ 最も、『絶望《希望…


総合評価:627/評価:8.74/連載:5話/更新日時:2026年08月30日(日) 11:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>