アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
キン肉スペシャルとは!
『な、なんだこれは――っ!? 万太郎、技名を言い放つと同時にアクション仮面を複雑な形の立ち関節に極めた! 左腕がああなって右脚がこうなって……筆舌に尽くしがたい! 実況殺しにもほどがあるサブミッションだ――っ!』
左脚一本で立ち、四肢の残りの両腕右脚を複雑に絡ませ仕掛ける立ち関節技。
アクション仮面の体は難解な開脚姿勢で捕らえられた。
「なんだありゃ~~っ!?」
「48の殺人技か~~っ!?」
「知りませんよあんなの!」
関節技の得意なテリー・ザ・キッドやバリアフリーマン、そして超人界随一の知恵者であるはずのミートくんまでもが、万太郎の仕掛けた技の正体がわからず困惑する。
先輩超人たちがそんな様子なのだから、技をかけられているアクション仮面はなおさらなにがなんだかわからない。
「ま、まるでアントニオ猪木氏の卍固めをより複雑にしたような……わけのわからないホールド!」
混乱するアクション仮面の反応を楽しむように、万太郎は大声で笑う。
「ギャハハハハ! 見たか! これぞ父上……キン肉マンも公式戦では一度も使用したことがないキン肉族の秘伝! 今日これを見れたおにーちゃんおねーちゃんはラッキーだぜい!」
キン肉族の秘伝――つまりこのキン肉スペシャルなる技は、
「その昔、父上は怪獣を30秒でやっつけてしまうほどの超実力派ヒーロー・パンダマンをこの技でKOし名実ともにNo.1スーパーヒーローになったという! まさに対アクション仮面にうってつけの技だ~~っ!」
パンダマン!? そんな強豪ヒーローいたか!?
記憶の海を30年以上遡ってみると、ミートくんはひとつ思い当たり頭を抱えた。
「ああ~~っ、あれか~~っ」
あれはまだキン肉マンが超人オリンピックV2チャンピオンになる前、落ちこぼれヒーローの烙印を押されていた頃。
遊園地のヒーローショーに乱入したキン肉マンは特撮ドラマのヒーローであるパンダマンを本物のスーパーヒーローだと思い込み、キグルミを着ただけのアルバイトをこのキン肉スペシャルで容赦なくボロ雑巾にしたことがあるのだ。
地上最強のパンダマンに勝利したキン肉マンはあのウルトラマンをも超えるスーパーヒーローになれたんだと感涙。ミートは感動に水を差すのも悪いと真実を胸に秘め、そして現在に至る。
まさか……その当時のことが息子である万太郎に伝わっているだなんて!
「うーむ、酔っぱらいのかけるプロレス技にしか見えん」
「実際酔っぱらいのかけるプロレス技よ」
ひろしとみさえは呆れていたが、技をかけられているアクション仮面は依然として苦しそうだ。
「グォゴガァァ……」
獣のような唸り声を上げるアクション仮面を見て、しかしボーン・コールドは難しそうな顔をする。
「効きまくっているようだが……はたしてあんな複雑な関節技が酔った状態で維持できるものか?」
このキン肉スペシャルなる技、傍目に見ても難易度が高い。
全身各所のクラッチはもちろん、片足立ちすら酔った状態では難しそうだが――
「うぷ。なんか気持ち悪く……」
「チャンス!」
案の定、気分が悪くなった万太郎は技を緩めてしまう。
『アクション仮面、万太郎の気分が悪くなった一瞬の隙を突き技から逃れ……』
すかさずアクション仮面が技を振りほどき、万太郎の腕を取る。
『お返しとばかりにアームロックを極めていく――っ』
立ち姿勢で極める、平凡なアームロックである。
本来関節技に奇抜さなどいらないのだ。先人たちの開発した技を正しい手順で行使すればそれだけで十分な破壊力を発揮する。
しかしながら、酔っぱらいにそんな一般論は通用しない。
「なんだこんなもん~~っ」
万太郎は腕を極められていることなど意に介さず、全身の筋肉を脈動させた。
「デヤ――ッ! マッスル・ユンボ――ッ!」
『そうはさせんと万太郎、筋肉重機をフル運転させアクション仮面を投げ飛ばした――っ』
アームロックを極められたまま上半身を豪快に振り、アクション仮面を投げ飛ばしたのである。
その様はまさしくユンボ(パワーショベル)のごとく。
「ただの力尽くじゃねーか!」
「あれじゃ自分にもダメージが返ってきちゃいますよ!」
荒業にもほどがある対応に、キッドとミートが声を上げる。
だが万太郎はまるで堪えていない様子で、極められていた腕をぐるぐると振り回した。
「こんなんツバつけとけば治るわ! ぺっ! ぺっ! ぺっ!」
「き、汚い……」
傷口をツバで消毒するなど昭和のやり方だ。そもそも万太郎は傷を負ったのではなく関節を痛めつけられたのだから、効果があるはずもない。
『さあ、万太郎がアホな民間療法を実践しているうちにアクション仮面が体勢を立て直す! ふたりの間に絶妙な距離が空いた――っ』
「くそ~~っ、こうなったらこっちもとっておきを出すもんね」
万太郎はアームロックのお返しをするべく眼光を鋭くした。
バリアフリーマンとテリー・ザ・キッドが必殺技の予兆を感じ取る。
「万太郎のとっておき……マッスル・ミレニアムか!?」
「いや、ここは最新技のマッスル・
超人オリンピック・ザ・レザレクションでバリアフリーマンを倒したマッスル・ミレニアム、“ザ・デモリッションズ”を倒すべくキッドたちと特訓したマッスル・G……どちらも万太郎のフィニッシュ・ホールドだ。
ふたりはそれぞれ万太郎が格好良く技を決めるシーンを想像するが――彼の取った行動は予想外のものだった。
『あ~~っと両腕を縦に構える万太郎のこれは……肉のカーテンか――っ!?』
相手と距離を取った状態で立ち、両腕を縦に構える。まさしくキン肉族伝統のガードポジション、肉のカーテンである。
「防御技の肉のカーテン!?」
「あんなに距離が空いとるというのに……なぜ!?」
今は絶好の攻撃タイミングだろう。キッドとバリアフリーマンは万太郎の意図がわからず困惑する。
「ま、まさか……」
しかしふたりよりキン肉万太郎という人物への理解度が高いミートくんは、彼の真意を察し凍りつく。
「アクションビームがなんぼのもんじゃい! これがキン肉万太郎様のビーム技だ!」
そう――万太郎はビームを放つつもりだ。
「キン肉ビーム! ビビビビビビビビビビビビ!」
アクション仮面とまったく同じポーズで技名を叫ぶ万太郎。
が、しかし――ビームは出ない。
ビビビビビビビビビビビビ!というのも、口でそう言っているだけのセルフ効果音だった。
「おお~! アクション仮面ごっこ! オラもやるーっ! アクションビーム! ビビビ!」
しんのすけはその楽しげな雰囲気に誘われ、万太郎の背後のリングサイドまで走り寄る。
そうして、家や公園で遊ぶようにアクションビームの真似をしたのだ。
アクション仮面は呆然。
彼らはいったいなにをやっているんだ……という眼差しを向け、棒立ちになっていた。
「こら~! ボクとしんのすけくんがダブルビームを撃ってるんだからちゃんとやられなきゃダメでしょ~が~~っ!」
「えっ」
対戦中の万太郎にごっこ遊びの流儀を突きつけられるアクション仮面。
もしやこれは……「や、やられた~」とアクションビームをくらうフリをしなければならない流れなのか?
「……っ」
対応に困ったアクション仮面は、両腕を動かし胸の前で大きく四角形を描いた。
大きな四角形、それはつまり壁のイメージだ。
「アクション……バーリア! 私にビームは無効だ!」
なんとアクション仮面は、ごっこのビームに対してごっこのバリアを張ったのである。
まさかビームに対抗してバリアとは。チョキにグーを出すような見事な戦術だ。
ビームを防がれてしまったしんのすけと万太郎は悔しそうに歯噛みする。
「おおっ。さすがアクション仮面だゾ」
「ズル~~ッ! ならこっちはバリア無効ビーム! ビビビビビ!」
「ならばこちらは、バリア無効ビーム無効バ~リア!」
それぞれビームとバリアに無効化属性を与えて技を繰り出し合う両者。
もちろんただのごっこ遊びなので視覚的なエフェクトはなにも発生せず、ただ言い合いが続くだけ。
超人レスリングの試合を観戦しているつもりだったひろしとみさえが唖然とする。
「こ、こりゃ酔っぱらいというより……」
「幼稚園児……」
「あ~~っ! 穴があったら入りたい~~っ!」
ミートは顔を真っ赤にしながら頭を掻きむしった。
「遊びにつきあうのはここまでだ!」
痺れを切らしたアクション仮面が後方、リングロープへと走る。
『アクション仮面がロープの反動を使い猛然とダッシュ――ッ!』
必死にビームを撃とうとしている万太郎目がけ、足から飛び込んでいった。
「アクション・ドロップキ――ック!」
プロレスの代表的蹴り技、加速と体重を乗せたドロップキックである。
『超人レスリング版とでもいうべきアクションキックが万太郎をド派手にぶっ飛ばした――っ!』
「ぎゃん!」
『万太郎、勢い余ってリング外に落下――っ!』
蛙のような悲鳴を上げ、万太郎がリングサイドの床に突っ伏す。
「Ⅱ世!」
「万太郎!」
ミートやキッドが呼びかけるが、万太郎はうつ伏せで大の字になったまま反応を示さない。
『万太郎、ピクリとも動かないが……大丈夫なのか――っ!?』
まさか、打ちどころが悪く失神してしまったのでは……!?
一同に緊張が走る中、
「ほう」
しんのすけはひとりトコトコと進み、万太郎の隣で自身もうつ伏せになった。
実はちゃんと意識を保っていた万太郎が、隣で倒れ動かなくなった5才児に問う。
「……なにやってんの?」
「したいごっこ。万ちゃんのマネ」
なんという子供らしくない遊びだろうか。
しかし、そう――“したいごっこ”。
万太郎の狙いを一発で見抜くとは、侮れない少年だ。
「リングの外にいようと容赦はしない!」
アクション仮面はコーナーのポストに登り、外で倒れる万太郎に狙いを定めていた。
リングで最も高い位置に立ち、そこから飛び降りる。
『アクション仮面、コーナーポスト上からラ・ケブラーダだ――っ!』
ラ・ケブラーダ――場外にいる相手に仕掛けるムーンサルト・アタック。
身動きの取れない万太郎はアクション仮面に押しつぶされてしまうのか、と思いきや。
「アホが見るブタのケツ――ッ!」
万太郎はアクション仮面が飛んだタイミングで体を転がし、これを避けた。
必然的に、アクション仮面は万太郎ではなく床に激突することとなる。
『あ――っと万太郎の死んだフリ! 直前でアクション仮面のラ・ケブラーダを回避し技を誤爆させた――っ!』
アクション仮面、痛恨の自爆である。
「ヌオオオ~~ッ」
『のたうち回るアクション仮面! これはいたーい!』
SSAのメインアリーナの床はリングキャンバスよりも固く、だからこそアクション仮面のダメージも大きい。
初めからこれを狙っていた万太郎はまだまだ酔いが覚めるには早いのか、ヨダレを垂らしながら醜悪な笑みを見せる。
「ゲッヘッヘ。そろそろフィニッシュといかせてもらうぜい」
床をのたうち回るアクション仮面を両腕で捕らえ、一息で頭上まで担ぎ上げた。
『お~~っと万太郎、アクション仮面をリフトアップ! いったいなにをするつもりだ~~っ!』
そのまま見上げるのは――上。
ただひたすらに、上。
ここは埼玉県の象徴、SSA。つまり屋内施設だ。
上には当然ながら天井があり、それを越えた先には空が、さらにその先には宇宙、そして地球とは異なる別の惑星があるだろう。
万太郎が見据えるのは、まさしくそれ。
太陽系外縁天体のひとつ――冥王星である。
「48の殺人技……No.1!」
父キン肉マンが使っていた“48の殺人技”、その映えある1番目にナンバリングにされた技を、アクション仮面に対し発動させる。
アクションとしては至極単純――上に向かって、とにかく思い切りぶん投げるのみ!
「宇宙旅行だ――――っ!!」
万太郎の怪力により、アクション仮面の身がロケットのように宇宙へと投げ放たれた。