もしクワイ=ガン・ジンが生きていたら   作:サリエリキキ

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マンダロリアンとは銀河最強である!~④~

 ニック・スカイラーことアナキンがレースを終えて関係者席へ戻ってきた時、当然ながら出迎えた面々の機嫌は良かった。

 

 優勝した。二百八十六倍の大穴も当てた。六百万人の生活を立て直すために最も足りなかった纏まった資金が、たった数時間で一気に増えたのである。

 オビ=ワンとしては公金を非合法賭博へ全額突っ込んだという過程について言いたいことが山ほどあったが、結果だけを見れば大成功だった。

 

「どうだった、ニック」

「楽しかったですよ。タトゥイーンのポッドレースより安全だった事以外に不満はないです」

「…………そうか」

 

 クワイ=ガンの問いへ満面の笑みで答える十三歳を前に、オビ=ワンはそれ以上聞くのをやめた。

 ブラック・サンが途中から自動砲台まで持ち出したレースを『安全だった』と言い切れる幼少期については、今度ゆっくり聞く必要があるかもしれない。いや、聞かない方が精神衛生上良いかもしれない。

 

 そんな祝勝ムードの中、如何にも堅気ではありませんと全身で主張する男たちが現れた。

 

「ニック・スカイラー選手。そして関係者の皆様。優勝、おめでとうございます」

 

 先頭に立つ大柄なファリーンの男が丁寧に一礼する。その背後には十数人の武装した男たち。通路の前後を塞ぐ位置にも同じ服装の者が立っており、全員が腰にブラスターを下げていた。

 

「私はジトン・モージ。このレース場を任されております。優勝賞金と副賞についてのお話がありますので、オーナー室までお越しください」

「これはまた、随分と丁重な案内ですね」

「優勝されたお客様ですから。当然の配慮ですよ」

「なるほど」

 

 つまり、武装した十数人による連行である。

 もっともブラック・サン側は知らない。

 目の前にいるのがジェダイであることも、地味な服と外套で正体を隠したアルトたちジャビーム人の戦士とデス・ウォッチのマンダロリアンが合わせて八人いることも、その中にプレ・ヴィズラが混ざっていることも。

 まして、スポンサーの妻としてオビ=ワンの腕を取っている美女がマンダロア公爵であり、その後ろに控えている女たちが公爵付きの女官であることなど、想像する理由すらなかった。

 故にブラック・サンから見れば、彼らは大穴を当てたスポンサー一行でしかない。

 だから、こんな無防備にオーナー室という心臓に連れて行くような愚行をしたのだが。それをブラック・サン側が知る由もない。

 

 

 

「行きましょう。賞金と払戻と副賞を受け取る必要があります」

 

 六百万人の会社設立資金にする為の大切な金と囚われた仲間たちの解放がかかっている。

 スポンサー一行の秘書役を演じているクワイ=ガンの言葉に、オビ=ワンたちも頷き、一行は極めて丁重に包囲されたままオーナー室へ向かった。

 

 案内された部屋は、非合法レース場の所有者が使うに相応しく豪華だった。

 

 巨大な窓からはアリーナ全体を一望でき、床には高級な絨毯、壁には美術品と酒。そこへ先ほどの男たちまで入って来て、入口と壁際へ自然に散った。

 客人を歓迎するには少々武器が多すぎたが、ブラック・サンなのだから今更である。

 

「では、まず優勝賞金を」

 

 ジトンが端末を操作すると、ニック名義で用意していた口座へ約束通りの金額、500万クレジット(※有馬記念一着とほぼ同額)が送られた。任務資金と同額の賞金にオビ=ワンたちは満足した。

 

「確かに受け取りました」

「副賞についても規定通りです。優勝者には、今回の大会で賞品として登録された我々の所有物から一つを選ぶ権利がある。それも保証しましょう」

 

 そこまでは約束通りだった。

 だから、一つの賞品枠として纏めて登録されていた捕虜のマンダロリアンたちを要求し、『直ぐに連れて来る』と回答されたオビ=ワンたちも素直に次を待った。端末に払戻金が入金されるのを。

 だが、何も起こらなかった。

 

「……賭けの払戻しは?」

「ありません」

 

 あまりにも自然に返され、オビ=ワンは一瞬だけ黙った。想定していたが、出来れば攻撃的な交渉は避けたかったなあ。いや、まだ避けられる。きっとそうだ。

 

「ありません、とは?」

「今回、ニック・スカイラーへ行われた高額な賭けについては全て無効と判断しました。賭け金そのものは返還します」

「理由を伺っても?」

「十三歳。初出場。戦績なし。にもかかわらず、関係者から異常な額の賭けが集中した。その上でこの圧勝です。事前に実力を知っていた者による不公正な行為、即ち詐欺と判断するには十分でしょう。

 合わせて三十ニ億クレジットもの払戻しですよ。詐欺るのも大概にして頂きたい。自前の艦隊を造船機能付き拠点ごと買うおつもりですかな。それも二つも」

 

 なるほど。大損するから払いたくない、を随分と綺麗な言葉で飾ったものだ。

 ……ちょっと…………いや、かなり、アチラの言い分に理がある気がしてしまう額だが。

 気付いたら船団代表みたいなポジションになっていた真性のド畜生政治家たるオビ=ワン・ケノービは、自分たちを信じる六百万人の味方だった。

 船団分の取り分だけでも造船機能付き拠点が買える、ということを裏社会幹部が保証した。その事実だけを脳裏に焼き付け、それ以外はサティーンたちの払戻金以外綺麗さっぱり消した。

 

「では、その規則を見せていただけますか?」

「何?」

「関係者が選手へ賭けることを禁じた規則です。私は参加規約と賭博規約の双方を確認しましたが、そのような条項はありませんでした。選手も含めた機体が貴方たちの検査を通り、私たちが金を賭けた結果、倍率を二百八十六倍に設定したのは貴方たちです。我々が倍率を操作した事実も、他の選手を買収した事実もありません」

 

 途中から砲台で撃たれた件については、とりあえず置いておく。論点を増やす必要はない。今要るのはカネだ。企業設立と造船機能付き拠点という充分なカネさえ手に入れば、砲台については一旦すべて忘れてもいい。

 マインドトリックを自分の後ろからしても通じないため、早くも「「駄目だ。攻撃的な交渉しかない」」と腹を括った師や弟弟子とは違い、平和主義者である自分はまだ平和的な交渉を諦めていない。

 

「要するに、我々は貴方たちが決めた規則に従って賭け、その賭けに勝った。それだけです」

「……ご存じですかな。ここは共和国の裁判所ではないのですよ」

「ええ、勿論」

 

 だからこそ面倒なのだ。

 共和国法を持ち出して強制執行できる場所なら、オビ=ワンもここまで丁寧に話してはいない。いや、いなかった。

 哀しむべきことに、マインドトリックを直にしても通じず、目の前のジトンから営業用の笑みが消え始めているのを見て、オビ=ワンは内心で判断を修正した。

 

(駄目だな。これは攻撃的な交渉になる)

 

 ──『まだ平和的な交渉を諦めていない』と考えていた自称平和主義者は、僅か一分で平和的な交渉を諦めた。

 

「だからこそ、あなたがたは払うべきでしょう」

 

 旦那役を含めた平和の使者を謳うジェダイどもが、相手にバレない程度のマインドトリックをしたあげく、早くも実力行使しかないと野蛮な決断をしたことを見て取り、頭を悩ませながら何とかドンパチを避けようとするサティーン(※この場における唯一の平和主義者)が口を開いた。

 

「共和国法によって保証されない賭博である以上、客が貴方たちへ金を預けられる根拠は、ブラック・サン自身が定めた規則を守るという信用だけです。負けた客からは金を受け取り、勝った客には『我々が損をするから無効だ』と支払いを拒む。そのような胴元を、誰が信用するのです?」

 

 哀しむべきことに、サティーンの理性的平和主義か通じないジトンの目が細くなるのを見ながらも、サティーンはドンパチを避けようと説得する。

 

「賭けて勝ったのに胴元が金を払わないのであれば、それは賭博ではありません。ただの強盗でしょう」

 

 プレが横で吹き出した。

 政敵であるサティーンを笑ったのではない。

 むしろ逆だった。

 日頃あれほど戦争を否定する公爵が、犯罪組織のオーナー室で正面から『お前たちのやっていることは強盗だ』と叩きつけたことが愉快で仕方ないのだ。

 

「優勝賞金は払った。副賞も渡す」

 

 ジトンの声から、先ほどまでの営業用の丁寧さが消えた。ついでに、辛うじて残っていた穏やかさも消えた。

 

「賭け金も返す。それで十分だろ。受け取って帰れ」

「払戻金を受け取ったら帰ります」

「払戻金はない」

「では、まだ話は終わっていませんね」

「いや。終わりだ」

 

 ジトンが軽く手を上げた。

 それまで壁際にいた構成員たちが一斉にブラスターを抜き、一行へ銃口を向ける。

 ここに至って、ブラック・サンは自分たちから仕掛けた──仕掛けてしまった。

 

 それを見ても、クワイ=ガンもオビ=ワンもまだ動かない。アナキンも同じだった。

 アルトたちも、プレたちも、女官たちも、相手が銃を構えただけならばそのまま待つ。

 サティーンがまだ交渉しているから、彼女の意志を尊重して待った。

 

「武器を下ろしてください。私たちは約束された支払いを求めているだけです。こちらから貴方たちへ暴力を振るった者はいません。(マインドトリックはともかく)先手を取って振るおうとしている者もいません」

「黙れ、女」

「いいえ。黙りません」

 

 静かで穏やかで力強い返答だった。

 

「私は、このようなやり方で暴力によって他者へ意思を押し付けることを認めません。戦争や暴力を社会の中心へ置くことに反対しているからです」

 

 プレを含めたデス・ウォッチの者たちにとっては、聞き慣れた公爵の主張だった。

 やはりそこへ行き着くのか、と僅かに落胆しかける。だが、その直後に『ですが』という言葉が続いた。

 

「ですが、それは向けられた暴力から自分や他者を守ることまで否定するという意味ではありません」

 

 全員の目がサティーンへ向いた。

 

「こちらから攻撃するつもりはありません。ですが、貴方たちが撃つのに対して必要な範囲で抗うのであれば、それは戦争でも暴力でもない」

 

 サティーンは自分たちへ向けられた銃口を見ても、少しも目を逸らさず怯えなかった。

 

「自衛です」

 

 プレの口元が吊り上がった。

 その周囲にいるデス・ウォッチの者たちも同じだった。

 

 ──それでいい。と。

 

 彼らが長年サティーンへ抱いていた不満は、まさにそこだった。戦争を嫌うことと、戦う力まで捨てることは違う。殴られても反撃せず、マンダロアが傷付くまま耐えることを平和と呼んでほしくない。デス・ウォッチたちは常々そう思っていたから、新マンダロリアン政府へ背を向けたのだ。

 だが今、公爵本人が違うと言った。

 戦争は否定する。征服も、暴力で意思を押し付けることも否定する。だが、向けられた暴力から自らや周りの者達を守ることまで否定してはいない。

 そう言ってくれたのだ。笑うしかなかった。

 

「……何を笑っている?」

 

 ジトンには、その意味など分からない。分かるはずがない。

 

「いや、なに、これが笑わなくて何を笑うかって話なのさ」

 

 プレは何処までも楽しそうに答えた。

 

「続けてくれ、是非とも今の状況の続きを見て聞きたい。いや、ずっと俺たちはこういう状況を待ち望んでいたんだ」

「端末を取り上げろ」

 

 恐怖で頭がおかしくなったと判断したジトンが命じた。

 近くにいた構成員たちが端末を奪おうと一斉に距離を詰める。

 それが失敗だった。より正確には、まずは抵抗しなさそうな女たちから、と判断したことが失敗だった。

 

 サティーン付きの女官が、マンダロア公爵を犯罪組織の本拠地まで護衛して来た女官であるという事実を知らなかったのである──マンダロリアンの女官だと。

 

 一人目は伸ばした腕を取られたまま床へ叩き落とされた。二人目は反応するより先に顎を打ち抜かれ、三人目がようやく異常事態だと理解した時には、最初の二人が持っていたブラスターは既に女官たちの手へ渡っていた。

 

「なっ──」

「撃て!」

 

 この状況で唯一ブラック・サンを褒める所があれば、直ぐに引き金を引いたことだろう。

 

 ──当然無駄だったが。

 

 赤い閃光の数々に青い光刃と緑の光刃が重なる。オビ=ワンがサティーンへ向かった一発を含めた数発を弾き、ほぼ同時にクワイ=ガンとアナキンもライトセーバーを抜いて残りを逸らした。

 

「ジェダイ!?」

 

 悲鳴混じりの驚愕へ追い打ちを掛けるように、プレたちも外套を脱ぎ捨てた。

 隠されていたマンダロリアン・アーマーが露わになり、アルトたちもそれまで隠していた武器を抜く。

 

「デス・ウォッチ! マンダロリアンっっ!?」

「おうよ。初めましてだな。そしてサヨナラだ」

 

 やる気満々のマンダロリアンたち。ここまで来れば偽名も変装も意味はない。アナキンの名をオビ=ワンが呼ぶ。

 

「アナキン、前へ出るなよ我々は壁だ」

「分かってますよ、オビ=ワン! 僕らはブラスターを弾くんですよね。相手に打ち返さずに逸らす!」

「その通りだ。殺すなよ。まだ、ボ=カターンたちを取り戻していないからな」

 

 そう言いながら、息の合った動きで飛来するブラスターの弾を片端から弾き始める兄弟弟子。

「アナキン? ……アナキン・スカイウォーカーか!? あのぉっ!? ポッドレースを9歳で人間の身で制した伝説じゃねーか!? んなビッグネーム! 本名ならブッチギリ一番人気だよ! 単勝元返し間違いなしのなぁ! クソっ! 汚ねぇぞ! この詐欺師ど──ぎゃぁ!!!???」そんな咆哮をしたジトンだけを真っ先にフォースで気絶させたのに他意はない。

 敵総大将を真っ先に仕留めるのは戦術の王道である。急いで口を封じなければ、と兄弟同時にフォースで気絶させたことに後ろめたさはないのだ!

 

 それを見ながら、他の者たちもブラスターの引き金を引こうとする。マンダロリアンの女官たち、デス・ウォッチ、アルトたちジャビームの特殊部隊。

 最初にブラスターで敵を撃ち倒したのは、そんな錚々たる面子ではなかった。

 最後まで、非戦闘員にしか見えていなかったサティーンだった。

 女官が奪ったブラスターを受け取ると、迷わず出力をスタンへ切り替え──神業のような射撃で、未だ物陰にすら隠れていない大間抜け三人(マンダロリアン並感)を撃ち倒したのだ。

 

 若いデス・ウォッチの戦士が思わず目を見開くほど、その射撃は見事だった。平和主義思想と戦闘能力が両立することを、長年彼女を『戦うことそのものを否定する公爵』だと思っていたプレを除くデス・ウォッチの者たちは、自分たちの目で初めて見ることになったのだ。

 

「公爵、強ぇ……」

 

 その声にプレは一度溜息をついた。サティーン・クライズはマンダロリアンであり、しかも名門クライス家の人間として公爵に立つ女である。このくらい出来て当然なのに。

 

「何を驚いている。クライズ家のサティーンだぞ」

 

 平和主義云々掲げようが、マンダロリアンの偉いさんは当然訓練を受けている。だから指揮能力含めた戦闘能力を有しているのだ。それも滅茶苦茶高いモノを。

 平和主義への反発で若い連中の目が曇りすぎてるな、と首を振るプレ。その肩を隣のクワイ=ガンが軽く叩き、久しぶりのタッグでブラック・サンを制圧していく。

 

「公爵!」

 

 堪えきれなくなったデス・ウォッチの一人が歓喜の声を上げる。

 

「自衛なら戦っていいんですよね!?」

「必要な範囲で、と言いました! まだ人質がいるのですよ! 余計な死者を出して状況を悪化させないでください! 私がしたようにスタンで撃ってください!」

「聞いたか! 公爵が戦っていいってよ! 撃ちまくれ!」

「だから! まだ我々の仲間が人質が取られているのですよ! 殺していいとは言っていません!!」

「分かってますよ! スタンで撃ちます!」

「そうしてくださいね! 彼らは懸賞金がかかった犯罪者です! 生きていれば報奨金を得られるのです! そういう意味でも殺してはいけません!」

「「「イエス! マム!!!」」」

 

 心底嬉しそうに遮蔽物からスタンで撃ちまくるデス・ウォッチが敬意の唱和をするのに、サティーンは疑問で頭を抱えたくなった。

 だが、今はそれどころではない。

 再び飛んできたブラスターをオビ=ワンが弾き、サティーンもその陰からスタンで撃ち返す。また一人倒した。

 女官たちも既に奪った武器で左右を固め、アルトたちジャビームの戦士も戦闘へ加わっていた。

 

 

 

 

 

 ブラック・サンからすれば、大穴を当てたスポンサー一行を脅して帰らせるだけのつもりだった。

 

 だが、蓋を開ければ、その変装していた詐欺師集団、もといスポンサー一行は、あまりにもとんでもない戦闘能力の持ち主だった。

 

 ジェダイ三人。

 ジャビームの戦士三人。

 デス・ウォッチ五人。

 戦える公爵付き女官二人。

 そしてマンダロア公爵本人。

 

 丁重にオーナー室へ招き入れた相手としては、極めて最悪の部類を引き込んだのだった。

 もっとも、直ぐに見込み違いを理解したブラック・サンは速やかに反応した。

 銃撃が始まった瞬間には警報が鳴り響き、拠点にいたブラック・サンたちは速やかに武器庫や警備所に集まった。勿論、近くにいた者達は廊下と奥の区画から次々と増援として駆け込んできた。直ちにオーナー室とその周辺へ集まった戦闘員は七十二人だった。それら動きは見事というほど速やかだった。

 ──それだけだった。

 

「オビ=ワン!」

「分かっている!」

 

 サティーンを庇いながら前へ出たオビ=ワンが、次の一斉射をライトセーバーで受け止める。

 そのすぐ後ろでサティーンも銃口を上げ、ライトセーバーの軌道越しに瞬く間に三人撃ち倒すという銀河の名うてのガンマンでさえ目を疑うような腕を見せた。

 戦争を始めるつもりなど欠片もない。

 もちろん、暴力で政治的要求を押し通すつもりもない。

 だが、自分たちを撃った者から、自分と仲間を守る。

 その事を否定したことなど、一度もなかった女傑は当たり前のように強かった。

 

「ジェダイは防御を! 他の者はスタンで撃ちなさい! 念のために三発はスタンを叩き込み無力化するのよ! 大丈夫! 死にはしません!」

「「「イエス・マム!!!」」」

 

 かくて、ブラック・サンの応援七十二人は、そんな銀河でも上澄みに位置する戦闘能力保持者十四人を相手に、四十六秒も奮闘するという偉業を遺して全員気絶した。

 

 で、終わるわけがなかった。

 オーナー室に置かれていた幹部用管理端末と、気絶したジトン本人の生体認証を確保した彼等は、流れるように次へ向かう。

 

「まだ人質が残っています。この拠点を制圧して、全員を救出します! その上で、払戻金に充当できる資産も保全します! 先ずは幹部の生体認証を使い、外部通信を遮断し、内部通信はこちらで掌握して誘導します! そうすることで、警報により各所警備所に集まった者達をその場に待機させ、各個撃破します! 無力化ガスが通じる所はそれで無力化を! プレ! 競技場周りに伏せている者たちに連絡を! 無力化ガスが無いところを数で攻めますよ! 絶対に殺さないで下さい! 降伏した者は拘束するだけで手を出さないこと! マフィアたちは、生かして共和国へ引き渡せば懸賞金になります! 通信を掌握次第我々も出ます!」

「「「イエス・マム!!!」」」

 

 命令を受け、競技場周辺へ念のために事前に潜んでいたマンダロリアンとジャビーム側の人員も一斉に動き出した。通信を断ち、敵を警備区画ごとに分断し、無力化ガスが使える場所では纏めて眠らせ、それ以外を数で潰すために。

 

 こうして、マフィア一人一人をきっちり復興資金へ換えるためにも、躊躇わずスタンで撃ちまくり倒しまくりながら満面の笑顔のデス・ウォッチを含めた皆を指揮する平和主義者サティーン*1は、自衛の一環としてマフィアを拠点ごと制圧しにかかるのだった。

*1:
戦後吉田茂の平和主義と同類。軍備そのものを否定するのではなく、国家再建を優先するために平和を謳いながら軍備への支出を抑え、経済復興を最優先する統治。だから、サティーンの治世下ではマンダロアは実際に復興している。

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