もしクワイ=ガン・ジンが生きていたら   作:サリエリキキ

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マンダロリアンとは銀河最強である!~⑤~

「ずいぶん、楽しんだわね。お・ね・え・さ・ま」

 

 ボ=カターンは半眼でマンダロリアンアーマーを着た(持ってたんかい!)姉を見据えていた。

 オーナー室という頭脳を占拠したあと、小惑星にいた二千人近いブラック・サンの手下どもを、ジェダイ三人に、アリーナ周辺へ伏せていたデス・ウォッチ、それにアルト・ストラタス率いるブロンズ・ニンバスを加えた二百人弱で各個撃破。誰一人死なせず、こちらにも犠牲を出さず、最終的には拠点そのものまで制圧した。

 そして今、その戦果として倉庫という倉庫を開け、払戻金分三十二億クレジットに届くまで接収中。

 ──そんな、マンダロリアンの生き様此処にあり! なことを平和主義者な姉がやっているのだ。反発して家を出たボ=カターンが半眼になるのは当然だろう。

 

 もっとも、その半眼は姉の後ろにあるせっせと荷を運び込まれていく船をみて煌めきに変わった。

 

 ブラック・サン所有の巡洋艦二隻と武装輸送船六隻を、船団とマンダロリアンで山分けしたのである。そんな戦利艦を前にして虜にならないなど、マンダロリアンではない!

 戦闘機十二機については、オビ=ワンにより武器を加えて重んじるマンダロリアンの信仰に敬意を表して──という建前と、船団側には今すぐ乗せられるパイロットが少ないという現実的な事情から、まとめてマンダロリアン側へ譲られることになったから尚更だ。

 

「復興にお金を使いたいから軍備を制限したのであって、頂けるものまで捨てる理由はありません。維持費についても、この程度ならば問題ないでしょう」

 

 誰あろう平和主義者の姉がそんな風に認めたのだから、嬉々としてマンダロリアン側は受け取った。

 今、予備部品ごと頂いた巡洋艦一隻と武装輸送船三隻と戦闘機十二機に荷を運びマンダロア仕様の塗装へ変えている同胞たちは、ヘルメットを被っている者でさえウットリしているのが分かる。

 自分もウットリした。

 だって巡洋艦だよ。しかも全長600mのドレッドノート級重巡洋艦! 

 キラキラした目でプレが中を見て回ってることも責められやしない! 

 加えて、自分たちに喧嘩を売ったブラック・サンの私財を、戦友と山分けしてるのだから、同胞みんなが幸せ一杯になるのは当然ではある。

 

(私が、いないうちに、ね。しかも、姉さまが)

 

 そんな、マンダロリアンの美意識の発露みたいなことを、普段は平和だの軍事削減だのと口にしている姉が「払戻金の代わりです」と指揮しているのだから、マンダロリアン皆が楽しんで、ボ=カターンが不満を覚えるのも当然だった。

 

 自分たちが捕まっている間に、こんな楽しいことを! と。

 

 

 

 そんな妹の拗ねた眼差しや物言いなどで姉は揺れたりしない。「無事でよかった」と一度抱きしめたあとは公爵としての仕事を熱心にしていた。

 

「公爵閣下、こちらをご覧ください」

 

 今も、公爵として宝飾品の鑑定を同胞から求められ、応じている。

 そう、つい先日まで「平和主義の豚が」だの何だのと姉を罵っていたのを、今では敬意一色にしている同胞から! 

 

 あまりの変わり身の早さに、未だ十五になったばかりのボ=カターンが半眼になる中、大人な姉はマンダロア公爵としての姿を見せていた。

 

「これは……オルデラン王家の宝飾品! 盗まれたと、数年前から捜索されていたものではありませんか。まさかブラック・サンへ流れていたなんて──ご苦労でした。直ちにマンダロア政府の名で発見を報告し、返還手続きを致します。報奨は私から出しましょう」

「ありがとうございます。ところで、価値は?」

「オーダーメイドですので、金額としての価値は付けられません」

「では、これも?」

「はい。払戻金へ充てるという意味では無価値です」

 

 姉の言葉に、すべてを理解した同胞の声が弾んだ。

 

「……いけませんな。では、これもゼロと記載せねば」

 

 公爵がツーと言えばカーと返すように、端末へ『払戻充当額――ゼロクレジット』と入力する同胞。

 何度も言うが、満足気に頷きながらそんな事をする同胞は、つい先日まで姉を、『俺たちを衛星に追い出して、平和平和と言えば平和になるのか! あのあばずれ!』などと罵っていた同胞である。

 

「公爵殿下、こちらの物品はいかがでしょうか」

 

 いや、代わり代わり姉に指示を仰いでいる同胞は皆そうだった。妹の自分が居る前で(そこまで言わなくとも良いじゃないか。私の姉なのに)と思うくらい姉を罵っていた。

 

「分かりました。見せてください。そちらへ向かいます」

「あ、いえ、わざわざ御足労頂かなくとも、データで送ります」

「ありがとう……これは、合法の医療機器、換金性は高い──いえ、盗品の疑いがありますね。法的には価値はゼロ。払戻金への充当額は、同じくゼロです」

「……なるほど(満面の笑い声)」

 

 それらを過去にして、私は忠実な部下です面している同胞を見るボ=カターンの目は冷たい。

 

「はい、他の鉱物や貴金属など換金可能品についても、盗品や出所不明品が混じっている以上、合法品と裏が取れても、全て市場最低額で見積もるべきでしょう。と、なると……」

 

 そこで姉は、マンダロリアンの眼差しで倉庫を見渡した。

 

「これは、根こそぎにしなくてはなりませんね。それでも足りませんが」

「ですな。精々が六億クレジットに届くかです。我々の払戻金三十二億クレジットには全く足りません」

「その六億には彼等の懸賞金は?」

「無論、含まれています。というより、大半が懸賞金です」

「……違法品よりも、合法な懸賞金の方がクレジットになるのは当然とはいえ、世知辛いですね」

 

 心底痛ましいという政治家顔で溜息をつく公爵に対し、少し離れた場所で、むぐぅぅぅ、と拘束され口枷を噛まされたブラック・サン幹部ジトンが泣いていた。

 つい一時間ほど前、拠点構成員が全員囚われた時さえ、絶望こそしても「甘ちゃんの平和主義者のやることだ何とかなる」と泣かなかった男が、今は自らの破滅を悟って涙していた。

「払戻金相当だけですよ」と言っていた世に平和主義者として知られる公爵が、盗品は返却するからゼロ、出所不明品も怪しいからゼロで査定。と容赦なく冷静かつ真面目にかつ合法的に計算した結果として、時価百億クレジットを超える物資を根こそぎ奪っているのだから泣くのも仕方ないだろう。

 一見真っ当な物資にまで『盗品や出所不明の疑いがありますね』と疑義を付け、合法品と確認された物さえ市場最低額で見積もるというド畜生なことまでして! 

 金なら帳簿を弄って誤魔化せる。叩きのめされた事も死者が居ないから誤魔化せるかもしれない。

 だが、巡洋艦も輸送船も倉庫の物資も、無くなれば上に誤魔化しようがない──消される。

 それを泣きながら訴えても公爵は「聞くことは聞いたので、口を閉ざしてください。後は此方に向かっている司法省の方にお願いします。今の私たちが、あなた方に求めるのは掛けられている懸賞金を受け取るだけです」とだけで流して査定作業、いや、少しでもマンダロアに還元することに集中していた。

 平和主義者とは甘ちゃんでは無いことを知らなかった涙するジトンの目は、雄弁に語っていた。

 ──俺の人生、終わった。と

 

 

 

 幹部と同じく「姉は平和主義者の甘ちゃんだ!」と認識して反発していたボ=カターンは、『誰もが理解してくれる理由が出来たのだから、犯罪組織から根こそぎ奪う』としたド汚え大人の世界に風邪ひきそうだった。

 

 その脇でジェダイ三人が「スパイスまでもか。いかんな」「ええ、全くですマスター。これほどのスパイス。どれ程の罪になるか」「法的に見て全部没収ですよね。あ、92番倉庫に隠し部屋がありますよ」とか抜かしながら「「「我々は民事不介入です」」」面して自分たちを色々と手助けしている辺りが特に!! 

 

 なによりも、共和国法においては、犯罪組織に襲われ自衛で叩きのめして所有する金品や盗品を返還ないし表の市場に還元する姉の行動は称賛されども非難されるものではない事が特に!!! 

 

 

(これがっ! 法律を活用する!! 合法の力っっっ!!!???)ボ=カターンは、一つ大人になった。

 

 

 ただまあ、現状は理解できた。

 十倍近い敵を自ら先頭に立って制圧し、兵器を含めた資産を接収し、その一方で盗品は元の持ち主へ返す。

 そんな姉が同胞から敬意を向けられるのは、まあ理解できた。

 

 仲間外れにされたことが欠片も納得いかないが

 

 

 

 

 

 

 

 何せ、ボ=カターンたちが牢から解放された頃には、そんな楽しい出来事の大半が既に終わっていたのである。

 

 牢の外から銃声が聞こえ始めた時、ボ=カターンたちは当然のように色めき立った。

 救援が来た。ならば自分たちも扉が開いた瞬間に看守を叩きのめし、武器を奪って合流する。捕虜として大人しく助けられるのを待つなど、マンダロリアンの性分ではない。当然、自分たちも戦うつもりだった。

 

 ──そのつもりだったのだ。

 

 ところが、いくら待っても誰も来ない。

 代わりに遠くから響いていた銃声が少しずつ減っていき、遂には完全に聞こえなくなった。

 

 戦闘が終わったのではないか。いや、まさか負けたのか。

 

 そんな、十五歳のボ=カターンにとって極めて嫌な予感が頭を過った頃、ようやく牢の前へ複数の足音が近付いてきた。

 

「下がってください!」

 

 聞き覚えのない若い声が響いた直後、分厚い金属扉へ緑の光刃が突き刺さった。

 それは人一人が通れるほどの円を描きながら金属を焼き切り、最後に少年が空いた手を軽く突き出す。切り抜かれた扉がフォースで廊下側へ倒れると、赤熱した断面から立ち昇る煙の向こうに、少年とデス・ウォッチの同胞二人が姿を現した。

 

「ボ=カターンさんですよね。アナキン・スカイウォーカーです。助けに来ました!」

 

 ライトセーバーを手に名乗った少年を見て、何故ジェダイが此処にいるのかという当然の疑問は浮かんだ。

 だが、そんなことより今のボ=カターンには遥かに重要な問題がある。

 

「戦闘は!? 武器は何処!」

 

 助けに来てくれた礼より先にそう尋ねると、デス・ウォッチの二人が揃って顔を見合わせ肩をすくめた。

 

「……終わったぞ」

「何が?」

「戦闘だよ」

「は? …………全部? え? まさか全員倒したの?」

「全部だ。この拠点にいた敵は全員倒した。観客は逃げてった」

 

 そのまま話を続ける同胞たちに、ボ=カターンたちは暫く何も言えなかった。

 ブラック・サンの構成員は、この小惑星だけで二千人近くいた。

 各所に武装した警備員が配置され、戦闘機や艦艇まで備えた、賭博場というより一つの軍事拠点に近い場所だったはずだ。

 それを二百人にも満たない人数で叩き潰したという。

 しかも味方に犠牲を出さず、ブラック・サン側にすら死者を出さずに。

 自分たちが牢の中で、助けが来たら何処から反撃しようかと話している間に。

 公爵の指揮ですべて片付けた。と楽しそうにいう同胞に遂に吠えた。

 

「なんで私たちを先に助けないのよ!」

「そら、その方が安全だからだ」

 

 思わず抗議すれば、同胞から返ってきたのは至極真っ当な理由だった。

 敵にとって価値ある人質が安全な牢へ纏められているのなら、戦闘中に外へ出して再び捕まる危険を作るより、拠点そのものを制圧してから助けた方が良い。実に合理的で、反論する方が馬鹿らしい話である。

 だから、その点は理解した。なるほど合理的だ、と感心すらした。納得は出来ないが。だが、マンダロリアンとしてその発案者は高く評価すべきである。

 誰がそんな発案をしたのかと聞けば、返ってきた名前はオビ=ワン・ケノービという聞き覚えのある名だった

 

「ああ、姉さんの彼氏ね」

 

 二人がああ、やっぱりそうか。という気配をヘルメット越しに出し、アナキンというジェダイが「やっぱり、そうなんだ」という顔をするのをボ=カターンは強く頷いて肯定した。

 姉は違うと言っていたが、妹の自分にはわかる。あれは照れ隠しだ。良い歳してめんどうな照れ隠しだ。昔から姉の口から時折名前が出て、昔の映像を大事そうに隠し持っていて、女官たちまで噂していた。

 

 姉の彼氏以外に何だというのだ。それも、戦慣れした合理的な判断をする素晴らしい彼氏である。

 

 しかも話を聞くほど、その評価は上がる一方だった。

 オーナー室を落とした後、オビ=ワンはそのまま捕らえたブラック・サンの幹部を相手に、施設内の財産について実に丁重かつ攻撃的な交渉を始めたらしい。

 

 三十二億クレジットを払いなさい。現金が無いなら現物でも構わない。

 資産の所在を答えたくないなら、それも構わない。ただし払戻金ぶんだけでなく、拠点に存在する物品全てをブラック・サン所有の可能性がある資産として保全する。

 要するに、答えなければ全部持っていく。でも、答えてくれたら全部持っていかないだろうと嗜めたのだ──なお、法に則ったところ全部持って行くことになった。哀しいね。

 殴りもしない。ライトセーバーを突き付けもしない。

 ただ穏やかな口調で、「物資を根こそぎにされた君の立場はどうなるか」「分かるよ。君には立場がある事が、だが我々にも立場がある」「ブラック・サンは全ての物資を奪われた幹部をどう扱うんだろうね」とか言いながら逃げ道を一つずつ塞がれた幹部は、十分もしない内に銀行口座から倉庫、燃料、予備部品、艦艇、偽装会社に至るまで洗い浚い吐いたという。

 

「……姉さんの彼氏、怖くない?」

「怖かったぞ。笑顔だから余計にな」

「でも、やり手なんでしょう?」

「滅茶苦茶な。口座を真っ先に押えてくれたから、あれだけで二億は手に入った。ありゃあ慣れてる」

 

 ボ=カターンの中で評価が上がった。

 そして更に、ブラック・サン所有の戦闘機十二機について、船団側に今すぐ扱えるパイロットが足りないと分かると、オビ=ワン自身がマンダロリアンへ譲ることを提案した。

 単に余ったから寄越したのではない。

 

『マンダロリアンにとって武器は文化的にも宗教的にも重要なのだろう。ならば、こちらで余らせるより君たちが持つ方がいい』

 

 そこまで言ったらしい。ボ=カターンの中で評価が更に跳ね上がった。

 自分たちを助けてくれた。強い。頭も切れる。表は勿論、裏社会にも通じてる。

 そしてマンダロリアンにとって武器が単なる道具ではないことまで理解している。戦友に譲られた武器がどれ程意味あるのか知って尊重してくれている。

 

 ──お姉さま、見る目あるじゃない。

 

 オビ=ワン≒姉の旦那と格上げしながら牢を出たボ=カターンの足は軽かったが、歩きながら自分がどれほど大事な場面を見逃したのかを聞かされるたびに重くなった。

 

 

 

 特に腹立たしかったのが、サティーンと旦那のオビ=ワンの間で交わされたという話だった。

 戦闘後、オビ=ワンは、先ほどサティーン自身が口にした『自衛』という言葉について、皆の前で改めてその線引きを尋ねたらしい。

 そこで姉が何と答えたのか。

 デス・ウォッチの二人が嬉しげに話すのを、聞くボ=カターンも嬉しくなったと同時に居合わせなかったことに足が重くなった。

 

『私は戦争と暴力をマンダロア社会の中心に戻すことに反対しているのであって、向けられた暴力から自分や他者を守ることまで否定しているわけではありません』

 

 ブラック・サンは約束した払戻金を拒み、その上で先に銃を向けた。だから自衛した。  

 そして今やっているのは、戦争に勝って好き勝手する略奪ではなく、自衛した上で、本来支払われるはずだった三十二億クレジットを回収する共和国法に則った行動をしているだけである。

 

『マンダロリアンの評判を貶めずに正当に得られる財まで、主義を理由に放棄するなど愚かでしょう』

 

 そう言い切ったという。それを聞くまで、ボ=カターンも含めた囚われていた者たちは姉のことを違うように見ていた。

 武器そのものを嫌い、マンダロリアンから戦う力を奪い、殴られようと耐えることを平和と呼ぶ女なのだと。

 だが、どうも違うらしい。とサティーンとオビ=ワンの話を聞きながら理解していった。

 そのことを決定的にしたのが、その後に続いた軍備についての話だった。

 軍事削減を進めている本人が、ブラック・サンから得た巡洋艦を受け取ってもいいのか。

 オビ=ワンからそう尋ねられたサティーンは、軍艦が嫌いだから軍事費を削っているのではない、と答えたという。

 今のマンダロアには、とにかく人と金がない。

 戦争で壊れた大地と都市を直し、産業を復興させ、仕事を作り、国内で不足する食料や設備を外から買わなければならない。

 その全てに必要なのが共和国圏で通用するクレジット──外貨だった。

 欲しい。それこそ喉から手が出るほど欲しい。

 ところが、過去に散々戦争を仕掛けてきたマンダロリアンを恐れる星系は多く、共和国から一定の支援を得られても、周辺星系や民間から復興投資を呼び込むのは簡単ではない。

 豊かになったマンダロアが再び軍備を整えたらどうする。

 復興した途端、昔のように攻め込んできたらどうする。

 金や技術を持つ者達がそう考えることを、サティーン自身も責めることが出来ない。

 

『だから今は戦争などしている場合ではないのです。一万人の若者がいるのなら、一万人の兵士を増やすより、その一万人に働いて国を支えて貰わなければならないのです。巡洋艦を新造する金があるなら、私はその金でマンダロア星のテラフォーミングをします。その上で、マンダロリアンへの信用を取り戻すのです。そうしなければ、復興に必要な投資も交易も戻ってはきません』

 

 それが姉の平和主義だった。

 戦えないからでもなければ、武器が怖いからでもない。戦争で壊れた国を立て直すために、人も金も資源も、もう一度戦争へ投げ込んでいる余裕がない。マンダロリアンが理由も無く武装すれば周りに要らぬ脅威を考えさせる。

 だから軍備を二の次、三の次にしているのだ。だから──

 

『購入費が掛からず、予備部品まで付いてくる巡洋艦を捨てる理由はありません。今回の経緯ならば、自衛の範囲で周りを説得出来ますから』

 

 ──そういう事だったのだ。

 

「……お姉さま、本当にそう言ったの?」

「ああ。だから巡洋艦も頂いた」

「…………」

 

 今までの話が、自分の知る姉のイメージと重なり腑に落ちた。

 姉はマンダロリアンを弱くしたいのではない。

 軍備に人と金を使うくらいなら、その分を国の復興へ回したいだけなのだ。

 だから自衛が出来る程度の護衛隊は捨てなかったし、必要なら本人も銃を握る。

 それを知ったからこそ、救出に来た二人も含め、デス・ウォッチの者たちがサティーンを見る目を変えたのだろう。

 

「公爵は、いや、公爵様は……俺たちが思っていたような人じゃないんだろうな」

 

 そう呟いた一緒に囚われていた同胞に、ボ=カターンも頷いた。

 自分だって、姉を見直していたからだ。いや、そういう話をしてなかった自分が恥ずかしくてしかたなかった。

 しかも、それは姉に所信を語らせるために、オビ=ワンがあえて皆の前で振った話だったらしい。プレがそう言っていたと聞いて、ボ=カターンたちの中で(良い旦那だ)とオビ=ワンへの評価が更に高まった。

 

 

 

 ──ただ。

 

「その話も私たちが捕まっている間にしたの?」

「ああ」

「お姉さまが自分でブラック・サンを撃ちながら各個撃破の指揮したのも?」

「ああ、凄かったぜ。流石はマンダロリアンの代表。ありゃ天性の戦上手だ」

「オビ=ワンが幹部から全部吐かせたのも?」

「ああ、ジェダイって頭硬い嫌味野郎って思ってたが、違うな。偉大な戦士だ。いや、その師匠のクワイ=ガンも弟弟子のアナキンもだ!」

「巡洋艦を貰うって決めたのも?」

「ああ、今、棟梁がジェダイ・マスターと見回ってる。人足りねえからマンダロアから呼ぶってさ」

「戦闘機十二機を貰ったのも?」

「ああ、もうパイロットまで決まって飛び回ってやがる。クソっ、あそこで3が出てりゃ、今頃俺が飛ばしてたのにっ」

「……………………全部? 全部終わったの?? 私たちのやる事は???」

「だから、全部だ。全部お前らが捕まってた時に終わった。いや、今は、頂いていく物資の分類してるな。だから、荷運びや荷物整理の仕事がある。よかったな」

「なにそれ!? 面白いこと全部終わってるじゃない!!??」

 

 ボ=カターンはあんまりな状況に咆哮した。いや、囚われていた者達みんな咆哮した。

 

 姉のことは見直した。

 姉の旦那も気に入った。

 いま、マンダロリアンの為になることが行われている。

 ──だが、それと自分たちだけ牢屋に閉じ込められ、大事な場面を何一つ見られず、何一つ楽しいことが出来なかったことは全く別の問題である。

 

(なんで自分たちだけ)

 

 そう思っていたボ=カターンが、港に着いた時に、昨日まで姉を罵っていた同胞が「公爵閣下」と嬉しそうに指示を仰ぎ、巡洋艦や輸送船へ戦利品が次々と運び込まれていく光景を見て半眼になった事を誰が責められようか。

 

 現状は理解した。

 姉が尊敬される理由も理解した。

 だが、納得したとは一言も言っていない。

 

 だから、姉に対する第一声は決まっていた。

 

「ずいぶん、楽しんだわね。お・ね・え・さ・ま」

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