「ふー、ようやく一息つくねー」
ここはグランドラインの入口近くの島。フェーン島。特に何かがあるわけでもない普通の島。街も普通の大きさで、まあまあ栄えてる街。グランドライン入りした新米海賊が主な営業相手。適当な店に入れば当然のように海賊がいる、そんな島だ。ここでログが溜まるのを待ちながら休むとしよう。
「そち、そんなに呑気にいてもよいのか?あやつらがまた攻めてくるかもしれぬぞ」
「それはないかなー」
「ほう、なぜそう思うのじゃ?」
君の教えのおかげだね。グランドラインの入口近くの島は1つじゃない。どっちに行ったか知らない以上、追跡するには片っ端から探し出すしかない。だが、私達の最大の長所は航海の速さ。最初の一発で当たらなきゃ、絶対に間に合わない。海軍がそれを知らないわけがない。
「ふむ、確かにそうじゃな。しかし、あやつらが待ち伏せを仕掛けてきたのを忘れてはおるまい」
「どっちに行くかもしれないのに、私達の行く先に待ち伏せできた。つまり、海軍は私達の居場所を特定できていると?」
否定は出来ないけど。すべてがそうではないだろう。完全に把握していて、今の場所もわかっている可能性はかなり低い。
「なぜそう思う」
「簡単さ。海軍が待ち伏せを仕掛けてきた場所がグランドラインだからだよ」
完璧に分かっているなら、それこそサウスブルーにいる時にでも良かったはず。だが海軍はしなかった。海軍が選んだのはグランドラインで、私達が逃げることが出来ない場所での待ち伏せ。逃げられたら追えないのもあるが、逃げ切られたらもう一度の特定が困難だからだろう。
「つまりだ。海軍の一定の範囲内に入らなきゃ、私達の位置は特定できない」
「なるほど。では、その特定の手段に心当たりはあるか」
「それは……嫌味なのかい?」
「ふふ。さぁて、どうじゃろうな」
まったく……分かってて言ってるな。海軍が私達の位置を特定できる手段。詳細は不明だが、分かったこともある。範囲内に入ることが最初の条件なら、まず考えられるのは範囲内のものすべてを把握できること。だが、これは考えたところでどうにもならないし、意味もない。私達が海軍の位置をずっと把握すること以外では防げない。まあ、無理だな。だからこの可能性は無視する。
次の可能性は範囲内の何かを感知すること。この場合上記と同じ理由で、生命反応などは除外。残るのは私達のうち誰かに対する感知。この場合はイレーナとライラは除く。彼女たちが仲間になったのは海軍が作戦を始めた後。最初に王国に少将1人が入って以来、私達は海軍と接触などしていない。海軍が彼女らを把握することは出来ない。ならば、彼女らを感知することが可能だとしても、対象には選べないだろう。
残る可能性は私とルッツ。うち、ルッツは今回初めて能力をちゃんと使ったんだ。感知対象としてはいささか確実性が低い。つまり結論は。
「私が付けられているな。おそらく、風かな」
「で、あろうな。そちの風は海軍にも把握されておるし、それ以外なかろう」
「イレーナもそう思うか。困ったものだな」
こりゃ遥是は封印か?絶対、嵐の中で使った遥是が読まれたんだろう。今までと同じではいられないな。次も今回のように上手くいくとは限らない。実力を付けるべきだな。あの元海賊に正面から勝てるようにならないと。
「何はともあれ。イレーナ、ありがとう。今回の勝利は君のおかげだよ」
「ふふ。なぁに、妾は大したことはしておらん。そち達にほんの少し手を貸してやっただけのこと」
「いや、謙遜は良くないよ。君がいなかったら決して今回のような奇襲は成らなかったよ」
これ、ほんと。イレーナの功績はとても大きい。彼女の指揮もそうだが、一番はこれだろう。
この技。凄く良い。とても良い。マジでイイ。奇襲の成功はこの技あってのことだ。
幻影。対象の周りにバリアーの様な膜を張る技。この時、膜の表面は周りの環境にあわせて隠蔽なども出来る。これのおかげで敵に見つからず奇襲することが出来た。船から飛んでいく前にイレーナに張ってもらったが、海軍は誰も気付かなかった。優秀な技だ。また頼ることになるだろう。
「さーて、取り敢えず、状況確認はここまで。しばらくはここでお休みだね。イレーナはどうする?欲しいものがあれば言ってくれ。今回の働きの褒美として買ってあげるから」
「ほう、ではこの島にある本屋にでも行ってみるかのう。ここは各海から来たものが最初に着く島の1つ。物も集まろう」
「おー、良いね。私も後で街に出かけてみるかな」
何があるかなー。海賊が多いし、金目の物を売ったりするなら、宝石や芸術品とかもあるだろうな。私が作った木彫りの工芸品もいくつか売っとくかな。金は集める時に集めておかないと。
「ほう。あの工芸品、そちが作ったものだったか。なかなかにどうして、見事な一品じゃのう」
「だろう?これでも工芸は得意なんだよ。元は翡翠を使っていたんだが、流石に船の中だと道具や環境とかの問題がね」
この部屋の工芸品の殆どは手作りさ。海賊になる前に作った物も置いてある。勿論、船が傾いても問題ないようにしっかり固定してある。山頂から飛ぼうが、嵐の中を突っ切ろうが何の問題もない。
「今度、イレーナにも1つ作ってあげるよ。何か希望はある?」
「うむ。まずはそちの判断に任せよう。そちが妾に贈りたいものを作るのじゃな」
おお、そう来たか。こういうオーダーが一番面倒だよね。何が良いかな。イレーナの見た目的には古風な感じか気品を感じさせる物が似合うかな。悩むねぇ。
コンコン
「キャプテン。副船長が戻りました」
「お?そうか、報告ご苦労。すぐに向かうよ」
「はっ!副船長に伝えておきます」
どうやら頼んだ仕事は終わったようだな。どれくらい稼いだのかな。
「イレーナ、悪いが話はここまでのようだ」
「なぁに、構わぬ。妾も気になっていたところだ。先に行かせてもらうぞ」
そう言ったイレーナはそのまま浮かび上がり、そのまま壁をすり抜けて行った。ズッル!霊体化、ズッル!くっ、私も自然系だったら……!いや、それでもすり抜けは出来ないな。うん。
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ズルをするイレーナを追って甲板に出れば部下達もそこそこ集まっていた。邪魔なので空からその中に入る。カゼカゼの実だってなぁ、良いんだぞ!
「お帰り、ルッツ。成果はどうだ」
「隊長、只今戻りました。成果もバッチリです」
こちらに挨拶をするルッツの後ろにはかなりの宝や金貨があった。おお、なかなかじゃん。
「よくやった。バレてはないだろうな」
「勿論です。あの様な三流海賊の船、造作もありません」
「流石だな、ルッツ」
「いえいえ。本当に大したことじゃありませんでした。あまりにも雑だったので、ついでに奴らの船の掃除もしてあげましたよ」
何してるの?コイツ。痕跡残してるじゃん。時々変なところで真面目を発揮するんだよなー。どうせ、汚すぎて我慢できなかったとかでしょ?他人の船でそういうのは、やめようね?
ルッツに任せた仕事は「この島に停泊中の他の海賊達の船から、金目になるものをもってこい」だ。街の略奪は流儀じゃないが、金は必要だからね。他の海賊達にはこうやって世話になっている。いつもありがとう。助かっているよ。君達の名前は生涯忘れないさ、名無きモブ海賊達。
「ふふ。なかなか面白いことをするのじゃな。いつもこんなことをしておるのか?」
「そうだよ。サウスブルーの海賊達にはいつも助けてもらったな……懐かしいぜ」
彼奴等、元気かな…。あまり金持ってなかったから、しけた奴等だなぁ、とか思ったことちょっとだけ申し訳ないと感じるな。今度会うことがあれば、その時はちゃんと礼を言ってから貰っていこ。それが礼儀というものだから。例え海賊でも必要なら礼儀を持って接する、これ基本ね。
ただし、キッドは許さない。なんだよアイツ。ちょっと貰っただけでどこまで追いかけてくるつもり?まったく、みみっちい奴め。そんなの適当に「新しい時代に懸けてきた」とか言って流せよ。海賊のくせに、盗まれたくらいでどんだけだよ。二度と盗まねぇ。……あ、盗みじゃないや。貰うだった。二度と貰ってやらないんだからね!
「そち、それは逆恨みがすぎるんじゃないか?」
「何を言ってる、イレーナ。私達は海賊だぞ?逆恨みなんて、仕事みたいなものさ」
「……そうかのう」
そうだよ。イレーナは海賊なりたてだからまだ理解できないかもだけど、いずれ分かるさ。
ルッツに中に入って休めと命じた後、ルッツが盗んで……もとい、貰ってきた宝を数名の部下に仕分けて運べと命令しておく。報酬として、1人につき1個好きなものを貰ってよし。やる気上がるねー。ちゃんとしろよ―。
さーて、後は……ライラの見舞いにでも行くか。
うーん、今出せそうな設定はないな。
ずっと出してたから、なんか物足りない。