ポケットモンスターLEGENDS オーレ 作:カラス レヴィナ
「今度はちゃんと待ってくれる」
「かなりの進歩なのです」
「でしょ?」
目の前を歩くナックラーが、私たちが追いつくのを待って止まってくれている。
最初なんて、顔を見ただけで攻撃されていたのに! すっごくうれしい。
「でも、エルサの進歩ではないのです」
「分かってるよ!」
「フィア」
「ニンフィアまで」
後ろにはココドラもついてきている。
「この子も来るんだ」
「群れへ帰る途中なのかもしれないのです」
「群れ?」
「ココドラも集団で生活することがあるのです」
「じゃあ、この先に?」
「分からないのです」
「あー、はいはい」
「その反応腹立つのです!」
「お前ら、いつもこんな感じなのか?」
これはカイル。
私たちの隣で、呆れたような顔をしていた。
「違う」
「なのです」
「同時に答えるなよ。メッチャ仲良さそうじゃねえか」
「私はどっちかというと巻き込まれている形だから」
「ひどいのです!」
いかんせん、私がダークポケモンだとかシャドーだとかと関わるきっかけ、全部この人だからね。
そんなこんなで、私たちはどんどん町から離れる。もう、砂漠のど真ん中と言ってもいいくらい離れてきた。
「ねえ、これ、どこまで行くの?」
「ナック」
「答えてくれない」
「当たり前なのです」
「でも最近ちょっと分かる気がする」
「気のせいなのです」
「酷い」
でも、ルカリオはナックラーの横で一緒に歩いている。
「グル」
「ナック」
何か話してる。しかも、全然険悪な感じじゃなくて雑談も交えていそう。
「……ずるい」
「何がなのです?」
「私も混ざりたい」
「ポケモンになればいいのです」
「なれる? 天才博士! ポケモンになれる機械とか作って!」
「無理なのです」
「なんだ……じゃあ言わないでよ」
私たちが後ろでそんなやり取りをしていると、ルカリオが目の前で足を止めた。
「何かあったの?」
目の前の岩場から続く細い道。
そこにも、刻まれていたんだ。
「タイヤ跡か……」
「またなのです」
「ここ、風が弱いから結構くっきりと残ってるね」
「岩に囲まれていますから」
ラピスは跡のすぐ近くにしゃがみこんだ。
「大型車両……ナックラーの巣穴近くにあったものと、幅は近いのです」
「同じ車両って考えてもいいかもね」
「ナック」
ナックラーが、その道を進んでいく。
「あの子、ここを案内してたんだ」
「なのです」
「ココ」
ココドラも同じ方向を進んでいく。
「この子も知ってるの?」
「連れてこられた道なのかもしれないのです」
なら、この先は。
「……行こう」
◇
岩の間を抜けて、広い平地が一面を埋め尽くす。
そんな自然の雄大さを感じるところに、人工物の跡がいくつもある。
「また車?」
「それも一台ではないのです」
タイヤ跡に重なって、地面には金属やケースといった壊れた部品も増えていく。ここで何をしていたんだろう。
「積み替えだな」
と、カイル。
「トラックから別の車に移し替えたんだろ」
「なんで?」
「知らねえけど」
「あり得るのです」
ラピスが地面に触れながら言った。
「この先のエクロ峡谷は、かなり道が悪くなるのです」
「それって、大型車が通れないってこと?」
「少なくとも、輸送には向かないのです」
「じゃあ……何に?」
「……」
ラピス、また分からないのかな。
だけど、そう思った私とは裏腹に、ラピスは強い眼差しで応えた。
「分かるかもしれないのです」
彼女が指さすのは、二本の平行線。砂に埋もれかかっているけど、しっかりとその存在は確認できる。
「レール? こんなところに?」
錆びていて、表面も擦れている。でも、触ってみるとまだ使えそうだ。
「最近使った?」
「可能性があるのです」
「でもこの線路ってどこに繋がってるの?」
「……」
ラピスは地図を拡大する。
「今の地図には載っていないのです」
「廃線? アンダーといい、オーレってそういうの多いね」
「昔はいろいろあったのです」
「詳しいね」
「資料なのです!」
「まだ何も言ってない!」
「この後言われそうなことに先に言っただけなのです!」
「何の話?」
あ、カイルは知らないよね。えっと……。
「こっちの話」
◇
「ナック……」
レールを追おうとした途端、ナックラーの様子が変わった。
「どうしたの?」
「ナック!」
「わっ」
ナックラーが私の前に飛び出した。
「何? どうしたの?」
「ナック!」
「もしかして、行くなってこと?」
「たぶんそうなのです」
「ラピスもそう思う?」
ラピスも、少し不安そうな顔をしている。
「ここまで案内して急に止めるなら、危険な可能性は高いのです」
危険かあ。まあ、安全な冒険だとは思っていないけど、そうはっきりと言われるとちょっと抵抗感じるなあ。
「ルカリオ、どう?」
「グル……」
ルカリオも、レールの先をじっと見つめている。
正直、ここまで来ると進みたい。
でも、ナックラーが嫌がってる。
「止めよう。今日はここまで」
「え」
カイルが唖然とした声を上げた。
「ここまで来て行かねえのかよ!?」
「私たち、そこまで準備してないからね」
「準備って……! ライオットをこんな目に遭わせた奴がいるかもなんだろ! 他だって……!」
「だからこそだよ。相手がシャドーなら、何があるか分からない」
昨日、ヴァイスにダークポケモンになったドンファンがいた。どこかしらにシャドーが関わっていると見ていい。
「それに、この子が止めてる」
「ナック」
「案内してもらったんだから、そこは信用しよう」
「……」
ナックラーも私を見る。
「明るいうちに戻ろう」
「賛成なのです」