Ce n'est pas encore fini‼︎ 作:6つ目
早朝、A.M.4:25。
枕の下に入れておいたスマホのアラームで目を覚ます。
新しく出来た同居人たちを起こさないためのささやかな配慮ってやつだ。
ソファから体を起こし、ベットの方を見る。
全員、静かに寝息を立てて寝ている。
あたしをベットから排したのは些か如何なものかと思うが。
幸せそうなこいつらの表情に免じて、何も言わないことにした。
ケトルに水を入れ、お湯を湧かす。目を覚ますにゃコーヒーが一番よ。
「砂糖とミルクは入れなくて大丈夫か?w」
「残念、あたしゃブラックコーヒーに慣れてるんだよ」
「コーヒーが美味いとは思ったことないな」
「へぇ、意外だな。飲んでそうなイメージだったが。」
「俺は紅茶かエナドリ派だ。」
「うちにもいたなエナドリ依存症」
ミレニアムは特に変わりないといいが。
…アスナあたりはあたしが学校に行ってないことを不審に思わないよな。
リオがうまく誤魔化してるといいが……あいつごまかせるかな。
というか、ハウンズ達はどうしようか。
ミレニアムに編入?あいつらの意思にもよるがさすかに簡単にとはいかない。
思ったよりめんどくさいことになってるのかもな。
コーヒーを淹れながら、そんなことを考える。
地下の部屋だから電気をつけないことには暗い。
手元を照らす程度の照明ひとつが今は頼りだ。
ケトルが置いてある場所は区切られているから光をつけられたが…机と椅子はベッドのあるこの部屋しかない。
多少不便だが…こんな早い時間に起こしたくはない。
不便さを我慢しながら、スマホに流れるニュースを見ることにした。
A.M.4:45
コーヒーを飲み終わり、席を立つ。
まだ寝息の聞こえる部屋を背に外へ出る。そのまま、地上に上がる。
「ス───……ゲホッゴホッが…ぁ。あだまがっ」
「なんだ、ごれ゛…くそっ…俺にまでダメージ来るの…かよっ」
「っあ゛…はぁっはぁっ、ふーーー。ふぅ…落ち着け落ち着け」
「俺ら、思ったよりギリギリなのかもな」
「あたし一人で満員だってのにお前が入るからだろ」
「俺だって入りたかったわけじゃない」
「あー…そうかよ。クソっ、治す方法は見つかってないってのに」
「はぁっ、はぁっ…嫌な汗かいちまった。風呂入るか……朝の運動するつもりだったがなしだなし」
少し不調な足を引きずって、部屋へと戻る。
音が聞こえづらい…機能は視界で、今度は耳か…一時的なものだと思うが。
この症状、戦闘中に起こんなくてよかったと心の底から思った。
発症していたら、普通に負けていたかもな。
壁に手をつきながら、ゆっくりと部屋に入り…服を脱ぐ。
風呂備え付けで助かった。
ゆっくり湯船にでも浸かりたいが……張った記憶はないし我慢するか。
そんなことを考えながら、風呂場の扉を開ける。
「きゃっ!?ちょ、ちょっとなんではいってk」
……扉を閉める。
なにか言ってるかもしれないが私には聞こえない。
聞こえないってことは何も言ってないよな。
ヨシ。
いやー、やっぱ風呂はやめて一旦寝ることn……
「……なんであたしは腕を掴まれてるのかな」
服に伸ばした手を掴まれる。
誰に…なんて決まっている。
風呂に入ってた…ハウンズ1、フィデルしかいない。
……この後のこと、だいたい予想がつくな。………ははっ、クソッタレ
───風呂場───
「……覗き見の趣味があるのね、指揮官は。」
「ちげえよ!誤解だわ。ちっと不調で入ってることを認識できなかっただけだわ」
「別に指揮官がそういう趣味なのを否定はしませんが」
「だからちげえって!」
あのあと無理矢理風呂場に連れ込まれ、一緒に入ることになった。
現状はあたしがこいつの髪を洗ってやってるってところだ。
はぁ、当分はこのネタ擦られるな。
「というか、指揮官って呼び方やめろよな。あたしゃネルだ。美甘ネル」
「…ネル指揮官?」
「ネル先輩だ。ネル先輩と呼べ」
「ネル先輩」
それにしてもこいつ……細いな。
いや、飯を食わせてもらえてないとか、極端なガリガリというわけじゃないが。
筋肉があるとは思えない細さだ。
首はあたしの片手で簡単に潰せちまいそうなほどだ。
貧民街を依代にしてたせいか?良い食事はできてなさそうだ。
「痒いところはないか?」
「ありません」
「そうか」
シャンプーを流す。
……濡れた猫みたいだな。耳も垂れてる。
いや、狼なのはわかってるんだが。牙も爪も凶暴性も鳴りを潜めてる今だと、無害な子猫って感じだ。
「指揮か……ネル先輩。」
「んぁ?なんだ。」
「私たちはこの後どうなるんですか」
「んーーー、しらね。」
「はぁ!?それは無責任じゃないですか」
「この後は知らないが。美甘ネルは指揮官を全うしてやるよ。」
「無責任」
「無責任で結構。ただまぁ…悪いようにはしないさ。」
「そう、ですか。」
リーダーとしての矜持か、責任感があるんだろう。
今、あたしは学籍がない身だ。
だから、こいつらをどうするこうするってのはあまり口に出来ないが。
前の指揮官の願い事ぐらい、叶えてやろうと思う。
だからまずは、やっぱり仲良くならないとな。
「…湯船、いれてたんだな。」
「疲れた体を癒すのには最適だと思って」
「んじゃ入ろうぜ」
「…なんで当たり前にネル先輩も入るつもりなんですか。やっぱりそういう趣味」
「だからちげえって、疲れた体を癒すのには最適なんだろ?あたしも疲れた。」
「そうですか」
対面になるように浴槽に入る。
結構ギリギリまでお湯が張られてたせいか、入ると同時に結構な量が溢れ出ていく。
「…二人じゃ狭いな」
「当たり前です。」
二人とも小柄だからまだいいが…アスナと入った日にゃ、あたしは膝の上だな。
…こうやって誰かと一緒に風呂入るなんていつぶりだろうか。
一人暮らしだし当たり前だが…何年も家じゃ一人だ。
アスナやカリン、アカネが遊びに来ることはあるにはあるが。
それでも一人の比率のほうが当たり前だが高い。
「…悪かねえな。」
「湯船に浸かるのは久々です」
「ジョウラクでの扱いは悪かったのか?」
「…ここのほうが数千倍はマシというレベルの待遇でした。」
「ベッド段ボールでシングルサイズを四人で使えと言われ…お風呂はシャワーだけでした。毎日入らせてはもらえましたが」
「傭兵の必要性を理解してないな。」
段ボールベッドにシャワーだけか。
傭兵のことをなんだと思っているんだか。
ジョウラクの経営が傾いてる時、傭兵を一番に削ってた理由もそういうことか。
「ここのベットは凄く良いものでした。」
「あたしをベットから排して気持ちよさそうに寝てたもんな」
「それは…」
「いや、気にしてないさ。お前らが一番だ」
優しく頭を撫でる。
手に合わせて、耳が垂れてる。
拒否はしないらしい。…お風呂に連れ込んでる時点で薄々思ったが、こいつ、別にあたしのこと嫌いじゃないな?
「つい昨日敵だった相手に一番ってよく言えますね。」
「今は仲間で部下だ」
「そう…ね。」
「そろそろ上がるか」
───寝室───
「あ、ハウンズ1と指揮官。お風呂行ってたの?」
「ん、おはよう」
「おはようごらいます」
「マオ、エナ、リアン。おはよう」
マオとエナはお互いの髪やら服をセットしているみたいだ。
やっぱ仲良しだな。こいつらは。
リアンは今起きたばっかりみたいだ。
口の怪我はまだまだ治ってないらしい。
「リアン、こっちに来てくれ」
「はーひ」
「いい子だ。口を開けてくれ」
「あー」
両頬に舌も少し爛れてる。
特徴的なギザ歯も少し焦げちまってるな。
結構グロい…とりあえず、軟膏を塗って様子見だな。
「…あー、フィデル。そこにある軟膏取ってくれ」
「これですか?」
「ああ、サンキュ」
「リアン、少し我慢しててくれ」
顎をガッチリ掴んて、閉じられないようにする。
万が一、条件反射で口を閉じられたらあたしの指噛みちぎられるかもしれない。
こういう念の為ってのは必要だ。
掴んでない方のもう片手で軟膏を手に取り口の中に指をいれる。
ピクッと、反応することはあったが暴れることもなく楽に塗り終えることができた。
改造ドラゴンブレス弾の威力は理解できたが。
運用には注意が必要だな。
さすがに口の中に突っ込んで撃つのは非人道的の範疇だ。
本当に危険なとき以外、やらないようにしておこう。
「よし、いい子だリアン。軟膏は舐めないようにな。」
「わかひらー」
A.M.5:25
「お前ら準備できたか?」
「完璧」
「右に同じく」
「前に同じく!」
「ひらりにおなひく」
「ん、後ろに同じく」
「一周してんじゃねえか」
全員が外に行く準備を整えたところで、外へ向かう。
ジョウラクではまともな飯はそうなかったらしい。
だから、美味い飯でも食わせてやろう。
ゲヘナは良くも悪くも美食研究会のおかげで美味い店が多い。
こいつらの飢えた舌を満足させる逸品もあることだろうよ。
「……てかお前ら、服それしかないのかよ」
ハウンズが着てるのはセーラー服、タクティカルベスト等々を付けてないから普通のセーラー服だが。
…休日にそれってのは物悲しいだろ。
「でも、私たちが持ってる服はこの制服が2着と寝間着用のものだけです」
「朝飯のあと、店が空いたら服屋に行くのも必要だな」
っても今は5時場。
服屋は随分あとになるだろうな。
───ゲヘナ商店街・蕎麦屋───
「ついたぞ」
「ここ、蕎麦屋?あいてるんですか?」
「調べた情報ならな」
ガラガラガラ…と扉を開ける。
中は少し古い和風様式のお店という感じだ。
「好きな席へどうぞ」
「ああ、」
窓側の見晴らしが良さそうな場所の席を取る。
まだ、朝がクソほど早いのもあってか。人はほとんどいない。
というかあたしたちだけだ。
「こちらメニューになります」
「好きなの頼め」
ハウンズたちに先、メニューを渡す。
カードがあるから後でセミナーに請求はできる。
けれど、繋いすぎるとユウカがキレるからなー。
あたしはなるべく安いのにするか
「ん、この天ぷらそば天ぷらマシでもいい?」
「いいぞ」
「この鴨そば大盛りを頼んでも?」
「好きに頼め、」
「私は納豆とろろそばで」
「わらひは、ざるそば」
「ざるそばでいいのか?…あたしもそれにしようか…な」
天ぷらそば天ぷらマシ…¥1200
かもそば大盛り…¥1000
納豆とろろそば…¥800
ざるそば…¥2000
あいつ…一番高いの選んだぞ。
てかざるそばが一番高いってなんだよ。
とろろはあんま好きじゃねえし、あたしは鴨そばにしておくか
「すいませーん」
「注文いいか?」
「はい、注文ですね」
「天ぷらそばの天ぷらマシ、鴨そば大盛り、鴨そば、ざるそばで」
「はい、天ぷらそば天マシ、鴨そば大盛り、鴨そば、ざるそばですね。」
「指き…ネル先輩、鴨そばで足りますか?」
「あたしはそこまで大食いじゃねえよ。というかお前らが食いすぎだ」
「んま、たくさん食うのはいいことだ。」
さすかにざるそば¥2000は想定外だが。
誤差だ誤差。¥5800は安いほうだと思おう…。
───数分後───
「お待たせしました、かもそば大盛りと鴨そばは」
「ハイハイ!大盛り私の!」
「普通のは私だ」
「天ぷら蕎麦天マシは…」
「ん、私の」
「納豆とろろそば」
「私です」
「それと、ざるそばですね」
全員の料理が運ばれる。
どれもこれも美味しそう…。
「ざるそば……?」
「はい、当店のざるそばはトッピング全部盛りなんですよ」
なるほど高いわけだ。
そりゃ金かかるよな、天ぷら全種類に鴨肉、かまぼこに刻みネギ、豚こま肉まであるのか。
「ごゆっくりどうぞ」
「……しひはん…こんらひたべられはい」
……助けを求める子犬の目ってこんな感じなんだろうな。
いや確かに、ざるそばでこれが来るとは思わないよな。
あたしだって思わない。
…しかも口を怪我してるこいつにこれかよ。
「あー、残したぶんは食べてやるから…とりあえず食え」
「ハウンズ2はそういうところ見切り発車なのよねー」
「ん、天ぷら残したら貰う」
「ハウンズ4は天マシなのだから、私が貰うわよ。」
「ずるい!私も天ぷら食べてみたい!」
「リアンが食べられなくなるまで待つんだぞ」
仲微笑ましいな。
そばを啜りながら、そんなことを思う。
エナは大食いだな。天ぷらが特に好きなのか?
マオは食欲旺盛だ。
フィデルは結構珍味が好きなのかもな。というよりセンスが渋い?
いや単にトロロが好きなだけかもしれないが。
「ん、美味しい。天ぷらサクサク」
「かも肉も食べごたえがあって美味しいわ。」
「とろろ蕎麦…久しぶりに食べたけど美味しい」
「…おいひいけりょ、おおひ」
平和だな。
若干1名平和じゃないのがいるが。
多分気のせいだろう。いや気のせいじゃないが。
まぁ気の所為ってことにしておこう。
飯食ったあとはどうするか。
マオの武器適性がLMGよりHMGなんじゃないかっていう疑問解消はするとして。
戦闘訓練…は面倒だ。休日は羽根を伸ばすべきだしな。
適当にスポーツでもして過ごすのもいいか?
…こいつらに聞くのがやっぱり、一番手っ取り早いし確実か。
「なぁ、お前ら」
「ん、何?指揮官」
「ズズズッ、どうしたの?」
「んひあい」
「なんでしょうか」
「このあと、少ししたいことをやったら暇になるんだが…何したい?」
「ん!戦t」
「休日だから戦闘訓練等々はナシな」
「ショボン」
「なら…色々な遊ぶ場所が入った複合施設で時間を潰すのはどうでしょう?」
「賛成!」
「ん、体動かせるなら賛成」
「いひなーし」
「決まりだな」
複合施設か、後でどこにあるか調べておかないとな。
案外すんなり決まってよかった。
C&Cに提案すると結構分かれるんだよな意見。
主にトキとアカネ辺りが一生決まらないんだよな。
ここまサラッと決まるとなんか見てて心地良いな。
こういうのもチームとして必要な要素なんだろうか。
C&Cの方も楽しいからいいってもんだが…
そんなことを考えながら、そばを啜り出汁を飲む。
リアンはそろそろキツそうな頃合いか、箸の速度が遅くなっている。
一方、エナはすでに食べ終えて今か今かとリアンが食べられなくなるのを待っている。
フィデルはまだ普通に食べてる感じか。
マオは……頬張りすぎだろ。ハムスターかよ。
あのほっぺ押し潰してみたいな。口の中のもん出てくるからやらないが。
「…もうむひ、あげふ」
そばと豚こま肉をほとんど食い終えたところで、リアンがギブの音をあげる。
それを聞いた瞬間、エナがすぐに天ぷらへと手を伸ばす。
…こいつ全部取る勢いだぞ。…咄嗟に、優しく腕を掴む。
「ちゃんと箸で取ろうな?…えっと、マオとフィデルは何が欲しい?」
「天ぷら一個だけ貰ってもいいですか?」
「私も一個で充分よ!」
「んじゃ、残りの天ぷら4個とかも肉はエナが食っていいぞ」
「ん、わかった。」
エナは少しどこか残念そうにも見える…あんま顔変わってないな。
まぁ、多分少し残念がってるように見える。こいつ天マシ食ってたよな?
どんだけ好きなんだよ。
…それにしても……なんともまぁ、みんな美味そうに食いやがる。
───数分後───
「「「ごちそうさま」」」
あたしとフィデルとマオが、ほぼ当時に食べ終わる。
リアンとエナは先に食べ終わってたからか、胃袋が軽くなってるからか涼しい顔であたしたちのことを待っている。
普通盛りでもなかなかの量だったな。
「四人とも、行けるか?」
「ん、もちろん」
「忘れ物はないはず……大丈夫よ!」
「んんっ、大丈ぶ。」
「行きましょうか。ネル先輩」
席を立つ。
リアンの口は少し回復し始めたらしい。
まだ少し違和感あるが、さっきよりは舌が回ってるみたいだな。
「会計は全部で¥5800になります」