北宇治高校に入学して、数日が経った。
僕達、一年生は、一年生指導係である加部先輩と黄前先輩の元、教室に集められていた。
「以上がサンライズフェスティバルについてです。ここまでで何か質問ありますか?」
「はい」
鈴木美玲さんが手を挙げ、質問をする。
「コンクールメンバーは、オーディションで決めると書かれていますが、本当ですか?」
真面目な質問だった。
ま、ここでふざけられても困るけど。
「え~本当です」
なんか間があったような気もするけど、まあほっておこう。
「何か気になる?」
「はい、その… 言ったままの意味ですけど…」
加部先輩の言葉に、鈴木さんはそう答え、久石が割って入ってくる。
「あの つまり オーディションにおいて 学年や人間関係などの 実力以外の要素で メンバーが決まる可能性はあるのかという質問だと思います。もっと言えば 上級生が優先される可能性はありますかということです」
それに関しては、僕も気になっている点だった。
でも、今の北宇治なら…
「ないです」
加部先輩の言葉に、僕はホッとした。
「あ…」
「実力のあるものが学年に関係なく選ばれる それだけです」
「ありがとうございます」
黄前先輩…なんか歯切れが悪かったけど、大丈夫なんかな。
あれから数日、サンフェスに向けての練習が始まった。
オーボエの僕とりりりんはカラーカードの担当になる。
「りりりん、どうよ調子は」
「うーん、こう~?」
「違う違う。こうだって」
「それも違う…」
僕達のやり取りに、鎧塚先輩が突っ込んでくる。
「ほら~ゆい、違うって」
「ええ…鎧塚先輩どうやるんですか?」
「えっと…」
鎧塚先輩は、困惑しながらも教えてくれた。
そして、その日は全体での練習を行って、そのまま終わりとなり、今はダブルリードの4人で帰っていた。鎧塚先輩は、気づいたら居なくなっていた。
「ゆい~何か奢って~」
「ええ…お金持ってないよ」
「そうは言ってもいつもあるじゃん」
「だから、ないってば」
僕に、もたれかかって言ってくるりりりん。
そして、気づけばコンビニの前まで来ていた。
「あっ、久石」
「これはこれは、伏見君じゃないですか」
コンビニに着くと、店の中から出てきた久石とばったりと会った。
そんな久石に、りりりんは飛びついた。
「えっ、ちょっ!?」
「奏〜何か奢って〜」
りりりんは、今度は久石にたかり始めた。
ごめんよ…久石。今のりりりんは止められないんだ。
「はぁ!?なんで、私が奢らないといけないの」
久石の反応はごもっともな反応だった。
「すまん、久石。何か奢ってやってくれ」
「はぁ~!?伏見君が奢ればいいだけの話では!」
うん…それはそうなんだよ。それは分かってるんだ。
本当に手持ちがないんだよ。100円玉二枚だけだもん。ジュース一本しか買えない。
「ゆい~がね。お金ないんだって~」
「伏見君、ソロコンでお金稼いでるよね!そんな訳ないよね!」
「それは…そうだけど…」
「梨々花。もっと強く言った方がいいよ!」
「ええー面倒だもん~」
我が幼馴染。面倒の塊みたいになっていた。
久石も面倒くさそうにしてるし、ここらで揶揄うのもほどほどにしておいてあげますか。
「りりりんも久石から離れなよ」
そう言い、りりりんを久石から引き離す。
「だって、ゆい奢ってくれないじゃん」
「家帰ったら、ご飯作ってやるからそれで手打ちでどうよ」
「う~ん…ゆいの作るご飯…うん!それで!!」
交渉成立。
「はぁ…仲が良くていいですね。じゃあ私はここで」
久石はそう言って、僕達の前から姿を消した。
「久石、足早えな。もう見えなくなった」
本当にあっという間に消えた。
どんな足をしてんだあいつは。
その後、家に帰って、りりりんに手作りの料理を振舞った。
彼女はとても美味しそうに食べてくれたので、僕としては嬉しかった。
りりりんも、料理の腕は上なはずなんだけど。
「ゆい~私に構って~」
「はいはい。猫に餌やってからね」
僕の部屋にいつものごとく居座っているりりりん。
そんな彼女を後ろ目に、僕は飼い猫である。三毛猫の『ルナ』、茶トラ白猫の『ロビン』に餌を上げていた。
「…ルナもロビンもなんで私に懐いてくれないんだろう…」
りりりんがそう言うのは、その通りで…二匹以外にも猫を飼っているのだが、この二匹に関しては、りりりんに懐かないのだ。とは言っても、威嚇とかはしないので、尚更謎。
「ほら、みんなの所に行っておいで」
僕がそう言うと、二匹は他の猫の元に行く。
「ゆい~構え~」
「はいはい、好きなように」
りりりんはそう言って、僕の事を抱きしめる。
彼女の良い匂いがこっちまで伝わってきて、慣れた匂いの筈なのに、なんかドキドキとしてしまう。
「鎧塚先輩、どうやったら打ち解けてくれるんだろう」
「さぁ?りりりんのやりたいようにするしかないんじゃない?」
「他人事のように言ってる。ゆいだって関係あるんだからね」
「それは分かってるよ。でも、みぞれ先輩とはそれなりに話してるよ僕」
「えっ!?嘘。私とはまだなのに」
僕の言葉を聞いて、りりりんは驚きの表情を浮かべた。
「まぁ…僕も苦戦したんだけどね…あはは…」
「ずるい~私だって、鎧塚先輩と仲良くなりたい~」
そうただをこねるりりりんは、とっても可愛かった。