「みなさん。お久しぶりです。『怯える天使』の氷上メルルです」
本日は本編最終話の前に、あることをお祝いにきました。
メルルはくす玉のヒモに手をかける。勢いよく引くと玉が割れ、中身が出てくる。
祝
大
魔
女
様
復
活
‼︎
「祝わせてくださいよ!!」
メルルの魂の叫びがこだまする。
「仕方ないじゃないですか。黒幕がくす玉を割って祝ったって……。 普通、こういうのを祝うのは主人公であるエマさんやヒロさんだと思うんですけど……。現段階じゃエマさんがワンチャンくらいで、私以外祝ってくれそうにないんです……!!」
――!?
「というのは置いておきまして……」
――!?
「いよいよ……最後の事件です……」
メルルの言葉に……
続々と魔女たちが集まってくる……
彼女らの目線の先には一つのTV。画面にはある大魔女の映像が映っている。
「魔女たちの思いを託します……。だから……絶対に……勝ってください……。応援しましょう……みなさんで……」
◆
◆ ◇
犯人:月代ユキ
私は分析しました……
今までのデータから魔女たちの敗因を……
偶然、推理、魔法、偽証、ナノカ……
様々な要因で魔女たちは負けてしまいました……
だから……私は思い直したんです。
通常の方法では勝利は得られないと……
大魔女である私だけができる必勝法……
故に私は開廷する……
私自身が検察で、被告人で、裁判官な魔女裁判を……!!
!?
◆ ◇ ◆
牢屋敷の裁判所において、ある重大な事件について裁判が執り行われている。
「これより裁判を始めます」
――木槌を持った裁判官が椅子に座っている。
「検察からは原初の魔女を消し去るという蛮行を加味して、人類に死刑を求刑します」
――鞭を持ち、コーヒーを片手に持った検事が求刑する。
「異議あり。言ってみたかっただけです」
――弁護士バッジを身に着けた弁護士が異議を申し立てる。
――裁判官、検事、弁護士による公平な魔女裁判が行われていく。
「――ということで魔女を絶滅させた人類には死刑が妥当だと思います」
何かをまとめた書類でバシバシと机を叩きながら、検事が裁判長に申し立てる。
「弁護人。何かありますか?」
決まり切った結果なので、小槌で遊んでいる裁判長が形式上に弁護士に聞いてくる。
「異議はありません」
証拠品として弁護士バッジを何度も突きつけて、どこかにやってしまった弁護士も異議はない。
「それでは判決を言い渡します」
両者、議論も出し尽くしたので裁判長が小槌を叩き、判決を言い渡す。
「判決。死刑!!」
◆ ◇ ◆ ◇
「ダメーーーーーーッ!!」
「ダメだよ!! それ公平な裁判じゃないから!! おじさん、そんなに詳しくはないけれど、全部一人でやるのはダメなんじゃないかな!?」
「ひ……一人じゃないんです……。大魔女様のは……【分身】の魔法ですから、一人でやっているんじゃないんです……!!」
「一緒だよ!?」
「いきなり執行するのはかわいそうなので、猶予期間を与えましょう……」
!?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
世界に【魔女因子】が蔓延し、計画も最終段階……
人間への復讐にピリオドを打つため……私は世界各地を回った……
そこで知りました……
人間も悪い人ばかりじゃなく、いい人もいたことを……
復讐……やめて牢屋敷に帰ろうかな……
!?
けど……メルルに人類根絶を宣言しちゃいましたから素直に帰りづらいです……
復讐への意欲が低下する中、たまたま地面に落ちていたバッグを拾い上げる……
!?
バッグの中には現金、アパートの鍵……『月代ユキ』という亡くなった少女の戸籍データが入っていた……
なんかありました……
これが、いわゆる人生やり直しセット……ですか……
身寄りがなく、私の見た目とそれほど離れていない年齢の少女の情報が偶然落ちていて……しかも、生活に必要なものが全部そろっている……
こんな奇跡が起きたら、もうやるしかありません……
私は決めました……『月代ユキ』として第2の人生を歩むことを……!!
!?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
第2の人生……とっても楽しかった……!!
大魔女はエマやヒロという友人たちに恵まれた人生を謳歌していった。
――本当にそれでいいのでしょうか?
!?
む……昔の私!?
――人間たちは野蛮にも平和に暮らしていた魔女たちを滅ぼしたのですよ……
私は思い出す……
絶滅……!!
私は人類を絶滅させる!!
!?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
人類を絶滅させるために私がすべきこと……!!
私はメルルも褒めていたフローラルな体臭を反転……
わざといじめられる状況を作り……
エマに見殺しにさせ……
エマに【魔女殺し】の魔法を与えて……自殺する……!!
あとは、エマが人類に絶望し、魔法を発動するのを待つだけです。
もう誰にも止められません。
エマが心変わりしない限りは……ね。
――……でもよ。もう、コイツの方が心変わりしている可能性があるんじゃねーか?
!?
――すぐに実行に移さないあたり、自分の中でも迷っていることに気づいていて誰かに後押ししてほしかったんじゃないかしら?
――
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「島の大魔女からメッセージを預かったんだってさ」
【人間への復讐なんて、望んでない】……。あの子に幸せになってほしい……
「それはおかしいよ」
「正しい話をしよう」
!?
その言葉も大魔女には届かず、魔女たちは処刑され……
――ちょっと待って!!
!?
――【待って】!
!?
――その通りだ!
!?
――異議あり!
!?
――その通りですわ!
!?
――嘘だね!
!?
――あてぃし、それ賛成!
!?
――そんなことないわ!
!?
――ですよね!
!?
――その辺でいいだろ!
!?
――そうね……
!?
――お話してもいいでしょうか?
!?
――それに賛成だ!
!?
――賛成だよ!
!!
「「それは、違うよ」」
――謎はすべて……解かれ……魔女たちが勝った!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「どうも、真の黒幕の月代ユキです。魔女たちの事件簿、いかがだったでしょうか」
――敗因はなんでしょう。
「……復讐の思いを持ち続けられなかったことだと思います」
――後悔していますか?
「いえ、迷っていたからこそ、彼女たちの声が聞けて、これでよかったんだと思います……。あとは……」
――サプラーイズッ!!
魔女たちが花束を持って大魔女を祝う。
!?
最終回に駆けつけてくれた歴代魔女たち……
大魔女を取り囲むように祝う魔女たちの姿……
ここに彼女の理想があった……
魔法少女ノ魔女裁判外伝
魔女たちの事件簿
完
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「なーんか良い雰囲気で終わっちゃいましたね。あっ、もしもし。ゴクチョーです。ええ。そうなんですよ。魔女が勝っちゃったんですよすごいですよね。……それで、そちらの村の方はどうなんです?」
制作会社がある限り……魔女は産まれ続ける……かもしれない……
「では皆さん。また、お会いできるのを楽しみにしています」
完
ここまで読んでいただきありがとうございました。