Dクラス「ドッ!ワハハ」 綾小路「wwww」 オリ主「あ、綾小路くんも笑ってるよw」 綾小路「」 作:ホモガキ
ポイントがない。
その事実は、莉愛が想像していたよりもずっと重かった。
朝食は無料のパン。昼食も無料の商品。喉が渇けば水を飲めばいいし、最低限生きていくだけなら困らない。学校側も、ポイントを失った生徒が即座に生活不能になるような仕組みにはしていなかった。
だから昨日までは、まあ何とかなるっしょ、くらいにしか思っていなかった。
実際、何とかなっている。死んではいない。
ただし。
「つまんな……」
昼休みの教室で、莉愛は机に突っ伏していた。
目の前では池がジュースを飲み、山内は菓子パンを頬張り、その向こうでは須藤が購買で買ったらしい肉の多い弁当を食べている。昨日までなら特に気にも留めなかった光景なのに、自分の残高がゼロになった途端、どれも妙に魅力的に見えてくる。
「池くん」
「ん?」
「そのジュース美味い?」
「美味いけど」
「一口ちょうだい」
「えっ」
池の動きが止まった。
一瞬だけ目を見開き、それから妙に嬉しそうな顔をしながら、ペットボトルを差し出してくる。
「い、いいけど?」
「お、マジ?」
莉愛は受け取ろうとして、途中で手を止めた。
池を見る。次にペットボトルを見る。そして、もう一度池を見る。
別に何か決定的な証拠があったわけではない。ただ、その顔を見ていれば何となく分かった。
「あー……やっぱいーやw」
「え!? なんで!?」
「なんか今の池くん、ちょっと嬉しそうだったから」
「そ、そんなことねえし!」
「いや、あったってw」
すると横から山内が勢いよく身を乗り出してくる。
「じゃ黒瀬、俺の飲めよ! 全然いいから!」
「……」
「ほら!」
「いや、山内くんはもっと怖いからいいやw」
「なんでだよ!」
二人を適当にあしらってから、莉愛は少し離れた席へ視線を向けた。
清隆と目が合う。
「清隆♡」
「断る」
「まだ何も言ってないじゃんw」
「大体分かる」
「一口だけ」
「嫌だ」
「池くんたちより警戒強くない?」
「比較対象がおかしい」
莉愛は少し考えた。
「でも清隆なら普通に飲めるんだよな」
「何の話だ」
「別にw」
清隆は、こういう時に余計な意味を足さない。
飲み物が欲しいと言えば、ただ飲み物が欲しいのだと受け取る。頼み事をすれば、頼み事として聞く。だから断られたところで気まずくならないし、逆に「いい」と言われれば、本当にいいのだと思える。
そういうところが、莉愛には楽だった。
「……金ほしいな」
再び机に突っ伏すと、池が呆れたように言った。
「働けば?」
「どこで?」
「知らんけど」
「この学校、バイトとかあんの?」
「俺に聞くなよ」
「じゃ役に立たないじゃん」
「ひどくない!?」
莉愛は池の抗議を聞き流しながら、ぼんやりと考え始めた。
この学校では、ほとんどのものをポイントで買うことができる。逆に言えば、ポイントさえあればそれでいい。
問題は、どうやって増やすかだ。
誰かから貰う。もちろん、それが一番早い。ただし、何の理由もなく「ください」と言って素直に渡してくれるほど世の中は甘くない。
ならば何かと交換すればいい。
物を売る。労働をする。何かしらのサービスを提供する。
「……あ」
莉愛は勢いよく身体を起こした。
「分かった」
池が嫌そうな顔をする。
「何が?」
「俺、商売するわ」
「絶対ヤバいやつじゃん」
「なんでだよw」
「黒瀬がその顔で思いつくこと、大体ロクでもないだろ」
「失礼だな」
莉愛はスマートフォンを取り出して、メモアプリを開いた。
自分にできること。
勉強――無理。
運動――普通。
料理――できるが、他人の部屋にわざわざ作りに行くのは面倒だ。
では、話し相手ならどうだろう。
人と喋るのは好きだし、他人の話を聞くのも嫌いではない。何より材料費がかからない。
「……相談?」
声に出してみると、思ったより悪くなかった。
「天才じゃん」
「何がだ」
いつの間にか近くまで来ていた清隆が、莉愛のスマートフォンを覗き込んでいる。
「相談屋やる」
「……相談屋?」
「うん」
画面には大きく、
『相談 一件五百ポイント』
と書いてあった。
清隆は数秒黙った。
「誰が払うんだ」
「困ってる人?」
「知らない相手に五百ポイント払って相談すると思うか?」
「じゃ三百」
「値段の問題だけじゃない」
「百?」
「急に安売りするな」
「難しいなぁ」
莉愛は唇を尖らせた。
「じゃ最初無料?」
「それではポイントが増えない」
「あ、確かに」
「目的を忘れるな」
商売については、自分より清隆の方が向いている気がしてきた。
「清隆、一緒にやろ」
「断る」
「まだ説明してないじゃん」
「必要ない」
「俺が相談聞くじゃん?」
「ああ」
「難しいやつ清隆が考えるじゃん?」
「断る」
「完璧じゃん」
「俺にしか負担がない」
「売上分けるよ?」
「いらない」
「じゃタダで手伝ってくれるってこと?」
「どうしてそうなる」
莉愛は笑った。
清隆は露骨に嫌そうな顔こそしなかったものの、多少面倒に思っていることくらいは分かる。
ただ、本気で嫌なら清隆はちゃんと嫌だと言う。だから莉愛も、そこまでは押していいと思っていた。
「じゃ副部長ね」
「部活になった覚えはない」
「副所長?」
「嫌だ」
「顧問」
「学生だ」
「参謀?」
「無関係だ」
「でも困ったら助けてくれるじゃん」
清隆が黙った。
莉愛は勝ったと思った。
◇
放課後。
莉愛の机の前には、一枚の紙が貼られていた。
黒いマジックで大きく『黒瀬相談部』と書かれ、その下には『どんな相談でも聞きます』。さらに小さく、『基本料金100pt 解決したら追加は気持ちで』と続いている。
そして隅には、
『副部長 綾小路清隆』
「消せ」
紙を見るなり、清隆が言った。
「なんで?」
「俺は加入してない」
「でも名前あった方が信用出るじゃん」
「なぜ俺の名前で信用が出る」
「陰キャって逆に口堅そうじゃん?」
「褒められてる気がしない」
「じゃ消すよ」
「ああ」
莉愛は黒マジックを持つと、『副部長』の文字に二重線を引いた。
その上から、
『影の相談員』
と書く。
「そうじゃない」
「じゃ何ならいいんだよw」
「名前を消せ」
結局、清隆の名前は完全に消された。
少し寂しい気もしたが、実質的にはいるのだから問題ない。
「それ、本当にやるの?」
紙を見ながら桔梗が楽しそうに笑う。
「やるやる。俺今ポイントゼロだから」
「それで相談?」
「話聞くだけならタダじゃん。原価ゼロ」
「商売の理由がすごく現実的だね」
「でしょ?」
莉愛が胸を張っていると、平田も近くへやってきた。
「でも相談って、内容によってはかなり責任があると思うよ」
「大丈夫。無理なのは無理って言うから」
「それならいいけど……」
少し離れた席から見ていた鈴音は、呆れたように言った。
「くだらないわね」
「鈴音ちゃんも相談あったら来ていいよ」
「ないわ」
「初回無料にするよ?」
「必要ない」
「じゃ友達割」
「そもそも料金の話ではないでしょう」
どうも鈴音には伝わらない。
だが、意外にもその日のうちに最初の客が来た。
同じDクラスの男子だった。
「黒瀬」
「お、相談?」
「まあ……」
「どうぞどうぞ」
莉愛が椅子を引いてやる。
その横で清隆が帰ろうとしていたので、莉愛は制服の裾を掴んだ。
「清隆」
「帰る」
「初仕事」
「お前の仕事だ」
「記念すべき一件目じゃん」
「俺には関係ない」
「五分だけ」
「……」
清隆は足を止めた。
やはり優しい。
相談に来た男子は、そんな二人を少し気まずそうに見てから口を開いた。
「あのさ。女子に送ったメッセージ、既読ついたまま返ってこなくて」
「うん」
「……以上」
「以上?」
「うん」
莉愛は清隆を見る。
清隆も莉愛を見る。
「清隆」
「俺を見るな」
「こういうの得意?」
「得意に見えるか?」
「見えない」
「なら聞くな」
確かにその通りだった。
清隆に恋愛相談を振るのは、少し人選を間違えた気がする。
莉愛は男子からスマートフォンを借り、送った内容を読んでみた。
「あー」
「何?」
「これ返信しづらいわ」
「マジ?」
「うん。これさ、相手何返せばいいか分かんなくない?」
長文で自分の趣味について説明しているだけで、最後に質問もない。
「『そうなんだ』で終わるじゃん」
「じゃ、どうすればいい?」
「別の話題振れば? 今日授業眠かったね、とか、次の休み何する、とか。なんでもいいよ」
「そんな軽くていいの?」
「軽い方が返しやすくない?」
男子は少し考え込んだ後、頷いた。
「……送ってみる」
「うん」
「ありがとう」
「百ポイントね」
「取るの!?」
「商売だからw」
こうして、黒瀬相談部最初の売上が立った。
残高ゼロだった莉愛のスマートフォンに、百ポイントが表示される。
「清隆!」
「よかったな」
「俺、稼いだ!」
「一件だけだ」
「ゼロから百って無限倍じゃん」
「ゼロには何を掛けてもゼロだ」
「そういうとこだぞ」
何がそういうところなのかは、自分でもよく分からなかった。
◇
二件目の相談は、失くした教科書についてだった。
「最後に見たのどこ?」
「分からない」
「じゃ一緒に探そ」
莉愛が立ち上がると、横にいた清隆が言った。
「相談だけじゃなかったのか」
「見つけた方が早くない?」
「お前の時給が下がるぞ」
「時給?」
「百ポイントを得るために三十分探せば、効率は悪い」
「でも見つかんなかったら相談した意味なくない?」
「話を聞くだけという商売だったはずだ」
「そうだっけ?」
「開始から一日も経ってない」
教科書は三十分ほど探した末、図書室近くのベンチで見つかった。
依頼人はかなり喜び、本来百ポイントのところを三百ポイント送ってきた。
「探すとこまでしてくれたから」
その言葉に莉愛は大喜びした。
「ほら!」
「何がだ」
「動いた方が儲かるじゃん!」
「たまたまだ」
「結果が全てって学校も言ってたじゃん」
「都合のいい時だけ学校の理念を使うな」
◇
三件目は女子同士の喧嘩だった。
「最近あの子が冷たいんだよね」
という相談を受け、莉愛は本人の話を聞いた後、その相手にも事情を聞きに行った。
結果は単純な誤解だった。
「じゃ三人で飯食えばよくない?」
なぜか莉愛まで交えて三人で昼食を取ることになり、気づけば二人は普通に会話を再開していた。
相談料はゼロ。
後で相手がポイントを払おうとしたが、
「いや、飯一緒に食っただけじゃん」
と断った。
その話を聞いた清隆は、呆れたように言った。
「商売になってないな」
「でも仲直りしたよ?」
「目的はポイントを稼ぐことだっただろ」
「あ」
忘れていた。
◇
四件目。
「部屋の棚を組み立ててほしい」
「それ相談じゃなくない?」
「黒瀬ならやってくれるって聞いた」
「誰だよ広めた奴w」
結局、行った。
しかも清隆まで連れていった。
「なぜ俺まで」
「俺こういうの苦手」
「なら断れ」
「でも困ってるって」
「便利屋になってるぞ」
「相談部より便利屋の方が稼げるかな」
「そういう問題じゃない」
棚はほとんど清隆が組み立てた。
莉愛は説明書を持って横に座っている。
「清隆、これAって書いてる」
「知ってる」
「これB」
「見れば分かる」
「俺も役に立ってない?」
「邪魔ではない」
「褒められた」
「褒めてない」
依頼料は五百ポイントだった。
帰り道、莉愛はその半分を清隆へ送ろうとしたが、即座に拒否される。
「なんで?」
「いらない」
「半分働いたじゃん」
「ほとんど俺がやった」
「じゃ四百?」
「そういう意味じゃない」
「タダ働きじゃん」
「お前に付き合っただけだ」
莉愛は少し考えてから、清隆の顔を覗き込んだ。
「……清隆ってさ」
「なんだ」
「俺のこと結構好きじゃね?w」
「帰るぞ」
「否定しろよw」
返事はなかった。
◇
そんなことを続けて、一週間ほど経った。
黒瀬相談部は妙なことになっていた。
正式な部活ではない。部室もない。部員も莉愛一人だけ。清隆は何度聞いても、自分は部員ではないと言い張る。
それでも、「黒瀬に聞けば何とかなるかもしれない」という噂だけは、少しずつDクラスの中で広がり始めていた。
相談内容は様々だった。
恋愛、忘れ物、友人関係、課題、買い物、寮生活。
莉愛だけではどうにもならないものもある。
そういう時は。
「清隆ぁ〜」
呼ぶ。
「知らない」
と言われる。
「一回聞いて」
と頼む。
なんだかんだで聞いてくれる。
そして大抵、何とかなる。
本人は絶対に認めないだろうが、清隆はかなり優秀な相談員だった。
問題があるとすれば。
「……おかしい」
莉愛はスマートフォンの画面を見ながら首を傾げた。
現在の所持ポイントは千二百四十。
相談部を始めてから一週間。獲得したポイントだけなら三千を超えている。
なのに、思ったほど残っていない。
「清隆」
「なんだ」
「俺、ポイント増えてなくない?」
「増えてる」
「思ってたより増えてない」
「使ってるからだ」
「何に?」
「相談者と移動した時の飲み物。必要になった文房具。お前が勝手に立て替えた分」
「……」
「昨日は相談者が昼を食べてないと言って奢ってただろ」
「だって腹減ってそうだったし」
「その時点で相談料を上回ってる」
「……」
「一昨日は?」
「なんだっけ」
「落とし物を探すために校内を二時間歩いた」
「あったね」
「依頼料は?」
「百」
「効率が悪い」
清隆の言っていることは正しい。
莉愛は真剣に考えた。
「向いてない?」
「商売にはな」
「マジかぁ」
机に突っ伏す。
夢のポイント長者計画が崩れていく。
「値上げするか」
「今度は客が減る」
「じゃ助ける範囲減らす?」
「それが当初の予定だ」
最初に考えていたのは、話だけ聞いて百ポイントを貰うという商売だった。
原価ゼロ。
完璧なはずだった。
「……でもさ」
「なんだ」
「困ってんのに話聞くだけで終わるの、気持ち悪くない?」
「内容による」
「解決できそうならやっちゃわない?」
「その結果、お前は儲かってない」
「でもポイント増えてはいるじゃん」
「僅かにな」
「じゃいいか」
「いいのか」
「ゼロよりマシw」
清隆がこちらを見る。
何か言いたそうだった。
けれど、結局何も言わなかった。
◇
その日の放課後。
相談部の看板を片付けようとしていた時だった。
「黒瀬」
低い声に呼ばれて振り返る。
須藤が立っていた。
いつもの須藤とは少し違う。
怒っている。
いや、それだけではない。
焦っているようにも見えた。
「須藤くん?」
「……相談、いいか」
莉愛は手を止めた。
普段なら「百ポイントねw」とでも言うところだったが、今日は言わなかった。
「いいよ」
須藤は周囲を見回した。
まだ教室には何人か残っている。
「ここじゃちょっと……」
「じゃ外行こ」
莉愛は鞄を持つ。
その時、教室の後ろから清隆が出ていこうとするのが見えた。
「清隆」
呼ぶと足を止める。
「帰るの?」
「ああ」
「ちょっと待って」
「なぜ」
莉愛は須藤を見て、それから清隆を見る。
「なんかヤバそう」
「俺には関係ない」
「聞くだけ聞いてよ」
「お前への相談だろ」
「難しかったら清隆に投げる」
「最初から投げる気だな」
「保険」
須藤が少し苛立ったように口を挟んだ。
「綾小路もいてくれ」
清隆は須藤を見る。
少しだけ間があった。
「……分かった」
三人で人の少ない場所へ移動した。
須藤はしばらく何も言わなかった。
拳を強く握っている。
莉愛は急かさない。
こういう時、無理に喋らせるより待った方がいい。その程度のことは分かる。
やがて須藤が口を開いた。
「俺……Cクラスの奴らと揉めた」
「喧嘩?」
「違う」
即答だった。
「向こうから絡んできた。三人いた。最初から挑発してきて……俺がキレるようなことばっか言いやがって」
「それで?」
「先に手ぇ出してきたのは向こうだ。俺はやられたから返しただけだ」
「うん」
「でも……」
須藤が歯を食いしばる。
「向こうは、俺が一方的に殴ったって言ってる」
莉愛の表情から笑みが消えた。
「先生には?」
「話が行ってる」
「証拠は?」
「ねえ」
「見てた人は?」
「……分かんねえ」
莉愛は少し考える。
これは今までの相談とは違う。
教科書を探せば終わる話ではない。メッセージの文章を考えれば解決する話でもない。
下手をすれば、須藤はまた。
「退学?」
口にすると、須藤の顔が歪んだ。
「最悪、そうなるかもしれねえ」
少し前。
たった一点足りなかっただけで、須藤は退学寸前まで追い込まれた。
その時、莉愛は手持ちのポイントを全て使った。
ようやく残れた。
なのに、また。
「……須藤くん」
「あ?」
「嘘ついてる?」
須藤の眉が動く。
「ついてねえ!」
大きな声だった。
莉愛はその顔を見る。
目は逸らさない。
怒っている。焦っている。
少なくとも、今の言葉を取り繕っているようには見えなかった。
「そっか」
「……信じんのか?」
「うん」
須藤が少し驚いたような顔をする。
横から清隆が莉愛を見た。
「根拠は?」
「須藤くん、こういう時に上手く嘘つけなそうじゃん」
「おい!」
「褒めてるってw」
「どこがだよ!」
ほんの少しだけ、須藤の顔から力が抜けた。
莉愛は立ち上がる。
「じゃ、やろっか」
「何をだ?」
「助ける」
須藤が黙った。
「……いいのか?」
「なんで?」
「だってお前、この前俺のためにポイント全部……」
「あれはあれじゃん」
「でも」
「今回困ってんの今でしょ?」
須藤は何か言おうとして、やめた。
「相談料」
莉愛は指を一本立てる。
「百ポイント」
須藤はすぐにスマートフォンを取り出した。
「払う」
その反応を見て、莉愛は思わず笑う。
「いや、今のなし」
「は?」
「なんでだよ」
「なんかマジで困ってる奴から取るの違くね?」
横から清隆が冷静に言った。
「お前、それじゃ相談部の意味ないだろ」
「清隆もそう思う?」
「ああ」
「じゃ解決したら成功報酬で」
「いくらだ」
「ジュース」
「ポイントですらなくなったな」
「いいじゃんw」
須藤が、ほんの少しだけ笑った。
それを見て莉愛も笑う。
「とりあえずさ、見てた人探そ」
「そんな簡単に見つかるか?」
「分かんない」
「……」
「でも探さなきゃ見つかんなくない?」
須藤は黙った。
清隆も黙っている。
莉愛は横を向いた。
「清隆も手伝ってね」
「まだ何も言ってない」
「断る?」
「……」
返事はなかった。
たぶん手伝ってくれる。
莉愛はそう思った。
黒瀬相談部。
設立から一週間。
売上は微妙。
効率は最悪。
副部長はいない。
部室もない。
正式な部活ですらない。
そして最初の大仕事は、またしても須藤健の退学危機になった。
「須藤くん」
「なんだ」
「お前、相談料より手かかりそうだなw」
「うるせえ!」
まあ、いいか。
困っているなら、助ければいい。
莉愛にとっては、それくらいの理由で十分だった。