【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
俺は、高育でAクラスに配属されてしまってから主に2つの目標を立てた。
1つ目は、俺の生活の安全の保障をすると共に、Aクラスを政戦から解放し、空気の良いクラスにすること。
2つ目は──────原作【よう実】の主人公である『綾小路清隆』の通称・機械化を止めることだ。これに関しては正直かなり難題だけど、目指してる。
理由は単純に、この人が機械化しちゃった場合止めれるやつがいないからだ。それこそ、Dクラスの高円寺か、百歩譲って可能性があるのが坂柳くらい。それくらい、こいつはヤバい。
「────ごめん。席空いてなくてさ、ここいい?」
4月半ば、プールの授業の翌日。今のところ、クラス内がギスギスしていることはほぼない。5月からが本番になるだろう。
「────ん? あぁ、いいぞ。えと」
「秋月緋彩、Aクラスだよ。よろしく。そっちは?」
「ああ、ご丁寧にありがとう。オレは──────Dクラスの綾小路清隆だ」
というわけで、最高傑作くんと一緒にランチと行こうじゃないか。友人として接することで、分かることもあるはずだ。それに、この頃はまだ高校生活にウキウキしている時期。
「綾小路くん、Dクラスってどんな感じなの?」
「どんな感じ、とは?」
「ほら、この学校ってあんまり他クラスと関わる機会ないし、気になって。普段見かけることもないしさ」
「確かに、言われてみればそうだな。Dクラスは、うるさいしやかましいが、愉快だぞ」
この頃の綾小路はまだ知らない、1カ月後の自分が
「そうなんだ。風の噂でプールの授業をほぼ全ての女子が見学したって聞いたけど」
「あれは………一部の男子のせいだな。女子の胸の大きさについて教室内で語っていたんだ。しかも、誰が最も大きいかで賭けまでしていたな」
うーん、この。誰に聞いてもこの頃のDクラスは『最悪』以外の言葉で表すことができないだろう。主人公がいるってだけで体裁を保ってたようなものだ。
「それは、なんというか、お疲れ様」
「Aクラスはどうなんだ? あまり変な噂は聞かないが」
「うちは、そうだなぁ、『真面目』って言葉を体現したようなクラスだよ。授業中の私語も全然ないしね。あ、そういえば」
「どうしたんだ?」
「うちを纏めてる葛城ってやつが、月初めに貰えるポイントは変わるかもしれないって言ってた気がする。私語とかで減らされるかもって」
「なに? それは一大事だな」
これはある種の裏切りのように映るかもしれないけど、必要な手順であることには他の作戦となんら変わりない。そもそも、葛城もクラス間戦争があることを言っていないのだから仕方ないで突き通すことも可能だ。
「綾小路くんも気を付けてね。あんまり無駄遣いをするタイプには見えないけど」
「そうだな、気を付ける。ありがとうな、そんな情報をオレなんかにくれて」
「たまたま席が空いてたのも何かの運命かもだしね。綾小路くんさえよければ友達にならない?」
「っ! いいのか? クラスには友達がいなくてな。嬉しい」
「もちろんだよ。また今度昼一緒してもいいかな」
「当然だ」
焼き魚定食を口に運びながら、綾小路とのコネを作ることに成功した。とりあえず、第一段階は乗り越えることができたな。こっちは、暫くは動かさなくてもいいだろう。
4月末に小テストがあった。俺は中学時代で既に高校生の範囲の勉強は終えているので、難しいと噂の最後の3問も解こうと思えば解くことができた。が、それをやると目立つのでやらなかった。
クラス内でも、解けたと言っていたのは坂柳だけだったな。やっぱり、性格に難ありといっても学力でという観点から見れば彼女は間違いなく天才だろう。
「最後の3問、難しくなかった?」
「だね。あんなの見たことないし、それまで中学の復習だけだったから温度差で風邪ひきそうだったよ」
「あんたなら、解けてても驚かなかったけどね」
「そんな頭良く見える? ありがと」
「そういうんじゃないっつーの。これからやることの意味とかも含めて、あんたは普通じゃないから」
放課後、帰りながら神室にそんなことを言われる。確かに普通ではないけど、その言い方は少し心外だ。もっとこう、異才だな、とかさ。もしくは風雲児だね、みたいなのないの?
「ま、これからのことはこれから教えるよ。一先ず、当面の目標は変わらず
「私、まだ全然スリル味わえてないんだけど?」
「今はまだ、ね。直に分かるよ。こうしてる行動だって、スリル満載の激やば心臓ドキドキイベントだってことがね」
「それ、何かの隠語?」
「いや、違うから。確かに神室のことは好きだけど、そういうのじゃない」
「は? キモ」
「だからそういうのじゃないって」
そんなこんなありまして、高育入学から約1カ月が経過した。クラス内でも結構友達ができて、神室や戸塚、橋本や吉田なんかとは結構話せるようになった。
そして、5月1日がやってきた。今日は初めて正式な学校の制度が明かされる日であり、同時にクラス内政戦勃発の日だ。
「かなり振り込まれてたわね」
「だね。正直、ここまで残るとは思ってなかったよ」
俺は残高照会で、現状の残額ポイントを表示する。そこには10万と少しという数字が示されていた。先月の残りを引けば、綺麗に9万8000ポイントが振り込まれた形になる。
「これも、あんたのお陰ってわけ?」
「まさか。民度のいいこのクラスのお陰さ」
俺は裏から少しサポートしただけ、自分だけの手柄だなんだという気は毛頭ない。そんな手柄、あったところで何の意味も持たないからね。
「──────以上だ。言いたいことも多くあるだろうが、事実として受け止めれくれ。これでHRは終わりとする」
説明を終え、真嶋は教室を出て行った。学校の掲示する褒賞がAクラスにのみ与えられることや、今後起こるクラス間競争のことなどなど、情報量が多かったな。他の人にとっては。
──────
Aクラス:980
Bクラス:650
Cクラス:480
Dクラス: 0
──────
一応綾小路には減額の可能性を示唆したけど、結局は0ポイントか。ま、あいつ1人でなんとなるなら苦労してないって話だしね。
それに、葛城が他クラスへの普及を求めなかったのに、他クラスのポイントが伸びてないのには理由がある。何故かって?
──────坂柳有栖が、クラスポイントの増減とAクラスの座を争うことになる可能性について、俺が綾小路と話をした翌日にクラスで共有したからだ。
「ふふ。予想は当たっていましたか」
「そうだな。確かにおまえの言う通りだった、坂柳」
初手で大きな功績と存在感を残した葛城と、革命の一手で一気にリーダーの座を捉え始めた坂柳有栖が向かい合う。
どうやら、そう簡単には下についてくれる気はないらしい。
秋月くんの1学期中の目標一覧(優先度順)
1位:葛城くんのお手伝い
2位:綾小路くんと仲良くなる
3位:好きな人と関わって、色々知りたいし仲良くしたい(綾小路や神室も該当