【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
さて、楽しい楽しいゴールデンウィークが始まったわけだけど、休み期間も俺に休日はない。もちろん、やることが盛りだくさんだ。
例を挙げると、まず綾小路と遊ぶ約束をした。一緒に映画を見るんだ。内容は恐竜が檻から脱走して街を破壊し尽くすやつ。
次に、一応だけど神室と一緒に遊び(?)に行くことになってる。これは綾小路と遊ぶ次の日ね。内容はケヤキモールでショッピング(らしい)。
他にも、ケヤキモールに入り浸って普段はお目にかかれない上級生や他クラスの陽キャなどを遠くから探すことも予定に入っている。ほら、忙しいでしょ?
「待たせたか? 秋月」
「今来たとこだから安心して。あれ、そっちは誰?」
ケヤキモール内2階、小洒落たカフェに入って綾小路を待っていると、想定外の人物を連れてやってきた。待て待て、おまえの出番はまだ先じゃ。
「─────初めまして、かな? 櫛田桔梗っていいます。よろしくね? 秋月くん」
そう言って、小悪魔は微笑んだ。外見だけ見ると金髪の美少女でめちゃカワなんだけど、中身を知っている俺は素直に喜べない。おい綾小路、なんで連れて来たっ!
「えと、どうして2人で?」
「すまない秋月。ここに来る途中でたまたま櫛田に会ってな、そこで話しかけられたから予定を伝えたら、ご一緒していいかと誘われてしまった」
「あ、そう。俺は全然いいんだけど、いいの櫛田さん。俺Aクラスだけど」
というか、櫛田が綾小路に自分から学校外で話しかけることは想定外すぎる。いくらみんなと仲良くな(って秘密を知)りたいからって、綾小路より優先すべき人いるだろっ!(失礼)
「仲良くなりたい気持ちにクラスなんて関係ないよっ! それに、クラスではいつも独りの綾小路君が言う友達も気になってたしね」
「確かに、俺と綾小路も友達だしね。櫛田さんが良いって言うなら、全然いいよ」
「ホント? 良かったぁ。何の映画見る予定だったの?」
図々しいと分かっていながらも4人席を確保していた俺の正面に、櫛田が座る。そして当たり前かのように綾小路が俺の隣にきた。
分かるぞ。女子の隣はちょっとね、特におまえまだはしゃいでる時期だもん。心臓持たないよね、わかるわかる。
「えと、ジュラシック・ストリートっていうやつだよ。知ってる?」
「予告編見たよ~。あの恐竜が街中で暴れ回るやつだよねっ! ちょっと怖そうだけど、気になってたんだ。綾小路くんは?」
「一応予告編は履修済みだ。皮膚の色や声帯の再現性はともかくとして、リアルで迫力があったな。素直に楽しみだ」
そのあとシアタールームで『秋月』『綾小路』『櫛田』の席配置で映画を見た。感想を言うと、めっちゃってほどではないけど普通に面白かったです。あと横をチラ見したら綾小路の表情筋が仕事してたので嬉しかった。
「…………それで、本日はどのようなご用件で………?」
「分かってんでしょ。さっさとこれからやること洗い浚い吐きなさいよ」
ビシッと決まっている服をきた神室が、目の前から俺を問い詰めてくる。怖いよ~。
「えと、何から話せばいいのやら」
「はぁ。一応私も付き合ってる身なんだから、それくらい教えてくれない?」
服やら生活必需品やらの買い物を終えた後、俺たちは3階にあるレストランに入った。昼食のためだ。決して尋問のためではない!
「ま、言えることでいいなら。とりあえず、ゴールデンウィークが明けたら上級生から過去問を買う予定かな」
「過去問? 試験対策にってことなら、あんたには不要じゃないの。私もだけど」
「確かに試験対策ではあるけど、俺用でも神室用でもないよ」
「なら、何のため?」
「カッコよく言うなら
「本音で言うと?」
「
そう返すと、神室は「でしょうね」と軽く笑った。多分嘲笑されたね、これ。
「でも、過去問配ったくらいじゃ評価はそんな変わらないんじゃない?」
「ただの過去問ならね」
「どういう意味よ」
「4月末の小テスト、最後の3問だけやけに難しかったでしょ?」
「ええ、そうね」
「それと、この前先生が言ってた『必ず全員無事に試験を乗り越える方法がある』っていう発言から、多分毎年、少なくとも去年と今年は小テストの内容も中間試験の内容も同じ可能性が高い」
「確かに、変な言い回しだとは思ったけど………それだけの情報でそこまでたどり着けるなんて、やっぱあんた普通じゃないわね」
「そんなことないよ。少なくとも、坂柳は気づいてるんじゃないかな」
今打つべき最善手は坂柳の手柄を一から十まで全てぶんどって葛城に献上することだ。派閥がなくなるほど手柄を奪えれば面倒が一気に減ってくれるんだけど、どうなるかな。
「そこまで買うほど? 大した功績はないじゃない」
「いや、例え葛城の情報を元にしたとしても、クラス間戦争の可能性にいち早く気付いたことは紛れもない事実だよ。普通の人なら気付けないからね」
「で、それに葛城よりも坂柳よりも早く気付いたあんたはなんなわけ?」
その後は適当にはぐらかしながら食事を終えて帰宅した。神室は他言しないと確信しているからこうして行動しているけど、もしいなければかなり行動は制限されていただろう。感謝カンゲキ雨嵐。
そうこうしているうちに、ゴールデンウィークは過ぎ去ってしまった。いやぁ、忙しかったなぁ。ホント、苦労が絶えない一週間だったよ。
「さて、皆に提案がある。中間試験に向けて勉強会をしないか? Aクラスとはいえ学力に余裕のない生徒はいるだろう。その人たちのためだ。そして勉強のできる生徒には教師役として参加して欲しい」
まあこうなるだろうってことは予想できてた。坂柳派は当然参加しないだろうけど、それでも葛城派に加え中立派の学力下位~中間層の生徒は参加する可能性が高そうだ。
にしても、やっぱり試験2週間前に試験範囲の変更を伝えるとかかなりゴミだよね。いくら必勝法があるとはいえ、それがあればなんでもしていいってわけじゃないから。
「場所は図書館で行おうと思っている。後からでも参加は当然受け付けるから、気軽に来てくれていい。俺は教師役をやる」
本音を言うと全然教師役をやってもいいんだけど、生憎と今日は用事が盛りだくさんなんだ。綾小路たちDクラスも恐らくは勉強会を画策しているだろうからね。
夜、俺と神室は夜の道を歩いていた。1年生寮の前である。5月8日、といえば分かる人もいるかもしれない。今日は、原作で櫛田が綾小路に本性を知られた日である。
ここまで言ってしまえば俺のやりたいことなんて容易に想像がつくだろう。つまるところ、櫛田を脅す材料を手に入れるためだ。ついでに綾小路が櫛田の胸の感触を知ることを防ぐ目的もある。
「──────あーもうっ! まじでウザイ!」
突如聞こえてくる罵声。一瞬心臓がひゅんってなった。怖い怖い。
「えぇ………何よ、あれ」
「みんなのアイドル櫛田ちゃん(笑)の本性」
散歩しようと言ってついてこさせた神室が、めちゃくちゃ困惑している。一応櫛田の存在を知ってはいたみたいだけど、だからこそ驚いている。凄い驚いてる。
「あんた………まさか、知ってて来たわけ?」
「どうやってさ。いくら俺が数先手先まで見通せる超天才だとしても、これを予測することなんてできないよ」
「あんたならやりかねないって印象を私に植え付けたのは他でもないあんたなんですけど?」
そんなやり取りをしつつ、俺は彼女の言動を一挙手一投足余すことなく携帯のカメラに収める。まったく、とんだ小悪魔だぜ。池や山内が知ったら泣いちゃうぞ?
「さて、俺の役目はここまでかなぁ」
「は? ちょっと待って、どこ行くの?」
携帯をポケットに仕舞い、とりあえず櫛田のいる方向とは逆に歩き出す。たぶん、そろそろ彼が来るからね。俺はまだ、普通の友達でいる必要がある。というか、できればずっとそうでありたいんだけど。
「神室はあと数分はここにいて。それで、誰か来たらあれを聞く前に止めて」
「止めるって、どうやってよ」
「方法は問わないよ。身振り手振りで存在をアピールしてもいいし、なんなら大声を出して櫛田の悪口をやめさせて逃げてもいい。急いで逃げれば正体はバレないだろうね」
この暗闇では誰かをはっきりと捉えることは出来ない。それは櫛田に綾小路もだ。その方法なら神室も多少の羞恥心を押さえるだけでいい。
「さぁ、待ち望んでいたスリルだよ?」
「あんた………絶対、地獄行くわよ。私が保証する」
「閻魔様かぁ、お目に掛かれるなら悪くない。それじゃ、あとはよろしくね」
そのあと俺は、
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