【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
前に録音を頼んだ先輩から2万ポイントで購入した小テストと中間試験の過去問を葛城に渡したら、とうとうメッセージがきてしまった。
『おまえは誰なんだ?』
朝一番で登校してくる彼の机の上に置いたのがまずかったのか、それとも今までの行いからなのか。間違いなく後者だろうね。
『気にする必要はない』
『なぜ俺に味方をする』
彼も流石に俺がAクラス内の生徒の誰かであることは分かっているだろう。しかし、一刻も早くクラスをまとめたい彼は俺の存在を明かすことは出来ない。
そうすれば、今の状況も覆り得るからね。リーダーっていうのも難儀な立場だよまったく。面倒なことは他の人にやってもらうに限る。
「どうしっよかなぁ」
俺は自室で呟く。坂柳に功績を渡す前にちゃっちゃと過去問配布を促してしまったせいで、暫く暇になった。本当なら櫛田を使って色々やってもいいんだけど、それは目的に入ってないし、わざわざやる必要性も感じない。
俺が本格的に動くのは夏休みだし、それまでは当初の予定通り気楽な学校生活を送るとしますか。あ、そういえばもうそろそろだっけか。
──────須藤の暴力事件って。
結果からいうと、中間試験は俺たちAクラスの完勝で終わった。元々の平均学力が高い上に過去問という学校の用意した救済措置もあったお陰でクラスの各教科毎の平均点は全て95点以上を記録することができたのだ。
「いやぁ、これもすべて葛城さんのお陰だな!」
戸塚の自信過剰ともいえる発言にも、クラスは思いのほか同調を示す。一之瀬ほどではないにしろ、完全にリーダーとして認められつつあるようだ。何よりだね。
「あんたさ、悔しくないわけ?」
「え? なんで?」
昼休み。一緒に学食でランチをしているといきなりそんなことを言われてしまった。なんでそんなこと思うんだろう。いや、普通の人からしたらおかしいのは俺なのか。
「いや、だって葛城の成功って全部あんたがお膳立てしたものじゃない。いくらそれが目的だとしても、手柄全部横取りされた気持ちとかにはならないわけ?」
「言いたいことは分からなくもないけど、別に思わないかな。俺は別に自分がリーダーになるためにやったわけじゃないし」
「そ。それで、1学期はもうやることないって話はホントなの?」
「うん。ないよ、それは本当」
やることがないって素晴らしいことだと思うんだ。自分で好き勝手にやれるってことだし、何より自分を縛るものがないっていうのは嬉しい。
前世では社畜だったし、今世でも努力をし続けようやく推薦の枠を勝ち取ることができた。言わば、久しぶりの自由を手にした気分である。
「あんたの発言は信用ならないんだけどね」
「じゃあ聞かないでよ。でも、何もしないっていうのは本当だよ。1学期はね」
「含みがあるわね。2学期以降は何かするの?」
「それは2学期になってみないことにはなんとも。ただ、もしこのまま坂柳がフェードアウトするなら手間が1つ省けるからありがたいってだけ」
坂柳の駒は現状橋本と、絡みはないが恐らく鬼頭と他はいてもモブ。加えて、恐らくだが山村は坂柳の手先になっている可能性を考慮して動いた方が良いだろうね。
彼女を完全に失脚させるためには
「──────結構まずいことになった。協力願いたい」
「聞くよ。何があったの? 綾小路くん」
7月2日、俺は綾小路から相談を受けた。内容は、Dクラスの生徒である須藤健がCクラスの生徒3名に対し暴行を働いたというものだ。原作通りだね、流れ含めて。
「うーん。どうしよっか、それは」
「オレは堀北という隣人に協力を強いられてる。それに、須藤は荒っぽいが運動神経は抜群だ、まだこれから活躍の機会はあると思わないか」
「それはそうだね。先輩に聞いたら体育祭とかもあるって言ってたし」
「そうか。だったら尚更、オレは須藤を救うべきだと思ってる。堀北を抜きにしてもな。こんなことを他クラスの秋月に言うのは間違ってるかもしれないが」
「別に俺も鬼じゃないし、救えるものなら協力はするよ。でもさ、実際問題須藤くんってのは
原作を読んでいても思ったが、ここがターニングポイントになりそうだ。もしここで須藤が既に非を認め裁判に応じているのなら原作のやり方でCクラスに訴えを取り下げさせるしかない。
けど、もしまだ認めていないのなら可能性はある。そもそも裁判と言うのは、告訴した側が証拠を集める原則がある。じゃないと、法整備の意味がないからね。
なら、そもそも須藤が非を認めず、「俺は暴力なんてしてねぇよ!」と言い張り続ければ、Cクラス側は証拠を用意できず裁判には発展しなかった可能性が高い。
「あぁ。だが、先におちょくってきたのは向こうだと言ってる。真偽は定かではないが」
「あちゃ~。それだと大分厳しいよ、この裁判」
「そう、だな。それは分かっているつもりだ。だからこそ、秋月に頼んでいる」
「だからこそ?」
「ああ。おまえならこんな状況でも協力してくれる気がしてな」
「………まさか、綾小路くんの口からそんな言葉が出るとは。いいよ、協力する。Aクラス内に目撃者がいないか聞いてみるよ」
「助かる。一応、クラス内にも当てがないわけじゃないから、オレはそっちを当たってみようと思ってる」
「分かった。それじゃあ、とりあえず須藤くんを助けますか」
Aクラス内に目撃者はいないから、特に探しても意味はないんだけどね。ただ、気になるのは綾小路の動きかな。原作通りBクラスと組むのか、もしくは組まずにいくのか。
組まないことには監視カメラ偽造はかなり大変だろう。別に俺のポイントを出してやってもいいんだけど、そうすると流石にやりすぎな気もする。
ここは大して重要な場面じゃないし、適度な距離を保ちつつ静観するのが吉っぽいね。
──────人っていうのは往々にして真実を知りたがる生き物だ。人の秘密を知りたいと思うやつもいれば、出処の分からない噂の真偽を確かめたがるやつもいる。
そしてそういうやつほど、自分の真実っていうのを隠したがるものだ。櫛田や山内なんかが典型例だろう。そして、当然それには俺も当てはまる。
だからこそ…………こういう面倒なことは嫌いなんだ。
「──────だるいな」
俺は背後に気配を感じ、呟く。早くも目を付けられたか? いや、虱潰しに探させてるだけか。俺個人を特定できる情報は何一つとしてないんだから。
一瞬だけ目をやると、俺の後ろ10mあたりを歩く山村が目に入った。ケヤキモールの中で人通りがあるから、バレないと思ったんだろうね。甘いよ。
しっかし、当たりをつけてきてる可能性も否めない。無駄に勘が鋭いし、直感だけを頼ることはないだろうけど、優先順位を決めてる可能性はある。
加えて、ここで仲間に引き込めばこっちの足が付くことになる。仕方ない、ちょっと早いけど、
中間試験終了時クラスポイント
Aクラス:1083
Bクラス:664
Cクラス:491
Dクラス:108