【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
──────眩い日差し。
──────夏を感じさせない冷えた空気。
──────視界一面に広がる青空と大海原。
もしこの全てを言葉で表せと言われれば俺はこう答えるだろう。『楽園』と。
無事に期末試験を乗り越えた高育の1年生たちに与えられる褒美である、1週間のバカンス。今はまさに、それの真っ最中だ。
合計159名の生徒がこの豪華客船『Speranza』に乗っているわけだけど、未だに俺は数名の顔しか見ていない。何故かと言うと、原作堀北のように少し体調を崩してしまっているからだ。
「それじゃあ、俺は少し外に出てくる。安静にするんだぞ」
「分かってるよ。ありがと」
事前の部屋割り決めで同室となった葛城が、部屋を出て行った。俺のことも気遣ってくれるあたり、やっぱりいいやつだ。リーダーはこうでなくちゃね。
しかし、別に重い症状というわけでもない。少し身体がだるい程度で、1週間程度なら問題なく動けるだろう。それに、その後のことについても問題はないよう作ってある。
「………寝るか」
具合が悪いときは寝ればいい、一番手っ取り早い対処法だ。例のアナウンスが流れるまで数時間はあるだろうし、できる限り備えて挑むのがいいだろう。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間があれば、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう」
原作通りのアナウンスが流れ、俺は目を覚ました。少し音量大きいよ、下げてね。とまあそんなことは置いておいて、一応見に行くか。
まだ気だるさを感じつつ部屋を出てデッキのある最上階に行くためエレベーターに乗る。すると、一階分だけ昇って止まった。同じ目的の人だろう。
「あ」
「お」
声が被った。乗ってきたのはまさかの神室だ。
「1人か?」
「そっちこそ」
「寝てた。出遅れちゃった」
「私もそんなとこ。それで、これから何が起こるわけ?」
「数十分後には分かってるよ。心配しなくても、
俺はあえて自信を覗かせる。今回の無人島試験は、ほぼ全員が原作通りに動くと思って良いだろう。それなら、今回の試験で全クラスを欺いてAクラスに大勝を齎すことも可能だ。
それから俺たちは、デッキに出た。他クラスの生徒も次々と景色を見に来ているし、目立つことはないだろう。そういえば、そろそろ戸塚が暴れる頃か?
「──────おい、邪魔だどけ不良品ども」
あーあー、始まっちゃったよ。戸塚クンの横柄な態度全開モードが。それまで船首というベストポジションに陣取っていたDクラスの面々を追い払おうとする。
このままじゃ原作通り綾小路のことを突き飛ばしそうだ。櫛田に庇われるなんともいえない綾小路を生で見てみたい気持ちはあるけど、羨ましい可哀想なので止めておこう。
「…………やめておきなよ、戸塚くん」
「秋月かよ」
「君が大立回りして損をするのが君だけじゃないことくらい、
俺は少しだけ急いで彼らの後ろに回って、前に出そうとしてた右手を掴む。‘‘Aクラス’’という単語を出せば多少静かになることは想定内だ。葛城の名誉もちらつかせれば効果は抜群だね。
「分かったよ、おまえが言うことも正しいしな。ただ、この場所は俺たちも使うぜ?」
「ちっ、好きにしろや。ただ、もし俺のダチに手出したら許さねえから覚悟しとけよ」
見合い、威嚇し合う須藤と戸塚。けど、両者ここで退くべきという最適解は導き出せているのか、少しDクラスの面子が後ろに退いたことでそれぞれが観察を始めることができた。
ふと綾小路に視線を流すと、どこか安心したような目をしてこっちを見てた。感謝を伝えたいんだろうか、別に自己満足だからいいのに。
指示された通り、ジャージを着て携帯をそのポケットにしまってからデッキに舞い戻る。船が島の周りを旋回するのを待ち、次第に近づいてくる砂浜を前に、周りの生徒たちのテンションも上がっていく。
「やっべえ、テンション上がってきたぜ!」
「おい須藤。着く前に飛び込もうとするな危険だ」
後ろから聞こえてくる会話に耳を傾けつつ、俺自身もどこか浮かれているように思う。身体は重いのにね。なんか言えよ。
1年生全員が厳しいボディチェックを受けてから、砂浜に降り立つ。クラス毎に並んで整列すると、我らが担任である真島が前へ出て、用意されていた檀上に上がった。今すぐ海に向かって走り出したい感情を押さえて、全員が彼に視線を向ける。
「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で1名ではあるが、病欠で参加できなかった者がいることは残念でならない」
坂柳ね、うん、いなくて良かったよホント。いたらいたで過程が変わるだけで結末は変わらないんだけどね。いたら直接出張ってきそうだから。
「ではこれより─────本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
それからは、原作通りの説明が行われた。1週間この無人島でサバイバルをすることや、反発した池に対する反論含めて相違なし。
………ただやっぱり騙して連れて来たことに対する謝罪は必要だと思うんだ。
【無人島試験:基本ルール】
・各クラスは1週間、無人島での集団生活を行う。
・配布された腕時計は1週間後試験終了まで外すことなく身につけておかなければならない。
(この腕時計は時刻の確認だけでなく、体温や脈拍、人の動きを探知するセンサー、GPS、緊急ボタンも備えている)
・テントや衛生用品は最低限配られるものの、飲料水や食料などは試験専用の300ポイントを消費して購入する必要がある。
・試験終了時、各クラスに残っているポイントはその全てをクラスポイントに加算した上で夏休み明けに反映される。
・マニュアルは1冊ずつクラスに配布される。
※紛失などの際には再発行も可能だが、ポイントを消費する。
【無人島試験:追加ルール】
・無人島内にはスポットと呼ばれる地点があり、占有したクラスのみ使用可能になる。
・スポットを占有するには専用のキーカードが必要である。
・1度の占有につき1ポイントを得る。占有したスポットは自由に使用できる。
・スポットの占有権は8時間しか効力を持たず、更新しないと自動的に権利を失う。
・キーカードを使用することができるのはリーダーとなった生徒のみとなる。
・正当な理由無くリーダーを変更することはできない。
・7日目の最終日、点呼のタイミングで他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。
・その際、見事他クラスのリーダーを的中させることが出来た場合、的中させたクラス1つに付き50ポイントを得る。
・ただし他クラスのリーダーを間違えた場合、マイナス50ポイントされてしまう。
・そして逆に言い当てられたクラスは代償として50ポイントを支払わなければならない。
【ペナルティ】
・許可なく腕時計を外した場合にはペナルティが課せられる。
・著しく体調を崩したり、大怪我をし続行が難しいと判断された生徒はリタイアとなり、マイナス30ポイント。
・環境を汚染する行為を発見した場合、マイナス20ポイント。
・他クラスが占有しているスポットを許可無く使用した場合、マイナス50ポイント。
・毎日午前8時及び午後8時に行う点呼に不在の場合、1人につきマイナス5ポイント。
・他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合、対象者の所属するクラスは即失格となる。
・また、対象者のプライベートポイントも全て没収される。
とまあ、これまた全て同じ。1つ気になっているのは、この試験での坂柳派、主に橋本の動向だ。Cクラスにリーダー情報を売るのは分かってるけど、他クラスの占有してるスポットを荒らされたりしたらたまったもんじゃないね。
「一応、
俺は何を買うべきかをクラスメイトと話し合う葛城を確認してから、神室に視線を投げる。全ての可能性を考慮し、潰すように動く。大丈夫だ、難しい話じゃない。
次手のためにも、ここでクラスポイントを稼いでおくべきだからね。坂柳、君がリーダーになる日は絶対こないからな!
山村さんどうしたん?
って思った人、安心してください次話で出します