【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
─────ベースキャンプ地は原作通り、葛城の案で洞窟に決まった。テントを必要とせずクラス全員が雨風を凌げる点と、ここ自体がスポットでポイントを貯めることができるからね。
Dクラスとかは呑気に景色楽しんでたのに葛城は律儀に脳内で地図起こしまでしてたらしい。偉すぎる、こういうところがAクラス配属の理由だよ。山内とかは見習え。
「さて、リーダーを決めるとしようか」
とりあえず砂浜から離れ、日差しを避けれる森の中に入ったタイミングで葛城が切り出した。これに関しては原作通り戸塚に任せてしまって何の問題もない。
「葛城さん! 俺に任せてくれませんか?」
「弥彦?」
「葛城さんの役に立ちたいんです。それに、坂柳についてる奴には任せられないですよ」
原作と違って現状坂柳についているのはごく少数だ。それでも、何があるか分からない以上確かに信頼できる人に任せた方がいいのは紛れもない事実だろう。
その信頼できる人物というのに『戸塚弥彦』が含まれているかどうかは人によるだろうけど。少なくとも俺は忠誠心は買ってるけどそれ以外は特に信用はしてない。
「ふむ、なるほどな。立候補の理由はそれだけか?」
「それに、本当は葛城さんがリーダーになるのが理想だって分かってます。ですが、坂柳がいない今、葛城さんがリーダーになれば他クラスから指名されると思うんです」
「確かに一理ある、俺がリーダーでは安直すぎるな。おまえの意見は分かった。それじゃあ、1人出たあとでは出ずらいかもしれないが、他に立候補者がいれば受け付けよう」
いつも彼の周りをうろちょろしてる戸塚が名乗り出たことで、あとからは出ずらい空気になってしまった。このままいけば、とりあえず望み通りの展開になりそうだ。
「──────なぁ、おまえがいけよ。秋月」
いつの間にか隣に立っていた橋本に肩を小突かれる。なんで俺なんだろう。戸塚の方が馬鹿でやりやすそうなのに。
「なんで?」
「なんでっておまえ、戸塚じゃ力不足だろ。どう考えても」
「俺でも力不足だと思うんだけど。てかそう言うなら橋本くんがいけばいいじゃん」
「俺は姫さんに従ってる手前、立候補したところで戸塚だけじゃなく全員からブーイングの嵐が関の山だと思うぜ」
誇らし気に言われても困るんだけどなぁ。なんで橋本は俺を気に掛けてくるんだろ。掛けられるにしてももっとカワイイ女の子とかがいい。おまえは嫌だ。
「俺がいっても同じだよ。葛城派でもないし」
「坂柳派でもないだろ? その点俺よりマシだ。それに、体育のとき見てたけどおまえ運動神経いいだろ。少なくとも戸塚より」
キッショ、なんで既に探ってんだよ。言っておくが橋本君、それはナシだ。
「うーん、けど責任重大だし。俺そういうの苦手だから」
「そうか。ま、無理強いはしねえよ、嫌われたくねえしな」
そう言ってから橋本は俺の背中を軽く叩いた。なんかフレンドリーだな、相変わらず。距離感近いやつといると気が緩みそうになる。
そのまま誰かが名乗り出ることはなく、本人の希望通り戸塚がリーダーとなった。これで、彼がリタイアすることがない限りリーダーの変更は不可能になったわけだ。
全て完璧な展開だ。俺の存在をまだ目立たせるわけにはいかないし、神室もまだ利用価値を落とすつもりはない。
「それで、私はこの特別試験とやらで何をすればいいわけ?」
葛城が船上から発見したスポットらしき地点を捜索するため、探索班を編成しているのを眺めていると、隣から声がした。
いいね、積極的な子は嫌いじゃない。でも、神室はなんで協力的になったんだろう。スリルが欲しいんだな? そうだろ。いいぜ、今度くれてやるよぉっ。
「う~ん、今のところは何もなし。今回は君を動かすつもりはないよ」
「へぇ? つまり、
「察しが良くて助かるよ。あの子なら、今回の作戦にはうってつけだ」
「うってつけ、ねえ。ま、精々頑張りなさいよ」
「言われなくても」
この無人島試験で神室を起用するつもりはない、少なくとも大まかな出来事が俺の想定内の範囲に収まれば。何故かと言うと、今の俺には
龍園がやってきた。Aクラスと手を組みたいらしい、ま来ることは知ってたけど。でも、やっぱり試験が始まって数時間でこの作戦を思いつくのは凄いとしか言いようがないよね。
実際こんな奇策思いついてたのは龍園と綾小路だけっぽいし、この場にいてルール説明聞いてたら坂柳も加わってたかもしれないけど。
兎にも角にも、提案というか提示してきた契約の内容もそのままだった。
200ポイント分の物資をAクラスが指定しCクラスが買う代わりに、毎月2万プライベートポイントを寄越せというもの。因みにこれは一人一人が契約にサインするから、しなくても多分許される。加えて、Cクラスが探ったDクラスとBクラスのリーダー情報もくれるって。なんていいやつなんだ、龍園。
【特別試験・物資譲渡契約】
Ⅰ:CクラスはAクラスに対し、200ポイント分の物資を提供する。物資の内容についてはAクラス側で決定することが可能。
Ⅱ:CクラスはBクラスとDクラスのリーダーが誰であるかを調査し、その際得た情報をAクラスに全て提供する。
Ⅲ:CクラスがⅠ・Ⅱを遂行した場合、下記の署名欄にサインをしたAクラスの生徒は毎月2万ポイントを龍園翔に譲渡する。
Ⅳ:本契約は本校を卒業するまで継続する。
「──────という契約だ。我々Aクラスの方が利益を得られる上に、Bクラスを更に突き離すことも可能だ。俺としては受けて良いと思っているが、皆にも関わるため意見を募りたい」
「いいんじゃないですか、葛城さん。龍園のやつは信用なりませんが、契約さえ結んでもらえるのなら万々歳ですよね」
「たしかに~。でもさ、Cクラスというか龍園くんがホントのリーダー情報教えてくれるとも思えないんだけど。絶対ウソ吐くじゃん」
「ふむ、確かにな。証拠となるキーカードを写した写真か現物を用意してもらおう。皆もそれでいいだろうか?」
そう葛城が答えると、意外にも全員が頷いた。橋本も、鬼頭も。それは今後起こす行動を既に共有しているからなのか、はたまた別の目的があるのか。俺には分からないけど。
葛城が契約書を回し、全員がサインしていく。俺の番が回ってきたのでしっかりと名前を書いておいた。ここで変に拒否って目立ちたくない。それに、原作ではCクラスの失敗で巻き添えを食らったけど、同じミスをさせるつもりもないからね。
「──────それで、私は何を、すればいいんでしょうか…………」
「君に任せることはたった1つ。橋本くんを見張ってほしい、日がな一日ずっとね。24時間とは言わないけど、就寝した後以外は任せるよ」
…………俺は、周りにも人間がいるにも関わず誰にも気づかれずに近づいてきた山村さんに指示を飛ばす。とは言っても、俺がやってるのは坂柳とは手段が違う。
彼女は山村さんを
「一緒に頑張ろう。友達なんだし、それに神室さんの頼みだしね」
「分かりました、一緒に頑張りましょう。秋月くんは………何故だか、この前言っていたように坂柳さんとは違うと感じています」
「そっか。確かに、俺は坂柳さんとは違うかもね。だって、あそこまで賢くもないし、人を道具としてなんか使えない」
「そうじゃ、ありません。ただ………坂柳さんは私に
夏休みに入る前、俺は山村に尾行された。だがそれを逆手に取り、俺への尾行が終わってから数日後に態々こちらから接触したのだ。
それから尾行は坂柳の指示なのか、なぜ彼女に従っているのかも聞いた。最初は坂柳に電話しそうだったけど、理由を当てて友人になりたい旨や、
それから学校でも話すようになり、坂柳では与えられないものを与えて、なんとかこっちについてもらったのだ。関係が構築されきっていない今なら引き込めると思っていたから、予想が当たった形になる。
──────さて、この試験、勝ちにいこうか。全力を以って。
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