【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
Chaque homme doit inventer son chemin.
ジャン=ポール・サルトル
俺は葛城の見つけたスポットを探索し、加えて新たなスポット発見を目的とする探索班に自ら立候補した。他にも数名いたから、目立たないだろうと判断したためだ。
まぁ、まずはその前に島を軽く1周して地形を把握しつつ、あわよくばスポットを見つけたいと考えている。各クラスがベースキャンプ地に決定したスポットの位置はハッキリしないけど、見つかっても問題はないと思うし。
「秋月、本当に1人でいいのか? 体調がすぐれないんだろう、せめて誰かと共に行動してほしいんだが」
「心配してくれてありがと、でも平気だよ。あんまり動く気はないしね。Cクラスにお願いする物資の注文は終わったの?」
「ああ。だが、生活に必要な分は200ポイント以内でギリギリだな。代わりに食料を少なくして釣竿を買ったから食料確保班に任せるつもりだ」
「なら、成果を期待してるよ。もしかしたら早めに帰ってくるかもしれないけど、とりあえずお互い頑張ろう」
「ああ。くれぐれも気を付けるんだぞ」
葛城もこれから戸塚と共にスポット探索に行くようだ。一応購入した紙に書かれた簡易的な地図は貰ったから、これを元に進めば迷うことはないだろう。
彼に手を振ってから、俺は歩き出す。やることも、決まっている。少し心苦しい作業も含まれるかもしれないけど、割り切るしかないね。甘いこと言ってたらここで目的なんて達成できっこないんだから。
それから俺は島をダラダラを歩きながら、少しだけ分けてもらった天然水を口に含む。どうやら洞窟の近くに泉のスポットがあったらしい。思ってもない幸運だね。
「…………あちぃ」
思わず口に出てしまう。森の中を歩いているだけでも、避けきれない直射日光が体力を奪っていく。まだ体調は平気そうだけど、限界もそう遠くはないかもしれない。
とりあえず、少し座るか。そう思い大樹の真下に腰を下ろす。木の周りは僅かに水分が発せられてるから若干涼しいって話は本当だったみたいだ。帰ったら皆にも教えてあげよう。
「っし、行くか。スポットに」
一応俺はこれでも探索班として頼りにされている。葛城は遠慮してたけど、役割があった方が暇な時間を避けられるからね。暇も好きだけど、こうも暑いと目的があった方が気がまぎれる。
「んぁ?」
「あれ? 君は………」
うーん、責任とってくれ葛城。おまえの示したスポットの中で一番左のところに来たらBクラスがベースキャンプを構えてた。
しかも運悪く引き返す前にリーダーである一之瀬とばっちり目が合っちまったよ。どうすんだ、これ。ま、本来なら俺のいたクラスのリーダーだ、感動の逢瀬とでも思おうか。
「あ、どうも。Aクラスの秋月っていいます」
「私はBクラスの一之瀬帆波だよっ! 秋月くんはどうしてここに? Aクラスが砂浜から歩き出した方向とはかなり違う方面に歩いてここに来たんだけど」
「あー、クラスのリーダーがスポットらしき場所メモってくれてたんですよ。それで、それを頼りに最西端の場所に来たらここって感じかな」
嘘を話しても意味はない。どのみちここで何を言おうと、今後に一切影響はないからね。なら、少しでも印象をよくしておいて損はない。
「そうだったんだ。………って、え、大丈夫? すごく顔色が悪いけど」
「え、そうかな。全然平気だよ、大丈夫。お邪魔みたいだし帰るね」
体感でいえばまだまだ体は動く。けど、案外自分で自分の不調を気付けなかったりするのも事実だ。葛城には悪いけど、少し早めに戻るか。
「いやいや、待って待って。そんな状態で放っておけないよ。連絡はできないかもだけど、少し私たちのベースキャンプで休んでいかない? 」
「………いや、やっぱりやめておくよ。他クラスのお世話になるわけにはいかないし、そんな敵に塩を送るような真似、リーダーならするべきじゃないと思うよ」
俺はそう告げてから、来た道を引き返す。ここを占有しているということは、周辺のスポットもそうだろう。仮にされていなくても、Bクラスに見られる危険があるからNGだね。
「あ、そうだ」
「ん?」
「最後に聞いておきたいことがあって。別に難しいことじゃないので安心して」
「聞きたいこと………何かな?」
「──────今日ってさ、今までに
確か、CクラスはBクラスに金田悟を送り込んでいたはずだ。しかも、証拠はないからAクラスは指名しなかったけど、しっかりと当てていた。もしかすると、既にいるかもしれない。
「いや………来てないけど。でも、それがどうしたの?」
「リーダーの葛城くんにもし他クラスのベースキャンプを見つけたら聞けって言われてたから。一応聞いておいただけ」
「そっか。でも、本当に大丈夫なんだよね?」
「うん。来た道を引き返すだけだし、帰れば休めるからお気遣いなく。それじゃ」
「あ、そうだ。あのね、秋月くんの名前聞いた時からこれだけ伝えたかったの」
「なにかな」
「…………DクラスとCクラスの揉め事のとき、綾小路くんがAクラスの方で目撃者が見つかるかもしれないって言ってたの」
ああ、なるほど。綾小路はしっかりとBクラスと協力し事件を解決した、その際に俺の名前を出したのか。悪意はないだろうし、好意的に捉えられているのなら問題はない。
「綾小路くんとは友達だからね。須藤くんが暴力を振るった事実はあっても、嘘は吐いてないから目撃者を捜して欲しいって頼まれたんだ」
「それでね、結果的には見つからなかったかもだけど、協力してくれたのは事実だから。ありがとう、それだけ」
「分かった、受け取ったよ。それじゃあ、一応敵同士だけど、お互いベストを尽くそう」
「うんっ!」
疲れた………。結局、やりたかったこと特にできてないし、手柄なしだ。水ももうないし、とりあえず今日は帰るか。まだ6日もあるんだ、体力を使いすぎるのもよくない。
ベースキャンプである洞窟に戻ると、入り口には暗幕が貼られていた。他クラスの生徒が来たときに中を見られないためだろう。事実、原作では2日目に綾小路と堀北がここにやってくるしな。
「なんだ、秋月か」
「おかえり。何か見つけられたかな?」
近くに待機していた島崎や里中が声をかけてくる。隠れていたあたり、いざとなったらやっちまうぞって脅すのかもしれない。
「新しいスポットを帰り際に見つけたよ、ここから片道30分くらいかな。それと、Bクラスのベースキャンプ地も分かった。葛城のメモの最西端のスポットだよ」
「おお、やるな秋月。これは帰ってきたら至急、葛城に報告するべきだな」
「葛城はまだ帰ってこないのか?」
「いや、2時間程前に一度帰ってきた。曰く、スポットを大量発見したらしい。戸塚も大忙しだと言っていた」
そういえば、アニメ版ではかなり多くのスポット占有ポイントを計算に入れていたよな。とすると、他クラスがあまり積極的に動かなかっただけで、島全体で見ればかなり多くのスポットが配置されてるのかもしれない。
「──────それで、橋本の方は何か動いてた?」
「いえ。今日は探索班として森重さんと共に行動していましたが、2人はほぼずっと離れず行動していましたし、早めに帰ってきてからは設営や環境を整えるのを手伝ってくれました」
「目は一度も離してない?」
「お手洗いのときの数分だけです。でも、行く前に見た時と位置は変わってなかったですし、移動できる時間もなかったはずです」
つまり、動くのは今夜か明日の早朝もしくは日中である可能性が高い、か。明日は綾小路たちが来るから出迎えたい気持ちもあるけど、こればっかりはその場で臨機応変に対応するしかなさそうだね。
「そっかそっか。ありがとね、結構辛かったでしょずっと見てなきゃいけないの」
「そんなことないです。それが私の専売特許ですし、それぐらいしかできないので」
「そうでもないと思うけどね。とりあえず今から明日までは俺が見張っておくから、山村さんも好きにしていいよ」
洞窟のスポットを占有する前、俺は戸塚に警告することもできた。そうすれば、少なくとも綾小路に見られることはなかっただろう。けどやらなかったのには当然理由がある。
──────Dクラスのポイントを減らす、そのためだ。そして同時に、橋本の油断を誘うためでもある。戸塚はリタイアし、他の者が新たなリーダーとなれば計画は完成だ。
そのためなら俺は…………