武闘家の場合
『はぁ……なんにもわかってなかったんすね。私の気持ち』
『あんなに私たちと旅してきて……なのに今更旅をやめるって…私約束したっすよね?最後まで旅を続けるって。世界の果てまで行くって。言ったすよね?』
『なのに…なのにどうして…旅をやめるとか……。あっもしかして……』
『デキたんすか?別の女が』
『そっかぁ……最初に出会っていちばん長く旅してきた私以外に女かぁ……。僧侶さんですか?弓兵さんですか?まあどっちでもいいか』
『でも、それなら仕方ないですね……。そういえば、私魔王軍に勧誘されてるんでした。そっちに行くのも吝かではないですね。もちろん、私を選んでくれると言うならそれも無いですけど。』
『最初から無口でそういう所がいいと思ってましたが、今も無口なんですね。行っちゃおーかなぁ……魔王軍』
『最初は貴方と一緒じゃないなんてありえないって断りましたけど、もう旅を続けないなら……』
『だって、貴方が好きで好きで仕方ないんですから。ね?』
『正直、貴方だけなんすよ。今のパーティで傷が多いのって。いつも傷をつけるくせに率先して前に出て……』
『私、本当に行っちゃいますよ?このままじゃ貴方は死ぬと思いますけど、いいんですよね?』
「……そうか。それは、すまない。君がそう思うのなら、俺に止めることはできないだろう」
『良いんですか!?本当に行っちゃいますよ!!?』
「悲しいが…俺に引き止める権利は無い。もとより俺が1人で始めた旅だ。君を引き止める権利も、逆に突き放す権利なんてない。……でも、魔王軍か。アイツらも目の付け所がいい。大丈夫さ。君ならやっていける」
『ちょっ、ちょっと!』
弓兵の場合
『そう…旅をやめるの』
『許さないわ。私の勇者様。私は貴方と共に旅をするためについてきた。それが無くなってしまっては、意味もないわ』
『だから、貴方は旅を続けるの。ずぅーっと一緒に。私と貴方だけで。』
『いいわよね。永遠の旅。なんてロマンチックなのかしら。ドラマチックでロマンチック。劇的にして甘美。いい響きじゃない?』
『……あの時、カルコルの群れから助けてくれたの誰だったかしら。そう、貴方ね。私はそこからだったわ。貴方にゾッコンだったのは』
『アピールもしたわ。貴方は気づいてくれなかったけど。そんな中で私の想いは募っていく。どうなったかわかる?。そう、混沌で不純で純粋な程に熟成されたのよ』
『そんな貴方への歪んだ願いを持った私のお願いを聞いてくれなかったらどうするか分からないわ。そうそう、最近、私新しく転移魔法を覚えたの。さらに近くにすごく強いモンスターが出たそうね。もしかしたらうっかり……』
「吝かではないな」
『何を言ってるの!?貴方じゃ倒すのは無理よ!?私たちがいなければ死……』
「どうだろう。自分の力に自信がある訳では無いが、見てみ無ければわからない」
『呆れるわ』
「それに……いや、これは関係ないか。すまない」
『待って!待ちなさい!』
僧侶の場合
『やめるって…?はぁ…お前、マジでやる気なのか?』
『俺は止めないが……。勝算は?』
『ぶん殴る、ねぇ…。お前をあん時から撮ってた俺なら分かる。やめとけ。いや、やめろ』
『お前は勝てる。それは間違いねえ。けどそれを人は勝算って呼ばねえ、ただの自爆っていうんだ。辞書に付け足しとけよ?』
『大体、お前は抱え込みすぎなんだよ。それで世界救っちまってんだから俺は何も言えねえけどよ』
『まったく…、お前ってやつは本当にタチが悪い。過剰な自信もない、高飛車な態度でもない。なのに自分が傷つくことは厭わない。それに、やれそうだと思ったことは全てためらいなく実行する。それがだいたい何とかなるもんだから尚更タチが悪い』
『…はあ。本当にやるってんだな』
『仕方ねえ。酒場の予約くらいはしといてやるよ』
『行けたら行く…ってそれ来ねえやつ…。ああ、いや。お前は毎回それで来てたな。なんでもねえや』
『達者でな。相棒』
「……じゃあな」
深い森の奥の開けた場所。唯一の光刺す穏やかな場所に、それは現れた。
様々なモンスター、様々な悪魔をまぜこぜにして1つにした歪を抱えるそれは、根源からの破滅を願い、行く手を阻み、悪夢を作るもの。
言うならば、ナイトメア。
意思はなく、無意識でもない。矛盾を孕み、矛盾しない。
この世の全てに楯突くがごときその存在は、たしかに産み落とされ、街ひとつを吹き飛ばさんとしていた。
歩く山道は腐の街道。歪に歪む極彩色にして無彩色の獣道が、破滅の足跡を示す。
行く手を阻むものを遮るがごとく、不思議な重低音が轟く。
それはこの世界にしてはやけに近代的で、まるで新時代のようにヘッドライトを輝かせる、バイクだった。
煌めく赤いボディは、スタイリッシュにその場にとまる。
静かな嘶きは、静かな怒りを示すように鳴り響く。
「とうとうご対面…か」
勇者と呼ばれた旅人は、最初に旅を始めた黒いコートを着たままにナイトメアと対峙する。
見えざる眼光が交わり逡巡し、弾ける。それを合図とするが如く、歪が動き出す。
全てを跳ね除け男を除外するように。
「叶わないさ」
ばきんと音がなり、破滅を願うものが弾き飛ばされる。唸る風と唸る大地が咆哮し、吐血のように土を吐き出す。
「ここで、食い止める。お前には世界を破壊させない…!」
男が取り出すは一振の剣。刀剣と言える姿のそれは、どこか近代的にして神秘的。
「変身…!」
刃を腕に突きつけ横1文字に振り切る。自らの肉体を媒介とする、英雄召喚法術は、彼の十八番にして禁忌。
自らを1度殺し、バグとして英雄に登録された自分を自分に憑依させ再構築する狂気の所業。それが、彼の変身だった。
「長い戦いにはさせない……、短期決着だ!」
大地を蹴る。溢れ出る魔術の刻印が、閃光のようにまたたき残像を作り出す。歪から放たれる威圧、恐怖、脅威を、ただの一振で切り落とし、その刃を根源へと至らせる!
豪快にして豪胆な斬撃が演武のように振り回る。それは閃光。魔法のごとき剣戟が燃えるほどに強く、唸るほどに熱く、地面を揺らす。弾ける空気が爆発するように拡散し、木々を薙ぎ倒した!
「これで……最後だ!」
もう一度、刃を腕に添え、横1文字に振り切る!
英雄という格を返上し、1度死ぬという対価を払うことで行う超強化。約5秒間の超絶進化に、刻印が震え、ビートを刻む。
魂が激しく唸り、大地すらも凌駕する力を湧き起こす。
それは潜在能力。自傷という対価で5000%を引き出す自らの限界を超えた突破。
「ハァ…ッ!」
瞬間、大地が揺れる。閃光が、刻印が、魔力が、燃え尽きるほどにヒートアップし、最大を超えた終わりなき限界を焼き付ける。
赤き魔力を身にまとった飛び蹴りが、ナイトメアに炸裂した!
爆裂、究極、一撃にして終焉の一撃が、ナイトメアを貫いたのだ!!
ナイトメアは、破滅と言う願望を押し付けられ、爆散したのだった。
「一安心、ってとこか」
無論、ここまでの無茶をするのだ。彼の身体も強い負担を受けていた。
しかし、それでも彼は動き出す。
「次は、どこに行こうか」
守れた世界にサムズアップを掲げながら、彼はバイクに乗り駆けていった。
新たな旅をするために。
設定集
主人公
男
1度世界を救った男。唯一扱えた召喚術をこねくり回し、狂気的な変身を身につけた。思考回路は常に自分が前に出ること。危なかっしい人である。世界を救った時にかなり体に負担をかけており、まともに歩けているのが奇跡と言わしめるほど。ある程度のモンスターなら生身でもしばきあげることが可能。救世の一件で馬鹿みたいに強くなった。現在は見たことの無い景色を守るために世界を放浪中。人の夢に現れ悪夢を退治することもある。
武闘家
女
主人公のことが好き。主人公のそばには毎度何故か馬鹿みたいに強いモンスターがいたため、自らを強くする目的で主人公について言った。ついて行く次第に彼の危なっかしさから無意識に彼を守らなければと思い、彼は自分がいないと死んでしまうと思い込んでいた。旅の終了後、魔王軍で働いていたが、ナイトメアの襲来により死にかける。そこで放浪していた主人公と再開。彼の狂気と強さを目の当たりにしもう一度旅をすることを決意。主人公の承諾を得て彼と旅を始めた。
弓兵
女
めちゃくちゃ強い弓兵。狙撃と名のつくものならなんでもできるらしく、人の恋路を応援することもしばしば。でも自分の恋路には悶えている。カルコルというモンスターに窒息させられそうになっていたところを丸腰の主人公に助けられ、旅についていく。旅中はずっと彼にゾッコンであり、惚けた顔をしないためにクールな顔を貫いていた。本編後、弓兵として様々な討伐依頼を片付ける傍ら、常に主人公を探し続けていた。彼の残滓を見つければ西へ東へ。そんなことをしている間に主人公の足跡だけ知覚できるスキルを身につけた。これにより主人公と弓兵は再開。旅を続けることになった。
僧侶
男
主人公が世界を救った時、相棒として共に戦ってきた戦友。常に危なかっしい親友のことを気にかけており、純粋で純朴な主人公が詐欺に会いそうになったときなどによく助けに現れる。僧侶ではあるが、彼の鍛え抜かれた肉体は強靭にして屈強。彼をサバンナに投入すればチーターが絶滅するだろう。本編後、酒場に来た主人公と飲み明かし、妻に怒られた。たまに主人公と連絡を取り合い助けたり助けられたりしている